「福村君がEクラスの代表!?」
「むう……かなり勉強したようじゃのう……」
ぼ、僕だってミスさえしなければEクラスには入れていたはずなのに……。元2ーFの人が更生していくのを見るのは、自分が物凄いクズに見えてきて焦る。
「とりあえず明日、俺が福村から異端者リストを貰ってくる。また明日この吉井の家で作戦会議だ。何か質問はあるか?」
「ワシらも一緒に福村の所へ行ってはいかんのか?」
秀吉の質問に対して、根本君は、
「ダメだ。俺たちは学校で行動を共にしてはいけない。土屋や清水に見つかるとまずい」
うーん……。こうなってくるとムッツリーニ達は邪魔だなあ……。
「ねえ、根本君。ムッツリーニか清水さんのどっちかでも味方にできないかな?特にムッツリーニとかはあっさり買収できると思うんだけど……」
以前、僕がラブレターを貰った時にもムッツリーニは僕に攻撃を仕掛けてきたけど、エロ本であっさり買収できた。今回もそれでいける気がする。けど根本君は、
「難しいな。土屋も清水も、きっと坂本から褒美をちらつかされているだろう。生徒会の財力で用意できるものの方が、俺たちの用意する賄賂より質も量も上だろうしな」
「そっか……」
残念。根本君の言う通り、学校では根本君と関わらないようにしよう。
「じゃが、ムッツリーニ達は難しくとも須川なら買収できそうではないかのう?彼女を紹介するから味方になってくれ、と頼めば……」
たしかにそれなら須川君はころっと寝返りそうだ。でも、根本君はこの秀吉の提案も拒否した。
「須川たち生徒会のメンバーは坂本と距離が近すぎる。口の軽そうな須川を味方にしたところでこっちの作戦が坂本にバレるだけだ。女装作戦は、須川からしたら俺たちが関わっているようには見えない。知らない情報を漏らすなんてことは誰にもできないから、やはり女装作戦が一番の案だ」
うう……。やっぱりやらなくちゃなのか。どうしても気が乗らないけど……姫路さんと付き合うためだ。やるしかない。
「なるほどのう。では、霧島や姫路、工藤などはどうじゃ?この辺りは間違いなく校則に反対のはずじゃが……」
「ああ、たしかにそこら辺は大丈夫そうだな。じゃあ明日、お前たちで説得してきてくれ。他にも、こいつなら大丈夫だっていう確信のある相手なら説得しても構わない」
「了解なのじゃ」
「俺の名前を出さなければ、布教しているのが坂本にバレても問題ない。遅かれ早かれバレるからな……。ただ、優秀なブレインがいるということがバレなければいいんだ」
「分かった、覚えておくよ」
僕らが頷くと、根本君は満足そうに笑った。
★★★
翌日の放課後、僕と秀吉は姫路さんたちを説得するためにAクラスへと向かった。
「姫路さーん、霧島さーん、工藤さーん、いる?」
Aクラスの中に声をかけると、
「あ、明久君、木下君!」
「…………どうしたの?」
「ボクらに何か用事?」
よかった。三人ともまだ帰ってなかった。
「うん!あのさ、少し話したいことが……」
「生徒総会で味方をしてくれって頼みに来たんだよな?」
「そうそう、そうなんだよ!よく分かっ……」
痛烈な違和感。
声のした方を見るとそこには雄二がいて、悪い笑みを浮かべていた。
「やはりな……。来ると思ってたぜ、明久。秀吉が既に取り込まれているとは思わなかったけどな」
「ゆ、雄二……」
「大方、生徒総会で試召戦争を仕掛けるつもりなんだろう?誰の入れ知恵だ?バカなお前がそこに気付けるとは思わないから、誰か参謀がついたな」
な、なんてこった……!やはり雄二は恐ろしい。こんなのを相手にするなら、そりゃあ根本君も慎重になるよね……。
「ワシが明久に生徒総会について話したのじゃ。クラス代表になった時に色々調べての。明久が困っておったから力を貸すことにしたのじゃ」
ここで秀吉のフォローが入る。助かった。演技や嘘なら秀吉の右に出るものはいない。
「なるほどな……。まあいい、精々足掻くがいいさ。俺はこれから生徒会の会議だから、もう行く。次はお前たちがどう動くのか楽しみにしてるぜ」
雄二はそう言い残すと、教室から出て行ってしまった。
「……やはり雄二は手強いのう。一筋縄ではいかぬな」
「そうだね……」
僕らがため息をつくと、おそるおそるといった感じで姫路さんが話しかけてきた。
「あの……それで、話っていうのは?」
そうだ。雄二に気を取られてしまって忘れていた。
「あの、これから僕の家に来てくれないかな?ちょっとここでは話せなくて……」
「いや。ここでいいのじゃ」
突然秀吉が僕の言葉を遮る。どういうことだろう?
「簡潔に言うと、生徒総会で恋愛禁止の校則を撤廃するために試召戦争を起こすつもりなのじゃ。その時に、力を貸して欲しい」
秀吉の意図は分からないけど、とりあえずここは任せておこう。
姫路さんたちは顔を見合わせると、口々に言葉を返した。
「私は協力します!いえ、させてください!お願いします」
「…………私も。協力する」
「ボクもせっかくだから協力するよ!楽しそうだしね!」
三人とも味方してくれるようだ。これは大きな戦力になる。
「ありがとうなのじゃ!話はこれだけじゃ、時間をとらせて悪かったのう」
「いえ!気にしてません!」
「では、失礼するぞい。ほれ、明久、行くのじゃ」
「あ、うん。皆、またね」
秀吉に腕を引っ張られて、僕はその場を後にした。
学校を出て、僕の家へと向かう途中、僕は秀吉に尋ねた。
「どうしてさっき、僕が姫路さんたちを家に呼ぶのを嫌がったの?学校で話すよりは家で話す方が安全だと思うけど……」
「色々理由はあるのじゃが……。まず一つは、彼女らは根本に対して悪いイメージしか持っていない、というのがあるのじゃ」
「根本君と僕が仲良くしてるのを見て、幻滅するかもしれないってこと?」
「幻滅とまではいかぬが……まあ良い顔はしないじゃろうな」
たしかに二年生の頃、姫路さんは根本君に脅されていたし、学年全体で悪い噂のある根本君に良い印象を持っている生徒は少ないだろう。
「それにじゃ。もう雄二には根本と繋がっていること以外はバレておった。だから学校で話しても問題ない、と思ったのじゃ」
「なるほどね……」
そんなことを話していると、僕の家に着いた。根本君は既に玄関の前に立っていた。
「来たか。早く開けろ」
「分かってるって」
家に入って一息つくと、根本君は鞄から一冊の真っ黒なノートを取り出した。表紙には『キル・ノート』と書かれていた。
「それは……」
「そう、異端者リストだ。福村から貰ってきた」
「これでカップルの名前を調べることができるのう」
早速、ノートの中身を見てみる。パラパラめくっていると、ふとその名前が目に留まった。
「あれ?平賀君の名前がある」
平賀君に彼女なんかいたっけか。備考の欄を読んでみる。するとそこには、
『平賀源二。去年の二年生対三年生の肝試しにおいて、三上美子と良い雰囲気になっていたため、準異端者リストに追加。その後、正式な交際をしていることが確定したため、有罪。処刑執行済み。』
と記されていた。