トータスナイトが基地に着任しましたっ!   作:林屋まつり

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十二話

 

 そして、ユーは目を覚ます。眠い。

「ん、…………ふむ、……ん」

 眠い。けど、

「髪、ちゃんとしないと」

 だらしない女の子。って思われるのは、いや。

 だから、頑張って髪を梳く。整える。…………大丈夫。

 眠い、……理由、ベッドの脇に積まれた本。

 グラーフから借りた本。日本、というところで仕入れたらしい。

 それで、夜にお勉強をした。だから、大丈夫。

 

「お、おはようございます。パパ」

「……へ? あ、…………お、おはよ、ユー」

 何か、重大な違和感を感じながらレオナルドはユーに挨拶を返す。ユーは顔を真っ赤にして俯く。

 沈黙。固まるレオナルドと、彼の前で真っ赤になって俯いているユー。

 沈黙。……………………………………………………「いや、レオナルド、そろそろ何か言ってあげなよ」

「Hello、ミシェーラ。

 遠い地で、君は叔母さんになったよ」

「ごめんっ! レオナルドっ!」

 わけのわからないことを言い出した親友を一発殴る。

「お、落ち着こうよレオ君っ!

 え、……だ、誰を孕ませたのっ?」

「落ち着けレーベっ!」

「……ふぅん、…………ね、ユー」

 マックスは、ぽん、とユーの肩を叩く。

「私のことをママって呼んでみて?」

「ま、……マックス、…………だめ?」

 妹の奇行に愕然とするレーベ。「まま?」と、ユーは呟き、マックスは頷く。

「これで、レオと私は夫婦」

「なんでだよっ?」

「マックスの、ばかーっ!」「敵艦を捕捉、攻撃開始」

 喧嘩を始める姉妹。グラーフは一つ頷いて重々しく口を開く。

「よし、ではレオ。私と夫婦の営みをするぞ」

「お前は少し考えて発言しろ」

「ええと、ユー。

 ママは誰? その、……真剣に答えて、僕、友達は大切にしたいんだ」

 ユーと視線を合わせて真剣な口調で問うウィリアム。

「え? ……ママは、いない、です」

「ちょっとどけ」

 レオナルドは邪険に親友を追い払う。で、

「その、ユー。

 どうしていきなり、僕がパパになったのかな?」

「そうだ、レオは誰を孕ませた?」「ちょっと中将に連絡してくる」

 そそくさと立ち去ろうとする親友を蹴飛ばす。で、

「あの、れお、無理しそうで、昨日、軍人さんに、どうすればいいか聞いた、です。

 そしたら、大切な人がいると無理しなくなる、って言われて、……それで、…………あの、……グラーフが持ってた資料に、ぱぱって呼ばれると、いいって、あって、……その、」

 注目に、だんだんと声が小さくなる。ウィリアムは満面の笑顔。

「信じてたよ。親友」「ちょっと表出ろ」

 は、いいとして、

「大丈夫だよ。ユー。

 そんな風に呼ばなくても、無理なことはしないよ」

 レオナルドは腰を落とす。言葉に詰まって俯くユーを撫でて、

「やる事があるからね」

「やる事?」

「そ、みんなの帰りをちゃんと待って、おかえり、って言ってあげないとね。

 そこまでして作戦成功だろ? 大丈夫、みんなを放っておいて壊れるようなことはしないよ」

「う、……うん」

 ユーは微笑。けど、

「あ、あの、れお」

「ん?」

「ゆーは、れおの大切な人に、なれますか?

