恋と進路と召喚獣   作:秀継

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第十一話

 

 

 

「は?」

 

 須川君に彼女を作らせる?校内新聞で取り上げられるほど失恋回数の多い須川君に?

 

「無理に決まってるよ!あの須川君だよ!?」

 

「だが……これしか道がない」

 

「どういうこと!?」

 

 根本君は真剣な面持ちで話し始めた。

 

「まず、試召戦争のための仲間を集める時、一番障害になるものはなんだ」

 

「えーっと……雄二?」

 

「たしかに坂本は脅威だが、それは俺たちの情報さえ坂本に知られなければ何とかなる。流石の奴も土屋の情報無しでは、二年の試召戦争を勝ち抜いてこれなかっただろう」

 

 たしかに雄二はいつもムッツリーニに情報を聞いて作戦を立てていた。情報さえ漏れなければ雄二も対策しようがないってことか。

 

「一番の障害は、異端審問会だ」

 

「異端審問会……」

 

「そう。奴らの存在によって強く意見を言えない者が多い。異端審問会が機能しなくなれば、俺たちに賛同する奴は爆発的に増えるだろう」

 

「なるほど……」

 

 異端審問会が最大の障害だっていうのは分かった。だけど……

 

「だけど、それがどうして須川君に彼女を作らせる、なんてとんでもないことになるのさ?」

 

 ミッション・インポッシブル。トム・ク◯ーズもお手上げのミッションだ。

 

「……吉井。お前は、何故須川が異端審問会の会長を務めていると思う?」

 

「そんなの、決まってるじゃないか。モテないからだよ」

 

「まあ……そうだな。須川はモテない。異端審問会の誰よりもモテないという共通認識があるから、奴は圧倒的なカリスマ性で、一癖も二癖もある異端審問会の連中をまとめ上げることができる」

 

 この会話を須川君が聞いたらどう思うのだろうか。

 

「もし、その須川に彼女ができたなら異端審問会はどうなると思う?」

 

「どうなるって……須川君を血祭りにあげるだろうね」

 

 その処刑には僕も参加するつもりだ。

 

「……まあ、たしかにそうなるだろうが……その後だ」

 

「その後?」

 

 その後は……あっ!そうか!

 

「絶対にモテないと思っていた須川君がモテたってことは、自分もモテるかもしれないって思うってことだね?」

 

「そうだ。そうなってしまえば異端審問会は統制がとれなくなって自然消滅するだろう」

 

 なるほど。理屈は分かった。

 

「たしかにそれが出来たら、生徒会に勝てるかもしれないけど……どうやって須川君に彼女を……?」

 

「それが……まだ思いつかない……」

 

 そりゃそうだ。雄二だって匙を投げるかもしれないくらいの難問だ。

 

「生徒総会までだけでいいから須川に彼女が出来ればいいんだが……」

 

 根本君が頭を抱えている。僕も必死に考えてみるけど、いい案は思いつかない。

 

「……もう今日はダメだ。思いつきそうにない。吉井、もう帰れ」

 

「うん、分かった」

 

 気が付くともう夜も遅くなっていた。慌てて僕は帰り支度をする。

 

「あ、待て」

 

 玄関のドアを開けようとした時、根本君に呼び止められた。

 

「どうしたの?」

 

「前も言ったかもしれないが、学校では俺に話しかけるな。俺とお前が繋がっていることが坂本にバレると厄介だ」

 

「分かった、気をつけるよ」

 

「ああ」

 

 根本家を出て、家へと帰る。その途中、携帯が鳴った。

 

「ん?誰からだろう?」

 

 画面を見ると、姫路瑞希と表示されていた。急いで通話ボタンを押す。

 

「もしもし?」

 

『あ、明久君。こんばんは!』

 

「うん、こんばんは。どうしたの?何かあった?」

 

『あの、今日明久君が坂本君に立ち向かった時、力になれなくてすみませんでした……』

 

 なんだ。そんなことか。姫路さんが気にすることじゃないのに。

 

「いやいや、姫路さんは悪くないよ。異端審問会の連中が怖かったんでしょう?」

 

『はい……。あの時、私には立ち向かう勇気がなくて……』

 

「いいんだよ、姫路さん。僕は気にしてないから」

 

『でも……』

 

 姫路さんは優しい人だ。この優しさに、僕は惹かれたんだと思う。

 

「本当に大丈夫だから。心配してくれてありがとう。それよりさ、姫路さんはクラスは何になったの?」

 

『あ、Aクラスです。明久君は?』

 

 やっぱりAクラスか。流石の実力だ。

 

「僕は、その……またFクラスだった」

 

『ええ!今の明久君だったらEクラスには入っていると思ってました……』

 

「あはは。ちょっと解答欄を間違えちゃってね」

 

『そうでしたか……あ、美波ちゃんは?』

 

「美波?美波もFクラスだけど?」

 

 それを聞いた瞬間、姫路さんが何やらボソボソ呟き始めた。

 

『……美波ちゃんはまた明久君と同じクラス……』

 

「ひ、姫路さん?おーい?」

 

『……このままだと美波ちゃんに……』

 

「ちょ、ちょっと!?姫路さーん、聞こえてる?」

 

『あ、はい!なんですか?』

 

 やっと僕の呼びかけに姫路さんが答えてくれる。

 

「あのさ、僕、これからあの校則を変えようと思うんだ」

 

『え?校則を……変える?』

 

 姫路さんは戸惑っているようだ。

 

「うん。僕頑張るから。応援してくれると嬉しい」

 

『分かりました!私に出来ることがあったら何でも言ってくださいね?』

 

「ありがとう!助かるよ!」

 

『じゃあ私、これで失礼しますね』

 

「あ、ちょっと待って!」

 

『どうしましたか?』

 

 言い忘れてたことがあった。

 

「僕が校則を変えようとしているってことは、雄二とか他の人には言わないでほしいんだ」

 

『分かりました』

 

「じゃあ、またね姫路さん」

 

『はい。明久君も、おやすみなさい』

 

 電話が切れた。やっぱり姫路さんは優しくて、素敵な人だ。僕はやっぱり姫路さんと付き合いたい。

 決意を新たに、僕の帰りを待ちわびているであろう姉さんへの言い訳を考えながら、家へと急いだ。

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