ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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白天疾駆

「ご紹介しましょう、我が作品、オルトロスとケルベロスです、どうですかな?神話に伝わる通りの雄姿でしょう?かつて、星猟警備隊の猛者たちをことごとく血祭りに上げた愛しき番犬……まぁ、さすがに警備隊長殿には、敵いませんでしたがね」

残念そうに語るギュスターヴだ。斑鳩は、一気に翔けだしていく。

 

「それでも当時からは随分と――」

斑鳩は、ギュスターヴの話を聞かず、動き出す。その手には、既にエリュシデータが握られている。斑鳩は剣を青白い残光と共に4連続で振るう。

 

『ガァアアアアアアアァァァァァァッ!!』

「何っ!?」

断末魔の絶叫と共に、一瞬の間に三つ首と双頭の首がはじけ飛ぶ。斑鳩は、剣を構えて視線をギュスターヴに向ける。

 

「…さすがは、《鳳凰星武祭》のチャンプだけでありますな」

「そういうことだ、さて、この場にクローディアが来ているが、お前はどうするんだ――お抱えの魔獣は消えているが…」

「…やれやれ、不愉快なほどに聡い輩だ、どうやら、依頼を完遂するには、まずはお前から消さなければならないようだ――棗斑鳩」

苦々しい顔で、あちらもこちらを射貫くように見てくる。

そういうと、再び魔法陣が現れ光を放ち、触手のような蛇の首が現れ出でる。四足歩行の恐竜のような体躯から九つの蛇の首が生えたその怪物は、誇張でもなく小山ほどある。そして、その周囲に竜牙兵が現れる。

 

 

 

「ヒュドラに竜牙兵(ドラゴンとワーストウォーリアー)か」

まるでくだらないといったように言う斑鳩。

 

「まさしくその通りですよ、棗斑鳩――神話に書かれた通りの――いや、それ以上に雄々しく凛々しい姿でしょう?三年がかりで創り上げた究極の魔獣です」

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」

空気を震わせ、九つの首が同時に咆哮をあげる。

ユリスと綾斗は身構えるが、斑鳩がそれを静止する。

 

「斑鳩?」

「綾斗、ユリス、二人は、万が一のことが無いように孤児院と貧民街を守れ、こいつは俺がやる」

「どういうことだ?」

「考えてみろ、こいつの目的は《獅鷲星武祭》を考えた時に二人の存在は厄介になることでの襲撃だ、ってことは、背後にいるのは統合企業財体、ユリスにこういうのは悪いが、この町が市街地で重要施設があるのなら、いざしも、貧民街と孤児院のここのエリアは、思う存分暴れられるエリアってことになるだろ」

押し黙ったまま唇を噛むユリス。

 

「そういうことだ、綾斗と二人で護れ、いいな?」

「あぁ、わかった、だが、お前は――」

「何言ってんのよ?私もいるわユリス、行きなさい」

オーフェリアが一歩前に出てくる。その手には、剣が一本握られている。

 

「これはこれは…《絶天》に《孤毒の魔女》のタッグですか」

「――そうね、ほれぼれするかしら?」

挑戦的な笑みを浮かべていうオーフェリア。とはいえ、ここに思い入れがあるらしく、怒りをにじませている。二人の視線の先には、竜牙兵とヒュドラ。流し目で軽くこちらを一瞥するオーフェリア。

 

「(言葉は不要か――)」

一陣の風が吹き、二人のその白い髪がお互い風になびく。それが雪原と相まって、何とも言えない幻想的な光景になっている。そして、綾斗とユリスは二人を一瞥し走りだす。

 

「(この感覚…久しぶりだな――)

心の底からあの時の死地の感覚がじわじわと思い出されていく。目の前には巨大な怪物。だが、不思議と今は恐れはない。そんな中、ヒュドラの咆哮と共に三つの首が斑鳩に向かって光線を放ってくる。

斑鳩は、それを魔力障壁を張ってそれを弾く。そして、それが開戦の合図のように無数の竜牙兵が武器を掲げて動き出す。斑鳩とオーフェリアもそれに合わせて動き出す。

竜牙兵とヒュドラ、そして斑鳩の両者の距離が近づくにつれ、脳の中で冷たい火花がスパークするような感覚が襲う。同時に久しく感じていなかったアクセル感が戻ってくる。

 

 

 

 

「――!!」

斑鳩は竜牙兵に向かって剣を思いっきり打ち下ろす。そして、竜牙兵の剣がぶつかり合う。

単調な動きの竜牙兵の懐に入り、エリュシデータの首もとにあてがい、一刀両断する。

斑鳩は、ヒュドラに向けて猛然とダッシュする。そして、斑鳩の進路を阻むように攻撃してくる竜牙兵。

自分の攻撃に全神経を傾ける。

斑鳩は、赤い光芒と共に剣による強力な突きを繰り出すウォーバルストライクを繰り出し、目の前の竜牙兵を突き飛ばす。そして、その脇から出てきた竜牙兵が、曲刀を振り下ろしてくる。それを両手の剣を×印のように交差させ相手の攻撃を受け止めるクロスブックで受け止め、そこに空いた左腕で、零距離で相手にイエローに輝いた腕で貫き手を繰り出すエンブレイザーを繰り出す。

 

 

「ガアアアアッ!!」

竜牙兵の断末魔が雪原に木霊する。

斑鳩の隣ではオーフェリアが星辰力を剣に纏わせ半ばレイザーブレードのような伸縮自在の剣を操り、

竜牙兵を蹂躙していく。しかも剣技は並の剣士を越えた速度だ。

二人で瞳を見交わすだけで、意思疎通し、斑鳩とオーフェリアは完ぺきに同調した動きで竜牙兵をなぎ倒していく。そんな中、一気に四体の竜牙兵が翔けている斑鳩に襲い掛かってくる。

斑鳩は、剣を青白い残光と共に4連続で振るう技バーチカルアークを繰り出し、そこから炎をまとわせた剣による5連続突き、斬り下ろし、斬り上げ、最後に全力の上段斬りを繰り出すコンビネーション業であるハウンリングオクターブを繰り出した。

 

 

「そこをどけぇぇぇ!!」

見れば周囲を取り囲んでいるヒュドラは全てなぎ倒されている。ここに来るまで5分もかかっていない。

斑鳩とオーフェリアはヒュドラに翔けた。

 


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