トータスナイトが基地に着任しましたっ!   作:林屋まつり

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六話

 

「相変わらず、これは凄いな」

 《神々の義眼》。グラーフはその視界を得て小さく呟く。

「その視界、私も見てみたい」

 ぽつり、マックスが呟く。聞いた話では艦載機の視界。空を駆け回る視点。興味がある。

「もう、だめだよマックス。

 レオ君にだって負担がかかるんだから」

「…………解ってる」

 頷く、グラーフは警戒しながら苦笑。

「午後、敵艦が来なさそうなら頼んでみるか?

 視界の共有だけならあまり負担もかからないようだし、…………いや、慣れておくためにも一度試してみたほうがいいかもしれない」

「そう、……うん、お願いしてみる」

 マックスは微笑して頷く。「…………む?」

「グラーフ?」

「敵艦発見。真っ直ぐこちらに向かってきている。

 レーベ、マックス、敵艦載機は?」

 問いに、二人は上空警戒、「…………なさそう」

「航行速度も速くない、か」グラーフは無線を口元に寄せて「視界の拡大を頼む。あと、レーベ、マックスと共有」

『了解』

 ウィリアムの声が聞こえる。術師ではないレオナルドに妖精の技術を介する無線は使えない。見る事はできたらしいが。

 ともかく、視界が拡大する。マックスは驚きに目を見開き、レーベが呟く。

「軽空母、駆逐艦が三、……それと、雷巡、かな」

「そうだな」

 距離はまだ大きく離れている。なら、

「軽空母が発艦したら、先制爆撃を行う。その隙に距離をつめて砲撃戦だ」無線を耳元に寄せ「敵艦隊を捕捉した。軽空母が一、駆逐艦が三、雷巡が一、私たちでも対応できると思うが、ビスマルク、念のため出てくれ」

『了解。ビスマルク、出撃するわ。

 無駄足になることを祈るわね』

「手を煩わせたら提督の私物を一つやろう」

『僕のっ?』

『ビスマルクの戦い、見せてあげるわ!』

「よし、レーベ、マックス。

 ビスマルクが来る前に片づけるぞ」

「ものすっごい速度で突撃してきそうだね。ビスマルク」

 レーベが中途半端に笑って呟いた。

 

「……あれが、深海凄艦、か」

 艦載機の視界越しに見たその姿。レオナルドは呟く。

「怖い?」

 きゅっと、そんな彼の手を握るユー、レオナルドは苦笑。

「どうだろうね。見た目は、HLにいるの方がとんでもないのがいたけど」

 だから、外見が怖い、とは思わない。深海凄艦より外見が怖い存在なら、HLにはごまんといる。

 けど、

「無機質、だなって」

 どれだけ異形であろうと、HLの住人は確かに命ある存在だ。そこには確かに感情の色がある。

 けど、そこにいる深海凄艦にはそれがない。《神々の義眼》はユーたちと同様に軍艦を映す。けど、ただそれだけ、文字通り、軍艦を人と同じサイズにしただけという印象。間違えても、ユーたちに見えるような心は存在しない。

 それを悲しいと思うか、…………レオナルドは軽く首を振る。

「接敵だ」

 

「偵察機を確認したよっ!」

 レーベが告げる。同時に対空射撃。そして、

「来たか。攻撃隊、発艦始め! 蹴散らすぞ!」

 グラーフがさらに艦載機を飛ばす。索敵のためではなく、偵察機の撃墜のためではない。

『マックス、レーベっ、対空射撃の補助に入るね』

 三人の視界から艦載機の視界が消える。代わりに、レーベとマックスの目が強化される。二人が目を見開く。

 《神々の義眼》は見えないものを見るだけではない。動体視力、深視力が跳ね上がる。高速で飛翔する艦載機を見据えて、

「ふぅん、……これは、凄いね」

 跳ね上がった動体視力は艦載機を確実に捕捉。深視力は対象までの距離を精密に把握。

 結果、二人の持つ機銃からばらまかれる銃弾は機銃とは思えない精度で艦載機を撃ち落とす。そして、

「爆撃成功。駆逐艦を一つ撃沈、雷巡を中破。

 砲撃範囲に入った。マックスっ! 砲撃戦を始めるっ」

「了解。提督、私の視力強化はもう大丈夫。レオに伝えて」

 告げる。同時にマックスの視界が戻る。軽く頭を振る。

「これ、ギャップには慣れが必要ね」

「そうだろうな」

 頷き、二人は砲を構える。

「接敵までに雷巡を落とす。

 そしたら私は軽空母の懐に入るから、駆逐は任せた」

「そう、……艦載機の掃除もそのころには終わるでしょうから、大丈夫ね」

 

