魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
結界の中は、昨日のように黒い蝶や赤い蝶が飛び回り、辺りに不気味な草花が咲き乱れている空間だった。
そんな世界の中を、タケル達は魔女のいる奥の方に向かって走っていた。時折迫ってくる使い魔を、タケルはガンガンセイバーで斬りつけ、星斗はガンガングローブで殴り倒し、隼人はガンガンガンマンを、マミはマスケット銃を使って撃ち抜いていた。
「わわっ! く、来んな! 来んな!」
「どぉりゃあ!」
また、さやかと誠司も少なからず魔力で強化された金属バットで応戦している。とはいえ、さやかは一回もかすりもせず、単にバットによるバリアで守られており、誠司だけが使い魔を叩けれている。
「ひぃ!」
「あ、悪霊退散!」
一方、晶は完全に怯えており、ヘルメットに仕込まれた魔力でバリアを張って守られていた。その近くにはまどか、仁美、御成がいた。
しばらく進んでから、マミがまどか達に問いかけた。
「どう? 怖いかしら? みんな」
「な、なんて事ねぇって!」
「問題ないぜ!」
さやかと誠司は自棄になって叫んでいた。普段は肝っ玉の据わった2人だが、やはり内心は怖がっていたのかもしれない。
先に進もうとした時、隼人が片手で進むのを制した。目の前から再び使い魔が押し寄せて来たのだ。隼人は焦る事なくガンガンガンマンで的確に撃ち抜いた。皆が警戒していると、まどかの背後で使い魔が合体して襲いかかってきた。が、いち早くタケルが飛び蹴りで使い魔を倒した。
「大丈夫か?」
「う、うん。ちょっと怖いけど……」
「安心しろよ。俺が守ってやるから」
そう言って使い魔に斬りかかった。タケルやマミ達のその戦いぶりに、まどかは自然に目を惹かれていた。
「(怖いけど、でも……!)」
まどかはこれまでに感じた事のない胸の高まりを見せていた。
「頑張って! もう直ぐ結界の最深部だ!」
キュゥべえはそう叫んだ。やがて使い魔の群がっている地帯をマミが一掃した時、目の前に扉が現れた。タケル達は慎重に扉を開けて先に続く道を歩いていると、目の前に広がるドーム状の空間に、奇怪な存在が佇んでいた。
薔薇の茂みのような頭部に、蝶の羽を背中につけた、グロテスクな魔女がそこにいた。
〜薔薇園の魔女、ゲルトルート〜
〜彼女の楽園に足を踏み入れた者は最後、その身を引き裂かれるだろう〜
「見て。あれが魔女よ」
マミが魔女を指差してそう言った。
「うわ、グロ……」
「そ、想像してたのと、全然違いますね……」
「あんなのと、戦うんですか……?」
あまりにも予想に反した異様な姿に、まどか達候補生はビクついていた。何度か魔女を見てきたタケルでさえも、である。が、マミはそんな彼らを安心させるように言った。
「大丈夫よ。私達がチームを組んでいる以上、負けるもんですか」
それから、マミはさやかと誠司が持っていたバットを地面に突き刺して、バリアを、まどか達を覆うように張った。
「それじゃあ下がってて」
「行ってくるぜ!」
そしてタケル、星斗、隼人、マミはドーム状の空間に降りて、魔女と対峙した。その気配に反応したのか、薔薇園の魔女はこちらに振り返った。マミはスカートを少し広げると、そこからマスケット銃が出てきた。
「英雄アイコンを使うぞ!」
「「はい!」」
隼人の指示で、タケルと星斗は各々の英雄アイコンを取り出して、スイッチを入れてからバックルに嵌めた。
『『『アーイ!』』』
『バッチリミナー! バッチリミナー! バッチリミナー!』
『バッチリミロー! バッチリミロー! バッチリミロー!』
『バッチリミテー! バッチリミテー! バッチリミテー!』
そしてレバーを引いて押した。
『カイガン! エジソン! エレキ! 閃き! 発明王!』
『カイガン! ニュートン! リンゴが落下! 引き寄せまっか!』
『カイガン! ビリー・ザ・キッド! 百発百中! ズキューン! バキューン!』
タケルがエジソン魂、星斗がニュートン魂、隼人が、頭に帽子がつけられて、もう一つのガンガンガンマンが左手に握られて、2丁使いとなったビリー・ザ・キッド魂になったところで、薔薇園の魔女が座っていた長い椅子をタケル達に向かって放り投げた。星斗が前に出て、右手に宿った斥力で押し返した。
「はぁっ!」
その隙に、タケルと隼人が乱射して薔薇園の魔女に攻撃したが、敵の動きが図体の大きさに反して、異常に素早かった。