 れおと提督に、大切に思ってもらえるって、ゆー、そう思うだけで、すごくうれしい、です」

「ああ、もちろんだ」「もちろんだよ、ユー」

 まだ、一緒にいた時間は短い。……けど、幼くても、頑張っている彼女だ。大切にしたい。

 たとえ、それが遠からず、それぞれ別の道を歩むとしてもだ。

 レオナルドとウィリアムの即答に、ユーははにかみ微笑み。

「嬉しい、です。えへへ、ゆーも、れおと提督の事、大好き、です」

 三人で微笑を交わし、

「皆、これは何か、対策が必要だ」

「はうう、に、兄さまぁ。……私だって、私だってぇえ」

「ぼ、僕だって、レオ君の事、大切、なのに」

「ふーん、……そう、……大切ね、ふーん」

「ぐぐ、……ユー、意外な伏兵ね。敵はレオだけだと思っていたのに」

 隅っこの方でぼそぼそと語り合う少女たち。不穏な空気を察したレオナルドとウィリアムは顔を見合わせて、

「よし、親友。朝食の準備だっ」「そうだねっ、親友っ」

 そそくさと奥へ。ユーは首を傾げてとことこと、二人の後についていった。

 で、

「…………提督」

「はい、なんでしょうか?」

 据わった視線を向けるビスマルク、ウィリアム慄く。

「ここ、来なさい」

「はい」

 示す場所はビスマルクとプリンツの間。レオナルドは十字を切った。ウィリアムはいやそうな視線を彼に向ける。

 で、

「レオ君」

「はい、なんですか?」

 据わった視線を向けるレーベ、HLで鍛えられた危機回避本能が警告を告げる。遅い。

 いつぞや偏執王から受けた拷問を思い出す。せめて、と。ユーに視線を向ける。ユーはいない。

 一緒にいてくれれば、と思った彼女はグラーフの膝の上。だから、

「ふーん、逃げられるなんて思ってたんだ。残念ね」

「はい」

 

「それで、今日の予定だけど」

 ぐったりしているウィリアム。ビスマルクとプリンツにやや慄きながら口を開く。

「ええと、方針と、改めて必要な資材は来たから、今日から本格的な出撃になるよ。

 午前中は近海の哨戒。全員でね、哨戒と、改めて連動の確認を取って、動きの指示はビスマルクに任せるね」

「ええ、私に任せなさい」

 胸を張るビスマルク。だれも異論はない。彼女は、自分たちの旗艦なのだから。

「レオナルドは《神々の義眼》で状況を見てて、とりあえず見ているだけでいいよ。

 ただ、長期になるから、切断のタイミングは任せる。何もなさそうなら切っていいけど、何かあったらサポートをお願い」

「了解」

 頷く、心配そうな視線は「大丈夫だよ」と笑って応じる。

「みんなから頼まれたら出来る限りのことはやる。

 信じてるよ」

 レオナルドの言葉に、レーベは口を開こうとして、……ため息。

「お願いね」

「いざという時はどんどん頼るから、レオ。覚悟してて」

 マックスはきっぱりと告げる。ユーが何か言いたそうに口を開く。けど、「ああ、任せろ」

 ぐ、と拳を握るレオナルド。マックスは表に出さず、安堵。

 わかってる。能力を酷使すれば彼は体を壊す。……けど、自分たちが死ねば、心が壊れてしまうかもしれない。……どちらも、絶対に、いやだ。

 いざという時は、……マックスはウィリアムに視線を向ける。ウィリアムは頷く。いざという時は、「大丈夫、僕が殴るよ」

「…………あ、あのー、ブラック?

 僕、何かした?」

「さて、それじゃあ解散。

 入渠と補給の準備は僕がしておく。お昼までには準備を終わらせるけど、念のため戻る、……そうだね。三十分くらい前には連絡を入れて、最優先で準備をするから」

「わかったわ」

「おいブラック。無視するなよ」

 

