魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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いよいよ20話目となりました。

そして今回、遂に新たなる魔法少女が参戦!


20. これでトドメだぁぁぁぁっ!

その日の夜、すでに日も暮れていた頃。まどかは街の中を歩いていた。家に帰ってきてから早速、知久の頼みで買い物に出かけていたのだ。頼まれた品物を買い揃えたまどかは家に帰る最中、夕方に出会ったほむらの事を思い出していた。

 

「ちゃんと話せばお友達になれそうなのに……。どうしてマミさん達とはケンカになっちゃうのかな……?」

 

そんな事を呟きながら駅前の広場に差し掛かった時だった。

 

「あれ……? 仁美ちゃん?」

 

前方に見覚えのある人影が見えたので思わず立ち止まって確認すると、それは仁美だった。しかし彼女の場合、普段この時間帯は習い事があるので、ここにいるのはおかしい。不審に思ったまどかは駆け寄りながら声をかけた。

 

「仁美ちゃん、今日はお稽古事は……」

 

まどかがそこまで話したところで、仁美の首筋に何かが付いているのが見えた。それは、以前廃ビルから飛び降りた女性の首筋についていたものとマークこそ違えど、ほぼ似たような紋章……魔女の口づけだった。

 

「あれって、まさか……! 仁美ちゃん!」

 

まどかは慌てて仁美の前に立って彼女の手を掴んだ。

 

「……あら、鹿目さん、ごきげんよう」

 

そう呟く仁美の目には光が宿っていなかった。まるで正気を失っているようにも見える。

 

「ど、どうしちゃったの仁美ちゃん⁉︎ どこに行こうとしてたの?」

「どこってそれは……」

 

仁美は遠くを見つめるようにまどかから視線を外すと、しばらくして、うっすらと笑みを浮かべてこう言った。

 

「ここよりもずっと良い場所ですわ」

 

それから、まどかに話しかけた。

 

「……そうですわ。鹿目さんも是非私とご一緒に。えぇそうですわ。それが一番ですわ」

 

そう呟いてから仁美は再び歩き始めた。が、その足取りは普段と違ってぎこちない。

 

「(やっぱり……! 仁美ちゃん、魔女に操られちゃってるんだ……!)」

 

以前、マミから、魔女は人の心が弱っている隙をついて呪いをかけると聞いた事があり、おそらく昨日の魔女との戦いの過酷さを間近で見て、恐怖したところを魔女に魅入られたのだろう。

まどかはしばらくの間、仁美についていく事にした。そうしていくうちに仁美はどんどん町外れへと歩いて行った。それに伴い、多くの大人がぞろぞろと集まってきた。その全員に魔女の口づけがつけられている。

目の前にはいくつもの古びた工場があり、どうやらそこに向かって歩いているようだ。仁美達の目的地を確認したまどかはすぐにアドレス帳に乗っており、且つすぐに駆けつけてくれる、頼りがいのある人物に電話をかけた。相手はすぐに電話に出てくれた。

 

『よぉ、まどか。どうした?』

 

まどかがかけた相手は、幼なじみで仮面ライダーゴーストとして戦っているタケルだった。まどかは急ぎ早に用件を伝えた。

 

「タケル君! 大変なの! 仁美ちゃんに、魔女の口づけがついちゃったの……!」

『なっ……⁉︎ マジかよ⁉︎』

「今、私達は町外れの工場に来てるの! 早く何とかしないと、仁美ちゃんやみんなが危ないの……!」

『町外れの工場って、確か駅から南の方に向かったところのやつだよな?』

「う、うん!」

『分かった! すぐに向かう! 星斗の方から、マミさんにも伝えておくから、もう少しだけ耐えててくれよ! 俺達が絶対に助けてやるから!』

「うん! お願い……!」

 

まどかがそう返事すると、電話は切れ、仁美の声が聞こえてきた。

 

「さぁ、着きましたわよ、鹿目さん」

 

そう言って仁美が入ったのは工場の一角だった。中には古い機械が放置されており、中にはすでに何人もの人々が正気を失っているようだった。

 

