魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
果たして、タケルと隼人はマミの所に間に合うのか?
タケル達が先を急いでいた頃、まどかとマミもようやくさやか達のいる所にたどり着いた。
「お待たせ!」
「みんな!」
2人の声に、さやか達は振り返り、安堵の表情を浮かべた。
「ふぅ、間に合った!」
「よし! これなら……」
「……タケル達は?」
「外で八谷君を待っているわ。でも、この分なら私だけで間に合うかも……」
「気をつけて! 出てくるよ!」
唐突に聞こえてきたキュゥべえの声に、一同が振り返ると、脚の長い椅子とテーブルが出現し、その上に袋が現れた。やがて袋が破けると、中から斑点模様のついた頭巾をかぶったぬいぐるみ風の魔女がチョコンと座って現れた。
〜お菓子の魔女 シャルロッテ〜
〜彼女の欲していたものに手を触れようとしたものは最後、死よりも酷い制裁を受けるだろう〜
現れた魔女の容貌に、一同は拍子抜けた。
「今までの魔女と比べて、かわいいですね」
「……ていうか、あんな姿で戦えるのか、あいつ?」
晶と誠司がそう呟いていると、
「せっかくのところ悪いけど、一気に決めさせてもらうわよ!」
マミが颯爽と接近して、マスケット銃を反対に持って椅子の脚をへし折った。そして落ちてきたお菓子の魔女をバッターの如く打ち返した。
「ちょ、マミさん⁉︎ そんなに簡単に仕掛けて大丈夫なんですか⁉︎ タケル達の到着を待った方が……」
「大丈夫。今回は私1人でも充分だから」
星斗の制止も無視して、マミは周りにマスケット銃を散りばめて、乱射した。当たりこそしなかったが、勢いに押されて地面に落下した。その隙を逃さず、マミはその頭を撃ち抜いた。
「おぉ! やりましたわ!」
「今日のマミさん、なんか絶好調に見えるよな……?」
マミの様子に訝しんだ誠司だったが、まどかにはその理由が分かっていた。マミは嬉しいのだ。一緒に戦ってくれると言ってくれた人が現れた事に。
「これで終わりね」
そしてマミはいつものように魔力で巨大な銃に変形させて、お菓子の魔女めがけてその攻撃を放った。
「ティロ・フィナーレ!」
そしてお菓子の魔女は銃口から放たれた無数のリボンによって絡めとられ、強く締め上げられた。
「やったぞ!」
誠司が歓声を上げると共に、まどか達も歓喜していた。
今日も大勝利を収めた。
……そう思えた。
「……ん?」
星斗が不意にお菓子の魔女を見た時、その魔女の口から何かが飛び出した。そしてその何かはマミに向かって急接近してきた。
「……えっ?」
マミがわけもわからずそう言った時、そいつの全貌がまどか達にも把握出来た。口から出てきたのは、蛇のように胴体が長く、カラフルでピエロの顔に鋭い牙が特徴な姿の怪物だった。
そう、これこそがシャルロッテの本来の姿。高い再生能力を持っているこの魔女は、一瞬の隙をついて、マミに接近したのだ。お菓子の魔女は口を大きく開けて、鋭い牙を爛々と輝かせながら、マミの首を食い千切ろうとした。
あまりにも一瞬すぎた為、一同は動けなかった。
そして、その口がマミの頭に届く……、
まさにその時だった。
『ダイカイガン! オレ! オメガドライブ!』
『ダイカイガン! ハウンド! オメガドライブ!』
「せいやぁぁぁぁぁぁ!」
「うぉぉぉぉぉぉっ!」
2人の怒号と共に、お菓子の魔女は強烈な蹴りを受けて真横に吹き飛ばされた。マミの視線の先には何もなく、呆然としていたが、やがて我に返って声のした方を振り返ると、
「マミさん! 大丈夫ですか⁉︎」
「すまない。遅くなった」
先ほどまでマコトと激しい戦闘を繰り広げ、マミのところまで追いかけていたタケルと隼人だった。
「八谷……君? タケル、君……?」
マミが震える声でそう呟いた。恐らくまださっきまで感じていた死の恐怖から抜け出せていないのだろう。そんなマミに、隼人は駆け寄って優しく、震える手を握った。
