ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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いざ、ドイツへ

北関東多重クレーター湖上のフロートエアポートの特別ラウンジで綾斗と斑鳩一行は搭乗時間を待っていた。

 

「いくら急かしても詳細を知らせてこないと思ったら、まさか王室専用機を寄越すとは……こうなると兄上の一存ではないな、まったく先が思いやられる」

ユリスが腰に手を当てたままぼやく。視線の先、ガラスを隔てた滑走路には、リーゼルタニアの専用機だ。

 

「(おぉ、中々かっこいいデザインだな)」

と思いながらくつろいでいる。

 

「にしてもリースフェルト、まさかこれって凱旋パレードでもあるんじゃないのか?」

「まさか、何も言ってこないんだぞ?」

「さぁ、どうだろうな、俺がお前の兄だったら、そういうサプライズでも仕込むよ」

とぼやきながら言っていると

 

「では、お話は一旦そこまで、さて、そろそろ支度を整えましょうか」

クローディアが手を叩き、一同を見渡す。今回向かうのは、ユリス、綾斗、斑鳩、クローディア、紗夜、綺凛の六人だ。大晦日を控えたこの時期は空港は混んでいるのだが、VIP用のラウンジは貸し切りっていた。

 

「(ま、目立たなくて済むのはありがたいな)」

アスタリスクの外に出るので当然私服だ。普段は携帯が義務付けられている校章も身に着けていない。ちなみに、全員個性のでた私服だ。当の斑鳩はも黒いジーンズに袖ありの白いTシャツに、パーカーにコートという格好だ。

 

「それと皆さん、ちゃんと煌式武装の持ち出し手続きが済んでいるか確認してくださいね」

そう言われ斑鳩は特別申請データを確認する。そこにはエリュシデータとファーブニルの認可の文字が入っていた。

 

「綺凛ちゃんはどうだった?」

「あ、はい……でも、なんとか大丈夫でした」

綺凛の千羽切と斑鳩のエリュシデータ、それにファーブニルは煌式武装ではないため、違った手続きが必要だったのだ。その為、少なからず手間取っていた。

 

「まぁ、アスタリスクじゃないし武器使う機会なんてそうそうないとは思うけど……って、うん?」

綾斗の端末が着信を知らせる。

 

「え……?」

思いがけない名前みたいだ。思わずその手が止まる。

 

「綾斗、どうした?」

「い、いや、なんでもな――」

不思議そうに首をかしげて手元を覗き込んでくる紗夜から隠そうとしたはずみでボタンが触れ

 

「やっほー、綾斗くん、今ちょっといいかな?」

「(おっほ、これはこれは――)」

空間ウィンドが開き現れたのはシルヴィアだった。

 

「「「――ッ!?」」」

一同に驚愕と緊張が走る。

 

「(すげぇ、バットタイミングだな、こりゃ)」

心の中で苦笑いしている斑鳩。

 

「まったくもー、自分から連絡先聞いておいて、全然連絡くれないんだから…って、あれ?」

一拍おいてこちらに気付いた。

 

 

 

 

「あらら…ひょっとしてお取込み中だった?」

「ま、別にそういうわけじゃないんだけどね――お久しぶり、シルヴィ」

今度はこっちに視線が行く。主に綾斗も一緒だ。

 

「あっ、斑鳩君じゃん、お久しぶりー元気してたー?」

「えぇ、お陰様でそちらは?」

「うん、こっちもだよ―そんで、綾斗君は大丈夫?」

「おう、すぐに変わるよ」

そういうと綾斗の背中を軽くたたいてウィンドに出す。どうやら、デートの話になったらしい。

 

「(ま、厄介なことになりそうだな…)」

と紗夜とユリスの表情を見ながらそう思っている斑鳩。

それから一方的な言葉と共に、空間ウィンドがブラックアウトする。

 

「あっ!ちょっとシルヴィ!」

むなしく響く綾斗の声。

 

「ま、そういうこともあるさ――ほれ、搭乗時間だ、いくぞ」

「そうだな、どうせ時間はたっぷりある、詳しい話は機内で聞かせてもらおう応ではないか」

綾斗の背中に痛いくらいの視線が突き刺さるのを眺めながら、斑鳩はお得意の重力操作で5人全員の荷物を軽々と持ち、搭乗口に向かった。そして飛行機は飛び立った。

 

 

 

斑鳩はユリスの許可を得てソファーで横になっていた。と言っても、頬杖を突いた格好だ。

 

「大丈夫かい、綺凛ちゃん?」

「はい、結構楽です」

斑鳩は目の前で猫のようにゴロンとしている綺凛に声を掛ける。力ない笑顔で応える。

先ほどより幾分かマシになっているみたいだ。ちなみにはたから見ると親子だ。

 

「ま、無理するな」

と彼女を撫でてやる斑鳩。

 

「まるで父親と娘だな」

「そっくり」

「いやいやいや」

ユリスと紗夜のツッコミを交わしている。当の綺凛は顔が少し赤い。それと嫌がるそぶりを見せていない。

完全に休日の父親と娘のような関係だ。

 

「ロリコン」

「だな」

「異論なし」

「ふぇ!?」

散々な言葉を言われつつも飛行機はドイツに向かっていった。

 

 


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