ミュンヘン空港から鉄道に乗り換え1時間。思いのほか早く、綾斗達は紗夜の家とたどり着いた。とはいえ、時刻は夕刻を過ぎ、日が暮れかけていた。今日はこのまま家に泊めてもらうことになっている。
紗夜の家はミュンヘン郊外の一軒家で、二階建てだ。レンガ造りの古民家を改装したもののようだ。
にしても、冬のドイツの南部の気温は低く、雪も積もっており寒かった。
「――ただいま」
「おや、ようやくおかえりかい、馬鹿娘」
先頭に立つ紗夜がセンサーとロックを解除してドアを開けると、斑鳩と綾斗達を出迎えてくれたのは紗夜の母親――香夜だった。シガレットタイプの電子タバコをくわえ、頭の後ろで髪を纏めていた。
「香夜さん、お久しぶりです」
「あぁ、久しぶりだね、綾斗いい男になってきたじゃないか」
屈託のない笑みを浮かべる香夜さん。
「沙々宮夫人、本日はお世話になります」
「ごていねいにどーも、星導舘の生徒会長さんだね?」
「はい、クローディア・エンフィールドと申します」
「あ、あのわたしは――」
クローディアに続いて綺凛が挨拶しようとするが
「まぁまぁ、そんなとこで立ち話はなんだろう、とにかく中へ入りなさい」
「はい、失礼します」
香夜の隣に半透明の男性が現れる。それに驚く綺凛。
「こーら創一さん、いきなり出て来られたら驚くでしょうが」
「おお、すまんすまん、こっちからは見えていたから、ついな」
香夜ににらまれ頭をかく男性。
「まあ、創一さんの言う通りこんなところで立ち話もなんだ、とりあえず入って入って、大したもんじゃないけど、晩御飯も用意してあるから」
それから、香夜に案内されリビングに通されると中央に置かれたテーブルの上には料理が並んでいた。
「普段は自分の食べるぶんだけしか作らないからね、久しぶりに腕を振るう機会が出来て嬉しかったよ、ほら、座った座った」
香夜さんに促されテーブルに着く。そして、ユリス、綺凛、斑鳩の順で自己紹介していき、そして斑鳩の番になった。
「棗斑鳩です、紗夜さんには大変お世話になりました」
かしこまって挨拶をする斑鳩。流石にこういう場では普段のは出せない。
「あはは、そんなかしこまらなくていいよ、むしろうちの子が迷惑かけなかったかい?」
「い、いえ、そんな…・!」
首を振る斑鳩。
「こういっちゃなんだけど、まさか優勝するとは思ってもなかったからねぇ」
「ふふん、わしは信じておったがな」
「創一さんは親バカなだけでしょ、もう」
どうやら、この夫婦の中はよさそうだ。
「ま、なんにせよおかげでわしのところもあちこちの研究所や企業からオファーが殺到してな、実にいい気分だわい、ま、全部断ってやったがの」
「断ったって……どうしてですか?」
「わしは、儂の作った煌式武装が評価されればそれで十分なのだよ、無論、生活していくのに金は必要だが、さしあたっては今はさほど困窮しているけでもない」
「確か、沙々宮先生は銀河の研究施設に開発協力として参加してくださっているのでしたね」
「ほぅ、よく知っておるの」
彼女の言葉に目を見張る創一。
「そういえば、創一おじさん、この家にも研究室はあるんでしょう?」
「あぁ、地下にどーんとな、日本の家にのそれとは比べ物にももにならんくらいの設備を整えてやったわい、わしの本体もそこにあるし、こうしている今もファクトリーはかどうしておるぞ」
「……お父さんはそこに自己の補償金を全部つぎ込んだ」
やれやれと言わんばかりの紗夜。それからほどなくして賑やかな食事が始まる。
「(こういうのもいいものだ…)」
香夜さんの作る和食はどこから懐かしさを覚える味だった。自然と頬を緩めながら、その味をかみしめていた。
「さて、それじゃあ部屋の方に案内しようか」
「一応、二階に来客用の部屋が二つ空いているから、そこを解かってもらおうと思っているんだけど、各部屋二人ずつで大丈夫かい?」
「はい、問題ありません」
僅かに眉を寄せながら言う香夜さん。
「ただねぇ、部屋割りはどうする?紗夜は自分の部屋を使うからいいとしても・・・」
「部屋割り?」
そして、何かに気付く4人組。
「なるほど、でしたら、綾斗は私と一緒の部屋ということで~」
「なっ!?ちょっと待てクローディア!い、いきなり何を言い出す!?」
「わ、私も綾斗先輩を信じてます!」
と面倒な事になり始める。確かにこの先を見てみたいところもあるが、一応明日もあるので
「俺と綾斗で相部屋ですよね?」
というと、"ですよね~"といった表情で見る女子四人組が其処にいた。
なんでアニメで沙々宮家の回が飛んでいるんだ・・・(噴