トータスナイトが基地に着任しましたっ!   作:林屋まつり

1 / 27
一話

「へ? LHOSから、僕に依頼ですか?」

 クラウス・V・ラインヘルツ、ライブラの長である彼の言葉にレオナルド・ウォッチは素っ頓狂な声をあげた。

 まさか、とは思う。意外なのはこの場にいた他のメンバーも同感なのか、クラウスに視線が向けられる。

 仲間達からの視線を受け、クラウスは頷く。

「ああ、そうだ。レオナルド君、君に名指しで依頼だ」

「なんでこんなクソガキが、……」

 ザップ・レンフロは不信を隠しもせず呟く。やぶにらみのまま、問う。

「そいつの目が目的、って事か?」

 そいつの目。異界からさえ、至高の芸術と言われる《神々の義眼》。

 レオナルドを名指しした、と言うのならそれが目的だろう。身体能力だけでいえば、彼は普通の少年なのだから。

「どういう依頼なんだい?」

 スティーブン・A・スターフェイズ、彼は新聞から顔をあげて問う。その視線には強い警戒がある。

 クラウスのお人好しは身に染みてる。まさかとは思うが、同情で依頼を受けたわけではないだろうか?

 レオナルドに戦う能力はない。依頼によっては自衛能力のないレオナルドでは危険だ。

「ああ、それなのだが。…………どうも、海戦の指揮官の補佐をして欲しいそうだ」

「…………え? いや、僕、なにも知らないですよ。海戦なんて」

 というか、この場にいる誰もが知らない。…………「ああ、レーダー代わりか」

 ぽんっ、とスティーブンが呟く。クラウスは頷く。

「まあ、確かに、」ぺし、とザップはレオナルドの頭を軽く叩いて「こいつの目が使えるってのは解ってっけど、なーんでLHOSの連中が海戦なんておっぱじめんっすか?」

「そういうのは軍隊のやることじゃないのかい?」

「そうだ。元々の出所は海軍だ。ドイツのだが。

 術師でないとまともに運用できない兵器、と言う事でLHOSにお鉢が回って来たらしい。……が、それだけでは足りないと言う事で、レオナルド君、君に助けて欲しいそうだ」

「なーんか、うさんくせぇっすね。その依頼。

 俺たちは世界の均衡を維持する為に動いてんだ。一国の戦争に首突っ込むなんて馬鹿げてるぜ、旦那」

 ザップの視線は鋭い。もし、その前提でクラウスがこの依頼を引き受けたと言うのなら彼を見限る。と、告げる。

「それが、どうも国が相手ではないようだ。……詳細は不明だが、………………なんというか、化け物、か」

「異界の住人、ではなく、ですか?」

 ある意味で化け物が日常的に跳梁跋扈鵜する街、HL。とはいえ、ここに拠点を置くライブラのメンバーにとって異界の住人は異形とはいえ、化け物ではない。

 そのクラウスが、言葉に迷いながら、化け物、と言うのだ。異界の住人とは思えない。

「ずいぶんな望遠で不鮮明だが、」クラウスは大判の封筒を掲げて「写真はある。みてみるかい?」

 レオナルドとザップ、そしてスティーブンはクラウスのデスクへ。「…………なんだ、これ?」

「魚? ……に、見えなくもない、か?」

「固そっすね。って、うわ、なんだこの化け物」

 写真の一つ。本体らしい何かの口の中に人間の上半身らしいもの、そして、本体の上にいくつかの砲を持つ何かを見てザップが首を傾げる。

「これが、……ええと、敵? ですか?」

「そうなるね」

「まあ、異界の住人にも、どこぞの軍隊にも見えないね」

「俺には化け物にしか見えねぇ。

 でー、旦那。これをぶっ壊してこい、って事か? …………って、うお、やっぱ海かよ」

「そりゃあ海戦ですからね。

 って、まずいんですか?」

 海、と。ザップの言葉とそれを聞いたクラウス、スティーブンの嫌そうな表情を見てレオナルドは問いかける。クラウスは困ったように頷いて、

「私たちの能力は血を媒介にしている。流派に限らずね。

 効果が発現すれば問題がないのだが、その前に不純物が混じると失敗、最悪は暴走してしまうのだよ。ある程度は抑えられるけど、やはり水は相性が悪いね」

「そうですか」