 前に進み出るマックスとグラーフ。レーベはそんな二人の上を脅かす艦載機を撃ち落とす。

 思うことは一つ。凄い、と。

 いつもなら弾幕に頼ってしまう対空射撃が、面白いように当たる。確実に、一機一機撃墜していく。

 急ぎ、艦載機を片付けなければいけない。けど、………………

「ってっ!」

 砲撃する。艦載機を撃ち落とし、レーベは次の艦載機に視線を向けた。

 

 砲撃の音。グラーフの放った砲撃が中破した雷巡に突き刺さる。

 撃破、それを横目で確認し、さらに前へ。

 横目に、マックスが機銃でけん制しつつ、生き残った駆逐艦に砲撃を叩き込むのを確認。「この距離では、艦載機も使えないだろう」

 近接。至近距離から砲撃を叩き込む。

「はっ」

 軽空母は、まだ沈んでいない。大破したが、それでも「逃げないのは、そういう機能がないからか」

 逃げるという機能がないのか、あるいは、逃げられない理由があるのか。……感情の見えないその姿からでは判別ができない。

 だが、関係ない。

「悪いが、この先には私たちの守るべきものがいるのだ。

 だから、通すわけには、いかない」

 軽空母は真っ直ぐに突撃してくる。グラーフはそちらに砲を向けて、

 

『グラーフっ! 後ろっ!』

 

 その声を聞いて、レーベの視界は強制的に移動した。

 視界には水面下を走る何か、狙いは、軽空母の突撃に意識を割いているグラーフ。

 片手の機銃で艦載機を落としながら振り返る。もう片手に握る砲を向ける。砲撃。

 魚雷が砲撃に穿たれて誤爆、直近の爆発にグラーフの手が止まる。軽空母は、そのまま突撃する。激突。寸前に、

「発射っ!」

 長遠距離からの砲撃が、グラーフの髪をかすめ、軽空母を吹き飛ばした。

 

 直後、爆発。

 

「艦隊が帰投した。あぁ、作戦は……終了だ」

「おかえり、グラーフとレーベが小破ってところね」

 プリンツの言葉に頷く。艦載機の撃墜中にレーベが小破、そして、魚雷の誤爆に巻き込まれてグラーフが小破した。グラーフは頷く。

「この程度で済んだのはレーベが対処してくれたからだな。感謝する」

「あ、…………う、うん」

 魚雷の直撃を受ければもっと被害は大きかっただろう。グラーフの言葉にレーベは小さく頷く。マックスがかすかに眉根を寄せ、

「ちょっとちょっと、私の活躍は?」

 ずずい、とビスマルクが身を乗り出す。突撃してくる軽空母を打ち払ったのは彼女だ。

 グラーフは頷き、

「わかった。私が確保している提督コレクションの中から一つ進呈しよう」

「え、ええ、そうね。活躍相応の報酬は当然よねっ」

「っていうか、グラーフっ! 兄さまコレクションってなにっ?

 私も欲しいっ!」

「そ、そうよっ! 提督の私物を集めたらだめよっ! 一つなんて言わないでもっと進呈してもいいのよっ?」

「落ち着いてビスマルク。言ってる事が前半と後半でずれてる」

 不敵な表情で笑うグラーフと彼女を睨むビスマルク。なんか不思議な言い争いをしているな、と思いながらマックスは割って入る。

「むー、……ま、ともかくグラーフとレーベは入渠ね。

 兄さまが用意してくれたから、すぐに行けるわ」

「ああ、すまない」「うん、ありがと」

 

