魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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第2章 〜交錯の物語〜
18. あなた達は優しすぎる


それは、まだ魔法少女や仮面ライダーについて聞かされて間もない頃の事。さやか、仁美、晶は上条のお見舞いに向かう為、彼のいる病室にいた。ところが、扉を開けても、そこには彼の姿がいない。しばらく待っても来ないので、仕方なく3人は病室を後にすると、近くにいた看護婦が声をかけてきた。

 

「あら? 上条君の知り合い?」

「あ、はい」

「ごめんなさいね。診察の予定が繰り上がっちゃってね。丁度今、リハビリ室にいるの」

「そ、そうでしたか……。ありがとうございます」

 

仁美がそうお礼を言ってから、3人は上条に会う事なくエレベーターに乗った。下に降りる途中、さやかは自身の左手を恨めしそうに見つめた。

 

「(……何で、恭介なのよ。何の才能も無いし、夢も無い。叶えたい願いを持たないあたしじゃなくて、何で恭介なんだろう……。あたしの指なんていくら動いてても何の役にも立たないし……)」

 

さやかは知らず知らずのうちにため息をついていた。仁美と晶は振り返り、さやかの方を見た。

 

「……あたしが、代わりに事故に遭えばよかったのに……」

「そ、そんな事無いよ……! さやかちゃんが事故に遭うなんて事が正しいなんて、僕は思えないよ……」

「分かってる……! 分かってるけど……」

 

晶の言葉を聞きながら、さやかは唇を噛み締めた。

もし、さやかがキュゥべえにお願いして、契約によって上条の腕が治ったとしても、上条はそれをどう思うのか。ただ、ありがとうと言われるだけなのか、それともそれ以上の何かを自ら要求してしまうのか。

そこまで思考が回った時、さやかは不意に、もしかしたら上条が自分に好意を抱いてくれるのではないか、と思った。

そしてさやかは自己嫌悪を抱いた。

 

「……あたしって、嫌な子だ」

「さやかさん……」

 

仁美が心配そうに覗き込むが、さやかの表情は変わらない。

 

 

 

 

この時は彼らもまだ何も分かっていなかった。奇跡を願う事の意味とその代償、そしてその先に待ち受ける絶望を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お菓子の魔女との戦いから一夜明けた翌日の朝。まどかはテーブルに座っていた。知久が作ってくれた朝食が目の前にあったが、まどかは一口だけ食べてから、手をつけれなかった。

 

「まどか……? さっさと食べないと、遅刻するぞ?」

「あ……、う、うん」

 

詢子にそう催促されて、まどかも慌ててフォークを手に取った。

思い起こされるのは、昨日の一件。マミと魔法少女になる事を約束し、幼なじみのタケルと肩を並べて一緒に誰かの役に立つ為に戦うと決意した。が、その信念はその直後に行われた一戦で脆くも崩れ去った。お菓子の魔女からの不意の攻撃で一度はマミを助ける為にタケルと隼人が懸命に対抗したが、その途中で隼人は大怪我を負ってしまった。後から駆け付けたほむらとマコトの援護もあって、魔女を倒す事は出来たものの、目の前で突きつけられた現実が、まどかに戦いに携わる事の恐怖を与えた。故に、親友の1人である仁美はあの後、恐怖のあまり逃げ出した。

悪い夢であってほしい。そんな事を思いながら、まどかは目玉焼きを一切れ口にした。途端に口いっぱいにふんわりとした味が広がったが、同時に、涙が目から溢れた。

 

「まどか?」

「ねっちゃ?」

「ひょっとして、不味かったか……?」

 

家族が心配そうにまどかに呼びかけるが、まどかは手で涙を拭きながら首を横に振った。

 

「ううん……。美味しいの。凄く、美味しくて……」

 

まどかが涙を浮かべたのは、自分は今でもちゃんと生きている事を実感出来たからであった。もしキュゥべえと安易に契約して、何も考えずに戦っていたら、もしかしたら死んでいたのかもしれない。そう思うと、どうしようもなく、約束したマミやタケル達に申し訳なく思えてきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまどかは家を出て、いつもの通学路を歩いている時に、タケルと鉢合わせた。

 

