「おや、よかったのぅ――絶天」
とびかかってきたのは、
「そういや、えーと」
「おぉう、儂のことは星露で良いぞ、ぬしは門下ではないし、敬語も不要じゃ、なにより、あの闘いで久しぶりにワクワクさせてもらったからのぉ」
「ありがとうございます」
そういうと、降りる気配を見せない彼女。だが、彼女は降りてきて、斑鳩の正面にむき直り、
「まずは、優勝おめでとう――まことに見事な試合じゃった、今も思い返すだけでうずうずするほどじゃ、ほんまに惜しいのう、なぜ界龍に入ってくれんじゃたんだが」
「ありがとうございます、まぁ、そういわれましてもねぇ…はいっちゃったもんはしょうがないですよ」
「まぁ、そうじゃな、にしても、儂の見立ては間違っていなかったということじゃな《絶天》の称号を与えたものとして、鼻が高いわ」
まるで自分の弟子のように喜んでいる彼女。そんな中、彼女の秘書である
「棗斑鳩――わしは今回のこの鳳凰星武祭でのお主の功績を称え、本来ならここで何かをくれてやりたいところじゃが、生憎色々あって渡すことができん、悪いな」
「いえ、そんないいですよ」
「まぁ、とはいえ、ほれ携帯端末を出してみぃ」
「…?」
彼女も嬉々として携帯端末を出してくる。そしてお互いの連絡先が交換される。
「先ほどの《
「ありがとうございます」
「おう、これからも精進するんじゃぞ」
そういうと、彼女もここから立ち去っていく。いつの間にかアンリマも消えていた。斑鳩は状況をみつつ、その場から立ち去り尞に戻ることにした。見ればオーフェリアからもメッセージが来ていた。
奇しくもこの夜は雲一つない満月の夜であった。
「……」
月下、斑鳩は一人で寮の屋上で立っていた。そして星空を眺め一人黄昏れていた。そんな中、誰かがこの屋上にやってくる。どうやら、
「ここにいたのか、斑鳩」
やって来たのは紗夜だった。
「紗夜――」
紗夜の手には、ドリンクがあった。
「綾斗とはいいのか?」
「そこまで私も独善的な人間じゃない、斑鳩、座って」
その隣を両手でぽんぽんと叩く。そして、紗夜から飲み物を貰う。
「どうかしたのか?」
「うん、斑鳩が心配で――どうしてあの時来なかったの?」
「…さぁ、なんでだろうな?」
わざとしらをきる斑鳩。理由はわかっていた。だが、其処は言わないのが約束だが、彼女は心なしか咎めるようにこちらに見て
「斑鳩、あの時もしかして綾斗と私のことを気にして?」
紗夜の言葉に思わず黙りこむ斑鳩。だが、ここまで黙ってもいられないので
「…あぁ、そういうことだ、特にやましいことはないよ」
正直に言う斑鳩。
「ごめん…」
紗夜の顔がしょげる。どうやら、何か思うところがあるようだ。
「いいさ、勝利の祝杯は挙げられたのだろ?」
そう斑鳩が問うと
「いんや、まだ上がっていないさ――」
其処にはユリスと綾斗がいた。
「ユリス、綾斗!?」
いきなりの登場にこれは驚いている斑鳩。
「全く、くだらないというか、まぁ、お前らしい気遣いだな」
「ユリス――」
どうやら、紗夜も罪悪感が少なからずあったらしい。
「折角だ、4人で祝杯を上げようではないか」
ユリスがそういう。
「そうだな」
斑鳩は、今までの考えが吹っ切れる。そして、4人の手に飲み物が渡る。そして、ユリスが音頭を取る。
「今日の勝利を祝して」
ユリスが言って缶を掲げる
「次の勝利を願って」
綾斗がそういう。
「この先の勝利を願って」
「乾杯」
4人の缶がぶつかった。その音が月下の空に響いた。