「そうだよ……。俺ぁダメなんだ……。こんな小さな工場一つ、満足に切り盛り出来なかった……。今みたいな時代にさぁ……。俺の居場所なんて、あるわけねぇんだ……」

 

不意に聞こえてきた、男性の声に合わせて、窓の近くにいた女性がバケツを持って、その中に何か液体のようなものを入れていた。

 

「(あれって……、トイレ用の洗剤……?)」

 

洗剤の入ったボトルの中に入っていた液体を空になるまでたっぷりと入れると、今度は男性の1人が寄ってきた。その手には「漂白剤」と書かれた袋が握られている。

 

「あ……!」

 

それを見て、まどかはとっさにある事を思い出した。それは、以前詢子と一緒に掃除を手伝っていた時の事。

 

『いいか、まどか。こういう塩素系の漂白剤はな、他の洗剤と混ぜるととんでもなくヤバイ事になる。混ぜ合わせたら最後、あたしら家族は全員、猛毒のガスであの世行きだ。絶対に間違えるなよ』

 

これから男性がやろうとしている事に気付いたまどかは慌てて止めようとした。

 

「だ、ダメ! それはダメ……!」

 

だが、すんでのところで仁美が手を突き出して妨害した。

 

「邪魔をしてはいけません。これは神聖な儀式ですのよ」

「だって! あ、あれは危ないんだよ⁉︎ ここにいる人達みんな死んじゃうよ⁉︎」

 

まどかの必死の説得も虚しく、仁美は乾いた笑みを浮かべて、その場を動こうとはしなかった。

 

「そう、私達はこれからみんなで素晴らしい世界に旅に出ますのよ。それがどんなに素敵な事か分かりませんか? 生きてる体なんて、邪魔なだけですわ」

 

すると周りからまばらな拍手が起きた。いつの間にか、まどかと仁美の周りに大勢の人が集まっていたのだ。

 

「それに鹿目さん。あなたも思ってるはずですわ。本当は魔女のいるこんな世界にいたくない。あんな怖い思いはしたくない。だったらなおさら、私達と共に旅立ちましょう。怖がらなくても大丈夫。苦しみは一瞬だけですわ」

「わ、私は……!」

 

仁美の言う通り、確かに魔女との戦いは怖い。出来る事なら、昨日みたいに誰かが怪我するような光景は見たくない。事実、今のまどかは恐怖で足が震えていた。

だが、まどかは不思議と絶望を感じなかった。彼女の脳裏には、いつでも駆けつけてくれて、誰かの為に恐れる事なく困難に立ち向かう、そんな憧れる人の戦う姿があった。

まどかは、その人物の事を思い出しながら、仁美が掴んでいる手を振りほどいた。

 

「はな、して……!」

 

そしてまどかは女性が持っていたバケツをひったくって、そのまま振りかぶって中の洗剤ごとバケツを窓ガラスにぶつけた。ガラスは勢いよく砕け散り、外からバケツが地面を転がる音を聞いて、ようやくまどかは安堵した。

 

「(良かった……! これでみんな、もう大丈夫……)」

 

が、不意に背後から鋭い視線を感じ取り、振り返ってみると、仁美を含む一同が恨みのこもった表情でまどかを睨みつけていた。

 

「……じゃない?」

 

まどかがそう呟くと、仁美が無言のまま、まどかに近寄った。まるで今にも首を絞めようと言わんばかりに、その細い腕に力を込めているのが分かった。

 

「や、やだ……! 止めて……!」

 

まどかは後ずさりするが、すぐ後ろは壁になっており、もう逃げ場はなかった。

 

「誰か、助けてぇ!」

 

まどかが声を震わせながらそう叫んだ時だった。

 

「まどかぁ!」

 

不意に男の声が聞こえてきたので、その方向を見てみると、3人の人影が見えた。

それは、幼なじみであり、まどかの憧れでもあるタケルと、その親友の星斗、そして先輩の魔法少女、マミだった。

星斗は走りながら、ポケットから何かを取り出し、ライターで導火線の部分に火をつけた。それを投げると、バチバチと音が鳴り始めて、火花が散って、周りにいた人々が避けた。どうやら星斗が投げたのは自前のネズミ花火らしい。

