トータスナイトが基地に着任しましたっ!   作:林屋まつり

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十六話

 

 執務室。長机に海図を広げる。

 ウィリアムが淹れた珈琲をそれぞれの席に配置。そして、

「…………なんでお菓子まで」

「の、脳の活性化には糖分が必要ですっ」

 と、用意したプリンツが拳を握る。まあ、いいか、と。レオナルド。

「じゃあ、反省会件作戦会議を始めるね」

 ウィリアムの言葉に皆が頷く。まずは、

「接敵した場所は、このあたりかな?」

 ウィリアムがマーカーを置いた位置。基地、ぎりぎり近海、といえる場所。

 ビスマルクが頷く。

「午前中も、大体そのあたりまで索敵したわ。それで、何度か接敵もした。

 ただ、一日時間を空けたから、正直もっといるかもしれないって思ってた」

「索敵には引っかからなかったな」

 グラーフの言葉にレオナルドも頷く。《神々の義眼》を通じて索敵支援をしていた。だから、敵艦はいなかったと同意できる。

「とすると、昼のうちに大艦隊で攻めてきた、……のかな?」

「そうだろう。……まあ、」グラーフはビスマルクに視線を向け、笑う「昼食も、思ったより長引いたことだしな」

「…………し、仕方ないじゃないっ!」

 うがーっ、と怒鳴るビスマルク。ちなみに、レーベとマックス、プリンツはこくこくと頷く。

「あ、あの、……ゆー、可愛いの、見てもらって、時間、使っちゃった。

 だめ、だったのかな?」

 自分のせいで初動が遅れたかもしれない。……ユーは怒られると思って俯く。グラーフは彼女の肩を叩く。

「いや、そんなことはない。

 可愛い格好をしたいというのは女性にとって当然だ。ましてや、それが大切な人の前ならなおさらだ。

 ユーにとって、提督やレオは大切な人だろう?」

 こくん、と頷く。

「なら、自然なことだ。何も間違えてはいない」

「そうよっ! 間違えてはいないわっ!」

 我が意を得たり、ビスマルクは胸を張り、グラーフは優しく微笑む。

「提督が似合う服を決めるので、さんざん時間を食い散らかしたのは?」

「…………大切な人に素敵な格好をしてほしいっていうのは、自然な事よっ!」

「当人がげんなりするほどするなバカ」

「バカっていうなーっ!」

 見下しの視線にビスマルク怒鳴る。

「といっても、次からあれだけの動員は、ないんじゃないかな?」

 レーベがぽつりと呟く。だって、

「えと、…………あの、彼が、ほとんど、壊しちゃったんだよね?」

「……そうだね」

 ウィリアムも頷いた。

 彼、絶望王。あの光景を思い出したのか、しん、と静まる。

 旗艦が撤退したのち、霧が晴れた。だから、その光景がよく見えた。

 数十といる敵艦。それが空中に縫い止められ、そのまま、青い炎に包まれた。

 

 思い出す。禍々しくて、神々しい、美しい。悪夢のような光景。

 その、青い炎に照らされて紅の瞳を輝かせる、悪魔。

 

「…………だから、あの規模の艦隊は、もう、ないだろう。

 建造をするにしても、時間がかかるはずだ」

 グラーフの言葉に皆が頷く。つまり、問題は、

「あとは、あの旗艦のことだね。

 レオ君のおかげである程度は見えたけど、僕は知らない娘だったよ。けど、」

 プリンツに視線が集まる。……ため息。

「うん、……私も、この形で会うのは初めてだったけど。

 けど、わかるよ。彼女はシャルンホルスト。ツェルベルス作戦で一緒だったの」

「シャルンホルストか、……相当の強運艦だな」

「霧、ってことでもしかしたらと思ってたけど。

 なんていうか、不吉な相手ね」

 ビスマルクもため息をつく。けど、

「あの霧も、その娘が出してるのかな? ……ビスマルクさんたちもああいう事出来るの?」

 レオナルドが不思議そうに首を傾げた。ビスマルクたちはかつての艦船の力を持つ。……けど、霧の発生は艦船の力とは思えない。

 だから、当然。

「そんな事、出来ないはず、よ」

 ビスマルクが眉根を寄せる。状況からすればあの霧を発生させているのはシャルンホルスト、だろう。

 けど、そんなことができるとは思えない。

「なにか、特殊な能力を持っているのかな?

