魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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あぁ……! とうとうこのセリフの回が来てしまった……!


15. もう何も怖くない

次の日の放課後、まどか達は上条のお見舞いに向かうさやかについて行き、見滝原市立病院を訪れていた。もっとも、上条のいる病室に向かったのは、さやか、晶、仁美、そして紹介するために連れて行かれた星斗の4人だけであり、他のメンバーはキュゥべえと一緒に広いロビーで待機していた。ちなみにキュゥべえは普通の人間には見えないため、病院内に連れてきても問題は無かった。

少ししてから、4人がまどか達のところに戻ってきた。が、あまりにも早すぎるので、皆は首を傾げていた。

 

「……あれ? 早くねぇか? まだ5分ぐらいしか経ってないよな……」

「ひょっとして、上条君に会えなかったの?」

 

タケルとまどかがそう尋ねた。

 

「今日は都合が合わないそうなんです……」

「わざわざ星斗に紹介しようと思って来てやったのに、失礼しちゃうよね」

 

仁美とさやかは、納得のいかない表情で呟いた。

この場にいても仕方がないので、一同は病院を後にして、駐輪場を歩いていた。

すると、まどかが立ち止まってある一点を見つめた。

 

「? どうかなされましたか?」

「あそこに、何かが……」

 

御成に尋ねられて、まどかが指さしたその先には……。

 

「! グリーフシード!」

「本当だ! 孵化しかかっている!」

 

星斗だけでなく、キュゥべえも珍しく慌てていた。白い壁に突き刺さったグリーフシードの針の先には亀裂が入っており、黒い霧が放出されている。

 

「な、なんでこんなところに⁉︎」

「まずいよ! 早く逃げないと! この辺りはもうこいつの魔力に侵食され始めている。もう直ぐ結界が出来上がってしまう!」

「また、あの結界が……⁉︎」

 

さやかは最初に結界に入り込んでしまった時の事を思い出して、慌てて星斗に尋ねた。

 

「ねぇ。マミさんか隼人さんの携帯番号、知ってる?」

「……悪い。俺、昨日携帯を修理に出してて、今日は持ってないんだ……。よりによってこんな時にこうなるなんてな……」

「ど、どうしたら……」

 

晶だけでなく、皆が困った表情をしていると、さやかが意を決して叫んだ。

 

「みんな、先に行って、マミさんと隼人さんを呼んできて。あたしはこいつを見張ってる」

「! そんな……!」

「無茶だ! 中の魔女が出てくるまではまだ時間は少しだけあるけど、結界が閉じたら、お前は外に出られなくなるんだぞ⁉︎ 隼人さん達の応援が間に合うかどうかなんて……」

 

あまりにもぶっ飛んだ提案に、特にまどかと星斗は強く反対していた。が、さやかも首を横に振って反論した。

 

「あの迷路が出来上がったら、こいつの居所も分からなくなっちゃうんでしょ? それに、放っておけないよ。ここには恭介や、多くの患者さんが……」

 

それを聞いて、まどか達は以前マミから聞いた事を思い出した。病院に魔女が取り憑くと、そこにいる人々の生命力が吸われてしまい、大惨事になる、と……。

かと言って、このままさやか1人を残させるわけにはいかない。そう思っていた一同の中で、真っ先に晶がさやかに近寄った。

 

「ぼ、僕は、ここに残ります……! さやかちゃん1人じゃ危ないから……!」

「私も残りますわ!」

 

晶に続いて、仁美もこの場に残ると宣言した。星斗と誠司も、少し悩む素振りを見せてから、タケル達に言った。

 

「俺も残るぜ。最悪、俺が変身して、時間を稼いでいればそれでいいからな。」

「俺もここにいる。だから、まどか、タケル、御成。3人で隼人さん達を連れて来るんだ!」

「分かった。なら、僕もこっちに残るよ。マミ達なら、テレパシーで僕の位置が分かる。ここでさやか達と一緒にグリーフシードを見張っていれば、最短距離で結界を抜けられるように、他のみんなを誘導出来るからね」