 

「仁美、すまん!」

 

大人達の人混みを通り抜けて、ようやく2人の元にたどり着いたタケルは詫びながら仁美の首筋にチョップを入れて、仁美を気絶させた。倒れかけた仁美をマミが抱き抱えて、タケルはまどかに駆け寄った。

 

「こっちだ!」

 

星斗が指さしたその先には扉があり、そこに逃げ込む事にした。タケルはまどかの手を引っ張りながら、仁美を抱き抱えたマミ、まどか、タケル、星斗の順で室内に入っていった。

扉に鍵をかけた後、一同は壁にもたれて、息を整えた。それから改めて室内を確認してみると、そこはどうやら物置小屋のようであった。別の扉はもちろん、窓一つないその空間は、異様な感じが漂っていた。

マミは仁美の容態が無事である事を確認してから呟いた。

 

「……迂闊だったわ。昨日の事もあって、精神が不安定なところを狙われたのね……。もう少し警戒しとくべきだったわ」

 

一方でまどかは落ち着きを取り戻し、タケルにしがみついた。

 

「タケル君……! 良かった……!間に合ったんだね……!」

「悪いな、遅れちまって。よく頑張ったな」

 

タケルがまどかを慰めていると、扉の方から大きな音が鳴り響いた。元々扉自体が錆び付いている為、いつまでもつか分からない。まどかが怯えていると、マミが口を開いた。

 

「多分この工場の中に魔女がいるはずよ。それを倒せば、外の人達も正気に戻るはずよ」

「けど、その魔女って一体どこに……?」

 

星斗が辺りをキョロキョロしていると、不意に5人の目の前に泡のようなものが出現した。途端に空間が歪み始め、辺りに不気味な笑い声が響いてきた。まどかが後ずさると、背後が輝き始めた。よく見ると後ろにはテレビがいくつも置かれており、

 

「来やがったか……!」

 

タケルがそう呟くと同時に5人は結界の中に入り込んだ。

結界内は、水の中で浮いているような感じであり、周りにはメリーゴーランドが回っている。

4人が上を見上げると、そこには頭が天使の輪っか、片方に翼が生えている使い魔らしき姿があり、2体の使い魔に支えられているかのように、黒いツインテールらしきものが生えた、テレビの形をした魔女がジッと見下ろしているかのように佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ハコの魔女、エリー〜

〜彼女によって閉じ込められた者は最後、精神的に追いやられ、死を覚悟する事になるだろう〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回はいきなり魔女のお出ましか……」

「なら、話は早い! 一気に倒すぞ!」

「そうね。鹿目さん、志筑さんをお願いね」

「は、はい……!」

 

マミは仁美をまどかに預けてから、3人並んで、ソウルジェムやアイコンを手に取った。

 

『『アーイ!』』

『バッチリミナー! バッチリミナー!』

『バッチリミロー! バッチリミロー!』

 

タケルと星斗は各々のアイコンをバックルに嵌め、マミはソウルジェムを前に掲げてから、ポーズをとって叫んだ。

 

「「「変身!」」」

『カイガン! オレ! レッツゴー! 覚悟! ゴゴゴゴースト!』

『カイガン! アリトル! レディゴー! 覚悟! ドキドキゴースト!』

 

3人は変身を完了し、マミはリボンでまどかと仁美の周りにバリアを張った。そして、それを合図にハコの魔女は画面から使い魔を出現させた。

 

『ガンガンセイバー!』

『ガンガングローブ!』

 

タケルと星斗が武器を取り出すと、タケルは叫んだ。

 

「命、燃やすぜ!」

 

タケルが次々と向かってくる使い魔を斬りつけていき、倒していた。星斗も軽い身のこなしで使い魔を確実に倒していた。マミも後方から2人を援護するようにマスケット銃で撃っている。その目にはもう、恐怖という2文字は無いように見えた。

 

「(みんな、頑張って……!)」

 

