スタンドを使う謎の少年、虹村 奥谷。
この二人の戦いをえがいた短編小説。
ジョジョの奇妙な冒険 第X部 白銀の震撼。
続きません。
「ここが……親父の故郷か」
俺は長い間旅を続け、ようやく辿り着いた町を見てこうつぶやいた。
「杜王町……」
ここで親父の行方の手掛かりが見つかればいいのだが……俺は遠くに自動販売機があるのを見つけた。そして、その前に少年が立っているのも見た。
「丁度いい。ジャストだ。彼に聞くとしよう」
俺はその少年に近づいて行った。俺があと三メートルぐらいまで近づくと、少年はイキナリ、地面に倒れこんだ。
「たくっ! ついてねぇぜ。本当についてねぇ。……まさか自販機の下の隙間に百円玉を落としちまうとはなぁ」
どうやら、彼はお金を落としてしまったらしい。俺は足を止めた。
そこには……あり得ない物が見えたから。
「どうせ、普通の人間にゃあ見えねぇんだ。使ったって問題なんてナッシングッ!」
少年の後ろに……緑色の人型の形が居たのだから。俺はあの人型の正体を知っている。
「……スタンド」
「あぁ?」
俺がそうつぶやいた時、少年がこちらを向いた。その手には百円玉が握られている。どうやら、スタンドを使って取ったようだ。
「……まさか、こいつが見えてるんか?」
俺はどう答えるか迷った。正直に答えるべきか……いや、相手は友好的な雰囲気を持っていない。ここは、やり過ごそう。
「あん? 何言ってんだ。何が見えるって言うんだよ。俺はただ、スタンドバイミーを聞いてるだけだぜ」
嘘はついていない。現在、俺の両耳にはイヤホンがつけられている。最近は便利になった。音楽プレイヤーを買わずとも、スマートフォンとか言う携帯電話で様々な事ができるんだからな。
「へぇ……そうかい。そうか、スタンドってのは、スタンドバイミーの事か」
「知ってるだろ? 名曲だ」
「ああ、知ってる。勿論知ってる。全部知ってるぜ……お前がスタンド使いって事もなぁ!」
緑色の人型はイキナリ俺に殴りかかってきた。だが、その拳は俺に届く前に止められる。
俺と人型との間に割って入るように現れた、謎の新たな人型によって。
「……グラン・シルバー」
「それがてめぇのスタンドか」
こいつが俺のスタンド……グラン・シルバー。銀色で、筋肉隆々な男の姿をした人型。
「俺はなぁ……てめぇに恨みがあるわけじゃねぇ。けどなぁ……ある人から頼まれてるんだよなぁ」
「何を頼まれてるんだ?」
俺は一歩後ろに下がる。
そして緊迫した空気が俺と少年の間を流れる。
「てめぇを試せってな……行け、プラント・ソーン!」
「迎え撃て、グラン・シルバー!」
敵の人型、プラント・ソーンは俺の人型に迫る。俺のスタンドは地面を蹴り、一瞬でプラント・ソーンとの距離をつめる。
ーーまずは先制攻撃だ。
グラン・シルバーがプラント・ソーンを殴りつける。そして、プラント・ソーンは後ろに吹き飛ぶ。しかし、それと同時にプラント・ソーンの反撃が来る。後ろに吹き飛びながら、プラント・ソーンは右腕を振るったのだ。
それは鞭のようにしなりながら、グラン・シルバーにヒットする。
……おかしい、今の距離で攻撃ができるなんて。後ろに吹き飛ばしたんだ。それと同時に、奴の攻撃範囲から出たはず……何か能力があるな。
「んだよ、つまんねぇな。ただ殴るだけか……んなんじゃあ俺のスタンドは倒せねぇぞ!」
少年がそう叫び散らした瞬間、プラント・ソーンの猛攻《ラッシュ》が始まった。
鞭のようにしなる拳が俺のスタンドを捉える。やはり、見かけの腕の長さよりも攻撃範囲が広いようだ。
「ダリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャッ! ほらほら、どうした! 攻めてこいよぉ」
言われなくても。
「グラン・シルバー! グラララララララララララララララララ!」
グラン・シルバーもラッシュを始める。両者のスタンドが超接近戦を始める。
「ダリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャ!」
「グラララララララララララララララララ!」
互いに一歩も引かない攻防が続く。そして二つ気づいた事がある。一つは、俺の方がパワーは上だが、奴の方がスピードは上だと言う事だ。あきらかに、奴の攻撃の方がヒット数が多い。まるで、腕が何本もあるように見える。
そして、もう一つ。これは奴に取っての致命的な弱点だ。奴のスタンドはラッシュ中、無意識の内だと思われるが、まるで防御がない場所が生まれる。完全にフリーだ。多少のダメージを覚悟してでも叩く価値がある程、大きい弱点だ。
「貰った……グラン・シルバー!」
グラン・シルバーの腕がプラント・ソーンの胴体を貫く。絵面だけ見れば、俺の完全勝利だ。しかし、俺の拳には、手応えが全く無かった。
「フェイク……フェイクだよ。人型はフェイクなんだよ! それぐらい気づけよ、このどたんチンが!」
腕が抜けない……!? 何かに締め付けられている。弱点に見えていた、あの隙は……罠だったのか。
「プラント・ソーン。てめえの本当の姿を見してやれ」
少年がそう言葉を発すと、緑の人型が崩れ始める。そして、最後に残ったのは、巨大な八本の蔦だった。その内の一本にグラン・シルバーは締め上げられていた。