 入渠に向かった二人を見送って、ビスマルクは一つ頷く。

「あれがレオの、《神々の義眼》ね」

「姉さま?」

 ふぅむ、と頷くビスマルクにプリンツは首を傾げる。

「合流直前にね」

 思い出す、射程ぎりぎり、そこまで踏み込んだ時、唐突に強化された視界。

 まだ遠く、その姿が見える程度の遠距離から、視界が切り替わる、グラーフの表情まで見えた。

 距離感も、すべてが強化された。おかげで本来ならありえない、狙撃のような砲撃を成功させることができた。

 だから、

「ま、礼の一つでも言っておきましょうか」

 扉を開けた。

「あ、ビスマルク、プリンツ」「おかえりなさい、です」「おかえり、お疲れさま」

 ユーとレオナルド、そして、書類に視線を落とすウィリアム。彼は一度ビスマルクに視線を向け、申し訳なさそうな表情。

「ごめん、ビスマルク。

 午後から、プリンツとユーと、近海の哨戒をお願いしたいけど、大丈夫? 疲れてない?」

 少し気弱そうな、申し訳なさそうな声。ビスマルクは思わず抱きしめたくなったので、

「むぎゅっ」

「ええ、もちろんいいわ、私の活躍、ちゃんと見ていなさい」

 ウィリアムを抱きしめてどや顔のビスマルク。

「…………えーと、ビスマルクさん。ブラック、苦しそうだけど」

 おずおずと手を上げるレオナルド。彼の視線の先にはぺちぺちと力なく彼女の手をたたくウィリアム。

「あ、い、いいなっ! 私と代わってっ!」

「どっちと?」

 不意の問いに、プリンツは固まる。…………「に、兄さまを抱きしめるのも、姉さまに抱きしめられるのも、………………はっ!」

 閃いたらしい。プリンツは満面の笑顔。

「お二人の間に入らせてくださいっ!」

「あ、その手があったか」

「みんなでぎゅってするの?」

 割と切羽詰まった勢いでビスマルクの手をたたくウィリアム。大丈夫かな、とレオナルドは思ったので、

「あの、とりあえず、ブラック放してあげないと」

「レオっ、提督を抱きしめてはだめよっ!」

「抱きしめるかーっ!」

 真顔で素っ頓狂なことをほざいた戦艦を怒鳴った。

「ふ、……ふはっ。…………し、死ぬかと思った」

 解放されたウィリアムはその場に崩れ落ちる。

「えと、ごめんなさい、提督」

「死因は、何になるんだろうな。この場合」

「死因、窒息死、凶器、おっぱい」

「…………HLでも稀な凶器だなあ」

 おおよそ考えられる凶器はすべてそろうような街だが、さすがに実例はないだろう。…………あっても困るが。

「そ、そんなのいやだよ。…………ええと、ユーとプリンツも、いいね?」

「うん、ゆー、がんばる」

「に、兄さまが抱きしめてくれるならっ!」

「ええっ?」

「プリンツっ」

 どうしようか、頭を抱えたウィリアムの傍ら、ビスマルクが咎めるように怒鳴る。けど、

「……え、ええと、こ、こうでいい、かな」

 困ったように、プリンツのか細い体を抱きしめる。

「ん、……えへへ」

 ほおを紅潮させて、心地よさそうにプリンツは微笑んだ。

 

「…………はー、……ああいうの、緊張するなあ」

 まずは昼食、三人が執務室を出て、がっくりと肩を落とすウィリアム。

「好かれてるな。ブラック」

「同性ばっかりだからね。異性に憧れでもあるのかな」

「どうだろうな」

 たはは、と力なく笑うブラックにレオナルドは苦笑して応じる。

「それにしても、午前と午後に哨戒か」

「うん、一応ね。

 明日、午前中に、カルツ中将が来るから、その時はみんなにいて欲しいんだ」

「なるほど、午前中の分念入りにか」

「そういう事」さて、と、ウィリアムは伸びを一つ「僕はまた仕事に戻るよ。マックスに君の補佐を任せるから」

「別に補佐なんていらないよ」

「じゃあ監視。君の言う、音をあげる、無理はしない、は信用できないからね、親友」

 にっ、と笑ってウィリアムは部屋を出た。「なんだそれ」と、レオナルドはふてくされたような声。椅子に腰を下ろした。

 

