トータスナイトが基地に着任しましたっ!   作:林屋まつり

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九話

 

「あの、カルツ中将」

「んー?」

 話し合いが終わり、ややのんびりした雰囲気の中、ぽつり、レオナルドが口を開く。

「海軍だと、僕、英雄みたいな扱いになってるんですか?」

 そんなこと言ってたなあ、と思い出しながら聞いてみる。カルツは頷き「もちろんだよ。第二次大崩落からHLを救った英雄、ってね」

 苦笑。

「そんなことはない、って思っているかなあ?」

「…………それは、……はい。

 僕、確かに眼はいいですけど、それ以外はほんと、何にもないんで」

「ふーむ」

 いい子だね、と、思う。そして、だからこそ言葉に迷う。「……第二次大崩落の顛末は、私も聞いているよ」

「はい」

「それでだねえ。私たちは軍人だよ。

 だからね、レオナルド君、私たちがあの場に居合わせたら、絶対にレオナルド君と同じ行動はとらない」

 言い切りの言葉に、レオナルドは不思議そうに彼を見る。

「そうだねえ。……真っ先にそこにいる人たちを避難させ、そして、そのうえで、遠くからその、絶望王、だったかな。

 彼を爆殺するだろうねえ」

 爆殺、と。その言葉を聞いてレオナルドは何かを言おうとして、カルツは苦笑、言葉を重ねる。

「ああ、そうするだろうねえ。それが一番、迅速で確実だからねえ。

 相手が親友であろうと、家族であろうと、ね。私は、彼を殺すだろうね。……そんなの、間違えていると思うかい?」

 問われ、レオナルドは口を開こうとして、…………閉ざした。なんて言っていいのか、わからなかった。

 間違えている、とは思う。けど、

「私たち軍人はね、レオナルド君」

 カルツは中将を示す徽章を軽く叩く。

「軍人となったときに、民を守る運命を担うんだ。

 一人でも多くの、ね。……そのためなら一人を殺すこともしよう。間違えているといっていい。それが、私たちの在り方。私たちを支えてくれる人たちへの、唯一の報恩なのだよ」

 だからこそ、

「だからね、一人の友を救うために、命を懸けて走っていく君が、とても眩しいんだよ。

 成すべき事を定めたことに後悔はしない。けど、成すべき事ではなく、成したい事のために命を懸ける君がね」

「そうですか」

 カルツのいう事は、わからない。……ただ、

 ただ、それでも、レオナルドにとって、彼の語る軍人は、彼の姿は、とても、誇り高いものと思えた。

 はは、と彼は笑って、

「まあ、……そういう事だよ。

 特に嫌味で言っているわけじゃあないから、気にせず聞き流してくれるとありがたいなあ」

「ええと、はい、努力します」

 ザップあたりが知ったらものすごくいじられそうだな、と。レオナルドは苦笑。絶対に嫌だ。

「さて、ウィリアム君、今後の予定だが、」

「はい」

 カルツがウィリアムに話の矛先を向ける。以後の方針を話し合うのだろう。……レオナルドは、彼の言葉をかみしめる。

 確かに、その言葉を聞いても自分はカルツのような行動はとらないだろう。おそらく、最後の最後まで、必死に友を助けるために足掻き続ける。けど、彼らを間違えているというつもりはない。…………苦笑。

 それぞれのやり方を貫き通す、……それで協力できれば一番だな、と。「レオ」

「ん?」

 不意に、声。

「マックス?」

 つい、と手を引かれた。

 

「一人を犠牲にして、大多数を生き残らせる。

 レオは、正しいと思う?」

 手を引かれるままに執務室から出てテラスへ。……ぽつり、マックスは問う。

 正しいか? 「思わないよ」

「ふーん、…………そう。

 じゃあ、レオが正しいのかな?」

 問いに、レオは苦笑。

「違うんじゃないかな?」

 どちらも否定。マックスは頬を膨らませる。

「真面目に答えて」

「どちらが正しいとも思ってないって事。

 確かに、」

 

 あの時に、彼に言ったこと。

 