 レオナルド、あの霧、どう見えた? 僕はHLを覆う霧とは別と思うけど」

「同感。どっちかっていえば存在を隠す、っていう感じ。

 《神々の義眼》も、少しぼやけた感じだった」

 けど、プリンツはあの時を思い出して、

「前回通り、誰かが探照灯を向けてくれれば、私、今度こそ抑えられるよ。

 前はいきなり知った相手でびっくりしちゃったけど、今度はそんなことしないから」

「プリンツ、無理しなくていいよ」

 ウィリアムは困ったように告げる。なにせ、顔の知った相手なのだから。……けど、

「私は、……プリンツ・オイゲン。

 姿は変わっても、それでも、大切な人を害する外敵を排除する、その意思だけは、絶対に変わらないです」

 ウィリアムを真っ直ぐに見て、告げる。だから、

「…………うん、任せた」

 真っ直ぐに見返し、応じる。一片の疑念もない真っ直ぐな信頼の言葉。

 それを受けて、プリンツは幸せそうに微笑む。

 大好きな人から向けられる信頼。それは、とても幸せなことだから。

「うーん、……けど、夜戦は避けた方がいいと思うんだ」

「そうだな、ただでさえ霧で視界が悪くなるうえ、夜ではなおさらだ。肉眼ではほぼ見えなくなる」

 《神々の義眼》のサポートがあれば問題ないだろうが。レオナルドへの負担もある。視界確保のためだけに使いたくない。

 なら、……マックスは一つ、二つ、と指を折り、

「午前中に出撃、索敵で、午後開戦、で撃破がいいわね。

 午前中に発見できなければ撤退、遠洋で捕捉されて夜に襲撃されたらたまったものじゃないわね」

「同感だ」

 頷く。

「で、会敵した場合は、……レーベ、マックス、二人のうち、どちらかで探照灯照射。敵艦の位置を知らせながら砲撃ね。

 もし、敵艦に僚艦がいた場合は、グラーフ、ユーと私が僚艦を撃破。終わり次第、旗艦への集中砲撃でいいわね?

 私たちの護衛は、マックスかレーベにお願いするわ。そして、」

「うん、シャルンホルストの抑えは、私がやる」

 プリンツが頷く。…………「え?」

「提督?」

 不意に上げた彼の声。視線が集まる。…………溜息。瞳を閉じる。そして、

「ったく、しんよーねーよなー」

 深紅の瞳が開かれる。眼鏡を放り投げる。かつんっ、と音。

 彼は髪を掻き上げる。笑う。

「よお、親友、それと、小娘ども。

 おもしれーこと話してるから口挟んでやるよ」

「君か」

 警戒するビスマルクたち。そして、ため息をつくレオナルド。

「ほんっっきで警戒されてんなオレ」

 そんな一同を見て楽しそうに笑う彼。彼はレオナルドに視線を向けて、

「ちゃーんとウィリアムに同意とってんぜ?