「直接の戦闘はその兵器で行うようだ。その指示は提督がやるそうだが。その提督の補佐、……まあ、見えたものを伝える事をして欲しいそうだ」

「ビデオカメラじゃ無理なのかい? わざわざレオナルド君の目を使う必要はないと思うのだけど?」

「いや、……どうも、妨害電波のようなものが発生しているらしい。

 その化け物、……深海棲艦、と呼称しているようだが、それらからの砲撃で爆撃機やらも迎撃されてしまうそうだ。それで、仕方なくその兵器を運用する事にしたそうだ」

「そうですか」

「まだ規模は小さいが、すでに民間の船も沈められている。

 近隣の港町にも被害が出た。発生数も増えている。海軍としては一刻も早く殲滅したいようだね。レオナルド君には直接の報酬と、人員の派遣料としてライブラにも報酬が約束されている」

「報酬?」

 スティーブンの問いにクラウスは「前金だ」と、一枚の小切手を差し出す。スティーブンはぎょっとして「随分と、羽振りがいいね」

「もし断ってもこれは納めていい、派遣を許可してくれたらさらに同額を出す。そうだ」

 クラウスは金に釣られる男ではない。けど、この金額はそれだけ海軍が切羽詰まっている事を示す。無視はできない。

「ザップの言うとおり、我々は一国の政情に口を出す事はしない。故に、この依頼を受ける義務はない。

 レオナルド君、君が決めたまえ。なに、HLは私達でももたせる事は出来る。引き受けるのなら止めはしない。……だが、私達も助力にはいけないだろう。それは解ってくれたまえ」

 依頼を受けるも受けないも自由。ただし、受けたのならライブラのメンバーが助けに行く事は出来ない。

 その条件、レオナルドはそれを噛みしめて、

「…………僕は、」

 

 翌朝、関門の外。クラウスとレオナルドは二人で迎えを待っていた。

「少し、本音を言わせてもらえば意外だ」

「まあ、……そうかもしれないですけど」

 けど、……レオナルドは自分の目に瞼の上から触れて、

「いくつか、皆さんと仕事をこなしてきましたけど、そのたびに思うんです。

 自分の、経験不足を」

 《神々の義眼》、ライブラとしての仕事をこなすうえでとても役立っている。特に、血界の眷族との戦いではその諱名を読み取ると言う、切り札にも近い意味がある。

 けど、……レオナルドはどうしても思ってしまう。《神々の義眼》を持つ、自分はどうだろうか、と。

 今更クラウスやザップのように前線に出て戦う能力を持てるとは思わない。けど、……否、だからこそ、一つでも多くの経験をこなし、《神々の義眼》をより高い精度で使いこなし、的確な判断と冷静な対処を身につけたい、と。

「だから、少しでも色々な経験をしたい、って思ったんです。

 そりゃあ、HLにいれば毎日お祭りみたいな事が起きてますけど、それとはまた離れた事も経験出来れば、きっと、僕の糧になる、って」

 長く、戦い続けたクラウスを前にすれば、その程度、と言う事かもしれない。

 けど、

「…………そうか、そういう事なら止めはしない」

 クラウスは謹直に頷く。自ら進もうとするその意思。それを尊重しないわけがない。

 その根底には戦う術のない自分への劣等感があるのかもしれない。迷惑をかけている、と思っているかもしれない。

 けど、それを覆すために進む意思。クラウスは眩しそうに目を細める。だから、

 ぽん、と彼の頭を軽く叩く。

「だが、忘れないで欲しい。

 レオナルド君、君は、私たちライブラの大切な、無二のメンバーだ。その義眼がなかったとしてもね。

 だから、絶対に帰って来たまえ。呼んでくれれば、どこにでも迎えに行こう」

「昨日と言ってることが違いますよ」

 苦笑。クラウスはそんな彼に微笑を返して、

「なに、最初からあてにされても困るということだよ。迎えに行くのが難しいのは、確かなのだからね」

 場所はドイツ。ここから、遠く離れている。

 それに、ライブラとしても簡単にHLから離れるわけにはいかない。千年の覇権を取り合い、様々な存在が跋扈する都。それだけでも忙しいのにあの厄介な13王もいる。やるべきことはいくらでもある。……けど、