「誰かが犠牲になっていいなんて、僕は絶対に思わない。

 たとえ、同じ意志を持つ人が、また、そこに立つとしてもね。けど、一人でも多くの人を救いたいって気持ちは間違いじゃない」

「…………そう、……正しい答えなんて、ないって事?」

「出来る事をすればいいんだと思うよ」

 結局は、そういう事なんだろうなあ、と。

「自分が後悔しないように、一番大切な事を決めて、それを違えないようにね。

 マックスにはビスマルクさんとか、仲間はたくさんいるだろ? だから、全部自分で背負うことはないよ」

 そもそも、戦う能力のない自分が彼のところにたどり着けたのも、仲間たちのおかげだ。

 進むことを選んだ自分、守ることを選んだ仲間たち、……結局は、そういう事。

「ふーん、……そう」

 マックスは安堵、……けど、それは表に出さない。

 出さないように、とん、と。

「ま。マックス?」

 腰を折る。額をレオナルドの胸に当てて、

「じゃあ、私が、大切な人を殺す選択を突きつけられたら、……私がそれを選択しようとしたら、止めて、……そんなことしなくていいよ、って、言ってくれる?」

「あ、ああ、もちろん」

 いきなりな行動に固まるレオナルド。けど、

「え、ええと、僕にできる事は、協力するよ。……か、《神々の義眼》もあるしねっ」

 眼下にあるさらりとした髪を意識してやや挙動不審なレオナルド。そして、殴られた。

「いだっ?」

「余計なことは言わなくていいのよ」

「ええっ?」

 なにがっ? と、驚愕の表情を無視して、マックスは執務室に戻った。

 

「お、来たねえ」

 カルツは眼下、基地の中庭に視線を落とす。

「来た?」

「補給物資その他だよ。レオナルド君に冷却用のシートとかね。それと、ビスマルク君たちのための、精製前の、弾薬や燃料もね。

 不足がないか、君たちも来てくれるかな?」

「うん」

 ウィリアムは頷き、皆で歩き出す。…………「精製前の?」

 ふと、気になったこと。ああ、とウィリアムは頷いて、

「みんなの燃料とか弾薬とかね。

 普通の弾薬や燃料を材料に妖精さんが精製してくれるんだ。……まあ、これが術師が必要な理由なんだけどね」

「そっか、……普通の人は妖精さんが見えない、か」

「そういう事」

「あの、提督、れお、ごめんなさい。ゆーたちのことで、巻き込んじゃって」

 しゅん、と肩を落とすユー。ウィリアムは笑って彼女を少し乱暴に撫でる。

「こーら、そういう事は言わない約束だよ?

 それに、そのおかげで僕はみんなと一緒にいる事が出来たんだ。僕にとってはそっちの方が重要だよ。妖精さんに感謝しないと」

「……その妖精さんの都合で、私たちはLHOSに大きな借りができましてなあ」

 ユーを撫でていたウィリアムが固まる。………………………………「すいません」

 ぺこり、頭を下げたウィリアム。一転、カルツは笑って、

「なに、それで私たちもウィリアム君と出会え、HLにいるレオナルド君にも出会えた。

 ならばそれで十分だよ。それに、その娘たちの助力はその負担相応以上が期待できるからねえ」

 笑う彼の視線の先にはビスマルク。彼女は胸を張って「ええ、存分に期待しなさい」

「それは楽しみだねえ。優秀な人材を迎え入れるのは大歓迎だよ」

 嬉しそうに応じるカルツ。そして、レオナルドも頷いて、

「僕も、みんなに会えてよかったって思ってる。

 だから、負担なんて思ってないよ」

「……うん、よかった」

 ユーは安堵したように応じた。

 

