トータスナイトが基地に着任しましたっ!   作:林屋まつり

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八話

 

「ん、……あ、ふぅ」

 朝、プリンツはぼんやりと目を開ける。そして、

「んー、兄さまぁあ」

 ビスマルクに乗じてウィリアムからもらったワイシャツ。寝間着代わりにしていた。

 下着にシャツだけ、そんな格好でプリンツはにへら、と笑う。

 あの時、ぼろぼろで逃げ回っていたとき、もう、死ぬんじゃないかと絶望していたときに、助けてくれた。御伽噺の、騎士様のような彼。

 いつもの少し気弱そうな柔らかい表情も、いざという時の凛々しい表情も、「うーっ」

 そんな彼が着ていたシャツを着て、……そんなことを思い嬉しくて、プリンツはしばらくベッドでぱたぱたしていた。

 

「おはよっ、姉さまっ」

「ええ、おはよう。プリンツ」

 妙につやつやした表情のビスマルク。そして、

「おはよう」

「ええ、おはよう。マックス」「おはようございまーす」

 部屋を出るマックス。そして、三人で食堂へ。

「今日の午前中よね。中将が来るのは」

「ええ、そうよ」

 ビスマルクは頷く。レオナルドが加入して、本格的に深海凄艦打破のために動き出す。

 その前に方針を確認したい。そのために来るはずだ。つまり、

「誰も喪いたくない。か」

「提督の方針よね。嬉しいなっ」

 にこにこと笑うプリンツ。けど、マックスの表情は冴えない。

「マックス?」

「優しい、……っていうか、甘いわよね」

「まあ、それもそうね」

 首を傾げるプリンツを横に、ビスマルクは苦笑。

 いざとなれば命を懸けて民を守る。それが軍人だ。マックスたちも例外ではない。…………けど、

「そうだけど、けど、必要なことだと思うよ。

 じゃないと、……提督たちも、悲しむと思う」

 悲しむどころではない。場合によっては、消えない傷を背負う。……妹を喪った。ウィリアムのその言葉に、深い、深い悔恨を感じたのだから。

「うん、そうね。……だから、私たちは沈むわけにはいかない。

 じゃないと、二人の心まで、壊れてしまう」

 そんな軍人は、いた。死ぬかもしれない戦場に出撃を命じ、そして、死なせてしまい、自責を背負って壊れた人は。

 軍人でさえそうなのだ。民、……それも、特に優しい二人では、心がもつかわからない。

 だから、

「巧くやるしかないわね」

 二人は海戦の素人だ。無茶を言い張りこちらの意見を聞かないわけではないが、だからこそ、自分たちがしっかりしなければならない。

 国を守るためにも、仲間を守るためにも、……そして、ここに来てくれた二人を守るためにも、

 マックスの言葉に、プリンツとビスマルクは頷いた。

 