 それでも、

「それでも、君が本気で助力を願うのなら、私は行こう」

 クラウスにとって、レオナルドはまだ年若い。この先、未来の担い手だ。喪うつもりは、ない。

 矛盾した言葉。「根性論っすね」

「むっ」

 図星を突かれ珍しく押し黙るクラウス。レオナルドはいつかを思い出して、

「けど、それ、ザップさんも言ってました。

 ライブラの一員として、決して譲れないものがある。って。だから、クラウスさんがそう言ってくれて、嬉しいです」

「…………そうか、君が安楽のために助力を乞うとは思えないが、ともかく、後悔なくやってきたまえ」

「はいっ」

 頷く。そして、クラウスが告げる。

「時間だ」

 その言葉に合わせるように、二人の前に一台の車がとまった。

 

「こんにちわ、会えて嬉しいよ。レオナルド君」

 でっぷりとした体格の男性。彼は柔和な笑みを浮かべてレオナルドの手を握る。

「あ、……ど、どうも」

「それに、クラウス君だね。

 ライブラの活躍は長老から聞かされているよ。こうして会えただけでも光栄だ」

「ありがとうございます。中将殿」

「へ? 中将っ?」

 確か、軍の中でもかなり上位なはず、レオナルドはもう一度彼を見る。でっぷりとしたおっさん。という失礼な印象。彼は目を細めて、

「ドイツ海軍中将、カルツだよ。まあ、……すまないねえ。本来なら大将が来るべきなのだけど、彼も忙しくてねえ」

「あ、い、いえ、……そういうことじゃなくて、なんていうか、思った以上の人が来た、って」

 恐る恐る応じるレオナルドに、彼は笑って、

「何を言うかと思えば、HLの第二次大崩落、それを防いだ君の活躍はLHOSでも、そして、彼らから話を聞いている私たちの間でも有名だよ。

 HLを救った英雄なんだから、このくらいは当然のことだよ」

「あ、……いえ、別に英雄って程でも」

 ライブラの皆に助けられながら駆け回っただけ、そんな自覚からレオナルドは口ごもり、クラウスは微笑。そしてカルツは笑顔で振り返る。

「と、言っているが、君は私たちに嘘をついたのかな?」

「……えーと、まあ、僕たちにとってって言ったつもりなんだけど」

 声に、レオナルドとクラウスは目を見開いた。聞き覚えのある声、その主は、

「ブラックっ!」

「久しぶりだね。親友」

 声を上げるレオナルドと、嬉しそうに笑う彼、ブラック、ウィリアム・マクベス。

 カルツはそっと道を譲る。レオナルドは彼に駆け寄り、手を取る。

「久しぶりっ!」「うんっ、会えて嬉しいよっ」

 握手、そして、二人は笑みを交わす。友達、とお互いのことを思っているのだから。

 再会に笑みを交わす二人。けど、

「それにしても、ブラック、何その恰好っ」

 なぜ彼がそこにいるのか、その疑問より先にレオナルドは笑う。

 ウィリアムは柔和な顔立ちだ。当人の性格も相まってどうしても幼さが前面に出る。それが、きっちりとしたがちがちの軍装でそこにいるのだ。かなり、似合わない。

 そして、それだけではない。それだけなら冗談めかして似合わないな、と軽く告げるだけ。レオナルドが腹を抱えて笑う理由。「それ、故郷にいたの? 妖精とかいるって言ってたけど、ほんとにいたんだっ」

 彼の眼が見ているもの、ウィリアムの頭に乗ってどや顔の小人、おそらくは妖精。そして、彼の肩にも妖精が乗っている。似合わない服に、さらに似合わない存在が乗っかっていて、そのおかしさにレオナルドは笑って、