「もう大丈夫だ。心配するな。お前をそう簡単に1人にさせない」
隼人の強い言葉を聞いて、マミは自然と涙がこぼれた。
「……っあ……! わ、私は……」
マミが恐怖のあまり、隼人に寄りかかると、後から駆け付けた御成の声が聞こえてきた。
「タケル殿! 隼人殿! ご無事ですか⁉︎」
その声に、ようやくまどか達も正気に戻った。
「……! お、御成君……!」
「あ、危なかった……! 今のはマジで……!」
「マミさん! 大丈夫なんですか……⁉︎」
皆がパニックになる中、星斗がある事に気付いた。
「! あれは……!」
星斗の視線の先には、先ほどの攻撃で倒れていたお菓子の魔女が静かに接近していた。まどか達もそれに気づいて叫んだ。
「! タケル君! みんな!」
「「「!」」」
3人が振り返ると、お菓子の魔女は再び大きな口を開けてタケル達に噛みつこうとした。タケルが思わず目を瞑ると……。
グシャ! という肉をすり潰した時のような音が鳴り響いた。
「「……!」」
タケルが目を開けた時、マミと共にその光景に驚愕していた。目の前には、お菓子の魔女による嚙みつき攻撃を、隼人が右手一本で押さえていたのだ。その腕には、魔女の大きな牙が食い込んでいる。
「ぬ、ぐぅぉぉぉぉぉぉ!」
隼人は右腕から血飛沫を撒き散らしながらも、必死にお菓子の魔女を食い止めていた。お菓子の魔女の顔や牙には隼人から流れた血がこびりついている。
「! 隼人さぁぁぁぁぁん!」
「な……⁉︎」
晶の悲痛な声がこだまし、他の一同が恐怖のあまり声が出せずにいる中、隼人は震えるもう片方の手でガンガンガンマンを握り、魔女の口もとめがけて弾丸を放った。
攻撃を受けたお菓子の魔女は痛さのあまり、めちゃくちゃに暴れまわった。その度に、隼人の右腕に牙が奥深く食い込んだり離れたりして、声にならない激痛が隼人の全身に襲いかかった。隼人の体が大きく揺さぶられる事で、血が辺り一面に飛び散り、近くにいたタケルやマミに降り注ぐほどだった。
「ひっ……!」
あまりにも残酷な光景に、仁美の足がガクガク震えて、今にも倒れそうだった。他のメンバーも、目の前の光景がすぐに現実のものとは受け止められないほどだった。
やがて牙が隼人の右腕から離れて、魔女は転がって距離をとった。隼人もタケル達のところに飛ばされて、ようやく右腕へのダメージが止まった。だが、そこからドクドクと流れる血の量は多く、右腕全体が赤黒く染まっていた。時折傷口から白い骨の部分が見え隠れしているところから見ても、相当奥深くまで食い込んでいた事が伺える。
「! 八谷君!」
マミが震えながらも隼人に駆け寄った。タケルやまどか達も遅れて隼人に駆け寄った。
「隼人さん!」
「あ、あぁ……! 血が……!」
「隼人さん! 俺の、俺のせいでこんな……!」
タケルが動揺する中、隼人は首を横に振った。
「気に……、するな……。これ、くらい……ぐっ……!」
「八谷君! すぐに応急処置を……!」
マミが両手をかざして、魔法で隼人の右腕の応急処置をしていると、お菓子の魔女が再び起き上がり、まどか達を睨みつけた。まどか達ら候補生が震え上がっていると、タケルと星斗が前に出た。
「お前の相手は俺達だ!」
「まどか! みんな! 早く隼人さんとマミさんを安全な所に!」
「わ、分かった……!」
さやかがそう叫び、全員を物陰に隠れさせたのを確認した2人はお菓子の魔女に立ち向かった。
「このぉ!」
「だぁっ!」
2人が魔女の口に気をつけながら肉弾戦を仕掛けているが、どれほど強烈な攻撃を仕掛けても、すぐに脱皮して再生し、素早く身を翻し、反撃する。そうしていくうちにお菓子の魔女が長い尻尾でタケルを叩き返した。
「ぐぁっ……⁉︎」
「タケル!」
星斗も果敢に挑むが、素早い動きについていけずに、回避するだけで精一杯であった。
その様子を遠目で見ていたまどか達も焦っていた。
「まずい! 追い込まれてるぞ⁉︎」
「ど、どうしよう……! このままじゃ、タケル君達が……!」