「あ、……呼び出しだ。

 それじゃあ、私は行くね」

 入渠場、レーベとグラーフに付き合って反省会件雑談をしていたマックスは立ち上がる。

「ああ、提督とレオにはよろしく言っておいてくれ」

「うん」

 入渠場を出る。……ほう、と一息。

「さて、あの時は助かった。感謝する。レーベ」

「あ、…………う、うん。

 それより、ビスマルクにお礼を言ってあげて、軽空母の突撃、無事だったのは彼女のおかげなんだから」

「そうだな。あの距離からの砲撃を当てるとは、……いや、」

 砲の射程距離ぎりぎりだった。実際に当てられる有効な射程距離よりは明らかに遠い。

 その距離から、精密に砲弾を叩き込んだのだ。おそらくは、

「《神々の義眼》、か」

「……たぶん、そうだと思う。

 僕とレーベも、動体視力と深視力が強化された」

「あの、艦載機の撃破か。

 機銃であそこまで精密射撃とは恐れ入る」

「レオ君のおかげだよ」

「かもしれないな。本当に、いなくなるが惜しい」

 いなくなる、と。グラーフは呟く。

「これが終わったら、レオ君、帰るんだよね」

「そうだ。彼はHLに彼の居場所がある。

 そして、私たちはドイツに残り、海軍に属することになるだろう」

 なにせ、前代未聞の存在だ。最初から普通の人に混じって生活できるとは思っていない。

 戦場に出るにせよ、出ないにせよ。軍属になることは間違いないだろう。

 だからいう、惜しい、と。

 もし戦場に出るのなら、彼の目はこの上ない戦力になるだろう。けど、

「まあ、あくまでも私の希望だな」

 呟く。そう、……けど、これも理想だろう。

 戦場に出る身だ。いつ死ぬかわからない。生きて、それぞれの帰るべき場所に、さようなら、と言って別れる事ができるか解らない。

 だから、

「……それまで楽しくやっていけばいいか」

 幸いにも、ウィリアムもレオナルドも、十分に楽しい相手だ。やり残すことなく、後悔することなく、これから付き合っていけばいい。

 だから、とりあえず二人と酒でも飲むか。次に遊ぶ方法を思い浮かべ、グラーフは小さく笑みを浮かべた。

 

 ウィリアムはいくつかの書類に視線を落とす。…………不意に、時計に視線を向ける。

「そろそろ、かな」

 哨戒から戻ってくる時間だろう。

「妖精さん」

 呟く、と、執務室の机に二頭身の少女が現れる。妖精、と呼ばれる彼女たち。一部の例外を除き、術師にしか見えない彼女たち。

「どのようなご用件ですかー?」

 びしっ、と謹直な敬礼にまじめな表情。とはいえ口調は少し間延び。こんなものなのでウィリアムは気にしない。

「そろそろ、ビスマルクたちが戻ってくる時間だからね。

 燃料の準備をお願い」

「了解です」

 消えた。呼べばどこにでも現れる。必要なければどこかに消える。妖精はそんな存在だ。もとより故郷でその手の話はよく聞いていた。ウィリアムは特に違和感なくその光景を受け入れる。

 それよりも、

「そろそろ、本格的に作戦会議かなあ」

 レオナルドも合流した。ビスマルクたちの性能も、ほぼ把握できた。繰り返した哨戒のおかげで近海の敵艦はほぼ存在しない。

 それなら、あとは原因を破壊するだけだ。……ただ、

 ぐっ、とウィリアムは椅子に背中を預けて、伸びを一つ。

「どこにあるか、だよね」

 この近く、であることは間違いない。……が、それ以上はわからない。

 ビスマルクたちはそこから来たが。深海凄艦からの追撃で半死半生だった。レーベとマックス、ユーは大破し意識を失い、グラーフも大破、プリンツはレーベたちの曳航でふらふら。戦えるのはビスマルクだけで、彼女もいつ轟沈するかわからない状況だった。

