ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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歓楽街疾駆

斑鳩はユリスの顔を尻目に、クローディアに向き直り

「さてと、ここからの流れだ、まずクローディア、書類関係を綾斗の端末に送っておいてくれ」

「はい、もうすでに送りましたわ」

「さすがだ、それと装備局にこっそりと手回しを頼みます」

「えぇ、もちろんですわ」

「さすが、十分助かる」

「ありがとう、クローディア」

ユリスが素直に感謝の言葉を述べる。

 

「それで、クローディアが力になれるのはここまでってところか、んじゃあ、あとはフローラを救出したらってところですかね?」

斑鳩はユリス達の方に向き直り

 

「綾斗、ちょっと手を出してくれ」

「手?」

そういうと綾斗は手を出してくる。斑鳩は綾斗の手の甲に軽く触れ、呪文を唱える。綾斗に囁く。すると、その内容を理解する綾斗。そして、斑鳩と紗夜は立ち上がる。

 

「さてと、行きましょうかね」

「そうですね」

「うん」

「あぁ、再開発エリアでは簡単にでも変装のようなものをしていった方がよろしいかと、黒猫機関(グルマルキン)は少数精鋭と聞き及んでいますので、監視をあちことに配置させるようなことはしていないでしょうが、念には念を入れてでしょう」

「――了解」

そう答え、控室を出ていこうとする三人に、今度はユリスが声をかけた。

 

 

「待ってくれ、お前たちが協力してくれるのは正直助かる、だがおまえたちは――」

「「――ユリス(・・・)」」

紗夜と斑鳩の声が重なった。

 

「友達の窮地に力を貸すのは当然のことだ、気にすることはない」

「はい、私もそう思います」

「そういうこと、気にすることはない」

三人の言葉にユリスは目を見開き、苦笑を浮かべてうなずく。

 

「そうか、そうだな、紗夜、綺凛、それに斑鳩――よろしく頼む」

「……ん、頼まれた」

「おう、任せろ」

そういうと、斑鳩は動き出した。

 

 

 

 

 

再開発エリア――

 

通路には人が疾駆する音が木霊していた。

斑鳩は、事前にクローディアから送られてきたデータを参照しながら凄い速さで歓楽街を捜索していた。

 

「(にしても、個々の歓楽街はいい方だが――廃墟エリアになるとな)」

流石に、今回に関しては地の利の面で言えば犯人の方が上手だ。

 

「(二手に分かれて正解だったな)」

方向音痴な紗夜に綺凛を任せ、斑鳩は通路を疾駆していく。とはいえ、

 

「(一つ一つ潰していくのは、至難の業か――)」

流石に、このアスタリスクの歓楽街だけあって、その規模は大きい。尚且つ店の数も多い。

 

「(先導人を見つけなければな…)」

その中を斑鳩は、メタマテリアル光歪曲迷彩(オプチカル・カモ)を駆けながら一つ一つしらみ潰しで駆け抜けていく。とはいえ、ここはアスタリスクの暗部だけあって、あまりいい情報はない。

 

「(夜吹の力も借りるか…それとも独自でやるか)」

あの情報通が影星ではない確証もないということになると、下手に連絡は取れない。

 

「(早々に見つけないとな…)」

とはいえ、この町で勝手に押し入るわけも行かない。足を止めればすぐに客引きが寄ってくるような町だが、そこは光学迷彩を使っているので問題ない。そんな中だった。

 

「あら、見えないネズミがいるようね、お行儀が悪いのは誰かしら?」

「――ッ!?」

直後、何者かが剣を振るってきた。しかも、異質な感覚、それに加えかなり重い攻撃。

斑鳩はすぐさま回避行動を取ると、容赦なく二撃目が飛んでくる。映り込むのは白い髪。

見れば、その人物が持っているのはレイピア型の星煌武装。斑鳩は、再び三撃目を警戒し、距離を取る。

そして、襲撃者の方を見ると、

 

「オーフェリア!?」

「…この声、斑鳩?」

其処に居たのはレヴォルフの服装のオーフェリアだった。

斑鳩は、光学迷彩を解くと

 

「斑鳩じゃない」

「そっちこそ、オーフェリアだったか――にしても、肝を冷やしたぜ」

「ごめんなさい、確認せず攻撃して」

「いんや、いいさ」

「それにしてもどうしたの?こんなところで?」

「ん、あぁ、実はな――」

そういうと、斑鳩は事の経緯を話し始めた。

 


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