「お、おはよう……。まどか」

「う、うん。おはよう……」

 

2人は気まずい空気の中、さやか達と合流する為に並んで歩き始めた。互いに言葉をかわす事なく歩いていると、さやか達の元に辿りついた。が、その場にいた全員の表情はいつもと違って暗い。そればかりか、そこには仁美がいなかった。

まどかは気になって尋ねた。

 

「仁美ちゃんは……」

「来てない。多分先に行ったのか、それとも今日は来ないのか……」

 

誠司がそう呟いた。

 

「……ねぇ、昨日の事……」

「……ごめん。今はその話はなし。また後にしよう」

「……じゃあ、行くか」

 

さやかに続いてタケルがそう言うと、誰も返事をせず、学校に向かって歩き出した。

教室に入ると、そこに仁美の姿があった。その表情は自分達以上に暗く、目の下に隈が出来てる事から、充分な睡眠がとれて無い事が伺えた。仁美はタケル達から向けられる視線に気がついたのか、一度だけ6人に目を向けたが、すぐに視線を逸らした。やがてほむらとマコト、和子先生も入って来たので、タケル達は仕方なく各々の席についた。

授業の内容は全く入ってこず、まどか達はただ、壊れた人形のようにぼうっとしているだけだった。時折感じるほむらやマコトからの視線に気づかないほどに。

やがて時間だけが過ぎ、昼休みに入ったところで、テレパシーでこんな声が聞こえてきた。

 

『みんな、今日も屋上で昼食を食べるのよね? 私達も向かうわ。話したい事があるから』

 

それはマミだった。私達という事は、星斗はもちろん、隼人も来るという事だろう。考えてみれば、マミや隼人と一緒に食べるのはこれが初めてだった。まどか達は承諾したが、仁美だけはその誘いを断った。タケルも気にはなったが、今はそっとしておく方が良いと思い、6人だけで屋上に向かう事にした。

途中で星斗と合流してから屋上で待っていると、扉が開いて、マミと隼人がやってきた。隼人の右腕はギプスで固定されていて、三角巾で吊るされている。

 

「志筑さんは……。来てないみたいね」

 

マミは仁美の姿が見当たらない事を確認した。そして、まどか達は隼人の右腕を見つめた。

 

「隼人さん。その腕は……」

「病院のそばで起きた事だったから、一応あれからすぐに診てもらった。幸いすぐに止血は出来たが、完治するのに時間がかかるらしい」

「それじゃあ、これからの魔女退治は……」

「しばらくは前線から離れるしか無いだろうな」

 

それから一同はとりあえず軽く昼食を済ませた。しばらくして、晶が口を開いた。

 

「……なんだか、違う国に来たみたいです」

 

一同は晶に注目した。

 

「この街も、学校も、先生もクラスメートも、昨日と全然変わってないはずなのに、知らない人達の中にいるみたいで……」

「知らないんだよ、誰も。魔女の事、俺達は知ってて、他のやつは何も知らない。それってもう、違う世界で違うものを見てるようなもんじゃねぇか……」

 

誠司がそう呟くと、さやかもそれに続いた。

 

「とっくの昔に変わっちゃってたんだ……。もっと早くに気付くべきだったかも……」

 

さやかは一昨日のマミや隼人との会話を思い出していた。安易に契約する事を考えていた自分がバカらしく思えたのだろう。

やがて、マミが口を開いた。

 

「……みんな、本当にごめんなさい。自分でも分かってたはずなのに、私、あなた達を危険に巻き込んでしまってた。誰かと一緒にいる事が本当に嬉しくて、一緒に戦ってくれる人が出来た事が、何よりも幸せで……」

「マミさん……」

 

すると今度は隼人が、利き手とは逆の左手に握られたパンを床に置いて、まどか達の顔を一人一人確認してから、こう言った。

 

「こうなってしまった以上、起こってしまった事は仕方ない。その上で改めて確認したい。みんなは、今でもまだ、魔法少女や仮面ライダーになりたいと思うか……?」

 

その問いかけに、まどか達は黙り込んでしまった。特にまどかは、マミの方をジッと見つめていた。おそらく昨日交わした約束を思い出しているのだろう。まどかがどう声をかけようか悩んでいると、いち早くマミがまどかのところに寄って優しく抱きしめた。

