それに加えて、通信やドロイドの機械音声などは今まで『』で書きましたが、自分は『』を複数の人間が喋るのに使うので、今回無線やドロイドの台詞は《》に統一しました。
それでは今回もどうぞ。
CHAPTER 03 「触らぬバカに祟りなし」
通商連合艦隊所属のB1バトル・ドロイドで構成された軍団、その第4警備部隊。役割は第1から第5までの他の警備部隊と同様、艦内警備と要人護衛を主とする彼らは、総督直々の指示の下、艦内の『侵入者』の排除に出向いていた。
部隊指揮官である隊長が与えられた情報によると、侵入者は対人制圧用の神経ガスで既に死亡ないしは無力化されているはずだが、総督からは『死体になっていても徹底的にバラせ。特に灰色の髪の男は肉片も残すな!』とのお言葉である。
何で侵入者が応接室にいるんだ、とか、そいつ一体総督からどんな恨みを買ったんだよ、とか、指揮官機だけに他のドロイド達よりAIに余剰がある彼は考察してみるが、しかしこれという結論は出ず、またやるべき仕事に変わりも無かった。若干の擬似感情と思考が備わったとはいえ、指示に忠実なB1モデルであることに大差は無く、ともすれば行動に変動も生じ得ない。
既に侵入者達の死体が転がっているであろう応接室の前に部隊全員で集結し、その旨を管制室に通達、命令遂行の最終承認を待つ。
そして――――
《あら、御免あそばせ》
――ドアが勝手に開き、部屋中に充満した白いガスの中から総督付のプロトコル・ドロイドが何気なく応接室から出て去っていくのは、ちょうどそんな時だった。
彼女が応接室にいたという情報は知らされていなかったので、情報自体は登録されているとはいえ思わぬ事態に戦術プログラムが一瞬齟齬を起こし、行動が乱れ――――
「――首置いてけ」
――それが、彼と部下達の命取りとなった。
眩く光るプラズマの刃が一瞬で自分達に向けて横薙ぎに振るわれ、無機なドロイド達の仮初の命を容赦なく、瞬く間に絶った。
せめてもの救いは、彼らが正常な状態であろうとなかろうと、どの道その末路に変わりは無かったという点だろうか。
† † †
「うっし、んじゃあカエル狩り行くか」
「ちょっ、待っ……まだ体の毒が……」
ドアの向こうで待ち構えていたドロイドの一団を一瞬で殲滅、毒ガスを吸い込んでしまい行動不能になっているオビ=ワンを引き摺り運びながら廊下に出てきたアッシュは、体を解しつつ通商連合の者達が卒倒しそうな恐ろしい台詞を吐く。
普通ならここでオビ=ワンがツッコミを入れるところだが、まだ解毒が完全ではないらしく苦しそうにしている。
「お前ね、その程度の毒も相殺できないでどうするの。パンピーにやれとは言わないよ?でも俺らジェダイじゃん。フォース使えんじゃん。自分の体に毒が入ったぐらいで一々倒れてたらこれから先やってけねえぞ」
「貴方と一緒にしないでください……ッ!ゲホッゲホッ!」
「しゃーねーなあ……ほれ、こっちゃ来い」
まだ立ち上がれず咳き込んでいるオビ=ワンの前で屈み込むと、アッシュはその胸部の真ん中に掌を当てる。すると程なくオビ=ワンは何かがこみ上げてくるのを感じ、思わず口元を手で覆った。
「うぐっ、ごほっ……!」
堪らずに吐き出したものは痰のような粘液だった。それが何なのか、自分の体調の変化でオビ=ワンは理解する。
「……毒を排出させたんですか?」
「ん。中和しても良かったんだが、お前さんの体力を使うからな。これからパシらせる奴消耗させたら俺まで割を喰らうだろ」
「そこで相手への気遣いじゃなく自分のためなのが貴方らしいですよ……」
「一番負担が少ないのは尿道か肛門なんだがそっちが良かったか」
「そんなことしたら命を賭けてでもあんたをぶっ殺す」
アッシュはフォースによってオビ=ワンの体内に残留していた毒素が一箇所に集積させ、それを粘膜で覆い食道から吐き出させた。
フォースによる癒しは大抵の毒なら中和できるが、アッシュが言った通りフォースはあくまで外部から干渉して中和作用を促すのであり、実際に中和するのはあくまで肉体なので多少なり体力の消耗を招く。
その点でアッシュの施したやり方は、中和に比べれば荒療治ではあるものの体力の消耗が少ないので、敵陣のど真ん中であるこの状況では正解と言える。オビ=ワンの被害も、無理矢理に胃から毒素ごと粘液を吐き出したことによる喉の痛みぐらいだ。それも些細なもので、毒に冒されるよりは遥かにマシなのは言うまでも無い。
最もここまで迅速に行えるのは彼だからこそ。他のマスターでも自分以外の生体への強い干渉を行える者は数える程であり、正確さまで考えるとアッシュの技量は随一になる。以前聞いた話によると、育ての親にそういった事を教わったそうだ。
「……すみません、足を引っ張ってしまって」
「ホントだよお前。若いんだから体を張りなさいよ。機転を利かせなさいよ。オジサン達に頼ってちゃ駄目よ?