 例の、シャルンホルストの事を話すってな。嘘はつかねぇよ。オレはな」

「本当、に?」

 恐る恐る、ビスマルクは口を開く。彼女の問いに彼は頷いて、

「当たり前だ。

 オレにも口出しさせろよ。悪魔はいつだって人恋しいんだからよ」

「よく言うよ」

 絶望の名を冠する彼にそんなこと言われても、と。レオナルド。

「ま、約束は約束だ。ちゃっちゃと行くか。

 手っ取り早く言えばあいつはオレ、……オレ達と同じだよ。あいつにゃあ悪魔が憑いてる。

 シャルンホルストの洗礼親の小娘が、己の命を代償に呼び出した悪魔がな」

「あの霧は、その悪魔の力、って事?」

「そーだ。守ってほしいっていう、小娘の願いを聞いた悪魔のな。

 めずらしーよなー、悪魔憑きだぜ」

「君の友達?」

「なわけねーだろ。知らねーよ。

 ま、ちらっとは、」

 とん、と、彼は自分のこめかみを叩く。同時に、「え?」

 彼の眼前にそれが投影される。……それは、紅色だが、間違いない。《神々の義眼》が投影されたときに見える虚像。

「何なのかは大体視えたけどな。

 守護天使、……ってーか、守護悪魔? みたいなもんだな。ま、天使と悪魔なんてどっちも似たようなもんか。変わんねーよな。どっちも」

「っていうか、君、それ? 《神々の義眼》?」

「なわけねーだろ親友。

 その、《神々の義眼》を使わせてもらったときにどんなものか観測出来た。あとは、解析して再現するだけだよ。ま、流石は《神々の義眼》、再現は完璧じゃねーし、なかなか面倒なんだけどな」

 けど、それを成した。……改めて、眼前に存在する彼の桁外れを認識する。

 虚像が消える。一度目を閉じ、一息。

「えーと、その、シャルンホルスト? そいつの人格はぶっ壊れてるよ。

 ま、人より不安定なてめぇらだ。オレみたいなのを受け入れられるわけはねぇな」

 彼は、くつくつと笑う。

「ぶっ壊れた人格の中に残った数少ない存在意義。

 戦艦とは撃破するものだ、ってー考えだけ残って近くにいるものを片っ端からぶっ壊す幽霊戦艦と、小娘の命の代価にそれを守護する悪魔。それがあいつだな」

 それが、敵艦。シャルンホルスト、だと。悪魔が語る。

「で、……ものは相談だが。オレがそいつぶっ壊してやろうか?