 中庭に出る。そこには三台の軍用トラック。そして、てきぱきと荷下しをする男たち。軍人、か。

「おーうい、みんなー、来たぞー」

 カルツはのんびりと呼びかける。おそらく荷下しをしている軍人は彼の部下なのだろうが、そんな呼びかけでいいのか、レオナルドにはわからない。

 彼らはカルツの声に作業を一時中断。整列して敬礼。女性もいることに軽い驚きを感じる。

「中将、必要なものはすべて下しました。

 これより運び入れます」

「そうだねえ。……の、前に、彼らに確認をしてもらおうかなあ」

 そういって示した先、

「この基地を管理しているLHOSから派遣されたウィリアム君。

 そして、HLから助力に来てくれたレオナルド君だよ」

 彼らの表情が輝く。レオナルドとウィリアムは一歩引く。

 そんな様子を見て、カルツは「ふーむ」とわざとらしく時計を見て、

「そうだなあ。……どうだろうなあ。

 荷物を運び入れたら、中庭で食事とか、バーベキューとか、いい肉があったかなあ?」

 問いに、一人が進み出て「ご安心を、一式用意してあります」

「最初からその気かっ!」

 用意周到、というか最初からやるつもりだったのだろう。レオナルドの言葉にカルツは笑って「おっさんになると、そのあたりが小賢しくなってなあ」

「そーですか」

「ありがたいですけど、忙しくないですか?」

 食事を用意する手間が省けたウィリアムが問う。おそらく、彼らは正規の軍人だ。ひまとは思えないが。

「皆様と話が出来るいい機会であります。

 どうぞ、よろしくお願い致します」

「あ、……はい」

 思わぬ熱意を返されて引くウィリアム。

「はっはっは、いい機会だから、交流を楽しんでくれると嬉しいなあ。もちろん、」カルツはビスマルクたちにも視線を向け「君たちもねえ。海軍に入ったら上官になるかもしれない人だから、仲良くやってほしいなあ」

 

 上官、……あまり知らない人。ユーはとことことレオナルドの後をついて歩く。

 どう話をしていいかわからない。けど、聞いておきたい事がある。

「あ、これか、冷却シート。…………日本製?」

「ぺんぎんさん?」

「そうだね。……冷たいイメージがあるのかな?」じ、とペンギンのパッケージを見つめるユー。「欲しい?」

「うん、…………だめ、これ、れおの」

 ふるふると首を横に振って返す。「じゃあ、余ったらもらっちゃえ」

「い、いいの?」

 恐る恐る問い、レオナルドはあたりを見渡し、腰を落とす。

「僕が使っちゃったことにすればいいよ。

 けど、みんなには内緒だよ?」

「うん。……えへへ」

 嬉しそうに微笑むユー。そんなに欲しかったのかな、と。レオは頷く。

「あの、れお」

「ん?」

 つい、と袖を引かれる。

「あの、軍人さんと、お話したい事があります。

 けど、……どう、しよう?」

「ああ、聞きにくいか」

 ユーはまだ幼い少女だ。大人には話しかけにくいのかもしれない。

「いいよ。……ええと、どの人とがいい?」

 問われて、ユーは辺りを見渡す。…………「あ、あの、女のひと」

「ん、わかった」レオナルドは手を伸ばして「じゃあ、行こうか」

「うん」

 手をつないで二人でその人のところへ。難しい表情で何かの書類を読んでいる彼女に、ユーは話しかけていいか、少しの気後れ。

 けど、

「すいませーん」

「はい。……どういたしましたか? レオナルド様」

「さ、様っ? 僕がなぜっ?」

「へ? ………………………………世界を救った英雄様ではありませんかっ!」

「規模でかっ? いやいや、そんな事してませんよっ?」

「お会いできて光栄ですっ!

 我々も、レオナルド様のように世界を救う英雄を目指し日々修練を重ねる所存ですっ!」

「中将っ! これ絶対他意あるだろっ? 聞き流せるかあっ!」

「はっはっはっ、年上の女性にいじられるなんて、年頃の青年冥利尽きないかなあ?

 おっさんには理解できないけどなあ」

「超いらねぇ」

 げんなりと肩を落とす。と、つい、と手を引かれた。

「ん?」

「れお、すごい、あっという間に友達になった」

「…………あ、……ああ、そうだね」

 きらきらした視線を向けるユーにレオナルドは曖昧な微笑み。

「レオナルド様のご友人だと」「すげえ」「世界を救った英雄と友達とか、憧れるなー」「あの女の子がちょんと袖をつまむ仕草がとてもかわいいと思うのだが、どうだろうか?」

