――シリウスドーム。
「さぁ!六花祭もいよいよ終盤に差し掛かってきました!星導館チームと聖ガラードワースチーム、両チームのメンバーがステージに降り立ちました!さあさあ!六花祭 第二回戦が始まります!」
ステージ上で対峙するのはアーネスト・フェアクロフ率いる、聖ガラードワースチームだ。そのプレッシャーは、並々ならぬものがあった。個人の力量でいえば斑鳩率いる星導館チームも劣ってはいない。とはいえ、視線の先の六人は居揃って並ぶ様は、巨大な山が今にもこちらを押しつぶさんとしてくるように感じられた。
轟音のような大歓声の中、アーネストが前に進み出て右手を差し出してくる。
「生憎、《獅鷲星武祭》ではないが、我々は容赦しないよ」
「えぇ、わかっていますよ」
綾斗の手を取り、握り返すアーネスト。
「――六花祭に相応しい闘いにしようじゃないか」
相変わらずの爽やかな笑顔でいってくるアーネスト。そしてくるりと踵を返し戻ってくる。
そして、試合開始位置につき、その時を待つ。
「――《六花祭》、第二回戦、試合開始!」
試合開始を告げる機械音声をかき消さんばかりの大歓声。同時にガラードワースチームは即座に一糸乱れぬ動きで布陣する。
「さぁ、参りますわよ!」
そういうのは、ガラードワースの副会長レティシア・ブランシャールだ。同時に、巨大な半透明の光が背中から八枚、琥珀で作られた蜘蛛の足のように広がり、こちらに襲い掛かる。が、それをライトニングアローの一斉射出で防ぐ。そして、綾斗とアーネスト。オーフェリアとライオネルがステージの中央でぶつかり合う。
「こうして君と剣を交えることが出来た!この僥倖、神に感謝せねばならないな!」
「ご期待にそえるかどうかはわかりませんよ…!」
綾斗とアーネストがぶつかり合い、斑鳩の攻撃でレティシアの攻撃を防ぐ。アーネストは顔色一つ変えずに、綾斗への援護攻撃を防ぐ。
「綾斗、斑鳩、あれが来る!!」
紗夜が叫んだ。だが、これは斑鳩にとっても待っていたことだった。
「(待ってました!!)」
斑鳩はレティシアの攻撃を全て切り払い、そのうえでパーシヴァルに向けて弱い威力のトルネード・キャノンを撃ち込む。
「ッ!」
その威力の弱さを悟ったのか、必然的にパーシヴァルがトルネード・キャノンを受ける。受けてもダメージはないパーシヴァル。
「棗斑鳩にしてはこの攻撃――」
直後、彼が苦しみ始めるとともにパーシヴァルががくんと足から力が抜けたように体制を崩す。
同時に
「――なにっ!?」
アーネストがいったん引き、体制を立て直す。見ればパーシヴァルの手が震え、のどに何かが詰まっているかのように苦しさを訴えた顔をしていた。
パーシヴァルの
「一体…何を…!?」
レティシアが彼のほうを見る。
「恐らく毒、しかも無味無臭、無色透明の毒ガスと言ったところだろう――とんでもないな、これは」
斑鳩を冷静に見据えるアーネスト。その顔には乾いた笑みしかない。
「ご名答アーネストさん、その毒ガスの効果は星辰力に作用し、強制的に星辰力切れと同じ状態にするものですよ、ま、命を脅かすものではないですけど、星辰力の総量が多いほど効果は高いんでね」
『――パーシヴァル・ガードナー、意識消失、戦闘不能!』
と機械音声が告げる。直後、あちらのチームが残ったメンバーで視線を交わすと同時に、陣形を再び整える。
すると直後、レティシアの光の翼が飛んでくる。
「――ッ!」
危ないところでそれを交わす斑鳩。見れば光の翼をやり過ごしたケヴィンが長剣を突き立ててくる。ユリスはとっさに飛びのき応戦するがケヴィンの巨大な黒い盾にはねつけられる。ユリスの攻撃を往なす様はさすが《黒盾》といったところだ。
「さすがは《
「生憎と、おまえのような浮ついた男は趣味じゃない!」
ユリスが細剣を振り下ろし、
「あらら、ざんねーん!」
それをケヴィンが長剣で振り払いつつシールドバッシュを仕掛けてくる。
「くっ!」跳ね飛ばされるユリス。衝撃に顔をゆがめる。しかし戦闘中なのですぐに身体を起こそうとすると
「どうやらお姫様は、お前みたいな堅物が好みみたいだぜ、レオ!」
「なっ!?」眼前にライオネルの振るうパルチザンが飛んでくる。
「試合中に無駄口がすぎるぞ、ケヴィン!」
「(さっきのは、目くらましか――)」
このタイミングが回避は間に合わない。覚悟を決めて星辰力を防御に集中させようとした時だった。
ガキンッ!
槍がユリスを薙ぎ払う寸前、割って入ってきた人影が同じレイピアを使ってその一撃を弾き飛ばした。
「オーフェリア…!」
「ユリス、援護しなさい!」
初めてといえるその言葉。だが、この状況でこれほど頼もしい声はなかった。