恋と進路と召喚獣   作:秀継

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第三話

 

 

「秀吉が……クラス代表!?」

 

「そうじゃ。明久にはまだ言っておらんかったの。すまん」

 

 そうだったのか……。だからさっきからクラスのまとまりを気にする発言をしていたのか。謎が解けた。

 

「じゃあ俺は入学式に出席してくる。木下、改めて頼んだ」

 

「はい」

 

 鉄人が教室から出て行くと、秀吉は、

 

「えーと、鉄人は自習と言っておったが……どうせお主らは自習などせんじゃろう?」

 

「「「もちろん!!!」」」

 

 僕らはFクラスだ。三年生になっても勉強なんてする気は全く無い。

 

「そこは元気よく返事をするところではないのじゃ……うーん、では、自己紹介でもするかのう」

 

 ナイスアイデアだ、秀吉。それなら時間を有効に活用できる。

 

「では、席順で頼むのじゃ」

 

「「「はーい」」」

 

 自己紹介が始まった。ざっと周りを見渡してみたが、やっぱりほとんどが元2ーFだ。僕はこの暴走集団とどう付き合っていけばいいのだろうか?そんなことを考えているうちに、自己紹介は進む。

 

「須川亮だ。異端審問会会長を務めている。モットーは、カップルと吉井を許さない、だ。よろしく」

 

「横溝浩二です。異端審問会所属です。モットーは、吉井コロス、です。よろしくお願いします」

 

「近藤吉宗です。異端審問会所属。モットーは、吉井の不幸は蜜の味、です。一年間よろしくお願いします」

 

 向こうは僕と仲良くする気はさらさらないようだ。困ったなあ……。思案していると、次の人が立ち上がった。ん?この人は元2ーFじゃないぞ?どこかで見たことはあるんだけど……?

 

「えーっと……平賀源二です。元2ーDで代表を務めていました……」

 

 平賀君か!でも、元2ーDの代表を務めていながら、Fクラスに来るなんて、根本君ほどじゃないけど不思議だ。よほど勉強をサボったのだろうか。

 

「一年間、よろしくお願い、します……」

 

 前に見た平賀君は、もっと強気なイメージだったけど、どうやら異端審問会に怯えているように見える。無理もない。彼らに目をつけられたら最後、地獄の果てまで追いかけ回されることになるからね。人間の本能に従った、当然の反応だと言えるだろう。

 他にもちらほら他クラスからFクラスになってしまった人たちがいるようだ。でも、皆男だ……残念……いや!次の自己紹介の人は初めて見る女子だ!

 

「三上美子です。元2ーEでした……」

 

 いや、初めてではないかもしれない。この人もどっかで見た気がするけど、思い出せない。けど、まぁいっか。これから仲良くなるなら前に知り合いだったかどうかなんて関係ないもんね!周りを見ると、男子たちの顔が輝いている。そりゃそうだ。Fクラスの女子と秀吉は僕たちにとってオアシスなのだから。

 三上さんの自己紹介も終わり、次は美波の番だ。

 

「島田美波よ。あんたたち、女子に手を出したら許さないんだからね!もしウチ達にちょっかい出してきたら左手の小指以外の骨を折るわよ!」

 

 流石は美波。異端審問会の連中相手に一歩も退かない。そしてそこまでやるなら左手の小指を残す理由はないと思う。

 1年の頃の自己紹介に比べると、美波は信じられないくらい日本語が上達した。もしかしたら僕より日本語喋れるんじゃないかな……?やめよう。これ以上は考えてはいけないと僕の本能が告げている。次は……ムッツリーニか。

 

「…………土屋康太。趣味で写真を撮っている。代金を払うなら写真を売ってもいい」

 

 そうだ。寡黙なる性識者(ムッツリーニ)の異名を持つこいつは、ムッツリ商会の若き経営者なのだ。僕もお得意様としてよくムッツリ商会から写真を購入している。

 

「明久よ。次はお主じゃ」

 

「あ、うん」

 

 もう僕の番か。立ち上がると、こちらに向けてカッターの投擲準備に入っている皆の姿が見えた。

 

「あの……秀吉。座ったままでいいかな?命の危険を感じるんだ」

 

「構わんぞい」

 

 僕が腰を下ろすと、あからさまな舌打ちが聞こえた。こいつら……!!

 

「えっと、吉井明久です。得意科目は歴史です。よろしく」

 

 無難に自己紹介を終える。余計なことを口走ったら殺されかねない。僕が大人しくしていれば向こうも攻撃はしてこないようで、しぶしぶそれぞれの武器(カッターやコンパス)をしまってくれた。

 そして自己紹介は進み、最後の一人、根本君になった。

 

「……根本恭二だ。お前らと馴れ合う気はない。バカが移る」

 

「なんだと!」

 

「カンニングしたお前が悪いんだろ!」

 

「そうだそうだ!」

 

 根本君の挑発にあっさり乗せられるFクラスの面々。秀吉も困ったようで、仲裁に入る。

 

「皆、落ち着くのじゃ!もう根本の話は終わりと決めたじゃろう!」

 

 でも、怒り狂ったFクラスの過激派連中には効果が無いようで、

 

「止めるなよ木下!俺たちはあいつをぶっ殺す!」

 

「やっちまぇぇええーっ!!」

 

「ああーっ、もうどうすればいいのじゃ!?」

 

 その時だった。教室のドアが勢いよく開き、

 

「お前たち!!何をしている!!」

 

 鉄人が現れた。ナイスタイミングだ!

