ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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狂音競争曲

「いよいよ、第一回戦!東ゲートからは星導館チームの入場です!」

新しくなった入場ゲートの扉が開き、解説のハイテンションな声にあおられた歓声が空気を震わせる。

オーフェリアを先頭にその道を進んでいく。

 

「そして、その対戦相手は、世界的ガールズロックバンド、チーム・ルサールカとこれまた世界の歌姫シルヴィア・リューネハイムが代表を務める、クインヴェール女学園チームだぁぁぁあ!!」

反対側のゲートからルサ―ルカとシルヴィアが笑顔で歩みを進めてくる。試合前とは思えないほど悠然としている。両チームのメンバー解説されていく中、お互いステージへと降り、所定の開始位置まで進み出る。

相手のチームのシルヴィアが、こちらのチームの先頭を見た瞬間に表情を変える。

 

「…まさか、こんな形であなたと相手することが出来るなんて、このイベントに感謝しないといけないようね」

いつもと違い全身に闘気を滲ませているシルヴィア。その姿は、世界の歌姫シルヴィア・リューネハイムではなく、戦律の魔女(シグルドリーヴァ)そのものだ。

斑鳩は、彼女の目的を悟り軽く牽制するように出ようとするがオーフェリアが逆にそれを牽制するように一歩前に出る。

 

「こっちも、この状態で貴方と戦えるだなんて、思ってもいなかったわ」

と言い放つオーフェリア。その姿は、気丈に振る舞っているように傍から見ればわかるが、今すぐにでもゴーサインが出れば飛び出しかねないほど気分が高ぶっているみたいだ。

「オーフェリア、加勢するか?」

斑鳩とユリスがオーフェリアに軽く視線を送る。

 

「大丈夫よ、斑鳩、それにユリスも」

淡々と、しかし、相手の一挙手一投足を確実にとらえながら言うオーフェリア。その眼は、あの可愛らしいオーフェリアではなく、もはや目に鬼が宿っている。

「ミルシェ、パイヴィ、モニカ、トゥーリア、それにマフレナ、オーフェリアとはサシでやらせて頂戴?」

「…ま、そういうならどうぞ」

ミルシェが少し呆れたようにいう。

 

「んじゃあ、それ以外のメンバーは私たちでやっちゃうね」

「えぇ、お願い」

シルヴィアが親指でこっちから離れたところを指し示す。そして、オーフェリアとシルヴィアは、互いにチームから距離を取り、ステージを挟んで二分される。

 

「さーて、そちらさんには悪いけど、番狂わせさせてもらおーじゃんか」

ギター型の純星煌式武装(オーガルクス)を肩に背負い、にやりと挑発的に笑うミルシェ。

「生憎、こちらも負ける気概はない」

「ふーん、そっか、まあ、いいや、どっちにしろ、勝つのはあたしたちだかんね!」

苛烈な炎を宿す両チーム。同じタイミングで踵を返し、定位置に戻る。

こちらの陣形は、オーフェリアがいないが、最前列に綾斗と綺凛、そして遊撃のユリスとクローディア、そして後衛の紗夜だ。

 

『――そろそろ開始時間が迫ってまいりました!お互いに準備は万全といった佇まい!果たして、勝利を勝ち取るのはどちらのチームになるのでしょうか!』

興奮を隠しきれない解説の声と被るように機械音声の宣告が響いた。

六花祭(バトル・オブ・アスタリスク)第一回戦第一試合、試合開始!」

途端に、それら全ての音を吹き飛ばし塗りつぶすような、凶悪な重低音と爆発がステージを駆け抜ける。

 

「――っ!?」

宣誓攻撃を仕掛けようとしていた綾斗。だが、その重苦しい衝撃に思わず膝をつきそうになったのだが

 

「(これはまた…想定していた以上にというところか)」

斑鳩は特に何も感じず平然と立っている。視線の先には、モニカの純星煌式武装(オーガルクス)

 

「(重低音による集中力への影響か、確かに綾斗に対しては絶大だが――生憎そんなことなど関係ないんだよ!)」

そういいながら、重低音の中を駆け抜けていく。

 

「っと、まずい!」

直後、ミルシェとトゥーリアの動きが変わる。視線の先には綾斗がいる。

 

「(目的は綾斗だな――)」

直角ターンで向きを強制的に変え、綾斗を抱えて空を飛ぶ。同時に、破砕振動波が襲い、空気が震え、綾斗が直前までたっていた地面が大きくえぐられる。

 

「悪いが今回は初っ端から全力だ!」

「はっはー!オレたちのサウンドに酔いしれな!」

直後、最後列にいるマフレナの指が空間投射キーボードの上で踊ると、その周囲に無数の光弾が出現し、こちらめがけて高速で放たれる。そんな中だった。

 

「援護します!」

「あぁ、咲き誇れ――赤円の灼斬花(リビングソトンデイジー)!」

綺凛が前に出てくる。綺凛の千羽斬は深紅色の光が輝いている。

 

「(まさか――ッ!?)」

その動きに注視する斑鳩。直後、綺凛は斑鳩の予想通りの7連撃を繰り出し、文字通りあのデッドリー・シンズを繰り出し、ものの見事に彼女の攻撃を文字通り"叩き斬った"。

その行動に思わず会場がどよめき立つ。

 

「(ここまで頼もしくなるとわな――)」

 

フフフと笑いながら意識をルサ―ルカに向けた。

 

 

 


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