「…………レオナルド君?」

「ほう」

 そんな彼を見て、クラウスは首を傾げ、カルツは興味深そうに目を細めた。

「は、はは、…………あ、クラウスさん。

 あの小さいのも異界の住人ですか? 僕、見たことないんですけど」

 確か、HLは特異なほど大規模だが、小規模な異界との接続は世界中にあったらしい。なら、異界の住人がこちらに来たということもあるだろう。

 それかな、と見当をつけるレオナルドの言葉に、クラウスは苦笑。

「申し訳ないがレオナルド君。

 私にはその、小さいの、が見えないのだが」

「はは、…………へ?」

 ぷらーんと、ウィリアムの肩から落ちかけている妖精を見て笑っていたレオナルドは、その言葉に笑みを止めた。

 カルツは満足そうに頷く。

「では、レオナルド君。仕事の話をしようかなあ。

 クラウス君も、どうだね?」

「よろしければ」

 クラウスは頷く。特に保護者ぶるつもりはないが、気にはなるのだから。

「では、ウィリアム君。彼女を」

「はい」

 ウィリアムは頷いて車の後部座席に声をかける。程なく。一人の女性が顔を出した。

 流れるような金髪の、整った顔立ちの女性。ウィリアムが紹介のために口を開こうとする、が。

 カルツは手で彼を制する。「レオナルド君、彼女は、どう見えるかな? その眼には」

「どう、……って、クラウスさんにも見えますよね? ブラックの隣にいる女性」

「ああ、私にも見えるよ」

 あの妖精とは違うらしい。故にレオナルドは《神々の義眼》を意識して彼女を見る。「…………軍、艦」

 腕を組み、不敵な笑みを浮かべる彼女。レオナルドの眼には彼女に重なるように、勇壮な軍艦が見える。

 眉根を寄せる。傍らにいるウィリアムには青い光が見える。オーラを読み取る目に、なぜか軍艦が映っている。

 ほう、と声。

「ふぅん、彼が提督の協力者、って事ね?

 そうよ、ドイツの誇るビスマルク級超弩級戦艦のネームシップ、それが私よ」

「は?」「戦艦の、ネームシップ?」

 きょとん、とするレオナルドとクラウス。ビスマルクはなぜか満足そうに胸を張る。

 そんな光景にカルツは苦笑し、

「では、話をしようか。

 レオナルド君も、納得をして我々に協力をしてほしいのでね」

 

「我々、ドイツはいま危機にさらされているんだよ。

 それに関しては資料でお送りしましたね?」

「あの、深海凄艦という、異形の艦ですね?」

 クラウスの言葉にカルツは頷く。

「今はまだ、被害規模は大きくないのですがな。

 が、対策の手段が非常に限られ、発生数も増加。早期に対応しなければいずれ、ドイツはシーレーンを破壊されつくされ、陸上への攻撃、……最悪、上陸などもあれば大きな被害が出るでしょうね。

 これはもちろん、ヨーロッパ諸国にも言えることだよ」

「その対策が、彼女か? ……術師でないとまともに運用できない兵器、と伺いましたが?」

「正確には、彼女が戦うための準備や、傷ついた際の治療ができるのが妖精なのだが、クラウス君にも見えなかったように、我々にも見えないのだよ。術師の見立てでは、妖精というよりは、彼女たちに仕える霊、という方が正確らしいが、交霊は術師の分野だからねえ。

 そんな相手だからコミュニケーションを図れるのが、術師、のみなのだよ。それで術師の組織、LHOSへ要請、派遣されたのが彼、ウィリアム君というわけだね。……まあ、レオナルド君は例外みたいだけどね。

 深海凄艦の撃破自体は、私たちドイツ海軍が直接彼女たちに依頼しても出来なくはないが、整備などができなければ話にならない。海上に出た彼女たちに言葉を届けるのも、妖精を介した無線でないとできないから、我々では出撃した彼女を見送る事しかできない。海戦そのものは現場で動く彼女たちに任せるのが一番だから、あえて軍人が提督に着任して指揮を執る必要はない。なら、術師に任せたほうが一番スムーズだからね」

 軍人が、術師に前線を任せる。クラウスはその特異な状況に首を傾げ、カルツは自嘲。

「訓練を積んでいる我々が安穏としている中で、彼女たちを戦場に追いやり、術師に前線を任せるなど、情けなく、業腹だがね。

 が、我々の最大使命は民を守ること。その脅威を払うことだよ。そのためなら頭も下げるし、金も払う。……情けないと嗤って構わない」

「いえ、」

 そんなつもりはない。自分たちにとって譲れぬものがあるように、彼ら軍人にもそれがあるのだろう。彼らにしてみれば業腹だろうがそれでも正しい選択をしたこと、嗤うつもりはない。