 こそこそと語り合う軍人は無視。

「それでどうしましたか? レオナルド様」

「いや、ほんと、レオでお願いします」

 様付けはほんと慣れない。真面目な表情で頭を下げるレオナルドに微笑。

「失礼。それで、どうしましたか?」

「ユー」

「う、……うん。あ、あの、」

 おずおずとレオナルドの後ろから顔を出すユー。と、

「レオナルドーっ」

 ウィリアムの呼ぶ声が聞こえた。どうしようか、と思ったが。

 彼女は微笑み、腰を落としてユーと視線を合わせる。

「どうしたの?」

「あ、うん。あの、聞きたい事が、あります。

 れお、……あの、提督、お話あるみたいだから」

「ああ、じゃあそっち行ってくるよ」

 大丈夫そうだ、とレオナルドは判断。ユーを撫でてウィリアムのところへ。

 レオナルドを見送って、ユーは口を開く。

「あの、提督も、れおも、みんなのために、たくさん頑張ってくれています。

 ゆー、それがうれしい。……けど、二人に無理をしてほしくない、です」

「ああ、無鉄砲なのね」

 第二次大崩落の顛末は聞いている。レオナルドの行動は、あるいは愚者の蛮行かもしれない。けど、それを貫き通し、確かに世界を救った。別に、揶揄すつもりで英雄といったわけではない。

 けど、彼女のようにそばにいる女の子から見れば、彼らの行動は見ていてハラハラするだろう。

 だから、少しでも危険に向かって突撃する彼らを引き留める重しが欲しい。……それは、確かに自分たち軍人にもわかる。

 だから、…………

「そうね。その人にとって大切な人がいる事、そうすれば無鉄砲なことはしないと思うわ。

 妹? まあ、家族とか、……あとは、彼にいるとは思わないけど、娘とか。自分がいないとだめ、って思える人がいること、これが大切ね」

「大切な、人」

 その言葉を繰り返す。……それは、とても、暖かい言葉。

 胸に手を当てる。自分がウィリアムやレオナルドにそう思ってもらえるなら、とても、嬉しい。

「う、……うん」

 ウィリアムはプリンツが兄と呼んでいるから、妹がいる。

 けど、レオナルドは?

「うん、ゆー、頑張る。……あ、あの、お話聞いてくれて、ありがとうございました」

 ぺこり、頭を下げる。何を頑張るかよくわからないけど、感謝された。悪い気持ちはしないので「頑張ってね」と応じた。

 

「というわけで荷運びは終了しました。

 これより肉を焼きます」

 軍人の一人が厳かに告げる。ウィリアムにはそれが平常運転なのかわからない。これでいいのかもわからない。

 ともかく、荷物を下ろし、その流れでてきぱきとバーベキューセットをくみ上げ、積み上げられた肉野菜。これが目的じゃないのか? と、思わず勘繰ってしまうほどスムーズに開始するバーベキュー。

「まあ、調理担当としては楽できていいけど」

 いいのならいいだろう。と、ウィリアムは考えるのをやめた。きらん、と光る眼。

「ウィリアム提督の手料理ですかあ。……いいなあ」

「あのレベルの美少年がエプロンを着て料理をしてくれる。………………ふ、……ふふ」

「朝起きたら、おはよう。姉さん。って言ってくれると、とても幸せになれるわ」

「寝顔見てみたなー」

「え? 僕少年?」

「兄さまの寝顔かー」

 うっとりと呟くプリンツに、ウィリアムはため息。

「僕の寝顔なんて見てどうするの? 面白くないと思うよ」

「えー、きっとかわいいと思います」

「か、かわいいって、僕、男なんだけど?」

「関係ありませんよー、ねえ?」

 あたりに問う、返答は全力の肯定。プリンツは我が意を得たと、胸を張る。

「だから、兄さまっ!

