恋と進路と召喚獣   作:秀継

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第九話

 

「……以上です」

 

霧島さんが新入生を歓迎する祝辞を終えて、体育館のステージから降りていく。まだ、ここまでは治安維持生徒会はしゃしゃり出ていない。

 

「第三学年学年主席の霧島さん、ありがとうございました。次は今年より発足した『治安維持を目的とした生徒会』による注意事項の説明です」

 

きた。根本君の予想通り、雄二と久保君はステージに現れた。よし……。

 

「治安維持生徒会会長、3ーAの坂本雄二だ。新入生の皆を歓迎すると共に、我が校の注意事項について説明させてもらう。こっちは……」

 

「同じく副会長、3ーAの久保利光です。宜しくお願いします」

 

雄二たちが演説を始める。僕はこの演説中に待ったをかければいいわけだ。

 

「我が校は『学生の本分は勉学であるということを忘れず、日々研鑽せよ』という進学校の本質を理解して欲しいという考えによるもので、生徒の自由を疎外するのが目的ではありません」

 

「我々治安維持生徒会は、この校則に反する要教育的指導者を摘発し、学生の本来あるべき姿に矯正すべく組織された団体であり……」

 

そろそろ頃合いだろうか。よし!漢、吉井明久!行きます!

 

「ちょっと待ったぁー!」

 

「「っ!?」」

 

体育館に僕の声が響き渡る。雄二も久保君も、一瞬たじろいだが、すぐに冷静さを取り戻した。

 

「……来たか、明久」

 

「……吉井君」

 

僕はステージの二人を指差して、あらん限りの声を上げる。

 

「そんな校則、断じて認めるわけにはいかない!」

 

ここで賛同してくれる人がいてくれたらいいのだが、やはり異端審問会が怖いのだろう。一緒に声を上げてくれる人はいなかった。ちなみに根本君はここで名乗りを上げることはない。僕に知恵を貸しているのが根本君だとバレてしまうと、雄二に対策を練られてしまうかもしれないからだ。

雄二はニヤリと笑った。僕が一人ぼっちなのを嘲笑ったのだろうか。

 

「ほざくな。もはや俺たちの中に、お前に同調する人間はいない。お前が一人でいくら吠えようと……」

 

「仲間なら、いるっ!」

 

僕は一人ぼっちじゃない!同士の思いを背負って、僕はここで立ち上がったんだ!

 

「……ほほぅ?」

 

雄二が怪訝な面持ちになる。ここで畳み掛けるしかない。

 

「たとえ雄二がどんな汚い手で姫路さんや霧島さんたちを丸め込もうとも……悪行を許さないという正義の意志は他にも存在する!」

 

姫路さんたちはきっと、異端審問会が睨みを利かせているから動けないのだろう。雄二め、敵になって初めて雄二の恐ろしさが分かる。でも、僕は負けない!仲間と共に僕は革命を起こす!

 

「さぁ、共に立ち上がってこの横暴な生徒会を打ち破ろう!」

 

僕は大きく息を吸い込んで、大声で宣言した。

 

「今ここに僕と……新入生の久保良光君が、治安維持生徒会に試召戦争を申し込む!」

 

「はいぃぃっ!?」

 

遠くから素っ頓狂な良光君の声が聞こえてきた。そうか、始業式でどう動くかの打ち合わせをしていなかったな。彼にはまた申し訳ないことをした。

 

雄二は面食らっていたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。

 

「面白ぇ。かかってこい明久。テメェの力、この俺にどこまで通じるか試してやるよ」

 

「負けるもんか……!僕らは絶対に勝って、その主張が間違っていると証明してみせる!」

 

適当に試召戦争なんて言ってしまったけど、大丈夫だっただろうか。根本君の方をチラッと見ると、根本君は親指を立てた。問題ないらしい。よかった。

 

「どこまでバカなんですかぁーっ!」

 

良光君の絶叫が聞こえてきた。うぅ…たしかにこんな大事なことの打ち合わせを忘れるなんて、バカと言われても仕方ないかもしれない。

 

「吉井先輩、やめて下さい!こんな騒ぎに僕を巻き込まな……」

 

「大丈夫だよ良光君!一年生でも召喚獣は喚び出せる!操作法は僕が教える!何の心配もいらない!」

 

良光君にとって召喚獣の操作はぶっつけ本番とはいえ、観察処分者として誰よりも召喚獣の扱いに慣れているこの僕が教えるんだ!きっと大丈夫!