 海上に出る。まずは近海の哨戒。グラーフは艦載機を飛ばす。

 視界の共有は、まだ行わない。レオナルドに艦載機の視点から海上を見てもらうように依頼をし、目視で周辺の警戒。

 その傍ら、

「マックス、れおに無理させるの、だめ、です」

 ぽつり、ユーが呟く。

「別にそういうつもりじゃないでしょ?」

 プリンツはいつかの会話を思い出す。ビスマルクと、マックスと話したこと。

「そうね、……ねえ。ユー。

 兄さまやレオ君が危ないとき、自分が見てるだけだったら? 怪我しそうなとき、見ていることしかできなかったら、辛いでしょ?」

「うん」

「レオ君の無理を気にして、何も言わないまま私たちが傷ついたら、レオ君たちに、そのつらい思いをさせるわ」

「あ、……そ、…………そう、です」

 ユーは、少し恥ずかしくなった。それは、レオナルドと話したこと。

 自分にできないことはたくさんある。だから、助けてもらう。代わりに、自分ができる事は、精一杯やる。それが、仲間。

 もちろん、レオナルドも、ウィリアムも、ユーの、大切な仲間。だから、

「うん。……けど、ゆーも、がんばります」

「もちろんっ、私たちも頑張るわ」

 交わされる言葉を聞きながらビスマルクは辺りを見て、

「まだ、敵艦はいないわね。

 今のうちに陣形を整えておくわ」

 陣形を整え、哨戒優先で動く。まずは近場の脅威を払う。

 何より、ここは基地の近海。目視で基地を確認できる場所。レオナルドやウィリアムのいる基地の近くを戦場にしたくない。

 と、

『敵艦を捕捉したみたいだよ。

 まだ距離は離れているみたいだけど』

 無線からウィリアムの声。グラーフは頷く。

「距離があるのなら、まずは私に見せてくれればいい。

 敵艦が近くなったら合図を送る。その時は僚艦皆の視力強化を頼む」

 グラーフの言葉に、同調するように彼女の視界が変わる。ビスマルクは僚艦に停止の指示。

「多いな。駆逐艦が、四。空母が一、重巡が二、戦艦が一。…………潜水艦が、二。

 哨戒の速度だが、こちらに向かっている。艦載機は、偵察機が発艦済み、数は、十」

「大規模ね。……旗艦、意見具申するわ。

 昨日一日は静かだったし、何度かここで迎撃をしたし、もしかしたら向こうも本格的に攻め込んでるかもしれない。援軍の可能性あり」

「……そう、ね」

 ビスマルクは振り返る。そこには、基地がある。

「打って出る?」

 レーベもそちらに視線を向けて問う。ここを戦場にすれば、……最悪、基地まで砲弾が届く。

 けど、

「援軍の可能性は認めるわ。

 遠距離まで出たら袋叩きに遭うわね。……提督、レオに、現在の状況を維持をお願いして、総員。微速前進。私の砲撃可能距離まで近づくわ。

 提督、レオに、グラーフから、合図を出したら視力強化をお願い。飛距離ぎりぎりから砲撃を叩き込んで先制。その位置で迎撃をするわ」

 レオナルドの視力強化。砲撃の有効射程距離は格段に上がる。ほぼ確実に先制が得られる。

 長い射程距離を活かして、敵艦が射程距離に踏み込む前に落とす。

 だから、

「視力強化、優先は、私、レーベ、プリンツの順。

 レーベは艦載機の対空射撃をお願い。マックスとユーは近づいてきた敵艦の迎撃を頼むわ。グラーフは航空戦。レオのサポートなしで行けるわね?」

「無論だ」

『了解、…………ん? うん、ユー、レオナルドが試してみたことがあるって。

 ちょっと、潜航してみて』

「う、うん、了解、です」

 とぷん、とユーは潜航。ユーは海中を見て、「…………え?」

 目を、見張った。

 ずっと先まで、海流が、見える。

『ユー、魚雷の精度あげられる?』

「大丈夫、です。……これなら、遠くまで、狙えます」

 頷く。魚雷は海流に流される。有効射程は、実際の射程距離よりずっと短くなる。

 けど、今はその海流を知覚できる。どの程度流されるか、それで、どう動くか、それが見える。魚雷の有効射程は、ずっと伸びる。

 海上に出る。無線のやり取りはビスマルクも聞いている。それなら、

「優先順位再設定。プリンツよりユーを優先してお願い。

 ユー、魚雷の遠当てで潜水艦を沈めなさい。潜水艦を片付けたらプリンツに切り替えて、プリンツ、敵駆逐艦を優先して撃破。駆逐艦を片付けたら、ユーは残った敵艦に魚雷をお願い。対潜能力はないはずだから、レオのサポートなしで行けるわね?」

