斑鳩は、炎の檻から出ていたモニカをとらえていた。だが
「あっまーい!」
体勢を立て直していないモニカへの攻撃は、割って入ったミルシェに止められていた。だが、これもわかっていたことだ。
「――ッ!?」
空中に浮いている状態のマフレナに向かって、バーチカル・スクエアを叩き込む。とっさにギターでガードするが距離と空中だったことで、吹き飛ばされる。
「あんまりモニカを舐めない――!?」
その状態でモニカの方を振り向き、すぐに体勢を立て直していたモニカに向かう。そして、一気に剣を振り上げると動作を見せる。そして、モニカは案の定を上からの攻撃に反射的に守ろうとしたのだが――
「えっ!?」
同時に、斑鳩の背後からうねるようにほとばしった光の矢がモニカの校章を打ち砕いていた。斑鳩のライトニング・アローだ。
『モニカ、校章破損!』
機械音声がモニカの敗北を告げる。
「そ、そんなあ」
半泣きでへたり込むモニカ。これで『阻害弱体化』の効果はここまでだ。
「皆さん、一度陣形を組みなおします、戻ってください……!」
「そうは言ったってよぉ!」
モニカが退場したことによって、少なからず押されていた戦競は変わった。
「(さて、パイヴィの音圧防壁をどうするかだが…)」
「咲き誇れ――
とはいえ、こっちもユリスの援護が復活している。斑鳩は後ろにいる龍の熱気を感じながら、再び剣を握る。見れば、綺凛もミルシェを押し込んでいる。
「――舐めるなよ、≪叢雲≫!」
綾斗の方に、トゥーリアが行く。そんな中だった。
「マフレナ!!」
「はい!」
刹那、ミルシェの叫びに応えるかのように、マフレナのキーボードが力強くも美しい音量度大音量で奏でる。同時に、ミルシェの瞳に紺碧の炎が燃え上がる。
「(ここにきての『活性強化』か!?)」
即座に理解する斑鳩。スイッチ形式で綾斗と紗夜が入れ替わり、斑鳩はすぐに駆け出す。
しかも、マフレナの速度は尋常なものではなかった。
「まずは一人!これで終わりだぁあああ!」
紺碧の軌跡が綺凛に向けて煌めく。だが、綺凛はいたって冷静だ。斑鳩が後ろから、シングルシュートで綺凛に向けて剣を投げ込む。そして、ミルシェの攻撃を千羽鶴をパージすることでその一撃をかわし、後ろから飛んできたそれを受け取る。それにミルシェの目が驚愕に染まった。そして、綺凛にこたえるようにジェットエンジンのような爆音と共に赤い光芒と共に剣による強力な突きを繰り出した。
綺凛自身も驚くほどの剣が滑らかに滑り――
『ミルシェ、校章破損――試合終了!勝者!星導館チーム!』
機械音声が結果を告げていた。
「あら、負けちゃったみたいね――」
「これはお預けってわけね…」
あまり気にしたくない二人がいた。
「ふぃ~」
一回戦を終え、斑鳩と綾斗は、控室に戻っていた。綾斗は部屋に戻るなり、ベットに倒れこんだ。
「お疲れさん、綾斗」
「そっちもね」
とはいえ、今回大健闘したのは綺凛ともいえるだろう。
「お疲れ、綺凛ちゃん」
当の綺凛はオーフェリアにかわいがられていた。ちなみに、控室にはクローディアも来ていた。
「一回戦突破、おめでとうございます」
「ありがとう、クローディア、それで次の対戦相手はどこなんだっけ?」
「はい、次は聖ガラードワース学園のチームとです」
「聖ガラードワース学園、ってことはチームランスロットか」
斑鳩の脳裏を掠めるチームランスロットのメンバー。
「ってことは、過去のを幾つか見たが、どう見ても正面突破しかないだろうな」
「えぇ、斑鳩のいう通り、チームランスロットは、まさしくチーム戦に特化した究極のチームです、個別に秀でた五人の個性を統合して融合させた一つの有機体としてのチーム、それに対抗するにはこちらも下手に小細工するよりもチームでぶつかる他ありません」
「今回ばかりというか、今回はいつも以上にチームを意識する必要性があるな」
「えぇ、もしチームから一人でも突出するようなら、即座にチーム・ランスロットはその一人を飲み込んでしまうでしょう」
斑鳩の呟きにクローディアが大きく頷く。
「ま、望むところだな」
「強気ね、斑鳩」
意外そうに、しかも誇らしげにほほ笑むオーフェリア。
「勝ち目が薄いなら、自分で納得できりような闘いをしたいからな」
「まぁ、そうだな」
「異存はない」
「決まったな」
お互い目線を交わしあい、力強く頷いた。