 

「さあ、始めようか雄二」

 

「分かってるさ、明久」

 

召喚フィールドは、事前に交渉(近所のお兄さんを紹介)しておいた船越先生に展開してもらう。

 

「「試験召喚(サモン)っ!」」

 

 

「Aクラス 坂本雄二 数学 232点

vs

Fクラス 吉井明久 数学 38点」

 

 

お互いに召喚獣を呼び出す。雄二の召喚獣の装備は、いつの間にかメリケンサックから木刀に変わっていた。進級して装備が変わったのだろう。……僕のは変わらなかったけど。

 

「三年生になっても全く成長してないんですか!?」

 

良光君が何か言っていたけど、もうそれに構っている余裕はない。ステージ上に良光君が上がってくるまで、僕は雄二の相手をする!

 

「「くたばれぇぇぇっ!」」

 

点数では負けているが、操作技術は僕の方が上だ!どんなに重い一撃でも、当たらなければどうということはない!

 

「上等だ雄二!今日という今日はどっちが上かはっきりさせてやる!」

 

「ぬかせ明久!お前ごときが俺に敵うわけないだろうが!」

 

雄二が木刀を振り回して攻撃を仕掛けてくるが、僕はそれをすらりとかわす。頭に血が上った単調な攻撃なんて、僕じゃなくても避けられるんじゃないだろうか。

 

「苦戦しているようだね、坂本君。手を貸そうか?」

 

久保君が雄二に共闘を申し出る。しまった!久保君にまで参戦されるとまずい。少し余裕を見せすぎたかな?

 

「いい!明久ごときに久保の力を借りるわけにはいかない!」

 

雄二は久保君の申し出を拒否。雄二的に、僕相手に二対一というのはプライドが許さないのだろう。

 

「それよりも久保!お前は弟の相手をしろ!」

 

「良光かい?そういえばステージに上がってこないね。吉井君、良光とタッグを組んだんじゃなかったのかい?……良光……羨ましいな」

 

久保君が何か最後の方にボソッと呟いていたが、それを聞き取ることはできなかった。それを聞いてはいけないと本能が指示したような気がする。

それよりも、良光君だ!良光君は一体どうしたのだろう?

 

「タッグを組んだのは本当さ!ねえ、良光君!早くステージに上がっておいでよ!」

 

僕が良光君に声をかけると、良光君は叫んだ。

 

「吉井先輩!先輩は勘違いをしてます!僕は治安維持生徒会の主張を否定したいんじゃないんです!」

 

…………え?

 

「僕は、僕がFクラスに適性があるっていう兄さんの言葉を否定するために、この学校に来たんです!決して治安維持生徒会と戦うためではありません!!」

 

なん……だと……!?ということは、良光君は僕の味方をしてくれないってこと……!?

僕が絶句していると、

 

「そら、隙あり」

 

「痛ああああ!?」

 

雄二は、僕がよそ見をしたその瞬間を見逃さなかった。雄二の召喚獣に攻撃された僕の召喚獣は一撃で屠られ、フィードバックで体に激痛が走る。

思わず膝をついてしまった僕を見て、雄二は勝ち誇ったように笑うと、全校生徒に向けてこう言い放った。

 

「俺たち治安維持生徒会に逆らうと、痛い目にあうぞ。今のバカがいい例だ。そして、俺たち治安維持生徒会が取り締まるのは、カップルだけだ。平穏無事な学園生活を送りたいのなら、恋愛をするな。俺たちはそれ以外のことについては何も言わない」

 

「そ、そんな!そんなの脅しじゃないか!こんな横暴な生徒会が許されていいもんか!」

 

「ぬかせ。今、惨めに負けたお前の言葉なんて、誰の耳にも届きはしないさ」

 

「そ、そんな……」

 

ち、ちくしょう……。生徒たちはしんと静まり返っている。

 

「もう一度だけ言うぞ。恋愛をしなければ俺たちは何もしない。平穏に過ごしたければ恋愛は禁止だ。以上だ」

 

そう言うと雄二はステージ袖へと引き上げていった。

 

「吉井君……。残念だが僕はやはり君の味方にはなれない。悪く思わないでくれ」

 

「く、久保君……」

 

久保君は心配そうに僕の方を見たけれど、雄二の後を追って同じくステージ袖へと行ってしまった。

 

こうして、波乱の始業式は……僕らと治安維持生徒会の戦争の初戦は、治安維持生徒会の勝利で幕を閉じた。




ここから先はオリジナル展開になります。よろしければお付き合いください。
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