「みんな……。ありがとう!」

 

さやかは、心の底から感謝しているように叫んだ。やはり1人だけではどことなく不安があったのだろう。

 

「……私、直ぐにマミさん達を呼んでくるから!」

「それまで持ち堪えてくれよ! 行くぞ! まどか、御成!」

「あぁ! お待ちくだされ!」

 

タケルが先に駆け出し、まどか、御成がそれに続いた。

3人が駐輪場を抜けたあたりでしばらくしてから、グリーフシードから発せられた強い光にさやか達は包まれて、完全にその姿を消した。後には全員の学生カバンしか残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人は先ず、マミのいるマンションに向かった。急いでチャイムを鳴らすと、直ぐにマミは出てくれて、事情を話し終えると、強く頷いて、隼人に連絡した。手短に連絡し終えて携帯を閉じると、マミは

 

「急ぎましょう。現地で待ち合わせているから」

 

と言って、タケルが先導して、4人は病院に戻った。

病院にたどり着いてから、タケルは意識を集中させると、テレパシーを通じて、さやか達の会話が聞こえてきた。

 

『怖いかい? みんな』

『そりゃあ、まぁ……』

『当然でしょ? 今までの事を見てきて、それぐらいは分かるし……』

『まぁ、俺がいるし、何とかなるだろ?』

『ただ、星斗だけでは無理が生じる事もあるかもしれない。願い事さえ決めてくれれば、今この場で君達を魔法少女や仮面ライダーにする事も出来るんだけど』

『いざとなったらそうする事になるかもな……』

『……けど、今はやめとく。中途半端に決めるのは良くないからね……』

 

どうやらさやかは昨晩のマミ達からの忠告を聞き入れてくれていたようだ。皆の無事を確認したところで、4人はテレパシーでさやか達と会話した。

 

『キュゥべえ、状況は?』

『まだ大丈夫だ。孵化する様子は無いよ』

『さやかちゃん、みんな! 大丈夫⁉︎』

『平気だよ。退屈で居眠りしちゃいそうなくらいにね』

『無事のようで良かったですぞ』

 

タケル、まどか、御成がホッと一安心していると、キュゥべえの声が聞こえてきた。

 

『むしろ、迂闊に大きな魔力を使って卵を刺激する方がまずい。急がなくていいから、なるべく静かに来てもらえないか?』

『分かったわ』

 

通信を切ると、マミはタケルと御成に向き直った。

 

「八谷君の目印になるように、2人はここに残ってて。彼と合流してから、改めて結界内に来てね」

「「はい!」」

「じゃあ、行くわよ、鹿目さん」

「は、はい……!」

 

マミはまどかの手を掴むと、結界内に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界内は、お菓子と病院を組み合わせたような、不気味な世界だった。しばらく進んでいると、マミが口を開いた。

 

「間に合って良かったわ……。無茶しすぎ、って怒りたいところだけど、今回に限っては冴えた手だったわ。これなら魔女を取り逃がす心配も無いものね……」

 

マミがそう語っていた時、背後に何かの気配を感じて、後ろを振り返った。まどかも気になってその目線の先を追うと、人影がいた。やがてその影は近づいていき、近くの明かりに照らされて、ようやくその全貌が見えてきた。

 

「ほ、ほむら、ちゃん……?」

 

現れたのは、マミと同じ魔法少女のほむらだった。彼女はすでに魔法少女姿に変身していた。マミは腕組みをしたまま、敵意剥き出しの冷たい目線をほむらに向けた。

 

「……言ったはずよね。二度と会いたくないって」

「今日の獲物は私とマコトが狩る。あなた達は手を退いて」

「そうもいかないわ。ここには小川君やキュゥべえ、美樹さん達もいるの。彼女達を迎えに行かないと」

「彼らの安全は保障するわ」

「それを信用すると思って?」

 

マミは笑みを浮かべてそう言った。その笑みはいつもと違って、どことなく怖いようにまどかは思った。しばらく睨み合っていたが、不意にマミが左手を突き出した。左手の指にあった指輪型のソウルジェムが光り出し、地面からリボンが飛び出して、鎖のようにほむらをあっけなく拘束した。