「プラント・ソーンの本体は文字通り植物だ。こいつの蔦を複雑に絡ませる事によって、人型のように見えるスタンド象を作り出していたのさ」
そうか……
先ほどからの違和感はこのためだったのか。伸びたように見えた腕。何本もあるように見えた腕。それが腕ではなく、絡みついていた蔦だったとなれば、説明がつく。
「で、だ。どうやらてめぇは雑魚らしいな。生きる価値のねぇ雑魚だ。……あの人に会わせる価値なんてねぇ。だから……ここで死にやがれ! 身動きとれねぇ状態で残りの七本の蔦のラッシュをくらいやがれ!」
七本の蔦が俺のスタンドを貫こうと、襲いかかる。しかし、俺の口元には笑みがあった。
その瞬間、爆発が起きた。
グラン・シルバーを拘束していた蔦が赤く燃えながら吹き飛んだのだ。
「何ッ!? 一体何が」
「緋色の《スカーレット》波紋疾走《オーバドライブ》」
これが俺のスタンドの能力の内の一つ、スカーレットオーバドライブ。
「てめぇ、一体何をしたぁ!」
「振動だ。俺のグラン・シルバーが持つ能力、振動の力だ。お前のスタンドを高速振動させる事で、熱エネルギーを発生させる。その熱エネルギーで植物スタンドを燃やしたのさ。流石植物だ、よく燃えるぜ」
グラン・シルバーの能力は触れている物体や、スタンド本体を振動させる事。これによって波紋と呼ばれるエネルギーを発生させ、様々な現象を起こす事ができる。
「このまま、戦闘を続ければ……焼け死ぬぞ」
俺は少年を見る。その右腕は赤く焼け焦げていた。どうやら、さっき焼いた蔦は、あのスタンドの右腕にあたる部分らしい。
「ちっ! それでも、男にはやらなきゃいけねぇ時があるんだよ! プラント・ソーン! ダリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャ!」
プラント・ソーンが残った七本の蔦でラッシュを仕掛けて来る。だが……その攻撃は、もう俺の敵ではない。
「グラララララララララララララララララ!」
俺はグラン・シルバーの拳で全ての蔦を叩き落とした。
◇
「うっ……俺は一体」
ふむ、目が覚めたようだな。
「目覚めの気分はどうだ? 少年」
「……!?」
「驚いて声も出ないか。ああ、火傷や骨折は波紋で治しておいたぞ」
感謝しろ。本来なら多額の金を請求したい所だが、こいつは親父について確実に情報を持っている。
「さて、少年。俺の親父……東城《とうじょう》 晃久《あきひさ》について教えて貰おうか」
俺がそう言うと、少年は一瞬、口を閉じたが、ゆっくりと話し始めた。
「俺の名前は虹村《にじむら》 奥谷《おくや》っつうんだが、その晃久は突然、俺らの前に現れたんだ」
「俺ら?」
「ああ、俺の兄貴、虹村《にじむら》 圭洞《けいとう》も一緒に会ったんだ。そして、晃久はこう言った。君たちに不思議な力をあげよう。その代わりに、この写真の男がこの町を訪れた時、彼を試してやってくれ……ってな」
「その時に得た不思議な力が……」
「そう、スタンド能力……プラント・ソーンだ」
という事は、流れ的にその、こいつの兄である虹村 圭洞もスタンド使いだと考えた方がいいだろう。
「それで、伝言だ。これはてめぇが勝った時にだけ伝えるように言われていた物だ。……『俺はこの町のどこかにいる。探し出してみろ』ってな」
親父……ようやく見つけたぜ。
あんたの手掛かりを!
「それでだ、虹村。君も東城 晃久を探すのを手伝ってくれないか?」
「……そんな義理はねぇよ。一人で頑張りなッ!」
「んな、殺生な事言うなよ……この広い町でたった一人の男を見つけろって? 無理無理無理無理」
俺はリズムに合わせて首を左右に振る。
「……もしも断るっつーなら、治療代、78万9800円を今すぐッ! 払って貰おうか」
「はぁ!? 治療代ってなんだよそりゃ!」
「火傷や骨折は波紋で治しておいたぞ、って言ったろ。誰も無償なんて言ってねぇよ」
「くっそ! てめぇ、はめやがったな」
「虹村、君が一人で突っかかって来て、一人で負けただけだろ? もしも、俺に治されず、救急車に運ばれてたら、もっと治療に時間がかかるのに、同じくらいの額を取られてただろうよ」
感謝しろ! と、俺は虹村を指さしながらそう言った。
「……ち! わーたよ、やりゃいいんだろ。仕方ねぇから手伝ってやるよ。まあ、俺も晃久には言いてぇ事があるからな」
「協力感謝するぞ」
俺は笑顔で虹村にそう言った。
「で? てめえの名前は何て言うんだよ」
俺の名前か?
「俺の名前は東城《とうじょう》 城介《じょうのすけ》だ」
俺はそう言うと、財布から免許証を取り出して虹村に見せてやった。
「お前、名前に二つも『城』って言う漢字が入ってるのか? 面白え名前だ。よし、今日からてめえのあだ名は『城城《ジョジョ》』だ!」
「何とでも呼べ。ジョウジョウとでも、ジョジョとでもな……」
……こうして新たなジョジョは生まれた。杜王町で、新たなジョジョの伝説が始まる!
ジョジョの奇妙な冒険 第X部 白銀の震撼
……続きません。
なんとなく、ノリと勢いで書いてしまいました。
後悔はしていません。公開はしていますけど。
この小説が続く事は絶対無いでしょう。
私なんかが書き続けたら、それはジョジョの侮辱になってしまうような気がするからです。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。次回作もよろしくお願いします。