 なぁに、金はとらねぇよ」

「代わりにウィリアムを取るんだろ?」

 レオナルドの言葉に「わかってんな親友」と応じる悪魔。

「あなたの力は借りないわ。

 敵艦は私たちが撃破する。提督は、私たちが守る。それだけよ」

 ビスマルクの言葉に、皆が頷く。くつくつ、と笑う悪魔。

「はは、…………なあ、小娘ども。

 確かに、お前らは人だな。変な魂持ってるかもしれねぇけど。それでも、お前たちは人だよ」

「へ? ……それは、どういう意味?」

 彼の言葉にビスマルクは首を傾げる。「しらねーよ」と、彼は投げ遣りに応じる。

「で、それともう一つ。こっちはオレの用事だな」

 彼は、今の自分の体、ウィリアムの胸を軽く叩く。そして、

「ウィリアムが消えたら、まあ、この体が完全にオレのものになったら世界を壊す」

 さらり、と告げた。あまりに現実感のない言葉に、皆が眉根を寄せる。

「そんなこと、可能なのか?」

 グラーフが問う。確かに、彼の実力は桁外れに高い、あるいは一国の正規軍相手に真っ向から戦い、打破できるかもしれない。

 けど、相手が世界になると、それはまったく別問題だ。

 現実的ではない。……が、不可能と断じる事も出来ない、目の前の悪魔がそもそも現実的な存在ではないのだから。

「ああ、簡単だぜ。世界中で大崩落を起こす」

 大崩落、……その意味を知る皆は息をのみ。その沈黙を彼は笑う。

「規模が小さいだけで、異界と現世は、世界中で、何度も繋がっていたんだよ。

 ほとんどが自然修正で消えてたけどな。紐育のそれは、あるいは自然修正が利かなかったのが不自然かもしれねぇな」

 そして、彼は窓に視線を向ける。指鉄砲を向ける、冗談めかした声。

「ばぁんっ」

 格子で区切られた窓ガラスの一画が割れ、そこから霧が噴出した。

「なっ?」

「霧っ? シャルンホルストっ?」

 とっさに警戒するビスマルク。けど、それを知るレオナルドが青ざめで呟く。

「違う、これは、異界の霧だ」

「そういうこと、だ。そこを異界とつなげたんだよ」

 割れたガラスはかすかな光に包まれる。異界からの霧がゆっくりと揺蕩う。

「世界中、異界と世界の境界を砕いていく。ふさがらねぇようにしてな。

 境界が穴だらけになったら、最後にでっかい花火をぶちかましてやるか」

 気の遠くなる作業かもしれないが、テレポートが使える彼なら可能かもしれない。

 ぱちんっ、と指をはじく音。窓に空いた穴がふさがる。

「確かに、それなら世界を壊せるかもしれないね」

「フェムトでも誘うかなー

 あいつらヒマしてそうだし、ヒマつぶしにはちょうどいいだろ?」

「ヒマつぶしで世界を壊すなよ」

「鼻歌交じりに世界を救ってそうなやつはいう事が違うな」

 思わずぼやいたレオナルドに彼は笑う。

「どうだ? 少しはやる気が出たか?」

「もともと、貴方に提督を渡すつもりはないわ。

 助言は感謝するけど、さっさと引っ込みなさい」

「つれねーなー

 オレなりにやる気を出してやろうとしたのによ。こいつと世界を守りたかったら頑張れよ、ってな」

「それ、脅迫っていうんだよ」

 呆れた、とぼやくレオナルド、彼はけらけら笑う。

「あ、あの、……えと、絶望、王」

「んー?」

「なん、でですか?」

「あ?」

「なんで、助言、してくれたの?」

 彼は作戦の成功にこだわる必要はない。むしろ、失敗すればウィリアムの体を得られる可能性は上がる。

 深海凄艦の脅威も関係ない。各国のシーレーンが閉ざされようと彼には知ったことではないだろうし、仮に直接襲撃されたところで口笛交じりに蹴散らせる。

 助言をする理由は、何もないはずだ。

「ああ、それか、…………なに、ヒマ人にナンセンスが必要だ、とか言われてな」

 彼は、楽しそうに、心底楽しそうに笑った。

「楽しむんだよ。在るからには、余興が必要だからなあっ!」

 この、敗者復活戦も彼からすれば余興。ならば、楽しむだけだ、と。

「その果てが大崩落だっ! 世界の全部が壊れる。その先にあるもの、楽しそうじゃねえかっ、なあっ、親友っ!」

「残念だけど、僕はそこに楽しみを見出すことはないからね。

 克って止めるよ。絶望王」

「やってみろよ。トータスナイト」

 彼は髪をかき回す。一度目を閉じる。

「…………はあ、……まさか、世界の危機に直結するなんて」

 青い瞳、ウィリアムは困ったように呟いた。

 