 

「……そうよね。仕方ない事だわ」

 

その優しい口調に耐え切れず、まどかは涙声でポツリと胸の内を明かした。

 

「……ずるいって、分かってます。……今更虫が良すぎる事ぐらい分かってます。でも……」

 

そこでまどかは自分からマミの胸に顔を押し付けて、涙を流し始めた。

 

「でも、嫌なんです……! 私、あんな風に怪我するかもしれないって思うと、今でも息が出来ないくらい、苦しくなるんです……!」

「……そうよね。私も鹿目さんの立場になったら同じ気持ちになるわ」

 

そう呟くマミもどことなく涙声だった。

 

「マミさん、ごめんなさい……! 魔法少女になるって約束したのに、それを破っちゃうのはいけないって分かってるのに……! でも、でも……!」

 

そしてまどかは感情を抑えきれず、大声で泣き始めた。

 

「もう、怖いよぉ……! こんなの、嫌だぁ……!」

「うん、うん……! それで良いのよ……! 鹿目さんは何も悪くないの……!」

 

マミもいつの間にか涙を流しており、晶も思わずもらい泣きしてしまっていた。さやか、誠司、御成、星斗、隼人も沈痛な面持ちで2人を見ている。

 

「(マミさん、本当に優しい人なんだな……。マミさんだけじゃない。星斗や隼人さんも、戦う為の覚悟がどういうものか、ちゃんと分かってたんだ。それに比べて、俺なんて……)」

 

タケルはこれまで抱いていた、ただ単に正義感に溢れているだけの感情を持って戦っていた自分を恥じた。

 

「(何も分かってなかったのは、俺の方だったんだ……)」

 

タケルが心の中でそう呟いていると、マミが涙を拭いて、こんな事を言った。

 

「……それでね。今日はみんなにお願いしたい事があるの」

「お願い……ですと?」

 

御成が首を傾げた。

 

「えぇ。私、これ以上あなた達を魔法少女や仮面ライダーに勧誘させるのは止めにするわ」

 

マミは一旦顔を下に向けてから、再び顔を上げた。

 

「その代わりと言ってはなんだけど、こんな酷い私でも、これからも友達として、一緒にいてほしいの。虫が良すぎるかもしれないけど、お願い出来る……?」

 

マミが若干不安そうに尋ねたが、まどか達の返事は最初から決まっていた。

 

「……はい、もちろんです!」

「俺も、マミさんと友達になります! これからも、一緒に頑張りましょう! 今度は絶対にミスなんてしませんから……!」

「あたしも、一緒にいます。マミさんや隼人さんのおかげで、簡単に魔法少女になる事を踏み止められたんですから、感謝してるんです」

「ほ、僕も、賛成です……!」

「拙者も同じく!」

「俺もだ。これからは良く考えて契約の事を考えるよ」

 

6人の強い意志を感じ取り、マミは再び涙を流し始めた。

 

「ありがとう……! みんな、本当に、ありがとう……!」

「良かったな、マミ。お前はもう1人じゃなくなった。俺達がいつでも一緒だ」

 

隼人も左手でマミの頭を優しく撫でた。少なくとも今回の一件はマミや隼人にとって大きな何かを生み出した事になるだろう。

それから、一同の間で話題になったのは今後の事だった。

 

「……ねぇ、隼人さんがしばらく抜ける分はどうすれば良いのかな?」

 

さやかがキュゥべえに向かって尋ねると、キュゥべえは体を起こして言った。

 

「犠牲が出なかった事は良かったけど、隼人がしばらく離脱するのは君達にとって大きな痛手かもしれない。実際、この見滝原は魔女の発生率が他方と比べても高い。抜けた穴が大きい分、いつ誰が魔女狩りの為によそからやってきてもおかしくない」

「それって、やっぱグリーフシード狙いなんだよな。マコトやほむらみたいに……?」

「そうだね。君達みたいなタイプは珍しい。普通はちゃんと損得は考えるよ」

「……まぁ、誰だって報酬はほしいと思うからな」

 

星斗がそう補足説明した。タケルはふと呟いた。

 