隼人はもちろんこれ以上戦えない状態であり、頼みのマミも治療に専念しており、加勢できない。
その様子を先ほどから黙って見ていたキュゥべえも、さすがに危険と判断したのか、焦ったようにまどか達に言った。
「まどか! ううん、誰でもいい! 早く僕と契約するんだ! このままでは、2人が危険だ!」
「えっ……⁉︎ そ、それは……!」
皆が困惑する中、まどかも口を開こうとしたが、先ほどのおぞましい光景を思い出し、吐きそうになった。だが、来る途中でマミと交わした約束を思い出し、震えながらも意を決してキュゥべえに話しかけた。
「……わ、私、魔法少女に」
「その必要はないわ」
その声と同時に、星斗と目の前にいたお菓子の魔女の間で爆発が起きて、お菓子の魔女が吹き飛んだ。
「何だ⁉︎」
星斗が困惑する中、一同が声のした方を見ると、そこにはマコトと、マミに拘束されていたはずのほむらが立っていた。どうやらマコトの力でリボンを千切ったようだ。
「ほ、ほむらちゃん……⁉︎ それに、マコト君も……!」
「あ、あんた達今までどこに……⁉︎」
「……」
さやかが問い詰める中、ほむらは冷たい視線をマミに向けた。当の本人は唇を噛み締めながら俯いた。事情を知っているまどかも同じように俯いた。その表情を見ながらほむらは呟いた。
「……生きているとはね。私はあなたがこの戦いで死ぬと思ってたから」
「? ど、どういう事……?」
マミがほむらの言い方に訝しんでいるが、ほむらはそれを無視してまどか達に向き直った。
「あなた達はそいつと契約する必要はない。そんな手間を煩わさせない」
ほむらがキュゥべえを睨みつけながら言うと、マコトもようやく口を開いた。
「……今回だけは特別だ。手を貸してやる」
それだけ言うと、2人はタケルと星斗の所に向かった。
タケルは駆け付けた2人に話しかけた。
「協力……してくれるのか? あ、ありがとう」
「話は後よ。来るわ」
ほむらが遮るように言うと、お菓子の魔女が再び襲いかかってきた。タケルと星斗が慌てて回避する中、ほむらとマコトは微動だにしなかった。
「! 危ない!」
星斗がそう叫んだ時、不思議な事が起こった。
いつの間にか2人はお菓子の魔女の真後ろに、瞬間移動でもしたかのように来ており、振り返った瞬間にお菓子の魔女の口の中で爆発が起こった。お菓子の魔女が転げ回っている間に、タケルと星斗は2人に駆け寄った。
「……なぁ。今のって一体」
「教えるつもりはないわよ」
「それよりも、あいつをどうにかしないと……! あんなに再生してくるんじゃ、どうしようもないぞ⁉︎」
タケルが頭を悩ませていると、マコトがこう言った。
「奴は外側からいくら攻撃しても、脱皮して再生する。だが、逆に再生出来ないほどの連続攻撃を内側から繰り出せば、倒す事は出来る」
「……て事は、あいつの口めがけて攻撃する必要があるって事か。……けど、俺の攻撃だと、内側からの攻撃に向いてないぞ?」
基本的に格闘戦重視の星斗がそう呟くと、タケルも必死に考えていた。
「確かに、俺のムサシ魂じゃまず内側からなんて無理だし、かといってエジソン魂でも、内側からの攻撃は出来ても連続攻撃までは出来ないから……」
そこまで呟いた時、タケルにある考えが浮かんだ。
「(! そうだ! ビリー・ザ・キッド魂なら、連発出来るから、いけるかもしれない……!)」
そう思ったタケルは隼人に呼びかけた。
「隼人さん! ビリー・ザ・キッドのアイコンを貸してください!」
「えっ⁉︎ タケル、どうするつもりなの⁉︎」
さやかがわけも分からずそう叫んでいた。隼人もタケルの意図が理解出来なかったが、ここに来る前の会話を思い出して、隼人は懐からビリー・ザ・キッドのアイコンを取り出した。
「……俺は、お前を信じる! 頼むぞ、タケル!」
隼人は痛がる腕をかばいながら、アイコンをタケルに投げた。タケルはそれをキャッチすると、アイコンのスイッチを押した。