 辛うじて離脱に成功した彼女たち。海上のどこから来たか覚えておけという方が酷だ。

 つまり、どこにあるかわからない。一応、深海凄艦の発生数が多い場所、と予想はしているが。近づけば撃ち落とされる。海域の特定はできない。

 哨戒から戻ってきたら、改めてレオナルドにも相談し、明日、カルツ中将から意見を聞く。必要ならLHOSのみんなにも協力してもらおう、と。

 だから、まずは、そのための資料作りかな。

 そろそろ入渠も終わるころ合いかな、と見当をつけ、ウィリアムは館内放送のスイッチを入れた。

 

「艦隊が帰還したわ。

 駆逐艦と遭遇戦があったけど完勝よ。さあ、褒めてもいいのよ?」

「うん、よく頑張ってくれたね。ありがとう、ビスマルク」

 どや顔のビスマルクはウィリアムの笑顔と感謝の言葉に頬を赤くする。

「もーっ、兄さまっ、私も頑張ったわっ!」

「そうだね。えらいえらい」

 頭を撫でる。プリンツは嬉しそうに目を細める。

「頭なでなで、いいな。

 ゆーも、なでなでして欲しい、です」

「あ、うん」

 好きなのかな、と。ユーの頭を撫でる。ユーも心地よさそうな表情。

 やっぱり、幼い子は頭を撫でられるのが好きなのかな、と。…………「あ、あの、提督」

「ん?」

「わ、私のことも、撫でてくれていいのよ?」

「え?」

 決して幼くない女性にそんなことを言われて、ウィリアムは固まった。けど、

「そういうの好きなのかなあ」

 とはいえ、比較対象は妹のメアリしかいない。もちろん、彼女はウィリアムに頭を撫でられることを良しとする性格ではない。よくて怒られる。

 よくわからないな、と。思いながらビスマルクの頭を撫でる。

「提督のなでなで、心地いいから、好きです」

「そう、まあ、このくらいならいつでもしてあげるよ」

 大したことじゃないし、と応じる。ユーは「嬉しい、です」と微笑む。さて、

「三人はちょっと待ってて、みんなで改めて作戦会議をするから。……えと、疲れてない?」

「ええもちろん大丈夫よ。

 あの程度のことで疲れるほど私はやわじゃないわ」

 胸を張るビスマルク。その傍ら、

「兄さまっ! 私疲れましたっ! きっと、兄さまにぎゅってしてもらうと疲れも吹っ飛ぶと思いますっ!」

 きらきらと迫るプリンツ。

「またっ?」

「ゆーも、ぎゅってしてほしい、です」

「ユーもっ? …………あー」

 がしがしと頭を掻く。ほんと、女の子って難しいなあ、と。達観。

「え、えと、こう、でいい?」

 手を広げ、プリンツとユーを抱きしめる。

「暖かい、です」「えへへー、兄さまー」

 安堵したような吐息を漏らすユーと、とろんとした表情のプリンツ。そして、

「て、提督っ! 私も疲れたわっ! だから、抱きしめなさいっ!」

「やわじゃないって言ってたよねっ?」

「い、いま疲れたのよっ! 疲れがぶり返したのっ!」

「……あの、ビスマルク、ちょっと落ち着こうよ」

 何言ってんだこの人は、と。そんな意図の視線もどこ吹く風、というか気づかないビスマルクは、ずずい、と迫る。

「提督にぎゅってしてもらうの、心地いいです。

 だから、ビスマルクも、してもらうと、喜ぶと思います」

「そうよっ! よく言ってくれたわね。偉いわっ! ユーっ」

「え、えーと、」

 ユーやプリンツと違い、ビスマルクはスタイルもいい、自分よりも年上の女性だ。さすがに、さっきみたいにはいかない。……けど、

 まあ、それで彼女が喜ぶならいいか。

 もともと戦闘に出ることはできない。提督とは言っても彼女たちの補佐が仕事だ。だから、その彼女たちの希望はできるだけ叶えたい。

 だから、

「こ、……こう、でいいかな?」

 顔を赤くして、困ったように自分を抱きしめるウィリアムに、ビスマルクは、自分を押しとどめるのに精いっぱいだった。

 

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