「マコトやほむらに協力してもらうって事は出来ないのか……? 昨日みたいに」

「難しいかもしれないわね。私の場合は暁美さんに酷い事しちゃってるし、工藤君も応じてくれるか分からないわ……」

「あたしも反対。絶対に話しかける前に何か攻撃してくるって」

 

マミに続いて、さやかも反対意見を述べた。

 

「グリーフシード目当てに戦うなんて、なんか、悲しいですよね……」

「でもね、晶。それを批難出来るとしたら、それは同じ魔法少女や仮面ライダーとしての運命を背負った子達だけじゃないのかな」

「……けど、あいつらだって心があるんだから、通じ合えると思うんだけど……」

「いずれにしても、3人だけでこの街を守っていくのは少し難しいとは僕も思うよ」

 

それを聞いて、さやかは自分が魔法少女になればと思ったが、これまでの忠告を思い出して、踏みとどまった。

やがてキュゥべえはまどか達から離れて、歩き出した。

 

「それじゃあマミ。僕はそろそろ出かけるよ。あまり遅くなっても困るからね」

「えぇ。分かったわ」

「? どこに行くんだ?」

 

誠司が首を傾げると、キュゥべえが振り向いて言った。

 

「いつまでもここに長居は出来ないからね。僕との契約を必要としてる子は他にもいるわけだから。それじゃあ、無理強いはしないから、まどか達もこれからの事をよく考えておくと良い」

 

それだけ告げると、キュゥべえは耳を元気に揺らしながら颯爽と屋上を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後の授業も終わり、放課後となった。この日は皆バラバラに行動していた。マミと隼人は学校で用事があり、誠司は実家の店の手伝い。御成と晶は家庭の用事があり、さやかはいつものように上条のお見舞いに向かった。仁美はあれからまどか達と一言も言葉を交わす事もなく、習い事に向かう為にさっさと教室を出た。残されたタケルは、まどかと共に校舎を出た。気まずい空気が流れる中、先に口を開いたのはまどかだった。

 

「私ね……」

「?」

「私、あの時、マミさんと約束したの。魔法少女になって、タケル君みたいに、みんなの為に前に出て戦って、一緒に笑いあって、そんな風に過ごそうって」

 

まどかがカバンから取り出したのは、憧れの自画像が書かれている、ピンク色のノートだった。

 

「……でも、なれなかった。この絵みたいにカッコいい自分になんて、なれないって思っちゃったの……」

「まどか……」

「だって、弱虫で、のろまで、自分の願い事もあやふやだった私が、マミさんに綺麗事みたいな事を言っちゃったんだもん……! そんなの……!」

 

それから、まどかはタケルの方を向いて、涙を流しながら言った。

 

「ごめんね、タケル君……! 私、弱い子で、本当にごめんね……!」

 

タケルは慌ててまどかの涙を拭いて、落ち着かせるように言った。

 

「だ、大丈夫だって……! 気にすんなよ。俺だって魔女と戦う事をよく分かってなかったんだし、自分を責める事なんてないって」

「でも……!」

「天王寺 タケルの言う通りよ、鹿目 まどか」

 

不意に前方から声が聞こえてきたので顔を上げると、そこにはいつの間にか、ほむらが立っていたのだ。なぜこんなところにいたのか気になったが、それよりも早くほむらの口が動いた。

 

「あなたを批難出来る者なんて誰もいない。もしいたら、彼だけじゃない。私だって許せないわ」

 

心なしかその言い方には、今までと違って優しい響きがあるように思えた。

 

「忠告、聞き入れてくれたのね」

 

ほむらがそう尋ねると、まどかは小さく頷いた。

それからまどかとタケルは、特に理由もなくほむらと共に歩き始めた。しばらくして、大きな工場の近くに差し掛かったところで、ほむらが口を開いた。

 

「……正直、意外だったわ」

「えっ?」

「昨日の事。あの巴 マミが生きているとは思わなかった。彼女の性格からして、もう間に合わないと思ってたから。そういう意味では、彼女の運命を変えたあなたはやはり変わってるわね、天王寺 タケル」

 

ほむらは後ろ目でタケルを見た。対するタケルはほむらに逆にこんな質問をした。

 