 

「全く……お前たちは……少しは過去の経験から学んだらどうだ……」

 

 鉄人も呆れ顔だ。クラスの面々は仕方なくといった感じで席に着く。

 

「入学式が終わった。1年生は帰宅、お前たち2、3年生はこれから緊急集会だ。木下の先導で体育館へ向かえ」

 

「分かりました」

 

「頼んだぞ」

 

 そう言って鉄人はまた教室を出て行った。秀吉がクラスに声をかける。

 

「それでは皆の者、体育館に向かうぞい」

 

 僕らはぞろぞろと秀吉の後ろにひっついて体育館へと向かった。うーん、なんか秀吉の後ろを歩くって慣れない。いつも秀吉は僕らのことを後ろから支えてくれているイメージだったから、皆をリードする秀吉に違和感があるのかもしれない。

 

「ね、秀吉。自分がクラス代表だっていつ知ったの?」

 

「先日、春休み中に学校から連絡があっての。そこでクラス代表になったと伝えられたのじゃ」

 

「へえー、クラス代表ってそんな風に伝えられてたんだ……。知らなかったよ」

 

「ワシも本当に驚いての。雄二のやっていたことを、ワシが本当にできるのじゃろうかと……」

 

 秀吉は眉間にしわを寄せながら、ため息をつく。秀吉は自分と雄二を比べてしまっているようだ。なるほど、神童と呼ばれた雄二の後釜となると、たしかに重い責任感を感じてしまうかもしれない。でも……秀吉には、雄二とは全く違った魅力があると思う。

 

「……秀吉。秀吉は、秀吉だよ」

 

「なんじゃ?突然何を言い出すのじゃ……?」

 

 ああーっ、違う、そうじゃなくって!僕が言いたいのは……。

 

「えっとね、秀吉。雄二には雄二のやり方があって、秀吉には秀吉のやり方があるんだよ。だから、別に雄二の真似をしようとか、そういうのじゃないと思うよ?」

 

「ワシの……やり方?」

 

「えーっと、ほら、秀吉は可愛いからさ、色仕掛けとかなら男子はイチコロ、皆素直に言うことを聞くはずだよ!」

 

「色仕掛けも何も、そもそもワシは男なのじゃが……」

 

 秀吉は苦笑いだったけど、

 

「じゃが、明久よ。明久なりにワシを励ましてくれているのじゃな……。ありがとうなのじゃ」

 

 やっぱり秀吉の笑顔は眩しい。僕は秀吉の笑顔を見るためなら何でも出来る気がする!

 

「いやいや、お礼を言われるようなことじゃないよ。それよりもさ、何か困ったことがあったら言ってね?手伝うからさ」

 

「うむ。遠慮なく頼らせてもらうぞい。明久も、ワシが手伝えるようなことがあったら言ってくれるかのう?」

 

「本当?助かるよ、秀吉!」

 

  「礼には及ばん。友達じゃからな!」

 

 そうこうしているうちに、体育館へ着いた。クラス順で並ばされて、緊急集会が始まる。

 

「これより、緊急集会を始めます。はじめに、学園長先生からです」

 

 学園長こと、ババア長の長ったらしい話を聞くのは本当に飽きる。あの嫌味なババア、まだ学園長なのか……。

 

「あいよ。えーと、生徒の皆、進級おめでとう。皆、勉学に励みな。学生の本分は勉強だからねえ。そのために昨年度からは新しく、『学生恋愛の全面禁止』という校則を追加させてもらった」

 

 この忌々しい校則のせいで、僕と姫路さんの関係は友達のままだ。どうにかできないだろうか……?そんなことを考えていると、学園長が大きく咳払いをした。

 

「ゴホン。ここからは大事な発表さね。耳の穴かっぽじってよく聞きな」

 

 そういえば、雄二がなんか言ってたな。何の話だろうか。

 

「えー、この校則だけどねえ、実際問題口約束だから、実質的な拘束力を持たないんだよ」

 

 別に校則を破っていてもバレなければいい、という風な考え方が多いってことかな?

 

「よって!アタシは新しい生徒会を立ち上げることにした!その名も……治安維持生徒会!」

 

 ち、治安維持生徒会!?治安維持っていう名前からして嫌な予感しかしない。

 

「この生徒会のメンバーを紹介する。ほれ、出てきな」

 

 学園長に促され、舞台袖から5人の生徒が現れた。ていうか全員よく知ってる顔だ。というか、あいつは……!

 

「3ーA、坂本雄二。治安維持生徒会会長を務めることになった。よろしくな」

 

 雄二は僕の方へ視線をやると、底意地の悪い笑みを浮かべて、そう言い放った。

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