いつも錬金術を失敗してばかりいるクラリスがカリオストロに弟子入りする事になるが……。

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クラリス、カリオストロに弟子入りするの巻

「クラリス、カリオストロに弟子入りするの巻」

 

どっかーん!

グランサイファーで突如爆発が起こる。飛翔中のグランサイファーは大きく揺れた。

「なんだ! なんだ! 敵襲か!」

 ラカムは慌てふためいた。

「いや、どうやら内部からの爆発のようだ」

 と、冷静に分析した様子でカタリナ。

「内部からの爆発? スパイが紛れ込んでたっていうのか、それとも動力部の故障か」

「ーーいや、恐らくは」

 グランは駆けた。爆発は動力部分とは何も関係のない場所で起きたようだ。そう、それは騎空団員に割り当てられた自室だった。

 クラリスの部屋だ。

「クラリス! ーーうっ」

 開けた瞬間、焦げ臭い匂いがした。そして煙が充満している。

「いたた・・・・・いやー、失敗失敗。また失敗しちゃったー」

 照れたような口調でクラリス。

 さっきの爆発はクラリスの錬金術が失敗した為起きたようだ。

 グランは深くため息をつく。

 

「うーん。どうしてうちの錬金術は失敗しちゃうのかなー」:

 食事中の事だった。クラリスは不満げにいった。

「さー。とはいえ、私達は錬金術に関しては素人ですし」

 ルリアはそういう。

「なんていうか、コツとか何のかな、こういうの。コツさえわかれば、クラリスちゃんなら絶対うまくやれると思うのになー」

「まぁ・・・・・・こういうのは誰かに教わるのが効率がいいのかもしれないが」

 と、カタリナ。

「とはいえ、騎空団のメンバーでそんな都合のいい人ーー」

『いた!』

 その場にいたメンバーの声がハモった。

 

「いやだ!」

 いきついた先は開祖の錬金術師ーーカリオストロだった。彼(あるいは彼女)の複雑な素性の説明は省く。

「ええ~どうしてですか~」

「決まっているだろ。オレ様はお前の事が嫌いだ」

「どうしてですか。こんなに可愛くて、キュートで、愛らしくて皆から好かれる美少女錬金術師のクラリスちゃんの事がどうして嫌いなんですか?」

「そこだ、そこ。端的にいって、お前はオレ様にキャラが被っている。オレ様のキャラが薄くなるだろうが」

「そこを何とかお願いします。ご先祖様~!」

「く、くどい! オレ様は忙しいんだ!」

「そんな~団長さん、団長さんも何か言ってくださいよ」

「え? 俺?」

 その場に居合わせたグランに振られる。

 クラリスは耳打ちする。

「女の子は適当におだてとけばいう事聞くんですよ」

「そんな適当な・・・・・・・」

 それに、彼女の特殊な素性を鑑みてみればそんな普通のアプローチが通用するだろうか。

「いいですか。私の言う通りに言ってください。まず、相手の事を誉めるんです。『可愛いよ』って」

「そんな安直な」

「いいから!」

 はぁ~、グランはため息をついた。

「カリオストロ」

「なに? 団長さん。改まって」

「可愛いよ」

「え? いきなり・・・・・・・そんな団長さん。カリオストロが世界一可愛いなんて・・・・・そんな当たり前の事、ただの物理法則だよ」

 そこまでは言ってない。ともかく、カリオストロはまんざらでもない様子だ。

「次は、『愛しのカリオストロ、俺のいう事を聞いてくれないか?』」

「愛しのカリオストロ、俺のいう事を聞いてくれないか?」

「え?・・・・・・いうこと? え? 今度デートしろ、ですって。だ、団長さんがどうしてもっていうのならカリオストロ、デートしてあげてもいいよ。ふふーん、どんな服聞いていこうかなー」

 話がろくに通じてない気がする。ともかく、カリオストロは盛り上がっていた。

「そして最後に『クラリスに錬金術を教えてやってくれないか』っていうんです」

「このクラリスに錬金術を教えてやってくれないか」

「う、うん。いいよ。団長さんがそうまで言うなら」

「よし! 言質とった!」

 クラリスはガッツポーズを取った。

「あ? ・・・・・ちっ。このオレ様をはめやがって、小娘」

 カリオストロは舌打ちした。

 ともかく、こうしてクラリスはカリオストロから錬金術を習う事になった。

 

「まずはこの錬金術をやってみろ」

 その場にあったのは砂鉄。この砂鉄を用いて、鉄の固まりを作り出す。

「まず、錬金術は魔法ではない。魔法ではないから法則を無視した事はできない、等価交換が基本だ。ないものを生み出す事はできない。何もない空間から何かを生み出せたら、そいつはもはや魔法だ。そのくらいの事はわかってるよな?」

「はい! 師匠!」

 色々あって、クラリスはカリオストロに弟子入りする事になった。

 ともかく、クラリスは錬金術の実演に入る。

 何度か深呼吸を繰り返す。

 精神統一の末。

「むむむ! とりゃ!」

 クラリスは錬金術を発動させた。 

 砂鉄は破裂した。小規模の爆発が起こる。砂鉄は散らばってしまった。

「ぜんぜんだめだな」

「どうして~」

「お前は物質を不安定な状態にする事に特化しすぎている。言うならば錬金術というよりは、常に爆弾を作り上げているようなものだ。つまり、錬金術の才能がない」

「そんな~、けど、努力してけばきっとできるようになるはず!」

「無駄な努力だとは思うが・・・・・・まあ、乗りかかった船だ。しばらく手伝ってやる」

 ともかく、カリオストロの個人レッスンは続いた。

 