「あ、おはよー、マックス、ビスマルク、プリンツ」

「お、おはよー」

「おはよう。三人とも」

「…………おはよ。けど、……」

 ビスマルクはきょとん、とする。プリンツとマックスも不思議そうな表情。

 首を傾げる。三人を代表してビスマルクは問う。

「なんでグラーフ、離れてるの?」

 食堂にある机。机の端にある椅子に座るレオナルドと、その隣に、ちょこん、と座るレーベ。

 そこから席を空けてグラーフが座っている。

 喧嘩でもしたの? と、ビスマルクは思うが。グラーフもレーベも喧嘩をするような性格ではない。

 不思議そうな表情の彼女たち、グラーフは「ああ」と、

「いや、今日は最初にレオが来て座っていたんだ」

「そう」

「で、私が来て、レオの隣に座ったんだ」

「まあ、近くよね」

 近くから座っていくのなら、確かにレオナルドの隣になる。だからビスマルクも頷く。

「次に来たレーベに、睨まれた」

 淡々と、グラーフは告げた。………………………………視線の集中を感じたレーベが俯いた。

 ………………………………………………………………「べ、別に、睨んだわけじゃあ、ない、よ」

 ………………………………………………………………「た、…………あ、あうー」

「ま、まあまあ、……ええと、…………ほら、朝食、朝食にしようっ」

「安心しろ、レーベ」

 グラーフは優しい表情。彼女は微笑んで、

「その椅子の座り心地がいいのだろう。

 そうだな、食事はリラックスしてとる事が大切だ。椅子の座り心地は大切だ」

 がくがく頷くレーベ。レオナルドはさすがに無理があるだろ、と。思ったが沈黙。

「そ、そうね、い、椅子の座り心地は、大切よね」

「ええ、……た、大切、大切よねっ」

「……ふーん、そう、…………まあ、レーベがその椅子がいいなら、いいと思うわ」

 生暖かい視線と優しい笑顔。レーベはグラーフを今度こそ軽く睨んだが、彼女は鷹揚に頷く。

「どうだろうか? 『レーベ専用』と書いておくのは」

「いらないよっ!」

「おはよう、……って、どうしたの? 朝から叫んで」

「おはようございます。

 あの、楽しいお話なら、ゆーも、したいです」

「あ、そうだね」朝食を持ってきたウィリアムとユー、ウィリアムは微笑みユーを撫で「あとは僕が持ってくるから、ユーもお話ししておいで」

「え、……ええと、…………い、いいです。提督のお手伝い、します」

「そっか、ありがと。ユー」

 柔らかく微笑むウィリアム。がたっ、と音。

「ビスマルク、プリンツ、どうしたの?」

「私のことを頼ってもいいのよっ?」「私もお手伝いしますっ」

「そう? じゃあお願い」

「じゃあ、僕も手伝うよ」

 立ち上がる。けど、ウィリアムは苦笑。首を横に振って「十分だよ。ありがとな」

「そか」

 座る、……ふと、ウィリアムは思い出したように、

「そうそう、今日はカルツ中将が来るから、みんなは午前中は残ってて、来たら館内放送で呼ぶから集まるようにね。

 特に、レオナルド、中将が会いたがってたよ」

 その言葉を聞いて、…………ふと、妙な話だな、と思う。

 自分は、目が特別なだけの、本当に普通の、ただの年相応の男でしかないのに、

 どうして、軍の人がそんなに尊重してくれるのか、と。

 

「軍か、」

「姉さま?」

 ベッドに寝転がるビスマルクの呟きに、遊びに来ていたプリンツが問いかける。「ううん」と、

「この後、私たちは軍に属することになるのよね。きっと」

「うん」

 それは、残念だけど、仕方のない事。

 LHOSとも、HLとも、違う場所。

 けど、

「けど、提督にも、レオ君にも、また会えるよねっ」

「それも、今日決まるかもしれないわね」

 おそらくは、改めて自分たちの処遇の話もあるかもしれない。……唯々諾々と、従うつもりはない。

 絶対に、また、会いに行く。その意思を貫徹するための戦いは、これから始まる。

 ビスマルクは頷く。戦艦である自分は、旗艦としてみんなを束ね、みんなの希望を叶える。その、覚悟がある。

 だから、

「ええ、……大切だと思えた人と、これでお別れなんて、絶対に嫌よね。

 だから、」

 館内放送が響く。プリンツとビスマルクは、顔を見合わせて立ち上がる。

「行きましょう」

 

「やあ、こんにちわ。出迎えありがとうね」

 リムジンから降りたカルツは出迎えた二人に優しく微笑む。

 二人、ウィリアムとレオナルドは丁寧に一礼。

「さて、それじゃあ行こうか」

「「はい」」

 ウィリアムが先頭に立ち歩きだす。カルツとレオナルドはその後ろを歩く。

「どうだい、ウィリアム君、レオナルド君。

 少しは慣れたかな?」

「はい」「皆、仲良くしてくれています」

 ウィリアムも振り返り応じる。「それはよかったよ」とカルツ。

「そうだ。二人とも、作戦が終わったら時間は取れるかなあ?

