ステージ上で対峙するのは、フードをかぶったエキストラチーム。今までの戦いでそのベールを脱ぐことはなかった謎に包まれたチームだった。
「(なんだ…これ)」
このアスタリスクから来てから初めての違和感。といっても、この感覚は以前にもどこかであった。
「(思い出せない…なんだ…これ)」
なぜか思い出せない。確かに知っている人物だとわかっているのに、もやがかかったように合致しないのだ。
再び視線を戻すとそこにはフードをかぶった5人組。彼らから発するプレッシャーは並々ならぬものだ。だが、奇妙な感覚に襲われる。拭いようのない違和感が入り混じった何とも言えない。
轟音のような大歓声の中、チームリーダーと思わしき人物が前に進み出て右手を差し出してくる。
「生憎、我々は容赦しないよ」
「それはこっちのセリフですよ」
手を握り返してくる。肌の色は茶褐色だった。
「決勝戦に相応しい闘いにしよう」
「その前に、フードを取った方がいいんじゃないか?」
「そうだな、そうさせてもらおうか」
そういうと、フードに手をかけ、一斉にそれを脱ぎさった。
「なっ!?」
現れたのは、赤と黒のマントを羽織った褐色の肌に銀髪の女性。
『な、なんと!エキストラチームのリーダーは!アルルカント・アカデミー生徒会長アンリマ・フェイトさんです!?』
『まさか、あの謎に包まれた彼女が出てくるとは…これは予想だにしなかった展開ですね』
興奮に包まれている解説。やはり、予想だにしなかった展開みたいだ。
「久しぶりだな棗斑鳩、まさかこうして君と剣を交えることが出来て光栄だよ」
「こちらこそ」
驚きはしたものの、踵を返してお互い自分のチームに戻ると
「もはや隠す必要もないってことかな?会長さん?」
「ま、そうだな――ここで隠しても意味はない、ぬいでいいぞ」
「どうも」
アンリマを挟んで無邪気そうな声音と凛とした声。そして後ろにいた四人がフードに手をかけ、一斉にその姿を現した。
「久しぶりだな、≪
「…お前は」
ユリスと綺凛はその言葉を発した人物を見据える。二人の視線の先には、微風で銀髪を揺らした褐色で隻眼の人物
「
「その名で呼ばれるのは久しぶりだな」
闘志を秘めた笑みをこちらに向ける彼女。
確かに、シオンの登場には斑鳩も驚いた。だが、斑鳩の視線を否応なく釘付けにしたのは、二人の少女だった。
一人は、長く伸びたストレートの髪は、濡れ羽色とでも言うべき、艶やかなパープルブラックの髪の少女だった。胸の部分を覆う黒曜石のアーマーにチュニックと風をはらんではためくロングスカートは矢車草のような青紫。腰には黒く細い鞘。そして顔は小造りで、えくぼの浮かぶほお、つんと上向いた鼻の上に、くりくりとした大きな瞳が、アメジストを思わせる輝きを放っていた。
もう一人は、 眩い金色の光を放った長い髪に大きく開かれた二つの碧眼の少女。その碧眼には息をのむほど美しい煌めきを秘していた。そして黄金色のブレストプレートと白いロングスカートを身にまとい、腰には山吹色の長剣を装備していた。その美貌はまさに人形そのものに近く、入口から吹き込む微風に碧いマントと金髪が揺れていた。
「(…どうして、あの二人がいるんだ!?)」
見知った所の話ではなかった。あの世界にいた人物にそっくりな人物が目の前に現れたのだ、驚いた所の話ではない。
「…斑鳩?」
「あぁ、悪い」
オーフェリアの声で、現実に引き戻される。
「斑鳩、知り合い?」
「いんや、ちょっとあってな…その昔にな」
「ふーん」
と言葉を交わす。この言葉だけでかなりリラックスする。
いつにもまして気合が入っていることを感じ取る斑鳩。
「(言葉は不要か――)」
斑鳩の意識が目の前のチームに向けて収束していく。そして、試合の開始位置についてただ、その時を待つ。
そして
「――六花祭≪決勝戦≫、試合開始!」
試合開始を告げる機械音声を掻き消さんばかりの大歓声と共に、戦いが始まった。
新年、あけましておめでとうございます。
今年も、本作品をよろしくお願いします。