ほむらは苦しげにリボンを解こうとしたが、きつく縛られているためか、一向に抜け出せない。

 

「ば、バカ……! こんな事やってる場合じゃ……!」

「もちろん怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら、保障しかねるわ」

 

冷たくあしらうマミに対し、ほむらは必死にもがきながら叫んだ。

 

「今度の魔女は、これまでの奴らとはワケが違う……!」

 

が、そんな必死な訴えも届かず、マミはまどかの手を掴んで、再び歩き始めた。

 

「大人しくしていれば、帰りにちゃんと解放してあげる。……行きましょう、鹿目さん」

「あ、はい……」

「! 待って……!」

 

まどかはほむらの安否を心配するが、さやか達の方も放っておけないと思い、そのままマミについていった。ただ、少しだけ振り返ってほむらの顔をチラッと見た時は、その表情は何か諦めているようにも見えた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

使い魔に見つからないように、結界内にあったお菓子に隠れながら、2人は先を進んでいた。

しばらくして、再びマミが口を開いた。が、今度は悲しげな様子だった。

 

「……さっきは変なところ見せちゃってごめんなさいね。時々余裕がなくなっちゃうとあんな風にきつく言ってしまう事もあるから……」

「……」

 

その表情を見ていたまどかは、ある事を決心して、思い切ってマミに話しかけた。

 

「あの、マミさん」

「何?」

「願い事……。私なりに色々と考えてみたんです」

「決まりそうなの?」

「はい……。でも、あの、もしかしたら、マミさんには考えが甘いって怒られるかもしれないけど……」

「どんな夢を叶えるつもり?」

 

マミが優しく微笑むと、まどかは様々な部屋を抜けながら話し始めた。

 

「……私って、昔から得意な科目とか、人に自慢出来る才能とか、何も無くて……。きっとこれから先もずっと、誰かの役に立てないまま、迷惑かけていくのかなって。それが嫌でしょうがなかったんです」

 

まどかの脳裏には、幼なじみのタケルや、親友であるさやか達と一緒にいる時の光景が浮かんでいた。最初はどことなく憂鬱な様子だったが、次第に明るさを取り戻し始めた。

 

「……でも、タケル君が変身して魔女や使い魔と一生懸命戦ったり、マミさん達と出会って、誰かを助けるために戦っているのを間近で見せてもらって……。同じ事が私にも出来るかもしれないって言われて……、何よりも嬉しかったのは、その事で……」

 

そこでまどかは一旦言葉を区切って、それから最も伝えたい事をマミに告げた。

 

「だから私、魔法少女になれたら、それで願い事が叶っちゃうんです。こんな自分でも、誰かの役に立てるんだって。胸を張って生きていけたら……、それが一番の夢だから……」

 

言い切った後、マミがまどかに掴んでいた手を離して、振り返ってまどかを見つめながら言った。

 

「……大変だよ? 怪我もするし、恋したり遊んだりしてる暇も無くなっちゃうよ?」

「でも、それでも頑張ってるタケル君やマミさん、星斗君、隼人さんに、私は憧れてるんです」

「憧れるほどのものじゃないわよ、私……」

 

マミは再び悲しげな表情になって呟いた。

「無理してカッコつけてるだけで、怖くても、辛くても、今の見滝原には魔法少女は私だけしかいないから、女同士で相談出来る訳じゃないから、一人ぼっちで、泣いてばっかり……。だから、決して良いものじゃないわよ。魔法少女も、仮面ライダーも……」

「今の……って事は、前はいたんですか……?」

「……えぇ。小川君が仲間になる前に、1人だけ弟子としてね……。今はもうこの街にはいないわ」

 

それでもなお、まどかはマミに優しく微笑んだ。

 

「マミさんは、もう一人ぼっちなんかじゃないです。私やタケル君達がついてますから」

 

それを聞いて、マミは振り返ってまどかの手を掴んだ。その目には涙が溢れていた。

 

