学園祭初日―
学園祭初日の今日は晴天に恵まれ、その甲斐もあってか、学園祭の盛況は凄まじいものだった。
「(まぁ、やっぱり人がいるよね――)」
今座っているベンチが面している遊歩道も星導館の敷地の外にあるのだが、普段あまり人のいないことの通りも、行き交う人の姿は絶えない。
「(あの地獄よりましか・・・)」
正門から校舎群へ続くあたりの混雑に比べればましな方だ。そんな中だった。
「待たせたわね、斑鳩」
ふいに名前を呼ばれて視線を上げると、そこには、堂々と顔をした紗夜と申し訳なさそうな顔と状況がイマイチ把握できていないような顔の綺凛、さらに保護者のような風格をだしているオーフェリアがそこにいた。
「いや、時間通りだが――」
斑鳩は二人に目をやると
「ん、二人がどうかしたの?あぁ、綺凛ちゃんはなんか不機嫌そうだったし、紗夜ちゃんは迷子になりそうだったので、拉致って来たわ」
「拉致ったの!?」
「そう、拉致られた」
にこやかな顔のオーフェリアにどや顔の紗夜。にしても最近行動が大胆になってきた気がする。
「それで、変装したっていっても、イメチェンしすぎじゃない?」
「学生服よりかはマシでしょ、というか、あれ胸元も多少きついのよね」
隣の紗夜にクリティカルヒット。というか、シンプルな服装はいい意味でよく似合っている。
「まぁ、似合っているからいいと思うぞ」
「そう、それはありがとう、んじゃあ、行きましょうか」
「えぇ、ちゃんとエスコートしてよ?」
するりと腕を絡ませ、上目遣いにこちらの顔を覗き込んでくる彼女に、思わずドキリとする。
「んで、どーする?」
「まぁ、いろいろと見て回りたいってところね、ふたりはどう?」
「目指せ全学園制覇」
「お、おぉ~」
紗夜の言葉に驚く綺凛。
「おいおい、まさか六学園全部を?」
「もちろん、今日一日にじゃないよ?三日くらいね~」
のんびり行けるか否かということだ。どおりで早かったわけだ。三人で遊歩道を歩いていく。一応、三人とも軽く変装しているものの、やはり目立っている。
「あ、そうだ、斑鳩もそうだけど見て回りたいイベントかあるなら、言ってよね?付き合うんだから」
満面の笑みで言うオーフェリア。先ほどからドキドキしっぱなしだ。
「わかったよ、オーフェリア」
「オッケー、わかった」
「よ、よろしくお願いします」
上から斑鳩、紗夜に綺凛ちゃんだ。それから三人は歩いていき、中等部校舎の裏辺りに差し掛かる。
「へぇ~ここいら辺も賑わっているな」
校舎の中に入れないが、校舎群を取り巻くようにずらりと出店が並んでいる。そんな中、突如オーフェリアが足を止めた。視線はすぐ近くの出店に向けられているようだ。
「お兄さん、4つ頂戴」
「あいよー」
オーフェリアが店員にそう声をかけると、すぐにアイスクリームが出てきた。
「はい、綺凛ちゃん、それに紗夜も」
まず二人に渡し。
「はい、斑鳩」
「ありがとう、にしても、なんでアイス?」
「こういう時はアイスクリームがつきものなのよ、正確にはジェラートなんだけどね~」
と古い映画になぞらえているみたいだ。歩いていると、前の方から大音量の歌が流れている。見れば、巨大な空間スクリーンが、多角展開されている。どうやらシリウスドームで行われているライブを中継しているみたいだ。
「へぇー、ライブ中継なんてやっているんだ」
「ちなみに、今歌っているのルサ―ルカのメンバーよ?」
空間スクリーンに映し出されている少女を見上げている斑鳩に言うオーフェリア。
「彼女らが、俺らの一応の相手ってわけね…」
と将来の相手を見定めつつもアイスを食べる斑鳩。
それから三人で他愛のない会話をしながら、星導館の周囲を歩いて見ていると今度は紗夜がその足を止めた。
「斑鳩、オーフェリア、あれに出たい」
紗夜の視線と指の先には水泳部と射撃部が屋内プールで共同開催しているイベントで
『ウォーターサバイバル』なるイベントの告知だった。
「『ウォーターサバイバル』、あれに?」
「うん」
コクリとうなずく紗夜。
「なんか面白そうじゃない斑鳩、行ってみれば?」
「だな、体を動かすイベントも面白そうだし、行こうか」
「うん、いこう」
そういうと斑鳩は、屋内プールに向かった。