 クラリスがカリオストロの個人レッスンをしている途中の事だった。

 騎空団に依頼が舞い込んできた。

 グラン、ルリア、カタリナ及びカリオストロとクラリスが依頼元へ向かう事になる。

 そこは山の奥深くにある農村だった。

 依頼人の女性が語り始める。

「御覧の通り、私たちは閉鎖的な村で過ごしています。周りは山岳で囲まれ、とても行き来できません。それこそ騎空艇でもない限りは。私たちは近くの町に繋がる桟橋だけを頼りにして生きているんです。その桟橋から生活に必要な品物が輸送されているのです」

 女性は語り続ける。

「しかし、最近大雨が降りました。地盤のゆるんだ山が大きく崩れ、大岩で道がふさがってしまったのです。この村へ繋がる唯一の道はふさがれてしまいました。お願いです、騎空士の皆様、私たちを助けてください」

「事情はわかった。ではとりあえずその地点へ向かうとするか」

 カタリナはそう言った。その地点へ移動する事になる。

 

 問題のその地点へ移動する事になった。山岳に囲まれた細い道だ。かろうじて馬車が一台通れるか、というところ。

 そこに、大きな岩が無数に落ちていて、完全に道が塞がれていた。

「これは男がかりでもどかせそうにないな」

「はい。何度試してもビクともしなくて」

 そう依頼人の女性は説明する。

「よし」

 カタリナは精神を集中した。奥義を放とうとする。カタリナは剣で攻撃をする。アイシクルネイルだ。無数の氷の刃が岩に襲いかかる。

 しかし、よほど硬い素材でできているのだろう。岩はびくともしなかった。

「だめだ。恐らくここら辺は鉱山なのだろう。岩というよりは金属の塊だ。とても壊せそうにない」

「や、やはりだめですか。村は備蓄を取り崩して凌いでいるんです。これでは飢えて死ぬ子供や老人も出てきてしまいます」

 依頼主の女性は嘆く。

 なんとかしてやりたかったが、どうしようもない状況だ。

「小娘」

 と、カリオストロ。

「ん? クラリスちゃんの事?」

「そうだ。お前、錬金術を使ってみろ」

「どうして?」

「いいから、あの岩に向かって、思いっきりやってみろ。いいからはいといえ、はいと」

「はい! 師匠!」

 クラリスは岩に向かう。精神集中。

 そう、カリオストロと錬金術の練習をしていた時のように。

「はぁ! とりゃぁー!」

 クラリスは勢いよく錬金術を発動させた。

 ーーと。

 どかーーーーーーん!

 大きな音をたてて、岩は四散した。

「これは、どういう事でしょう? あのびくともしなかった岩がなくなってしまった」

 依頼人の女性は驚いた様子だった。

「どういう事・・・・・・・師匠?」

 壊したクラリス自身が不思議そうだった。

「お前は物質を安定させる才能がない。逆にいえば、物質を不安定にさせる才能がある。全ては表裏なんだよ。つまり、お前はお前のままで、十分いいところがある、そういう事さ。お前には普通の錬金術師としては役立たない、しかし、普通でない錬金術師としてなら役に立つ、今回の件で十分わかっただろ」

 カリオストロは綺麗にまとめた。そう、カリオストロはその事を言いたかったのだろう。

「そっか・・・・・・私は私ーークラリスちゃんはクラリスちゃんのままでいいんだ」

 そう呟くクラリス。クラリスはどこか嬉しそうな表情をしていた。

 

「じゃ、じゃじゃーん! 今日はクラリスちゃんの錬金術ショーにきていただき、誠にありがとうございます!」

 そう、クラリスは言った。随分と露出度の高い格好をしていた。

 まばらな拍手が起こる。その場にはグラン、ルリア、カタリナの三名がいた。

 クラリスはカリオストロから習った錬金術を披露したいらしい。

「あれ? カリオストロさんは?」

 ルリアは聞いた。

「あー。なんだか、用事があるみたいで欠席だって」

 そうクラリス。

「そうなんですか」

 ルリアは深く考えなかった。しかし、グランは察してしまう。

『逃げたな』と。

「じゃあ、皆にクラリスちゃんの、ダイナミックでスペシャルな錬金術を披露しちゃうよ! よってらっしゃい! 見てらっしゃい! この鉄の塊がなんと! 白鳥の姿にーー」

 ならなかった。 

 どっかーーーーーん!

 代わりに爆発が響いた。いつも以上に盛大な爆発だった。

「きゃ!」

 ルリアは耳をふさぐ。

「いやー! 失敗、失敗」

「大丈夫か、クラリスーーうっ」

「どうしたの? 団長さん、顔真っ赤にして」

「ク、クラリスさん・・・・・・ふ、服。服が」

「え?」

 クラリスは体を見下ろす。高温度の爆発により、見事に服がなくなってしまっていた。

 クラリスは殆ど生まれたままの姿だった。

 耳まで真っ赤になるクラリス。

「き、きゃああああああああ!」クラリスの悲鳴。

「ぎやああああああ!」グランの悲鳴。

 二度の錬金術による爆発がグランを襲った。

 何はともあれ、クラリスが錬金術をまともに使えるようになる日は永遠にないのではないかと思われた。

 

『FIN』

 



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