「くっ……! 速すぎだろ……!」
思うように弾が命中せず、タケルは地団駄を踏んでいた。一方、マミも使い捨てのマスケット銃で薔薇園の魔女を撃っていた。足りなくなったらコルク帽子を持って振り払って新たにマスケット銃を出して撃ちまくっていたが、一向に当たる気配がない。それどころか、
「……なんか、マミさんの攻撃、全然狙いから外れているような……?」
誠司がふとそう呟くように、マミの攻撃は最初から薔薇園の魔女を狙っていないようにも見えたのだ。
そうしてしばらく撃ち合っていると、マミの方に異変が生じた。いつの間にか、マミの足元に使い魔が群がり、蔦のようなもので足元が縛られているのが見えたのだ。マミは振りほどこうとしたが、時すでに遅し、今度はマミの体そのものが巻きつかれてしまい、宙に浮かされた。
「! しまった!」
タケルもマミを助けようと近づいたが、棘のついた蔦で払われてしまった。
「ぐぁっ!」
「! タケル!」
マミは空中に浮いている間も、果敢にマスケット銃で撃っていたが、いずれも地面に当たるだけだった。やがて薔薇園の魔女はマミを壁に叩きつけた。そしてそのまま彼女の体を逆さにぶら下げたのだ。
「! 大変ですわ!」
「マミさん!」
仁美とまどかの悲鳴に近い声が聞こえてきた。
「やばい! 早く助けないと!」
「あぁ!」
タケルと星斗が慌てて武器を構えた時、隼人が片手を突き出して2人を止めた。
「大丈夫だ。あの程度でやられるほど、マミは弱くない」
「で、でもこれはさすがにまずいでしょ⁉︎」
「よく見るんだ。あの魔女の足元を」
隼人がそう指摘して、皆がその方向を見ると、なんと撃ち抜かれた地面の穴から黄色いリボンが出てきたのだ。これには薔薇園の魔女やその使い魔達も慌てた。薔薇園の魔女がマミに攻撃しようとしたが、それよりも早くリボンが薔薇園の魔女を拘束し、身動き一つ取れない状態になった。
「もしかして、これもマミさんの作戦の内……?」
「まぁね。未来の後輩達に、あんまりかっこ悪いところは見せられないものね!」
その隙に、隼人は2丁のガンガンガンマンを合体させてライフルの形にしてから、マミに巻きついている蔦を撃ち抜いた。
「惜しかったわね」
マミはそう呟くと、胸のリボンを解いて翻すと、光に包まれて、一つの巨大な銃に姿を変えた。一方、隼人も撃ち抜いてからそのまま腕をベルトに持ってきて、ガンガンガンマンをかざした。
『ガンガンミテー! ガンガンミテー! オメガインパクト!』
「……害虫駆除だ。はぁぁぁぁぁっ!」
「おっと! 俺も行くぜ!」
『ガンガンミナー! ガンガンミナー! オメガシュート!』
タケルも、隼人に続いてガンモードのガンガンセイバーをベルトにかざした。3人の持つ銃にエネルギーが溜まると、同時にトリガーを弾いた。
「くらぇぇぇっ!」
「はぁっ!」
「ティロ・フィナーレ・トリオ!」
3人の放った攻撃は、薔薇園の魔女を撃ち抜き、爆散させた。辺りに轟音が響き、観戦していたまどか達は思わず耳を塞いだが、やがて煙が晴れると、タケル、星斗が手を振り、隼人が立っているのが見えた。マミも綺麗に着地を決めてから、1回転した後、どこからか紅茶の入ったティーカップを取り出して一杯飲んでから、まどか達に向かって微笑んだ。
「(本当に凄かったな……。隼人さんとマミさんの戦い方)」
初めて見た2人の戦いぶりに、タケルは感激していた。かなりの実力があるところから見ても、それなりに実戦経験してきたのだろうと思わざるを得なかった。
「か、勝ったの……?」
「やりましたぞ!」
「凄い……」
「一時はどうなるかと思ったけど、良かったぜ……」
「これが、魔法少女や仮面ライダーの戦いなのですね」
「かっこ良かった……」
まどか達は各々の率直な感想を述べる中、隼人はこう呟いた。
「……それにしても、ティロ・フィナーレ・トリオか。さすがに恥ずかしい気がするんだが……?」
その小さな呟きは誰にも聞こえる事はなく、やがて周りの景色が崩れて、元の廃ビル内の空間に戻った。
4人は変身を解除し、まどか達が呆然としていると、マミが、先ほど魔女がいたところに歩み寄って、そこに落ちていたグリーフシードを手にした。他のメンバーもマミに近寄った。
「マミさん、それって何ですか?」
晶が気になって尋ねた。
「これはグリーフシード。魔女の卵よ」
「た、卵……?」
「運が良ければ、時々魔女が持ち歩いている事があるの」
