ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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グラン・コロッセオと万有天羅

5日目――

 

斑鳩は、綾斗が出るグランコロッセオというイベントを見るのととある呼び出しのために、界龍第七学院に出向いていた。

 

「(にしても、学生数が多いっていうのもあるが、界龍はやっぱり雰囲気が違うな」

とその活気を後目に歩いていく。相変わらず手元の地図を見ないと迷うことこの上ないところだ。

視線の先の大きな広場では、屋台と同時に、巨大な龍の人形を複数人が操りながら踊っており、その周りには人だかりができている。また反対側では刃物を持った大男が曲芸をこなし、喝さいを浴びていた。

そして、あちらこちらで賑やかな音が鳴り響き、常にどこからか賑やかな音色が流れてくる。同時に、界龍には、六学園で唯一の初等部を持つため、楽しそうに走り回る子供の姿も見られた。

 

「(にしても、良くも悪くもまとまりがないとはこういうことか)」

それから道場らしき広間を覗いてみると、数十人の学生が一糸乱れる演武を行っている。

 

「(まぁ、レベルは高いってところか――)」

界龍が星武祭の成績で常に上位を維持している理由がわかる。それから回廊を歩き続けていると、突如、辺り一帯の万応素が蠢く。同時に、周囲の景色がぐにゃりとねじれる。

 

「――ずいぶんと手荒なやり方ですが、騒ぎになると面倒ですもんね」

「ほほぅ、わかっておるではないか」

柱の陰から現れたのは、髪を蝶の羽のように結い上げた童女。

 

「お久しぶり、星露」

「おう、久しぶりじゃな」

万有天羅(なんでもあり)だけあって、いきなりの縮地術とは、恐れ入ったよ」

「…その呼ばれかたはどうかと思うが…まぁよい、遅くなったが我が界龍にようこそ、にしてもおぬしはどうしたんじゃ?」

「どうしたも何も、これを送ってきたのは星露だろ?」

そういうと携帯端末のメッセージを見せる斑鳩。そこにつづられていたのは、ここに来いということだ。

 

「ほほほ、そうじゃったなぁ、そのメッセージを送ったのはいかにも童じゃ」

「んで、どうすればいいんだ?」

「ま、今日ばかりは私と一緒に頼む、乱入があるかもわからんからな」

「確か、グラン・コロッセオの主催としてということか?」

「如何にも、頼むぞ」

「はいよ」

星露を軽く見る斑鳩。見ればいつの間にか、星露が肩に乗っていた。

 

 

 

 

シリウスドームの特別観戦席で、斑鳩と星露は、第一フェイズを見ていた。

「んで、あれが星露の言っている玩具ってやつか?」

「まぁ、そうじゃな、確かアルルカントの者が煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)と言ったのぅ」

観戦室のモニターには、光の刃を煌かせた剣型の端末と大型の銃型の端末がそれぞれ半々、空中でぴたりと止まっていた。その数は百を下らない。

 

煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)――そういや、こっちとなんか共同研究していたな」

「ほぅ、星導館とか、お主使わぬのか?」

「使わないね、馴染んだのが一番いい」

眼下では、綾斗とシルヴィア、それに聖ガラードワース学園の生徒会長≪聖騎士≫がフェイズ1をクリアしていた。

 

「お、次のが出てきたな」

「あれは、戦闘用外骨格(パワードスーツ)じゃな」

「あれが、パワードスーツねぇ・・・」

視線の先には重厚で堅牢な装甲に包まれたその巨体。どことなくあのアルディに似ているが、全体的なフォルムは太くて無骨だ。そして、第二フェーズが始まる。今度は、先ほどのルールと逆でよければいいという単純なルールだった。

 

「(ほぅ、予想に反して早いじゃないか)」

もっと鈍重そうな動きを想像していたのだが、それを遥に越えるスピードだった。

そして、綾斗と≪聖騎士≫のアーネスト、そしてシルヴィアが相手を圧倒していっている。その直後だった。

 

「ば、馬鹿な!ありえん!こんな、、こんなことが……!」

隣の席で声を挙げたのは、グラン・コロッセオの統括運営本部長でもあるアルルカント・アカデミー≪獅子派≫副会長ナルシス・ペロウであった。

 

「ほほぅ、中々見事な茶番であったのう、まぁ、あんな不格好な玩具ではあの程度が関

の山じゃろうて」

ナルシスの隣の席で笑う星露。それをにらみつけるナルシス。

 

「しかし残念じゃったな、本部長殿、ご自慢の玩具は哀れ全滅じゃ」

「そんな…そんなはずはない!俺の戦闘用外骨格は、エルネスタの人形なんかよりもずっと優れている――」

斑鳩は、何も言わずにナルシスの目の前に剣を突き立てた。

 

「――おい、貴様」

ゆっくりと駆け寄り彼の胸倉をつかむ。

 

「今、なんていった?」

「な、なにをするんだ、貴様!?」

凄みのある斑鳩の気迫と突如のことに動揺しているナルシス。まさか、怒るとは思ってもいなかったからだ。そして、あまりの恐怖に会話が成立していない。

 

「ご自慢の戦闘用外骨格(パワードスーツ)が、エルネスタのRM-CとAR-Dに劣るだと?」

 

「そ、そうだ!人形に自我を持たせるなどという不合理――」

と話したとき、ナルシスは斑鳩の手がどこに向けられているのか気づいた。見れば、戦闘用外骨格の上には無数の光の槍がその照準を戦闘用外骨格に向けていた。

 

「お前の自慢はわかる――なら、エルネスタのリムシィとアルディの攻撃を受けきった、俺の攻撃を受けても壊れないよな?」

「あ、あぁ――そうだ!戦闘用外骨格は、優れているんだ!」

といった直後、槍と同時に極太のレーザー光線が戦闘用外骨格に降り注いだ。

 


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