「ほむらってさ……。マコトもそうだけど、隼人さんやマミさんとは別の意味でベテランって気がするよな……」

「……そうかもね。否定はしないわ」

 

と、今度はまどかが尋ねた。

 

「ほむらちゃんは、マコト君と一緒に、誰かが死ぬところ、何度も見てきたの……?」

「……そうよ」

「何人、くらい?」

 

ほむらは少し遠くを見つめながら答えた。

 

「数えるのを、諦めるほどは、ね……」

 

それを聞いて、タケルは確信した。なぜほむらもマコトも似たような目をするのか。何度も死の恐怖を間近で体験してきたからだ。そうでなければ、冷めた目つきになんかなれない。

タケルは次にこんな事を尋ねた。

 

「……なぁ、変な事聞くかもしれないけど、もし、ああいった戦いで死んだ人は、それからどうなるんだ?」

「向こう側……魔女の結界内で死んだ場合は死体は残らないわ。仮に昨日、巴 マミがあなた達の援護が間に合わず死んだ時は、彼女はこの世界においては永遠に行方不明のままになる。魔法少女や仮面ライダーの最後なんて、そういうものよ」

「そんな……、酷いよ……」

 

そう呟いたのは、涙目のまどかだった。タケルもほむらの話を聞いて、胸が苦しくなった。

 

「みんなの為に戦ってるのに、その事に誰も気づいてもらえないなんて、そんなの、寂しすぎるよ……」

「そういう契約で、私達はこの力を手に入れたの」

 

ほむらは自分の左の指につけられた、紫色の宝石が付いた指輪型のソウルジェムを見せた。

 

「誰の為でもない。自分自身の祈りの為に戦い続けるのよ。誰にも気付かれなくても、忘れ去られても、それは仕方のない事だわ……」

「そっか……。……けど、やっぱ悲しいよな。誰かの為に一生懸命頑張るのは凄い事なのに、それに気づいてくれないのって……」

 

タケルがそう呟くと、ほむらは立ち止まって振り返った。

 

「……やっぱり変わらないわね。あなたは、また他人の為に命をかけて……」

「? どういう事だ……?」

 

タケルだけでなく、まどかが訝しむ中、風が吹いて、ほむらの綺麗な黒髪が舞い上がった。そしてほむらは2人の目を見ながらこう呟いた。

 

「あなた達は優しすぎる」

 

その声は、何となく震えているようにも聞こえた。

 

「忘れないで。その優しさが、もっと大きな悲しみを呼び寄せる事もあるのよ」

 

それだけ告げると、ほむらは近くの階段を降りて、一瞬で姿を消した。2人は呆然としていたが、立ち止まっていても仕方がないと思い、2人はそのままそれぞれの家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、仁美はただ1人、習い事の教室に向かう為、少し薄暗い街の中を歩いていた。彼女の脳裏には、昨日の結界内での事が鮮明に刻まれていた。隼人の右腕から溢れ出る血を思い出して、仁美は震えが止まらなかった。

 

「(あんな事が起きるなんて、私には耐えられませんわ……! まどかさん達はまだ平気かもしれませんが、私にはもう……!)」

その顔色は青ざめていた。

 

「(嫌ですわ……! 私、あんな風になりたくありません……! このまま、どこかに逃げ出したい……! どこか、別の世界に……!)」

 

仁美がそう思っていた時、彼女に異変が生じた。

顔を俯かせて、しばらく無言で立ち尽くしていると、不意に彼女は笑いだした。そして、空の彼方を美しいものでも見ているかのように見つめ始めた。

 

「……うふふ。そう、そうですわ……! こんなところよりも、もっとずっと良い場所に行けば、こんな苦しみからも解放されますのよ……! なんて素敵な事でしょう……!」

 

その目にはもはや光が灯っていなかった。そして、彼女の首筋には、かつて目撃した、OL風の女性についていたものと似たような紋章……魔女の口づけ(・・・・・・)が刻まれていたのだった……。

 

 




「仮面ライダーゴースト」の方でも、タケルが眼魔と心を通わせようとしてましたね。……そう簡単に上手くいくのかな?

次回はあの魔法少女が登場! お楽しみに!
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