 机上での戦闘、改めての作戦会議。それで午前中は終わった。

 途中で席を外したウィリアムとレオナルドから昼食が出来たとの放送。ビスマルクたちは食堂に向かう。

 それぞれ椅子に座り、食事開始。ついでに、

「午後は近海での演習ね。

 明日、朝一で遠洋まで出撃して敵旗艦の撃破を狙うから、今日は早めに休むわ」

 明日、終わらせる。と告げるビスマルク。ウィリアムとレオナルドも頷く。

 だから、

「あの、レオ君、提督も、……その、終わったら、一日時間、くれるかな?」

 皆で、話し合ったこと。

「一日、みんなと一緒に、遊びたいんだ。

 …………その、ちょっとだけ、普通の、ただの女の子として、一緒にいて、いい?」

 軍船の魂を宿した兵器ではなく。

 ただ、普通の女の子として、一日。大切な人と一緒にいたい。

 作戦が終わったら、一夜の夢、パーティーをして、それぞれの場所に帰る。…………けど、

 一日でいい。普通の女の子として、傍にいて欲しいから。

「ああ、もちろんだ」「うん、いいよ」

 当然、レオナルドとウィリアムにその思いを断る理由はない。否、多少の無理をしても通す。

 即答に、レーベも、皆も安心したような表情。……ふと、レオナルドは、少し意地の悪い表情。

「じゃあ、提督ってのは不自然だね。

 一人の女の子なんだから」

「ん、……ああ、それもそう、かな?」

 レオナルドの言葉に首を傾げながらも同意するウィリアム。提督、と軍属を意識させる呼び名はどうか、と。

「提督、だめ?」

 ユーも不思議そうに首を傾げる。レオナルドは頷いて、

「その日は普通の女の子として、ってレーベも言ってただろ?

 提督って軍属の人に対する呼び方だし、公私混同は避けないと」

「うん、…………えと、ぶらっく?」

「あ、……いや、ウィルがいいかな」

 ウィリアムの言葉にユーは首を傾げる。レオナルドは慣れているからいい。けど、

 ブラック、……ブラック・アンド・ホワイト、その片割れは、もう、いない。

「うん、……うぃる」

「ああ、それでいいよ。ユー」

 嬉しそうに「うぃる」と繰り返すユーに微笑むウィリアム。

「よし、では私は弟くんと呼ぼう」

「なぜ?」

 そして相変わらず妙なことを言い出すグラーフに突っ込み一つ。

「む? こういうのはだめか? …………むむ?」

 首を傾げるグラーフ。

「なんでいきなり弟になるの?」

 レオナルドの問いにグラーフは頷いて「ジャパニメーションにそういうのがあった」と、応じる。

「教材考え直した方がいいよ」

 そっちは放置。

「ウィル君、かあ。

 なんか新鮮だね。いつも提督、って呼んでたから」

「そうだね。……まあ、本音を言うと何でもよかったんだけどね」

 別に提督でなくてもよかった。と、ウィリアム。もともと、柄じゃない。

「確かに、ウィル、あんまり軍人って感じしないわ」

 だから、マックスの言葉に苦笑するしかない。レオナルドは頷く。

「僕さ、久しぶりに会ったブラックがすっごいがちがちの軍服だったからなあ。

 一緒にいた妖精さんがぶら下がってて、笑っちゃったよ」

「似合ってなくて悪かったな」

 似合ってるとは思ってない。けど、それで笑われて面白いわけがない。

 不貞腐れたように応じるウィリアムに「ごめんごめん」と謝るレオナルド。

 そして、

「う、うぃ、……る」

「うん?」

 なぜか、いっぱいいっぱいの表情で呼びかけるビスマルク。

「うぃ、る」

「あ、うん、それでいいよ」

「ウィル」

「え、……と、ビスマルク?」

 いっぱいいっぱいだったと思ったら急に顔を赤くして俯くビスマルク。どうしたんだろう? と、ウィリアムは覗き込もうとして、

「そこまでだ。弟くん」

「え? ……ってか、弟くん決定なんだ」

「ああ、レオをどう呼ぼうか今夜勉強するつもりだ。

 だが、それは問題はそれではない」

 遠くから「さっさと寝ろよ」と言われたがとりあえず無視。

「呼び方を変える、という事は関係が変わる、という事だ」

「そうだね」

 一人の女の子として、と。そう告げたレーベは頷く。つまり、

「今、ビスマルクは弟くんの部下ではなく、一人の女性となった。

 つまりこれは、あ「砲撃、開始っ!」」

 打撃の音、崩れ落ちるグラーフ。

「ちょ、直接的な砲撃だね」

 腰の入ったストレートを決めたビスマルク。彼女は胸を張って、

「それはいいのよ。それより、そういう事だから楽しませてもらうわよ。ウィル、レオ」

 ちょっとぎこちなく二人の名を呼ぶビスマルク。彼女の言葉に二人は頷いた。

 

「プリンツは、なんとお呼びすればいいのでしょう?」

「今まで通りでいいんじゃない?」

「………………兄さまの、ばか」

 

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