「大丈夫、です」

「マックス、護衛を一任するわ。プリンツ、無駄弾は避けたいから、敵艦が有効射程距離に入るまでは待機」

「ん、了解」「わかりました。姉さまっ」

 一通りの指示を飛ばし、ビスマルクは前を見据える。

「総艦、前進」

 前進する。グラーフは《神々の義眼》が見せる視界に意識を集中させる。

 先制、交戦の開始は自分が判断する。ビスマルクの砲撃の射程距離は知っている。ぎりぎりまで、そこに近づける。

 前進する。………………………………「射程距離確認、提督。レオに指示を、ユー、潜航開始」

「はい」『了解』

 グラーフの視界が戻り、ビスマルクに《神々の義眼》が投影される。…………笑う。

「砲撃、開始っ!」

 砲撃。砲弾は狙い違わず駆逐艦に直撃。けど、「轟沈しなかったわね」

 距離が離れれば威力も落ちる。当てられたが、轟沈には届かない。そして、

「艦載機確認っ! レオ君っ!」

 レーベの言葉。そして、《神々の義眼》が投影。艦載機を見据えて機銃を構える。

 集中して、……大丈夫、潜水艦はユーが警戒してる。だから、……全部、撃ち落とす。上空からの危機を、すべて、払い落とす。

「グラーフっ! 艦載機は僕が払うっ!」

「任せる。艦爆、発艦っ!」

 意識して声を上げる。敵艦載機はレーベが落とす。だから、艦戦は飛ばさない。

 グラーフの意思を受けた艦載機は高速で飛翔。敵艦載機は銃撃。直前に、海上からの機銃掃射に撃ち落とされる。被弾、爆発。艦載機の残骸を蹴散らして、グラーフの艦爆が敵艦上空まで迫る。

 それを認識し、グラーフは声を上げる。

「爆撃開始っ! 戦艦を落とせっ!」

 駆逐艦はビスマルクが砲撃している。撃破している。なら、自分は敵艦最大射程距離を誇る戦艦を落とす。

 爆撃の音。そして、それが届かぬ海の中、ユーは遠くを見る。

 《神々の義眼》が見せる海流、そして、それを乱す敵潜水艦。それを見据えて、ユーは魚雷を構える。

「撃ちます」

 魚雷発射。遠距離からの魚雷。敵潜水艦からすれば的外れな場所に向かって放った、と見えるだろう。

 的外れな方向に放たれた魚雷は、海流に流され、「直撃、です」

 爆発。海流に流された魚雷は敵潜水艦に直撃、爆発。さらに前へ、近づきながら魚雷を放つ。

 敵潜水艦も魚雷を放つ。けど、海流が見えるユーにとって、敵潜水艦の魚雷が向かう先は視認できる。このまま前進しても、当たらない。

 そして、ユーの放った魚雷は海流に流され、弧を描いて敵潜水艦に迫る。けど、直撃コースなのは敵潜水艦も想定したらしい。海流に逆らうように移動、魚雷を回避。……そして、それを見越していた魚雷に直撃、爆破。

 ユーも潜水艦だ。魚雷に対してどう動くか、予想できる。海流に逆らうように進み、海流に流される魚雷をすり抜ける。

 だから、どう回避するか見当がつく。あとはそこに魚雷を差し込めばいい。

 爆発。……そして、ユーは心強さを感じる。レオナルドが助けてくれる。戦う術のないレオナルドと、近づかないと魚雷を当てられないユー。……けど、協力すれば魚雷の遠当てを可能とし、ビスマルクたち、大切な仲間を守る事が出来る。

