「ね、根本君……?」
なぜ根本君がFクラスにいるのだろうか。根本君は性格こそ最悪だが、成績はBクラスの代表を務める程のもののはずだ。どんなに調子が悪くったってFクラス並みの成績を取るとは思えない。てことは……まさか!
「根本君『も』解答欄一個ずつずらしちゃったんだね!」
「俺がそんなくだらないミスするかよ」
「アキ……あんた……」
「明久よ……前もそんなミスをしてはおらんかったか……?」
「…………やはりバカ」
「ああ、口が滑ったああっ!」
しまったああっ!やっちまったあああっ!また皆にバカって言われる材料が増えたよ……。いや、そもそもFクラスってだけでバカって言われるか。うーん、救いがない。
「ぼ、僕のことはいいだろ!それより、何で根本君はこんなところにいるのさ!」
逃げるように根本君に話しかけると、根本君はとても忌々しそうに顔を歪めた。
「……風邪で休んだんだよ」
風邪か。振り分け試験を欠席すると全教科0点扱いになるはずだから、それならたしかにFクラスだ。と納得しかけたけど、
「…………それは嘘だ。俺は振り分け試験の日、お前と同じ教室で試験を受けていたが、お前は最後までテストを受けていた」
ムッツリーニが反論すると、根本君はますます不機嫌になった。
「チッ……」
ムッツリーニの言ったことは正しいようだ。ということは、風邪で休んだっていうのは嘘だったってことになる。
「どうしてFクラスになった理由を隠すのさ?何か後ろめたいことでも……あっ!」
もしかして、もしかすると。
「……根本くん、カンニングしたんだね?それがバレたから0点になったと」
成績が悪いわけでも、僕のようなミスをしたわけでも、振り分け試験を休んだわけでもない。そうなると、考えられるのは不正行為しかない。
「…………」
どうやら図星のようだ。根本君はこちらを睨むと、フンと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。
「え……ちょっと根本、それ本当なの!?本当なら、大問題よ!?」
美波が根本君を問い詰める。横から見ていても、美波の表情は怖い。
「……もう教師たちから説教は食らった。反省したさ」
「あんた……サイテーよ」
「……反省したって言ってるだろうが。もう二度とやらん」
「そんなこと、信じられる訳ないでしょう!2年の時も卑怯なことばっかりして!あんたのせいで、傷付いた人たちが沢山いるのよ!?」
「……悪かったな。それももうやらん」
「……そう」
妙だ。僕の知ってる根本君はこんなに簡単に謝ったりはしない。もっと卑怯で、姑息で……。美波も違和感を感じたらしく、たじろいでいる。
「もういいだろ。俺は反省している。教師たちとも話をした。これでこの件は終わりだ。お前らが首を突っ込む話じゃない」
「し、しかしじゃな……」
秀吉が何か言おうとしたが、根本君は、
「なんだ?これ以上俺に何をしろって言うんだ?お前らに反省文でも書いて提出すればいいのか?」
かなり強い語気で言い返される。秀吉も困ってしまったようで、
「む、むう……。分かった、もうこの話はおしまいじゃ」
「……フン」
根本君はまた鼻を鳴らした。口の悪さはやっぱり根本君って感じだけど……。鉄人の鉄拳制裁でも食らって丸くなったのかな?
クラス中がしんと静まり返っている。皆、どう反応していいか分からないようだ。
「これから先が思いやられるのう……。どうすればクラスをまとめられるのじゃ……」
秀吉が頭を抱えて悩んでいる。何故秀吉がそんなに責任を感じているのだろうか?
「別に秀吉が考えることじゃないと思うよ。秀吉はいつも通りクラスの清涼剤として居てくれればいいよ」
「む?明久にはまだ話しておらんかったかのう?実は……」
何か秀吉が言いかけた時、教室のドアが開き、鉄人が入ってきた。
「どうした?お前たち、棒立ちで……。早く席につけ、
うわあ……今年も担任は鉄人か……。
うう、大変な一年間になりそうだ。
皆が席に着くと、鉄人は、
「これからFクラスの面倒を見ることになった西村だ、一年間よろしく頼む……っと言っても、元2ーFの顔が目立つな、ビシバシいくから覚悟しておけ」
はあ……最悪だ。鉄人の補習を今年も受けることになると思うと頭が痛い。周りを見ても、皆悲壮な顔をしていた。
「さて、今後の日程だが、今日は体育館で、入学式の後に二、三年生のみで緊急集会が開かれる」
緊急集会だって?そんなの去年やったかな……?雄二が言っていたのはことことだろうか?
「明日は始業式だ。最上級生として恥ずかしくない格好、態度で臨め。特に吉井!」
「は、はい!」
「お前は一年の頃、坂本と一緒に遅刻してきたな」
「そうでしたっけ……?」
あれ?雄二とその時は知り合いじゃなかったはずだけど……?
「もう二度とセーラー服なんて着てくるんじゃないぞ!」
クラスからどっと笑い声が上がった。お、思い出した……。僕らの入学式の当日の朝、制服をどこにしまったか分からなくなってしまった僕は、姉さんが嫌がらせで置いていった星蘭女子中の制服を泣く泣く着て行ったんだった……。で、その途中で雄二に女装趣味の変態と勘違いされて……。嫌なことを思い出してしまった。ちくしょう、鉄人、覚えてろよ……!
「入学式は新入生のみで行われる。お前たちは教室で待機、自習だ。後でまた呼びに来る。木下、こいつらを見ておいてくれ」
「分かりました」
「え……何で秀吉が?」
秀吉はいつからそんなに鉄人からの信頼を勝ち得ていたのだろうか?
「そうか、クラス全体には伝えていなかったな……。木下」
「は、はい」
鉄人に促されると、秀吉は立ち上がって教卓の前へ歩いて行った。そして、
「えー、Fクラス代表になった、木下秀吉じゃ。皆、以後よろしく頼むぞい」
と、告げた。