ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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絶天vs叢雲

「綾斗、無事か・・・?」

か細い声に振りむけば、綾斗の背後でユリスが身体を起こしたところだった。しかし、彼女は苦悶の表情を浮かべ、またすぐに倒れ込む。

 

「ユリス!」

「だ、大丈夫だ……と言いたいところだが、流石に少々厳しいな……」

ユリスを抱き起す綾斗。彼女はぐったりとしたまま苦笑を浮かべるだけだ。

 

「正直に言え……まだ勝機があると思うか?」

「…なくはない、と思うけど」

それから、斑鳩に聞こえないように話し出す

 

「その案はあまり現実的ではないな……他には?」

「せめて俺が速度で上回ることができれば、勝負に出られるんだけど………」

「速度、か……」

すると、ユリスは何かを思いついたのか、顔を上げる。

 

「以前クローディアから《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》は本来使用者にとって最適の形状をとると聞いた覚えがある、だが、今の形はとてもそうとは思えん、それをなんとかできたなら、少し改善にあるのではないか?」

「そう言われても……」

「流星闘技を使った時は巨大化させていたではないか、要領は同じだろう?」

「俺は細かい星辰力の調整が苦手なんだ、それもすごく」

「ふむ……」

ユリスは少し考え込む。そして意を決したように言った。

 

「――わかった、ならばそれは私が担当しよう」

「えっ?」

「少し《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》を触らせてもらうぞ」

そういうと彼女は、《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》に触れる。

 

「ちょ、ちょっと――!」

「く……っ!?」

黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》に触れたユリスはすぐにその手を離す。

「ふふ……流石に難物だな、認めぬ者には触れさせもせんか…まぁ、どっちにしろ《魔女》の私にはこいつを扱うことはできんな」

 

「まぁいい、今ので十分だ――綾斗、流星闘技をやってみろ」

「流星闘技を?このままでかい?」

ユリスに促され、綾斗は《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》に星辰力を注ぎ込む。そして、ユリスは綾斗の右手に自分の右手を重ねる

 

「ユリス…?」

「咲き誇れ――炎菖の飾王花(アレクサンドリート)

その途端、綾斗の右腕をユリスの星辰力が駆け抜け、《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》に絡みつく様な炎がともる。そして、その刀身が変わっていく。しかも黒い紋様と炎が交互に絡み合い、幻想的な美しさを作り出す。

 

「この試合、私に出来るのはここまでだ、あとは頼んだぞ、綾斗」

「……了解、ユリス」

綾斗はユリスをやさしく横たわらせる。そして《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》を一振りして斑鳩に向き直る。直後、ユリスは退場していく。

 

 

 

 

「ごめん、待たせたかな?」

「いいや、問題ない――それに、そっちもといったところか」

斑鳩もどうやら本心からぶつかる必要がある。生半可な気持ちではならないようだ。

 

「いいだろう――見せてやる」

そういうと、瞼の裏で彼女の顔を浮かべ、”借りるぞ”と、心の中でつぶやく。

すると、まるで周囲のいや斑鳩そのものが変わっていく。

地の底から響いてくるような凍てつかせるような声を響かせ、星辰力を身体の隅々までいきわたらせる。同時にその紅い瞳が紅い月と荒涼とした闇を宿しより一層の不気味さを増していく。

そして、信じられないほどに強大な星辰力が膨れ上がっていく。その量たるや、尋常ではない。推し測ることができないほどに圧倒的で禍々しい星辰力が斑鳩を包み込んでいく。そして、万応素が荒れ狂い、一瞬にして、周囲の瓦礫を吹き飛ばす。そして、空気が震え、全てをねじ伏せ、押しつぶすかのような凶暴な威圧感が放たれる。その手の2つの剣には禍々しいまでの万応素と星辰力がまとわりついている。そして、お互いが一気に踏み込み――

 

「「はあああああ!!」」

ステージ中央で激突し、両者裂帛の気合と共に剣を薙ぐ。一発でも攻撃を受ければそこでおしまい。まさに極限ともいえる攻防が続いていく。

 

 

 

「天霧辰明流剣術奥伝――」

天壌焼き焦がす(スターバースト)――」

お互いがお互いを迎撃し――

 

 

 

「修羅月!」

星龍皇の焔(サラマンドラ)!」

 

お互いの渾身の一撃がぶつかり合った。

 

 

 

 

 


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