 だから、

「次、行きます」

 絶対に、潜水艦に仲間を雷撃させない。その意思をこめてユーは魚雷を構えた。

 魚雷の水柱が上がる。レーベはその中、艦載機を機銃で薙ぎ払う。

 全部、漏れなく落とす。前回は有頂天になって潜水艦の警戒を疎かにした。そして、グラーフを危険にさらした。

 けど、今は大丈夫。ユーが潜水艦を落としてくれる。だから、

 慢心せず、助力に頼り切らず、自分にできる事、全力で実行する。

 《神々の義眼》が届ける情報をもとに銃撃。情報を届けるのはレオナルドで、それを活かすのが自分だ。

 レオナルドの助けを無駄にしない。僚艦の誰かが傷ついたら、レオナルドは悲しむ。助力してもらっているのだ、だから、恩を仇で返すなんて、死んでもごめんだ。

 だから、全力を尽くす。助力には戦果で報いる。自分の役割は対空迎撃。全力で、その役割を果たす。

 そして、レーベの戦果をグラーフは笑って受け入れる。さらに艦爆を飛ばす。

 大丈夫、自分の艦載機はレーベが守ってくれる。だから、気兼ねなく戦艦を爆撃する。戦艦の有効射程前に轟沈できれば、敵艦の最大射程距離が縮まる。それは砲撃戦での優位を示す。