「……本当に、これから私達と一緒に戦ってくれるの? 私のそばに、いてくれる?」

「はい、私なんかで良かったら、もちろんです!」

 

まどかは自信満々に言い切った。マミは手で涙を拭った。

 

「参ったなぁ……。まだまだちゃんと先輩ぶっていけないのになぁ……。やっぱり私、ダメな子だ」

「マミさん……」

 

その時のマミの様子は、外観の影響か、美しく輝いていた。

 

「……でも、せっかくなんだし、願い事は何か考えておきなさいよ。一生に一度の選択なんだから」

「せっかく……ですか。やっぱり」

「契約は契約なんだから、ものはついでにと思っておこうよ。億万長者とか、素敵な彼氏とか……」

 

それからマミは、ふと思い出したように、意地悪そうな顔つきになってまどかに言った。

 

「……でも、彼氏なら間に合ってるか。タケル君がいるわけだし」

「ふぇ⁉︎」

 

途端にまどかは顔を赤くして、慌てふためいた。まさかここでタケルの名前を出してくるとは思わなかったのだろう。そう思ったまどかは思わずムキになって反撃した。

 

「そ、そういうマミさんだって、隼人さんがいるわけですから……!」

「えっ⁉︎ そ、それは……」

 

今度はマミが顔を手で押さえて恥ずかしがる番だった。それから誤魔化すように言った。

 

「……と、とにかく、こうしましょう。この魔女をやっつけるまでに願い事が決まらなかったら、その時はキュゥべえに、ごちそうとケーキを頼みましょうか?」

「け、ケーキ?」

「そうよ。最高に大っきくて贅沢な、お祝いのケーキ。それをみんなでパーティーするの。私と鹿目さんの魔法少女コンビ結成記念と、私達のチームの歓迎、2つの意味を込めてね」

「わ、私、ケーキで魔法少女に⁉︎」

「嫌ならちゃんと自分で考える!」

「ふぇぇ……」

 

上機嫌になっているマミを尻目に、まどかが再び悩み始めると、キュゥべえの声が聞こえてきた。

 

『マミ! グリーフシードが動き始めた! 孵化が始まるから、急いで!』

「分かったわ! 行くわよ、鹿目さん!」

「は、はい!」

 

マミは再びまどかの手を引いて走り始めた。その表情はいつものように凛々しく、頼りがいのあるものになっていた。

使い魔が見えてきたところで、その手を離した。

 

「今日という今日は速攻で片付けるわよ!」

 

マミはそう叫んでから、左手を突き出して、

 

「変身!」

 

と叫んだ。光がマミを包み、黄色を基調とした魔法少女に姿を変えた。変身完了後、周りにケーキの山が出現し、使い魔が押し寄せてきた。が、マミは動じることなく、一体ずつマスケット銃で迷いなく撃ち抜いていた。時には胸のリボンを使って巨大な銃を形成してぶっ放したり、回転しながら撃っていたり、使い終わった銃で殴り倒していたりと、パターンを変えていた。まさに絶好調と言わんばかりの鮮やかさだった。

 

「(体が軽い……)」

 

戦いの最中、マミはそんな事を思っていた。

 

「(こんな幸せな気持ちで戦うなんて、久しぶりね……)」

 

以前、隼人と初めて結界内で出会い、共闘して、共に戦っていこうと約束した時とよく似ている事に気付いた。

そうなる理由は明白だ。まどかがずっとそばにいてくれると言ってくれたからだ。それに、タケル達も一緒にいてくれる。理解者がいてくれる事が、マミにとって何よりも幸せだった。

 

「もう何も怖くない」

 

マミは思わずそう呟いた。そしてそのまま、安全を確認してからまどかを連れて結界の奥に向かった。

 

「私、一人ぼっちじゃないもの……!」

 

 

 

 

 

 




今更かもしれませんが、今作では魔法少女も仮面ライダー同様、「変身!」と叫びます。

次回は結界外で待機しているタケル達の方にスポットを当てていきます。
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