 大将や皆が会いたがっていてねえ。どうだい? パーティーでも」

「えと、い、いいんですか?」

「もちろんだよ。

 二人、……と、彼女たちもだね。みんなに会いたいという人は多くいてねえ。はは、私が世話役を任せられて、結構羨ましがられたよ。

 本音を言ってしまえば是非とも来てほしいなあ。私の顔を立てるためにもね」

「…………あの、中将」

「ん? なんだい?」

「どうして、僕のことを、そんなに目にかけてもらっているんですか?」

 ウィリアムの問い、彼は楽しそうに笑って、

「ウィリアム君、君は術師として非常に優秀と聞いているよ。

 期待の若手術師、無視出来ないんだよねえ」

「僕は、そんなに優秀というわけじゃあ、ないです」

「当代最上位の術師が作り上げたHLの結界。

 第二次大崩落の時に、その最後の一つを再構築したのは君だと聞いているよ? 若いのだから、評価は素直に受け取りなさい」

「…………はい」

 何か言いたそうにして、けど、口を噤み、小さく頷くウィリアム。

「まあ、……そうした評価が面映いという気持ちも、…………まあ、あるかなあ」

「あ、曖昧っすね」

 のんびりと告げるカルツにレオナルドは思わずぼやく。カルツは豪快に笑って「おっさんになるとその辺の機微が適当になってなあ」

「そんなもんっすか」

「そんなもんそんなもん。

 まあ、そういうわけだよ。……LHOSやらに提出する書類は、……ああ、私たちが残務処理を押し付けた、という事にすればいい。何、パーティーも仕事の一環だ。嘘は言ってないなあ。

 もちろん、服は任せなさい。軍とはいえ上層部はそれなりにいろいろ呼ばれてなあ。いい仕立て屋との付き合いもある。そうだなあ。彼女たちのためにも後でカタログを送ろうかなあ」

 楽しそうに言葉をつなげるカルツに、レオナルドとウィリアムは言葉を挟めず、……だから、彼はだめ押しの言葉。

「彼女たちも、終わったら羽を伸ばす機会は必要だろうからねえ。

 どうかなあ?」

「「はい」」

 頷くしかないだろ、と。二人は全く同じ仕草で肩を落とし、応じる。

 カルツは楽しそうに笑った。

 

 執務室。そこにビスマルクたちも揃っている。のんびりしたおっさんとはいえ、カルツは中将に位置する軍人。揃って敬礼する。

「うん、……じゃあ、話をしようかなあ」

 そんな彼女たちを好ましそうに見ていたカルツは口を開く。一息。

 ウィリアムは先日、マーカーをつけた海図を広げる。

「このマーカーは、ビスマルクたちの逃走経路の一部です。

 それで、ここが発見した場所。多少の蛇行はあってもほぼ一直線なので、たぶん、この線上に洋上基地はあると思います」

 つ、と指を動かす。カルツは目を見開いた。

「驚いたよお、もうそこまで絞り込めたんだねえ」

「はあ」

 《神々の義眼》の成果だが、それを彼に言っていいのかウィリアムには判断がつかない。曖昧に応じる。

「それで、場所の絞り込みも出来たので、時間はかかっても、慎重に、拠点の捜索、確保に移ります」

 慎重に、その言葉を強調する。誰も沈ませない、と。

 もしかしたら、彼はその言葉に反対するかもしれない。……けど、絶対に譲らない。

 たとえ、それで自分の印象が悪くなったとしても、譲るつもりはない。

 その覚悟で告げ、カルツを見る。カルツは頷いて、

「うん、それがいいねえ。

 民間にも被害が出ている手前、あまり口外するわけにはいかないのだが、ただ、軍部としては特に急かすつもりはない。急かして彼女たちが死んでしまったらそれこそ、大事だ。

 ウィリアム君、戦闘は彼女たちに任せるのがいい。が、君はちゃんと彼女たちの報告を聞き、危ないと思ったらすぐに撤退させなさい。

 なに、一つや二つの撤退なんてすぐに取り返せる。引き際を見定めるのは重要なことだよ。恥じる事じゃないからねえ。そのあたり、レオナルド君、君の眼も期待していいかなあ?」

 問いに、レオナルドは「はい」と応じる。《神々の義眼》越しに彼女たちの状況はある程度見える。

「方針についてはそれでいいよお。

 ただ、彼女たちは少ないからねえ。出来るだけまとまって行動するようにね」

「もちろんです」

 ウィリアムは頷く。カルツは満足そうに笑って、

「それで、……まあ、場所が特定されているのなら、そちらに向かって敵艦を撃破しつつ、徐々に近づき、洋上基地を撃破、かな。

 いや、」

「中将」

 ふうむ、と呟くカルツ。やがて、ふむ、と頷いて、

「自動操縦の船を囮に出そうかなあ?