 誰も傷つけさせない。僚艦も、ウィリアムとレオナルドの心も、すべて無傷で終わらせる。

 爆撃の音が響く。艦爆から敵戦艦への爆撃成功を聞く。だから、

「まだ、まだだ」

 落とすまで、徹底的に爆撃する。

 響く音の中、マックスは油断なくあたりを警戒する。

 それが自分の役割、海上も、海中も、空中も、すべて警戒する。いつ、どの瞬間でも砲撃できるよう、砲を油断なく構える。

 …………本音を言えば、攻撃に加わりたい。レーベに協力して対空射撃を、あるいは、敵艦隊に肉薄して雷撃を叩き込みたい。

 けど、それは違う。自分の役割ではない。自分は仲間を守る最後の壁だ。手に持つ砲は攻撃ではない、守護のためにある。

 だから、油断なく砲を構える。危機があったら、即座に払う。……そして、水柱が上がった。無線の声を聴く。

『ゆー、です。潜水艦、撃破しました』

「思ったより早かったわね。…………ユー、浮上して、駆逐艦撃破と同時に行ってもらうわ」

 ざばっ、と音。ユーが海上に姿を見せる。そして、

「レオ君っ! 私にも視力強化っ!」

 プリンツの声。そして、《神々の義眼》が投影される。……実際に体験してみると、凄い、と思う。

 けど、意識を振り払う。自分の役割は敵駆逐艦を一刻も早く沈める事。それで、対潜能力の低い艦のみとなる、ユーは安全に雷撃できる。

 だから、

「てぇえっ!」

 ビスマルクの砲撃に重なるように、プリンツの砲弾が敵駆逐艦を撃ち砕く。

「敵戦艦、射程距離に入った。

 総員、警戒」

 グラーフの言葉に皆は頷く。そして、砲撃の音。

「駆逐艦、全滅っ!」

「潜航、開始します。狙いは、重巡、です」

「それでいい。戦艦は私が爆撃を続ける」

「ユー、重巡からの魚雷は私が落とす。

 ユーは敵艦への雷撃に集中して」

「了解、です」潜航。とぷん、とユーは海中へ。マックスは主砲を構え「プリンツ、空母を落とすわっ!」

「はいっ! 姉さまっ!」

 マックスは全域警戒から、海中にのみ、意識を向ける。響く砲撃の中。海中の異常を見据えて、「そこ」

 砲撃する。砲弾は魚雷に直撃、爆発。

「誰にも、手出しはさせない」

 まだ距離は離れている、重巡からの雷撃は精度を欠く。ならば手数、魚雷がばらまかれる。マックスは当たりそうな魚雷を砲撃。

 そして、重巡の下で水柱が上がる。ユーの魚雷が直撃したらしい。「てっ!」

 ビスマルクは中破した重巡に砲弾を叩き込む。砲撃の直撃で重巡は轟沈。そして、プリンツと空母に砲撃を叩き込む。

 戦艦と重巡。二艦の集中砲撃を受けて、空母は轟沈。返す刀で残った重巡に砲撃を叩き込む。砲弾に穿たれ、直後に雷撃による水柱。重巡は轟沈。「あとは、戦艦だけねっ!」

 それも、グラーフの艦爆で中破。殴り合いの必要は、ない。

「レーベ、マックス。散開、左右からけん制で逃げ道をふさいで、グラーフとプリンツは回避最優先。攻撃はいいわ。

 ユー、雷撃をお願い。提督、レオに、ユー以外に動体視力の強化をお願い。損害を最小限に抑えるわ」

 そして、ビスマルクは主砲を構えた。戦艦のところで水柱が上がり、レーベとマックスは左右から砲撃。敵艦も応戦するが、《神々の義眼》により強化された動体視力を持つ二人をとらえられないでいる。

 ビスマルクは砲を構える。当てる、ではなく、撃ち砕く。なら、距離は近い方がいい。

 爆撃と雷撃、そして、駆逐艦による砲撃で戦艦は大破に追い込まれて、「これで、終わりよっ!」

 ビスマルクの砲撃が、戦艦を撃破した。

「……ふう、みんな、大丈夫ね?」

「まだ、やれるよ」

 レーベの返答に皆が頷く。ビスマルクは頷き返し、

「この近辺まで、前線を押し上げましょう。

 グラーフ、近くの岩礁で休憩するわ。探してくれる?」

「了解。では、発見したら移動か?」

「そうね」

 手近な岩礁を見つけ、ビスマルクたちは腰を下ろす。

 休憩、ほう、と。一息。

「ビスマルク、まずはこのあたりを最前線とするか?」

「そうするわ。グラーフ、偵察を頼める?」

「了解」

「ビスマルク、僕とマックスとユーで周辺警戒しておこうか?」

 レーベの問いにビスマルクは「お願いね」と応じる。

 と、

『休憩中だね。ビスマルク、プリンツ。

 現在地の海図を見せるね』

 どうやって? と、問おうと思ったけど、レオナルドの《神々の義眼》は自分たちの常識をはるかに超えている。おそらくは、可能なのだろう。

「ええ、お願い」

 応じる、と。ビスマルクとプリンツの眼前に《神々の義眼》が投影。そして、その視界に海図が見える。

『赤いマークが、みんなのいる場所ね』

「ええ」

 とんとん、と。海図に示されたマークが叩かれる。袖から、レオナルドと判断。

「これ、レオ君の視界?」

 プリンツの問いに『そうだよ』と、ウィリアム。

「想定される洋上基地の場所から、おおよそ四分の一ね」

「そうね」ビスマルクは無線を口元に寄せ「提督、午前中はここまでの海域の安全確保を優先するわ」

『うん、お願い。お昼には一度戻ってね』

「了解、美味しい食事を期待しているわ」

『はは、期待にこたえられるように頑張るよ』

 応じる声を聞いて、無線を切る。

「プリンツ、レーベたちを呼んできて。

 グラーフ、偵察はここと基地の間を密に頼むわ」

「「了解」」

 さて、……ビスマルクは辺りを見渡して一息。

 また、あれと対決するのね、と。

 白い闇。結局、その向こうにいるのが何か、わからなかった。…………けど、

 予想は、出来る。

 おそらくは、自分たちと同じ、軍艦の魂を宿した誰か。そして、霧、といえば、

「………………不吉な名ね」

 小さく、ため息をついた。……自分はビスマルク、ドイツでも最強の戦艦という自負がある。

 けど、その名の不吉さは、性能差を持っていても楽観をさせてくれない。

 楽にはいけない、と。その確信を抱えて、ビスマルクは溜息をついた。

 

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