「……頼むぞ! ビリー・ザ・キッド! 一緒に戦おう!」
『アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!』
バックルに嵌めると同時に、茶色のパーカーが飛び出して来てきたお菓子の魔女を遠ざけた。そしてタケルがレバーを引いて押すと、パーカーはタケルの上半身に羽織られた。
『カイガン! ビリー・ザ・キッド! 百発百中! ズキューン! バキューン!』
『ガンガンガンマン!』
タケルは2丁のガンガンガンマンを構えて、お菓子の魔女を睨みつけた。
「こいつで勝負だ!」
タケルは迷う事なくお菓子の魔女に撃ちまくった。その使いこなしの良さに、まどか達だけでなく、マミや隼人も思わず感心していた。
「ここまで対応出来るとは……!」
一方、マコトも次なる一手として、水色の英雄アイコンを取り出した。
「……タケルがあそこまでアイコンの力を引き出せるとはな。ならば俺も」
『アーイ! バッチリミロー! バッチリミロー!』
バックルから水色のパーカーが飛び出ると、マコトはレバーを引いて押した。
『カイガン! ツタンカーメン! ピラミッドは三角! 王家の資格!』
新たなる姿となったマコトのガンガンハンドが光を放ち、鎌の形となった。
「! あの子、英雄アイコンを2つも……!」
「あれって、エジプト王朝の1人で、第18王朝、第12代の少年王であった、ツタンカーメンの……⁉︎」
タケルが、マコトの姿に驚いていると、マコトは素早くお菓子の魔女を斬りつけた。お菓子の魔女が暴れ回る中、タケルもガンガンガンマンで的確に撃ち抜いていた。
「だったら俺も!」
『アーイ! バッチリミロー! カイガン! ニュートン! リンゴが落下! 引き寄せまっか!』
2人に続いて星斗もニュートン魂となり、2人の援護をした。そしてほむらも、左腕につけられた盾に触れると、そこから普段はお目にかかれないようなマシンガンを取り出して後方支援するように撃った。4人の連続攻撃を受けてダメージが蓄積したのを見た星斗は叫んだ。
「一気に決めるぞ! はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
星斗が両手を突き出して、斥力と引力を駆使してお菓子の魔女を固定させて、口を開かせた。お菓子の魔女が抜け出そうとする間に、マコトはガンガンハンドをバックルにかざした。
『ガンガンミロー! ガンガンミロー!』
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
かざした瞬間にお菓子の魔女の周りにピラミッド型の結界が張られ、お菓子の魔女は閉じ込められた。
そしてタケルも、ガンガンガンマンを合体させて、同じようにバックルにかざした。
『ガンガンミナー! ガンガンミナー!』
タケルは照準をお菓子の魔女の口の中に向けて叫んだ。
「命、燃やすぜ!」
『オメガインパクト!』
「はぁっ!」
『オメガファング!』
タケルがトリガーを引いて銃弾を放ち、マコトが振りかざしてブーメラン型の刃を飛ばした。ほむらも一瞬消えたかと思うと、次の瞬間には別の所に移動していた。
そして、タケルとマコトの攻撃が命中すると同時に、お菓子の魔女の口の中で大爆発が起こり、魔女は膨らんで爆散した。
轟音が消えると同時に、グリーフシードが地面に突き刺さり、周りの景色が崩れ去って、元々あった病院の外の景色に戻った。
最初はあっけにとられて動けなかったまどか達だが、次第に状況を把握する事が出来た。長い戦いに、無事に勝てたのだ。だが、今回に至っては、素直に喜べる状況では無い事は容易に理解出来た。
「うっ……、ぐっ……!」
「八谷君……!」
「隼人さん、しっかりしてください……!」
右腕からは多量の血が滴り落ちている隼人は尋常では無いほどに苦しんでいた。それをマミと駆け寄った星斗が必死に隼人の名前を呼びかけている。
まどか達も3人に駆け寄ろうとしたが、ほむらの言葉を聞いて、足を止めた。
