ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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戦のあとの一杯

 

「――お、おじゃまします」

「どうぞ~」

オーフェリアの提案で、彼女の家に案内され中に入る。

 

「広いな」

どう見ても平均を上回る広さの家だ。この家に彼女一人だけなんて信じられない。

そんな中

 

「ほら、その格好だと堅苦しいから、これに着替えてちょうだい」

投げ渡されたのは、半そでと半ズボン。

 

「いいのか?」

「えぇ、別に」

それがどうしたと言わんばかりの表情のオーフェリア。もはや、斑鳩を家族の一員でしか見ていないようだ。

うれしいやらもどかしいやら少し複雑な斑鳩。それから、オーフェリアに渡された服に着替える。

 

「(これもこれで心地いいな)」

妙な解放感に包まれる斑鳩。かなり気分が軽くなる。あの世界での夏を思い出す解放感だ。

 

「(そういや、この世界にも夏はあるんだよな・・・)」

あの時は感じる暇もなかったが、今は季節を感じることができる。それからリビングに戻ると、オーフェリアが戻ってきた。

 

「あっ、着替え終わったんだ?きつくない?」

「あぁ、特に」

「じゃああげる」

「へっ?」

「いやね~その服、少し胸元がきつくなっちゃって、買ったはいいものの落ち着かないのよ」

紗夜が聞いたら発狂しかねない言葉だ。にしても、オーフェリアはそういうものの、彼女の格好はジャージに眼鏡というこれまた女性らしさが消えた地味な服装だ。

 

「そっか、んじゃあ、ありがたくいただいておくよ」

「あっ、脱ぎたてがよかった?」

「いんや、俺にそういう趣味はないさ」

「ちぇ、残念」

残念がられても困る。

 

「斑鳩、なんか飲む?」

「なんでもいいよ?しいて言えばコーヒープリーズ」

「んじゃあ、作って漁っていいから」

そういうと、ソファーに座り込むオーフェリア。

 

「いいの、冷蔵庫漁っても?」

「どうせ、数年後共用になるんだし、いいわよ、あ、ロクなものないからね?」

「そんな、まさかな――って、マジでない」

開けてビックリ玉手箱とはこのことだ。びっくりするほどろくなものがない。とはいえ、かろうじてコーヒーはあったので、コーヒーを手間をかけて作る

 

「はい、オーフェリア」

「ありがと」

斑鳩はサイドテーブルにカップを置き、彼女の隣に腰を下ろす。

 

「うん、おいしい」

オーフェリアがニッコリとほほ笑む。賞賛に他言は不要とはこのことだろう。

そして、二口目を含み満足げな顔を伺いみて、斑鳩は自分のカップに口をつける。

自然というわけではないが、二人とも会話がない。無言の状態が続いて間が悪い思いをすることもなかった二人であった。


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