それから二人によるレクチャーが終わり
「ということさ、だから今朝のは流星闘技なんてたいそれたものじゃないよ、ただの剣術さ」
「唯の、剣技だと……?」
ユリスの瞳が見開かれる。
「…確かに煌式武装の刀身ならば、私の焔を斬ること自体は不可能ではない。だがあそこまで見事迄切り裂かれたのは初めてだぞ、おまえ、どんな腕をしている」
「ま、たまたまさ」
「たまたまだよ」
そういう斑鳩。そんな中綾斗が頭をかきながら聞いてきた。
「そういうユリスはなんでそんな危ないところで戦っているの?」
「なに?」
「あぁ、それは知りたいな、ユリスお前は何を望んで戦っている?」
斑鳩はさらっと踏み込んだことを問う。
「金だ」
「…え?」
「(単純明快だな)」
「私には金が必要なのだ、そのためにはここで闘うのが一番手っ取り早い」
どうやらのっぴきならぬ理由があるらしい。
「あまり時間の余裕もなくてな、区切りもいいし、今シーズンの《星武祭》を全て制覇する、それが私の目標だ」
「三つの《星武祭》を全部って……」
斑鳩には分からないが、どうやらかなり難しいことらしい。
「ああ、手始めは《鳳凰星武祭》だ、最低でもここは押さえておかねばならん」
「……」
綾とは何かを聞きたそうだが、それを辞めたみたいだ。
「それで、パートナーというわけか…」
呟くようにいう斑鳩。
「う……まあ、そうなるな」
「ちなみに、準優勝でも金はもらえるのか?」
そういったのは斑鳩だった。
「あぁ、優勝には劣るがそれなりにはもらえることになっている」
「そうか、なら、面白そうだな」
「…?」
「ま、相方探しは頑張ってくれ――綾斗、俺は先に戻るぞ」
「お、おう」
そういうと、斑鳩は鞄を持って自分の尞に戻ることになった。
「(あの目は…『なすべきこと』決めた眼か…)」
学生寮の屋上の一角で、ポケットに手を入れながら斑鳩は一日を振り返ると共に、そんなことを想っていた。
「(…この世界で何もすることのなけりゃ…自分のすることが見つかるまで"助けて"やるか、これも何かの縁だな)」
そう思いながら指を鳴らす斑鳩。すると、手元にはエリュシデータが現れる。そしてもう一回、指を鳴らすと、今度は紅蓮のような真っ赤な刀身の剣が現れる。その剣の刀身に刻まれた文字はスカーレッド・ファブニールと銘描かれていた。
翌日――
斑鳩は、朝食を終え教室の扉を開き、席に向かう。
「おはようユリス」
「…ああ、おはよう」
真後ろの知り合いに軽く声を掛けると、頬杖をついたままのユリスが短く返してくる。どうやら斜め後ろの友はちょうど今といったところみたいだ。見れば、昨日の空白であった綾斗の左の席が埋まっている。見れば、青みがかかった綺麗な髪の女の子が思いっきり突っ伏していた。
「(あさ、弱いのか?)」
現実世界の自分をほうふつとさせる行動だ。そんな中
「おはよう、お隣さん。えっと、俺は昨日この学園に転入してきた天霧――え?」
「(ん?)」
綾斗が声を止めた。
「さ、紗夜?」
当の女子は無表情だが、やがて小さく首をかしげてつぶやいた。
「……綾斗?」
「えええっ?な、なんで紗夜がここに!?」
心底驚いていることから知り合いみたいだ。
「(まさか、これって幼馴染展開じゃないだろうな……?)」
と思っていると、英士郎が身を乗り出してきた。
「なんだなんだ、おまえら知り合いなのかよ?」
「ああ、うん、古い友人というか…まあ、いわゆる幼馴染ってやつかな」
「(幼馴染展開かよ!?)」
余りにもできすぎた展開に、思わず目の前の机をたたき割りたくなるがその衝動は押さえる斑鳩であった。