 侵攻の時間を教えてくれれば、こちらで手配しよう」

 ウィリアムとレオナルドはビスマルクたちに視線を向ける。戦うのは彼女たちだ。意思決定は任せるべきだろう。

 ビスマルクは僚艦たちに視線を向ける。そのうえで、

「ええ、お願い。

 囮は多ければ多いほどいいわ。……ただ、砲撃とかはなしね。私たちが巻き込まれたらたまらないわ」

「ふぅむ、……では、本当に囮だけだねえ。

 うん、わかったよお。それじゃあ、後で見本を用意しよう。その時に用意できる数も伝えるから、詳細はその時に決めて欲しいなあ」

「ええ、わかったわ」

「それで、場所のほかに、情報はあるかなあ?」

 問いに、ビスマルクは、考え、…………「ちょっといい? レオと、提督と相談したいのだけど」

「うむう、……では、」よいせ、とカルツは立ち上がる「私はちょっと席をはずそうかなあ」

 内々の話なのだろう。カルツにとってLHOSやレオナルドの所属するライブラとの接触は細心の注意を払いたい。余計なことを聞いて目をつけられるわけにはいかない。

「え、ええ、お願いね」

 少し、意外そうなビスマルク。その辺も後々教える必要があるなあ、と思いながらカルツは執務室を出た。

 