という訳で、一人で管制室に吶喊してこい。大丈夫、お前ならやれる。お前ならカエルだろうがドロイドだろうが敵じゃねえ。じゃあ俺はもう帰るからあと夜露死苦(死語)」
「夜露死苦(死語)じゃねえよ」
「こいつ(死語)まで口にしやがった……!」
「うるせえよ!」
感謝して損した――オビ=ワンの偽りなき気持ちだった。
毒ガスを吸ってしまったのは自分の不手際だし――それもアッシュが原因の一端であるような気もするが――、毒を迅速に取り除いてくれた事には感謝するが、このふざけた言動に付き合わされると嫌でもそんな気持ちは失せてしまう。
しかし
「これからどうしますか?我々を殺そうとしたとなると、船とクルーも――――」
「ああ、予め脱出するよう言っといたから大丈夫だろ」
「……は?」
「いやだって、どう見たって罠じゃん。騙し討ち確実じゃん。だから俺らが降りたらお前らもこっそり船から抜け出て隠れてろよって、あいつらにも言っといたんだよ。まあそこから先は俺も与り知らんが、大丈夫じゃねえの?その内連絡でも来るだろ」
「……あぁもうっ……!」
判断は正しいだろう。クルーが無事脱出しているかどうかは不明だが、アッシュの警告で生き延びているのなら文句の付けようは無い。
しかし――せめて事前に一言言ってくれてもよかったのではないだろうか。
「――そんじゃまあ、こんなクソみたいな歓待しくさったクソガエルどもにお礼参りと行きますかね」
脱力するオビ=ワンを他所に、手足を伸ばして体を解し終えたアッシュは、悠々と歩き出す。自分達に牙を向けた愚か者達に、その代償を支払わせるべく。
「あ。そういえば管制室ってどっちだっけ?」
「……もういいです」
真顔で質問してくるアッシュの締らなさにガクリと肩を落としつつ、オビ=ワンも艦の構造を知らないのは同じなので、近くにある端末からコントロールシップ内の情報を取得しようとする。
そんな二人が迫り来る音に気づいたのは、ちょうどその時だった。
「ん?」
「え?」
そこにいたのは――通路の片方から迫り来る、視界を埋め尽くさんばかりの、B1バトル・ドロイドの大軍だった。
《イタゾ、ターゲットヲ発見!撃テーッ!》
《ラジャラジャ》
3列目に立つ指揮官機が指示を出すと、彼(?)の号令に応じて最前列のドロイド達が一斉にブラスターを撃ち放ってきた。
「うっわ、何あの数。ゴキブリみたいで気持ち悪い」
「そんなこと言っている場合ですか!」
こちらを蜂の巣にでもせんとばかりにブラスターの集中砲火を浴びせてくるドロイドの大軍に対し、アッシュとオビ=ワンはそれぞれのセーバーでブラスターを跳ね返して防御に徹する。
尋常ではない光景だった。曲がり角の先までドロイドの軍列が続いており、先頭の者達は周囲の壁に被害が出ようがお構いなしに撃ちまくってくる。アッシュ達もセーバーによる防御で銃弾を跳ね返し、それによってドロイドを破壊しているが、一機破壊されるごとにその後ろから隙を埋めてきており、全く数が減る気配が無い。
普通に考えるならあり得ない運用法である。いや、数に頼んで物量で押しつぶすのはむしろ常套手段の一つだろう。問題は、周囲への被害を一切考慮せずここまでの強行を行わせている敵側の意図だった。
そう、オビ=ワンが疑念を抱いていると――――
《アノ灰色ノ髪ノジェダイヲ優先シテ殺セ!周囲ノ被害ハ気ニスルナ!総督命令ダ!》
《ラジャラジャ》
「……何やらかしたんですか、あんた」
「知らねえよ、どうせ逆恨みかなんかだろ。それよりアレだ、面倒だから退くぞ。ほれ、ダッシュダッシュ」
「え、ちょっ!」
言うや早く、アッシュはセーバーを仕舞い駆け出す。咄嗟のことに一拍子遅れつつ、オビ=ワンもそれに続いた。ただオビ=ワンの場合、絶える事無く放たれている銃弾に対処するため、セーバーは持ったままだし背中を気にしながらの走行なので、疾走気味のアッシュとは自ずと距離が開いてしまう。
一方のアッシュはというと、後頭部に目でも付いているのか弾丸――オビ=ワンの数倍の数――を尽く回避しながら余裕で走っている。まあ、フォースの探知ぐらいは使っているのだろうが。
そうして数分ほど走ると、フォースで脚力を強化している二人は自ずとドロイド群と距離を引き離し、オビ=ワンも少しは余裕を持てるようになった。未だに撃って来ているので時折弾が掠ったりするが。
「それでどうします?我々が乗ってきた船を破壊されたとしたら、他の脱出手段を手に入れなければなりませんが」
「お前が囮になって連中を引き寄せる。俺はその隙に船をかっぱらい脱出する。オーケー?」
「ノウ!普通そこは自分で囮を引き受けるとか言うところでしょ、実力的に考えて!」
「うわーサイテーだわー。目上の人間囮にして自分だけ助かろうとかナイワー。ホント最近の若者はコワイわークズだわー」
「最低なのもクズなのもあんただろこのクズ!!
