ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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予感的中-凱旋パレード

「それじゃまあ、気を付けてな」

翌朝、門前前までに見送りに来た香夜さんは、紗夜の頭をぐりぐりと撫でながら、やさしい顔でそういった。

 

「……うん」

はにかみながらうなずく紗夜。今日も晴れているが寒い。

 

「おお、そうだ、一応報告しておこう、昨夜の侵入者だが、センサーのデータを見る限り、どうやら人間ではなかったようだぞ」

 

「人間じゃないって、だったら一体何だったんですか?」

「野生動物かなにかのようだのう、そこらの森から出てきたかもしれんな」

ホログラフの創一がいう。

 

「動物ですか・・・」

と待っていた時だった。そこへ大きな黒塗りのリムジンが斑鳩と綾斗達の目の前に止まった。

 

「皆さま、お迎えにあがりました!」

助手席から降りてきたのは、メイド服姿の少女、フローラだった。

 

「相変らず元気だね、フローラちゃん」

「あいっ!それがフローラの取柄ですから!」

と綾斗の声に反応する。

 

「それじゃ、創一おじさん、香夜さん、お世話になりました」

二人に挨拶して斑鳩達は、車に乗り込んだ。そんな中だった。

 

「あ、姫さまと天霧様は後ろの席でお願いします」

「(これはこれは・・・)」

半ば面白くなってきたと思いながら、少しニヤつきながらもすぐに表情を戻した。

 

 

 

 

窓の外の景色は次第に雄大な雪山い変わっていく。

 

「(さすがに、平野部と違い積雪の量も多いな…)」

と思いながら、外の風景を見ていると

 

「あ、そろそろ首都ストレルが見えてきますよ!」

助手席に座ったフローラが振り向いていう。どうやら国境を抜けたみたいだ。そして、視線を向けると、山々に囲まれた湖の畔に想像以上の大きな街が広がっていた。

 

「(まさに欧州といったところか)」

視線の先にはレンガと木で作られた古い家々が連なっている。

 

「ここがリーゼルタニアの首都ストレルですか・・・綺麗な街ですねぇ」

うっとりした顔で綺凛がつぶやく。

 

「まぁ、別段なにがあるというわけでもないがな……ん?」

ユリスが不意に眉をひそめた。

 

「どうかしたか?」

「いや、王宮に行くのならこの道は遠回りに……どういうことだ、フローラ?」

「えっと、これも陛下から仰せつかってますので」

「兄上から?」

「あい、ちょっと待っててくださいね」

そういうとフローラは目を取り出し、それを広げていく。同時に、車は速度が落ちている。

 

「(あっ…これは…)」

狙いが見えてくる斑鳩。まさかという感じだが

 

「……なんか、大勢人がいるっぽい?」

紗夜がつぶやく。

 

「えーと、『せっかく帰って来たんだから、ついでに凱旋パレードをよろしく』だそうです」

「なっ……!?」

腰を浮かせるユリス。

 

「おっ、当たったなユリス」

「お、おまえ…」

してやったりといった顔の斑鳩。そして、軽くユリスに小突かれる。

 

「(にしても、これは凄いな…)」

沿道には人が溢れ、皆口々にユリスの名前を叫んでいる。空からは色とりどりの紙吹雪が舞い散り、見上げると、家々やビルの窓から顔を出した人が、手を振りながらそれを撒いている。ふと見てみると、そこには、ユリスの写真と共に、凱旋が告知されている。

 

 

「ユリス、あれ」

「なっ、くぅ、兄上め!覚えていろ……!」

悪態をつきつつも、造り笑顔を浮かべて窓に向き直る。

 

「(さすが、一国の王女様だこと、観光とか凄いことになっているんだろうな…)」

と窓の方を見ている。

 

「天霧様!棗様、沙々宮様!」

「ん?」

ふと名前を呼ばれ、顔を上げるとフローラがこっちをじれったそうに見つめていた。

 

「もしよろしければお三方も応えてあげてください、姫様みたいに」

「「ああ、うん、ってお、俺も!?」」

綾斗と斑鳩の台詞が被った。

 

「あい!」

「いや、なんで俺まで…」

それを言いたいのは俺もである。綾斗に関してはユリスのタッグパートナーだが、斑鳩はむしろ敵の方だ。

 

「だって、天霧様は姫様のタッグパートナーですし、斑鳩様と沙々宮様も姫さまと熱い戦いを繰り広げたので、今やお二人とも人気なんですよ」

 

「へぇ~」

見ればややぎこちないものであるが、ユリスにしては珍しくいい笑顔だった。綾斗も見よう見まねでしている。斑鳩も外に手を振ってみる。若干むずがゆいところもある。とはいえ、集まった観衆の中には、ユリスの名前だけでなく、綾斗や斑鳩、それに紗夜の名前を呼ぶ者もいた。

少し照れくさくなる斑鳩でもあった。

 


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