 今度私の服着てみよっ! 兄さまに似合うかわいい服、見繕ってあげるっ!」

「やだよっ! なんで僕が女の子の服を着なくちゃいけないのっ!」

 思わず怒鳴るウィリアム。……肩を叩かれた。恐る恐る振り返る。レオナルドは視線を逸らす。

「か、肝心なのは中身だから。

 ブラックがどんな服着ても、僕は、気に、しない、から」

「無理しないでいいよ」

「…………ごめん、ちょっと考えさせて」

 とぼとぼと去っていく親友を見送る。仮に、レオナルドが女の子に服を着始めたら、……自分もどうしようか悩むなあ、と思ったので放置。

 ともかく、きらきら目を輝かせるプリンツの相手をしていたら本気で女装させられる。ウィリアムは軽く頭を振って、

「それより、せっかくだから食べようよっ。ほらっ」

「はーい」

 とりあえず、近くのコンロへ。

「おお、提督」

「美味く焼けてるよ。食うかい?」

 気さくに声をかける軍人たち、人懐こい笑顔のおかげで威圧感は感じられず、

「うん、ありがと」

 ウィリアムも笑顔を返してお皿を受け取る。「ありがとうございますっ」とプリンツも続く。

「なに、若いカップルにゃあ楽しんでもらわないとな」

「かわいい女の子ならなおさらだっ」

 ははっ、と笑顔。

「か、カップル、……えへへー、兄さまとカップルだってっ」

 頬を染めて嬉しそうに腕を絡めるプリンツ。ウィリアムはどうしたものか、と。……けど、

「ええと、ありがとうございます。

 忙しいのにいろいろ便宜を図ってくれて」

 もしかしたら、この、よくわからないうちに始まったバーベキューも気遣ってなのかもしれない。

「なに。もしかしたら未来の後輩がいるんだしな。

 話をしておいた方がいいだろ」

 グラーフやビスマルクは軍人たちといろいろ言葉を交わしている。特に、ビスマルクは旗艦としての意識があるからか、楽しむというよりは真剣に情報交換をしている。

 レーベやマックスも、今はレオナルドと一緒にカルツと言葉を交わし、ユーは女性の軍人と一緒に野菜を焼いている。いい機会、かもしれない。

 彼は肩をすくめて、

「大丈夫だよ。中将が時間を融通してくれた。

 ま、おかげで何日か残業覚悟だけど、俺たちだって毎日仕事ってわけじゃない。こういう機会は大切にしないとな」

 だから気にするな、と彼は笑った。

「なあ、それより術師のことについて聞いていいか?」

 興味津々と問いかけられ、ウィリアムはどうしようかな、と。……ただ、

 LHOSでは特に機密として扱われているわけではない。だから、

「うん、いいよ」

「まじかっ! じゃあ、ちょっと見せて「ちょっと待てこのボケ」あだっ?」

 許可に嬉しそうな声を上げた彼は別の男に殴られる。ぎょっとするウィリアムを横目に、

「ばかか、超能力には代償があるって聞かされただろうが。

 有事でもねぇのになに言ってやがる」

「……ぐ、…………すまん」

「あー、いや、いいよ」

 そんな大したものじゃない。けど、……まあ、気遣わせる必要もない。

 だから、

「それじゃあ、「プリンツちゃん。ちょっといい」」

 不意に、声。ウィリアムとプリンツはそちらに視線を向ける。女性がひらひらと手を振ってる。

 話をしたい事があるのだろう。プリンツはウィリアムに視線を向け、ウィリアムは「行っておいで」と、軽く背を叩く。

「うー、……兄さまと一緒もいいなあ」

「僕とお話ならいつでもできるよ」

「はーい、……あっ」

 不意に、プリンツは、とんっ、と一歩、ウィリアムから離れる。悪戯っぽい視線。

「じゃあ、今夜私の部屋で、二人でお話し、約束ねっ」

「へっ?」

 いつでもお話しできる、そういった手前固まるウィリアム。それを予想していたプリンツは、勝ち逃げ、とそんな思いで呼んでくれた女性陣のところへ。そして、

 ぽん、と肩を叩かれる。

「よし、少年。

 ちょっと話をしようか」

「…………な、なんのでしょう?」

 気さくに声をかける軍人たち、人懐こい笑顔の裏には威圧感。

 ウィリアムは軽くひきつった笑顔で応じた。

 





 カルツ中将の語る、軍人、についてですが私の解釈です。不快に思った方がいたら申し訳ございません。

 いろいろ考えてたりもしましたが、手っ取り早く言えば公人として戦うか私人として戦うかです。
 どちらがいいかとか悪いかとか、それは読んでいただいた方にお任せします。
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