「一体、何をやっているのだ…おまえたちは?」
病室のドアが開きユリスとフローラが入ってくる。
「あぁ、ユリス、警備隊の聴取は終わったの?」
「うむ、如何にディルク・エーベルヴァインが悪逆非道な男か、滔々と語ってきてやったぞ」
すっきりした顔をで言うユリス。
「それはいいけど……ユリスも入院が必要なんだろう?そんなに動いて大丈夫なのかい?」
「私の場合は綺凛と違って星辰力切れの症状だったからな、入院と言っても1日だけだし、もうだいぶ回復した、無論打撲や骨折やらはあるがな」
「…悪い」
というと
「ん?どうしたフローラ?」
病室の入り口に立ってうつむいたままのフローラ。
「あ、あの皆さま!この度はフローラのせいで大変なご迷惑を……!」
「そんな、別にフローラちゃんが悪いわけじゃないんだから、気にしなくてもいいよ」
今にも泣き出しそうなフローラ。斑鳩は軽く彼女の頭に手を当て
「フローラ、次は君が誰かを救えるような力を持て、もしこのアスタリスクに来るなら、尚更だ、だから今は泣いていいんだよ」
そういうと、フローラはユリスにしがみつき大声で泣き出した。彼女が泣き止むまで、ユリスはその背中をずっとやさしく撫で続けていた。
「さてと綾斗、少しいいか?」
部屋から出ていくユリスと綾斗。それを追っかけていこうとする紗夜。そんな中
「おまえらも来るか?」
ユリスはこちらに気付き、声をかけてくる。
「いんや、俺は後で合流する紗夜、先に行ってな」
「…斑鳩?」
こちらを怪訝そうに見る紗夜。斑鳩は察しろと言わんばかりに紗夜に視線を送る。そういうと3人で先に行く。
「良いのですか?」
「いいんだよ、乙女の恋路を邪魔するほど、俺は腐っていないよ、こういう時こそ…な」
「そうですか・・・」
どこか悲しそうな顔をするクローディア。
「紗夜は元々、綾斗の幼馴染だ、そういう感情を抱いても不思議じゃない、それに俺はな…」
「少しは、嫉妬を覚えてもいいのでは?」
「他人の女に手を出すほど腐っていないさ」
病院の部屋の中に何とも言えない雰囲気が流れる。
「クローディア、少しレセプションに言ってくる、車を頼む」
「えぇ、わかりましたわ」
そういうと斑鳩はレセプションの会場に向かった。
「やっときおったか――絶天」
レセプションの会場は凄い気配に満ちていた。
「(ははっ、こりゃ、どういうことだよ…)」
見れば界龍の
「はじめまして、棗斑鳩君」
「こ、こちらこそ初めまして、シルヴィア・リューネハイムさん」
流石に世界の歌姫の目の前でガチガチの斑鳩。そして、彼女は我慢できなかったかのように噴き出した。
「あははは!いいね!いやーこういう子久しぶりだわ、」
「えっ、いや、その――」
「シルヴィでいいよ、親しい人はみんなそう呼んでくれてるし」
そういうと、彼女は携帯端末を取り出しこちらの端末へと向ける。直後、着信音と共にアドレスが送られてくる。
「実はね、前からキミには少し興味があったんだ、今日こうして直接話が出来て良かったよ」
「こ、こちらこそ、ありがとうございます」
「あっ、それと私のプライベートアドレスだから、いつでも連絡して頂戴、まぁ、このところちょっと忙しくてすぐに出れるかわからないけど」
「ま、これからもがんばってね斑鳩君」
「は、はい」
そういうと、こちらの胸を軽くたたいてその場を去っていくシルヴィア。そんな中
「おう!?」
いきなり肩に何かがとびかかってくる。
見れば、斑鳩の肩には少女がぶら下がっていた。界龍の総代だった。