「今日起こった事をしっかりと目に焼き付けておきなさい」
一同は振り返り、ほむらとマコトを見た。2人の目線の先には血に染まった右腕を抑えている隼人が。
「魔法少女や仮面ライダーになるっていうのは、こういう事なのよ」
「巴 マミ。あなたも肝に銘じておくべきだ。1人になりたくなければ、これ以上彼らを関わらさせない、とな」
「……っ!」
マコトの一言に、マミは何も言い返せなかった。元はと言えば、自分が油断せずに協力して対処していれば、このような事態にはならなかった。悔しくもあるが、マコトの言葉は正論だった。が、まどかは思わず反論した。
「そ、そんな事を言わないでよ……! マミさんも、ほむらちゃんにちょっとやり過ぎた所もあったかもしれないけど、私達にこの戦いが危険だって教えてくれたのは、マミさんで……!」
「そ、その通りですぞ⁉︎」
「それとこれとでは話が別よ。結果的に巴 マミは自己判断で危険に関わらせている。それは事実よ」
まどかと御成の言葉を軽くあしらったほむらは、落ちていたグリーフシードを手に持って、自身のソウルジェムに近づけて穢れを取り除いた。続いてそのグリーフシードをマコトに渡し、マコトもアイコンを近づけて穢れを取ると、グリーフシードをタケルに投げ渡した。
「……後はお前達で使っておけ。一応はお前達の獲物だ。俺達は加勢しただけに過ぎないからな」
「あ、あぁ……」
タケルが変身を解除して頷いた時だった。
「……や」
仁美の声が聞こえてきたのでその方向を見てみると、仁美が隼人の右腕から流れる血を見て、尋常では無いほどにガタガタと体を震わせていた。
「い、や……!」
顔は青ざめ、両手で髪を乱して、錯乱しているように怯えていた。
「ひ、仁美……⁉︎」
誠司が声をかけると、仁美も我慢の限界が来たのか、悲鳴に近い声で叫んだ。
「い、嫌ぁぁぁぁぁっ⁉︎ わ、私、し、死にたく、ない……! あ、あんな、事が、私の身に起きる、かも、しれない、なんて……! そ、そんなの……! 嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
遂に取り乱した仁美は、先ほど目の前で見せつけられた、「死」の恐怖に恐れ慄いて、その場から逃げ出すように、まどか達に背を向けて、そばに置いてあったカバンを持ち帰る余裕も無く駆け抜けていった。
「ひ、仁美ちゃん!」
「あぁ! 仁美殿!」
晶と御成が叫ぶも、仁美は立ち止まらない。
「ち、ちょっと仁美⁉︎ ね、ねぇ転校生! あんた達もなんとか言ってよ!」
さやかが2人に助けを求めるが、2人はそのまま後ろを振り返り、その場を去ろうとしていた。そしてマコトがこう呟いた。
「あれで正解だ。少なくとも、これ以上この一件に関わる事も無いし、命を落とす危険も無くなるからな」
「ちょ……! そんな言い方……!」
「ひ、仁美ちゃぁぁぁぁぁん!」
まどかが涙を浮かべながらそう叫ぶが、すでに彼女は遠くに消え去っていた。キュゥべえは、何も言わずにまどかの肩に乗って、ジッと仁美の後ろ姿を見つめている。
ほむらとマコトはそのまま立ち去っていき、その後ろ姿を、タケルは何も言えずに、呆然と見つめる事しか出来なかった。
「(……俺、本当は何も分かってなかったのか……? この戦いが命がけだって事に……?)」
タケルは心の中でそう自問した。
だが、これはまだ始まりに過ぎない。そして彼らはまだ、何も知らないのだ。
この物語に隠された、"絶望"という名の真実を……。
奇跡を望むという意味、そしてそこから生み出される代償も……。
というわけで、これで第1章は完結します。次回から第2章「交錯の物語」が開始されます。
第2章では、さらにキャラが多数登場しますので、今以上に盛り上がる事間違いなしです!
お菓子の魔女との決戦を間近で目撃したまどか達。まどか、さやか、仁美、晶、誠司、御成の決断や如何に……。
次回もお楽しみに。