ふざけてないで、本当にどうするんですか!? いくらなんでも、正面からやり合ってたら体力が持ちませんよ!」
「えー、いや面倒だけど俺は別に――……ん?」
言い合いながら走っていると、通路の突き当たりにアッシュが目を向ける。それに釣られてオビ=ワンも同じ方向を見ると、左右に分かれた通路の突き当たりはどこかへ繋がる入り口となっていた。
「あれは――――」
「お」
二人がフォースで視力を強化して見ると、ドロイドだけでなく通商連合を構成するニモイディアンが何人もいた。そうなると思い浮かぶ可能性は一つであり、そして何より――――
「み・い・つ・け・た」
「え?あっ、ちょっ!」
その視界に、あの赤い服を纏っていた偉そうな総督の顔を納めたアッシュは、ニイッと獰猛に笑うと、ホルスターに仕舞っていたセーバーを抜刀、脚力を更に強化し、一気にスピードを加速させた。焦るオビ=ワンは完全に置いてけぼりだ。
そして――――
「ガァーンレェーイくぅーん、あっそびましょぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
『う、うわああああああッ!? 何か来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?』
「……何だこれ」
キ○○イじみた狂気の笑みを浮かべながら吶喊するアッシュと、それを見て恐怖のあまり叫ぶ通商連合の親玉という、なんとも混沌とした絵面が出来上がっていた。
呆然と呟くオビ=ワンを責めることは出来ないだろう。
■自己啓発こーなー。
○短い?
一応一区切りということで。
○哀愁のドロイド
EP1ではそれほどでもなかったが、クローンウォーズ以降は「絶対感情あるだろコイツラ」と思うB1ドロイド君。隊長機とかは機能拡張してある程度思考できるということにしました。まあモブのやられ役ですが。なむなむ。
○宇宙妖怪首置いてけZ
ジェダイが生んだ首切りマッスィーン。金と酒と糖分と義妹系エロ雑誌を与えていれば大抵の命令は聞いてくれる……はず。追加効果として敵味方を問わず甚大な被害をもたらす。主に胃に。
○フォースの解毒
実際にフォースで解毒は出来るが、中和するのに回復させる対象の体力を使うのか、それともフォースを使う癒し手が消耗するのかは不明。ここでは対象が体力を消耗、使い手は若干消耗ということにしている。あと解毒できない毒があるのかも不明。
○アッシュの芸
何気に多芸。記述したとおり、育ての親こと師匠から教わった。芸は人を活かすという。でもアッシュは、こうした技能を命懸けで学ばされた。拒否権なし。
今回使った、生体に干渉して毒を排出させるといった芸当は、作者的には東洋ファンタジーなどで出てくる「仙術」がモチーフ。余談だがアッシュの師匠のイメージは「女仙人」。
○死亡キャラ生存?
原作では容赦なく船と運命を共にしたクルー。助かったのか駄目だったのか果たして……
○ドロイド前線異常あり
なんでこんなことになっているかの詳細は次回に。
○アッシュ
このクズ!あれ、でもこの台詞ってどっちかというと……(アビス並感
○フォース色々
今回は上記の解毒に加えて脚力と視力・空間認識強化。少なくとも脚力強化は出来ていたが、それ以外を原作でパダ=ワンのオビが既に使えていたのかは不明。ここではアッシュに振り回せれて経験値積んだということで。
○バカ、吶喊します!
キ○○イに注意。ターゲットを視界に納めたら、狂笑浮かべて突っ込みます。
今更ながら、こんなのが主人公って……OTL
本当に今更ながら、オビが不憫すぎる。キャラ崩壊的な意味でも扱い的な意味でも(他人事 アニーが来るまで頑張れ!そしたら大好きなクワイ=ガンの元に戻れるから!
それではまた次回に。