 けど。クラウスの表情は晴れない。「兵器、という表現は、彼女の出自にも関わり、長くなりますが決して蔑称のつもりではありませんよ」

「…………出自、ですか?」

「ううむ、……ウィリアム君。頼めるかなあ?」

「はい」

 妖精をレオナルドの頭にのせて変な顔をされていたウィリアムは、名前を呼ばれて振り返る。

「ええと、ビスマルク。彼女たちは普通の人とは違うんだ。もちろん、異界の住人とかとも違うんだよ。……ええと、兵器を宿した人、なんだ。彼女はビスマルク級超弩級戦艦のネームシップ、ビスマルク、だよね」

「ええ、そうよ」

「兵器を宿した、人?」

 意味が分からない、と首をかしげるレオナルド。

「憑依、…………まあ、人の魂に兵器の魂を混ぜ合わせた人、ってところだよ」

「ところって、わからん。……まあ、魂は、いいけど」

 とはいえ、DNAに直接呪文を刻み込むなんてとんでもない人体改造の例もある。そして、ウィリアムの例もある。ありえない話ではないかもしれない。

「兵器にも魂がある、か」

 意外そうに呟くクラウス。不意に思い出すのは愛用のナックルガード。これにも魂があるのだろか、と。

「欧州圏だとそういうのはないんだけど、極東、……ええと、日本、っていう国の技術らしいんだ。

 あらゆる存在に命が宿る、……ええと、…………なんていったかな、ツクモ。だったかな」

「その技術を転用して、兵器から魂を抽出、人に憑依させた、ということかね?」

 クラウスの問いに、応じるのはビスマルク。

「ええ、そうよ。……とある洋上基地でね」

 ビスマルクはコーヒーを一口。苦笑。

「かつての大戦時、私たちドイツはその極東、日本と同盟を結んでいたわ。

 そこから技術を得たんでしょうね。もちろん表沙汰にできないようなことでしょうけど、裏側で延々と研究して、それで生まれたのが私たち、って事よ。

 と、それと、私たちのことを兵器って言ってたのもそれ関係ね。戸籍もないし、怪し基地で作られた女の子。それに、私は戦艦級の破壊力をふるうことができる。普通の人として普通に暮らすにはいろいろ無理があるのよ。

 だから、整備ができるまでの便宜的な呼び名、って事ね」

「そっちは私たち海軍と、政務を担う者たちの間で進めています。

 まあ、……何せ前例もないので、彼女たちには窮屈な思いをさせるでしょうがなあ」

 申し訳なさそうに言うカルツにビスマルクは苦笑。気にしてない、と手を軽く振る。

「それで、その洋上基地がどうもこの深海凄艦を発生させているみたいなんだよ。

 おそらく、だけど、ビスマルクたちは成功例。こっちは意思も持たないで破壊衝動に任せて動いているだけの失敗例、っていう感じ。なんだ」

「じゃあ、僕の仕事は、その深海凄艦の撃破の手伝いと、洋上基地の捜索?」

 問いに、カルツは頷く。

「彼女たちはかつての軍艦だったころの記憶もある。海戦のプロフェッショナルだから戦闘面は任せてもいい。

 ただ、彼女たちの負担を減らすためにも、我々との折衝や、妖精との交渉、深海凄艦の捕捉など、出来るところはやっておきたいんだよ」

 そして、カルツは立ち上がる。

「我々軍部の力不足に巻き込んで、申し訳ないと思っているよ。もちろん、衣食住については保証しよう。できる限り身の安全も保護する。必要なものがあれば何でも言ってくれていい。

 まあ、そういう事情なんだよ。協力してくれないかなあ? レオナルド君」

 そういって、深く、頭を下げる。中将の位置にある人がここまでするのだから、改めて事態の深刻さを感じる。どうも、思っていた以上に大変そうだ、と。……けど、だからこそ、

「わかり、ました。やります」

 まっすぐに、カルツを見て応じる。彼は、ほう、と安堵したように一息ついた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。