「で、ですが、卵という事は、そこから魔女が孵る可能性もあるわけですよね? そのようなものを持っていて、良いのですか?」
仁美が不安になってそう言うと、キュゥべえが答えた。
「大丈夫。その状態では安全だよ。むしろ役に立つ貴重なものだ」
「……? どういう事なんだ?」
誠司が首を傾げていると、タケル達はソウルジェムやアイコンを取り出した。
「私達のソウルジェムやアイコン、夕べよりちょっと色が濁ってるでしょ?」
「あ、本当だ……」
「なぜこのような事に……」
「魔法少女や仮面ライダーも、戦ったりしていると魔力を消耗する。そしてその分濁りが出来る」
「でも、グリーフシードを使えば……」
4人が各々のソウルジェムやアイコンをグリーフシードに近づけると、濁りがグリーフシードに移った。まどか達がその光景に驚いていると、マミが説明を続けた。
「ねっ? これで消耗した私達の魔力は元通り。昨日話した魔女退治の見返りっていうのがこれ……」
マミがそう言い終わる寸前に、マミはグリーフシードを薄暗い通路に放り投げた。だがグリーフシードは地面に落ちる事なく、何者かの手に受け止められた。
「あと1度ぐらいは使えるはずよ。あなた達にあげるわ」
皆が警戒する中、マミは向かってきた2人の人影の名前を呟いた。
「暁美 ほむらさん、そして、工藤 マコト君」
「「……」」
夕日に照らされて、ようやくまどか達はその正体がほむらとマコトである事が判明した。
「あ、あいつら……!」
「いつの間に……!」
さやかと誠司が警戒をより一層強めた。
「それとも、人と分け合うんじゃ不服かしら? 丸ごと自分達のものにしたかったの?」
が、ほむらは手に持っていたグリーフシードを隼人に投げ返した。
「これはあなた達の獲物よ。あなた達だけのものにすれば良い」
「そうか……。……それがお前達の答えか」
隼人は静かにそう呟いた。どうやら隼人だけでなく、マミも彼らを明確な敵として判断したようだ。その視線を浴びながら、2人は背を向いてその場を去ろうとした。すると、マコトが足を止めた。
「……お前らは甘い」
それは、昨日と同じセリフだった。が、今日の方が凄みがあった。
「魔法少女や仮面ライダーになる事が、どういう意味か、よく考える事だな……」
それだけ告げると、ほむらと共に再び歩き始めて、闇に溶けるように姿を消した。
皆が緊張から解放されてホッとしていると、さやかが、2人が去っていった方向を睨みつけながら言った。
「く〜っ! やっぱ感じ悪い奴ら!」
「全く……、何しに来たんだか」
タケルも呆れていると、まどかが悲しげにポツリと呟いた。
「……仲良く、なれないのかな……?」
「お互いにそう思えれば、ね……」
そう呟くマミの表情も、どことなく悲しげだった。
それから、廃ビルを出たまどか達は、魔女の口づけをされていたOL風の女性を介抱しに行った。
「ここは……? あれ? 私は……」
女性は周りに群がるまどか達を見て不思議がっていたが、やがて自殺しようとしていた事を思い出したのか、突然パニックになって震え始めた。
「や、ヤダ……! 私、何であんな事を……⁉︎」
そんな女性を落ち着かせるように、マミと隼人は優しく抱きしめるように慰めた。
「大丈夫です。きっと、悪い夢でも見ていたんだと思います」
「もう心配いりませんから、安心してください」
その優しく接している様子に、まどか達は感銘していた。
「優しいですね、隼人さんとマミさん……」
「あぁ、そうだな」
「先輩のこういった優しさがあったから、俺もついていこうって思えたんだ」
星斗が手を頭の後ろに組んでそう呟いた。まどか達も、その言葉に納得した。
「(叶えたい願いとか、私には難しすぎて、すぐには決められないけど……。それでも、人助けの為に頑張るタケル君達は凄かったなぁ……。)」
まどかはマミと隼人が介抱する様子、星斗がニヤニヤしながらその光景を見つめている様子、そして、最後まで自分達を守ってくれた幼なじみのタケルの背中を見つめながらそう思った。
「(こんな私でも、あんな風に誰かの役に立てるとしたら、それはとっても嬉しい事なんだなぁ……)」
そう思ったまどかは、家に帰ったら、早速自分の魔法少女姿に色をつけて、理想の自分を完成させようと決意した。
マミさん、あんなに母性溢れる優しさを持ってたのに、本編の第3話であんな事になるなんて、あの頃は夢にも思わなかったなぁ……。
いよいよ明日はWIXOSSの映画が公開! 楽しみです!
次回もお楽しみに。