「それで、どうしたの? ビスマルク」

 部屋を出ていくカルツを見送って、レオナルドは問いかける。ビスマルクはため息。

「あの、基地の中で見たことも話そうと思ったのよ。

 軍の助力は、ありがたいからね」

「それがいいだろう。

 直接的な助けにならなくても、囮や物資などで協力してもらえることは多い」

 グラーフも頷く。ただ、

「その時のことを話すには、《神々の義眼》で、私の見た光景をレオにも見てもらおうと思うの。なにか、新しいことが分かるかもしれないし。

 その、……どの程度思い出せるかわからないし、ごちゃごちゃしてしまうと思うけど、いい?」

 以前、思い描いた内容をレオナルドは《神々の義眼》で読み取った。……その時は雑念が入ってしまったが。

 それを改めて、もう少し長時間行う。ビスマルクの提案にレオナルドは頷こうとして、

「あ、……いや。

 たぶん、ビスマルクさん一人なら、眼球が見てきた記憶を読み取れるよ」

 ビスマルクの目が見てきた過去。それを見る事が出来る。と、レオナルドの言葉にビスマルクは、じと、とした目で「じゃあ、洋上基地の場所探すときもそうしなさいよ」

「別行動とかあるかなー、って思って」

 それもそうだ、と同感なレオナルドは、一応、そういってみる。ビスマルクは溜息。

「それで、そのことをカルツ中将に話して大丈夫?」

「そんな大げさな」

 苦笑して呟くレオナルド。対してマックスは呆れた。と、ため息。

「レオ、その眼は凄い能力を持つ、と自覚をした方がいいわ。

 軍としても喉から手が出るほど欲しいと思うわ。……その眼に関してはもっと慎重になるべきよ」

「あ、……うん」

 そんなものかな、と思う。……けど、「いいよ」

「…………私が言ったことを理解したの?」

「した、けど、それでみんなの安全が少しでも確保できるなら、それでいいんじゃないかな?」

 笑顔で即答するレオナルド。……もちろん、その危険に対する理解がないわけではない。マックスの危惧も、わかる。

 その手の危険はHLにいくらでもある。眼球だけを取り出され、殺されそうになったこともあった。……けど、

「ま、危険があったらみんなが守ってくれるだろ」

 信頼か、あるいはただ、呑気なだけか。……マックスは処置なし、と肩を落とす。

「う、うんっ、僕、絶対にレオ君に手を出させないよっ!」

 嬉しそうに応じるレーベ。「声が大きい」と、レオナルドは慌てて彼女の口をふさぐ。

 苦笑。

「大丈夫、音は外に漏れないよ。

 このくらいのことは、僕でもできるよ」

「……いや、そうなのか?」

 確かにウィリアムは術師だが、遮音をそんな簡単にできるものなのだろうか? レオナルドには見当がつかない。

 まあ、出来るんだろうな、と思うだけにする。

「兄さま、凄いですっ」

 笑顔のプリンツ。「簡単なことなんだけどなあ」と、困ったような呟き。

「…………まったく、仕方ないわね。レオの呑気さはこっちでフォローしましょう」

 やれやれ、と肩をすくめるビスマルク。ユーは頷いて「ゆーも、れお、守ります」と、拳を握る。

「はは、ありがと」

「ああ、そうだ。レオには提督と様々な垣根を超えてもらう必要が「あるかーっ!」」

 最後まで言わせない、と。レオナルド咆哮。きらきら目を光らせるプリンツには視線を向けない。

「さて、そういう事なら、中将を呼ぶね」

 そんなやり取りを笑ってみていたウィリアムが部屋の外へ。すぐそこにいたらしい、ほどなくカルツが顔を出す。

「さて、話はまとまったかなあ?」

 問いに、頷く。彼が着席したのを見てビスマルクは一息。

「基地だけど、その内部のことを話そうと思うわ。

 それで、レオにもその時の映像を見てもらおうと思うの」

「うん?」

 きょとん、とするカルツ。

「《神々の義眼》で、ビスマルクさんの見た映像を僕も覗きみる。

 話は彼女から聞くけど、僕も何か気付くことがあるかもしれないから、…………まあ、補足程度に」

 なにかあるかなあ、と。…………ふと、

「いや、やっぱりみんなに見てもらおうか」

「…………え? そんな事もできるの?」

 きょとん、とするビスマルク。「まあ、たぶん」と頷くけど、おそらくはできるだろう。

 記憶を覗くのはそれなりに負担もあるが、視界の共有はそうでもない。

「………………いやあ、それはもうちょっと後にしようか。

 《神々の義眼》は使いすぎると発熱するって聞いているからねえ。今日持ってくる物資に冷却シートがある。終わったらすぐに冷却できた方がいいだろうからねえ」

「あ、そうですね。ありがとうございます」

 レオナルドの言葉に「楽しみだねえ」とカルツは頷き、

「さて、次は、君たちのことも話しておこうかなあ」

「ええ、お願い」

 ビスマルクは頷く。ほかの皆も、真剣な視線をカルツに向ける。

 今後の事、だろうから。

「そうだなあ。……まずは、君たちは私たち海軍に所属してもらうよ。

 何分、まだ君たちのことを一般に受け入れることはできなくてねえ。法的にも、生活的にもねえ。……いや、不便をかけるねえ」

「ええ、それはいいわ。

 わかっていたことだし、それについて異論はないわ。けど、」

 譲れない事。

「レオや、提督にまた会うことは、出来るのよね?」

 問う。対して、カルツは難し表情を浮かべる。

「それは、どうだろうねえ」

「出来ないの?」

 ビスマルクは身を乗り出す。その視線には、強い、警戒。

 カルツは手を振って彼女を制し、

「難しいなあ。……LHOSも、HLも、簡単に行ける場所じゃないからねえ」

 一息。

「ビスマルク君、君たちはこれが終わったら軍属となってもらうよ。

 ただ、その階級は低い。私たちも民の命を預かる運命があるからねえ。いくらなんでも、入ってすぐに上の階級を任せるわけにはいかないんだよ」

「そう、でしょうね」

 高い階級にはそれ相応の能力が必要だ。それがある、という信頼は、まだない。

 だから、

「そんな君たちを、LHOSやHLに派遣するわけにはいかないんだよ。

 特に、HLはね。あそこは異界の存在をかけて覇権を争う、とてもとても難しい場所なんだよ。行動一つで、国際間の紛争につながりかねないほどに、ね」

 千年の覇権を狙い合う場所。レオナルドは、そう、聞いていた。

 おそらく、ここ、ドイツも、その覇権を狙う一角なのだろう。

 だから、

「私たちは、君たちを通常の軍人として迎え入れよう。

 佐官以上なら、そうだねえ。LHOSやHLへの派遣も考えられるから、……頑張る事だねえ。もちろん、軍務の評価に手を抜くつもりはない。相応に、厳しい道のりは覚悟してもらわなければならないなあ」

「…………ええ、それで、いいわ」

 彼女たちが自分に向ける視線、その意思を見てカルツは嬉しそうに目を細める。

 その意思、その気概も含め、優秀な軍人が一人でも多くいることは歓迎したい。

「まあ、君たちの運用の問題もあるから、LHOSとの付き合いは密になるし、私たちも、引き続きウィリアム君を派遣してもらうように掛け合ってみるよ。

 うん、ただ、お別れは寂しいからねえ。レオナルド君、ウィリアム君、それぞれの場所に行っても、もし彼女たちが来たら会ってあげて欲しいなあ」

「もちろん」「うん、絶対に会いに行くよ」

 レオナルドとウィリアムは応じる。もちろん、それぞれの組織の事情はあるだろう。けど、

 それでも、会いたいのだから。……カルツは頷いて、

「ああ、もちろん、事前に連絡を入れてくれれば、私たちも出来る限りは融通しよう。

 距離があるから気楽に遊びに来てとはいえないが、……まあ、もし寄る機会があれば、歓迎しよう」

「「はい」」

 

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