その後ろで、気絶したままの仁美を膝の上に寝かせているまどかは必死にタケル達の勝利を願っていた。

 

「だぁっ!」

 

タケルが振りかぶって、使い魔を吹き飛ばしたが、一向に数が減らない。それもそのはず。タケル達がいくら使い魔を倒しても、すぐにまたハコの魔女が画面から使い魔を形成して、襲わせているのだ。

さすがのタケル達も、肩で息をするほどにまで追い詰められた。

 

「はぁ、はぁ……。くそっ……! 一体一体は大した事無いのに、数で押し切られちまう……!」

「このままじゃ、いつまでたっても魔女に攻撃出来ない……!」

「私達の魔力切れを狙ってるのかもしれないわね……」

 

そう愚痴りながらも、3人は迫ってくる使い魔をなぎ倒していった。が、状況はさして変わらない。

 

「これじゃあキリが無い……!」

「こうなったら、頼むぞ、ムサシ……!」

 

タケルがムサシゴーストアイコンを取り出して、一気に攻撃を仕掛けようとしてスイッチを押そうとした時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の使い魔が青い閃光と共に一掃された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「⁉︎」」」」

 

タケルら4人がその光景に困惑していた。そして、何気なく真上を見て、4人は驚愕した。

頭上にはハコの魔女がいるのだが、彼らが目を向けたのはさらにその真上。そこには1人の少女が立っていた。

鮮やかな藍色を基調としたスカートと服という衣装に、純白のマント、右手にはサーベルのような長剣、へその部分には青色のソウルジェムがある、文字通り魔法少女がいた。

だが、彼らが驚いたのはそこではなく、その人物の顔だった。水色の短髪にフォルティッシモの形をした髪飾りをつけた、勝気な笑みを浮かべているその少女は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、さやか、ちゃん……⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まどかやタケルの大親友でもある、美樹 さやかだったのだ。さやかはまどか達に目を向けてからニヤリと笑うと、さやかの前に上昇してきたハコの魔女と向き合ってから、剣先をハコの魔女に向けて叫んだ。

 

「ここからは、あたしのステージだ!」

 

ハコの魔女は、画面から使い魔を形成して、さやかに向かって襲わせたが、さやかは目にも止まらぬ速さで接近して使い魔を斬り裂いていった。

 

「めっちゃ速くねぇか⁉︎」

 

その速さに、星斗だけでなく、一同は驚いていた。

やがて使い魔がいなくなり、さやかは一気にハコの魔女に詰め寄って真下に吹き飛ばした。そして剣を突き出しながら、

 

「これでトドメだぁぁぁぁっ!」

 

と叫んで、剣を射出するように、ハコの魔女めがけて放り投げた。剣はハコの魔女を貫き、猛スピードで地面に突き刺さると同時にハコの魔女は血しぶきのようなものを撒き散らしながら、完全に消滅した。結界が崩れていき、タケル達が呆然とする中、さやかは空中に浮いていたグリーフシードを手にとって、まどか達にVサインを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仁美〜、大丈夫?」

「……う、ん……?」

 

仁美は誰かに名前を呼ばれながら起こされるのを感じて、呻きながら目を開けた。しばらく視界がぼやけていたが、暗闇に目が慣れてくると、周りの光景がはっきりとしてきた。周りは古びた工場であり、あちこちに大人達が気絶しているかのように地面に転がっている。温もりを感じたので背後を振り返ると、まどかが心配そうに仁美を見つめていた。

 

「ま、まどかさん……?」

「仁美ちゃん! 良かった……!」

 

まどかがホッと一安心しているところを見ると、どうやら自分に何かあったようだ。とりあえず仁美はまどかにお礼を言う事にした。

 

「あ、あの、まどかさん、ありがとう、ございます……」

「……ううん。お礼なら、その……」

 

まどかは複雑そうな表情を浮かべながら曖昧そうに目線を別のところに向けた。仁美がその目線の先を辿ってみた時、仁美は先ほどのまどか達以上に驚きに満ちた表情を見せた。

目の前にはタケル、星斗、マミが魔法少女や仮面ライダーの姿で立っていたのだが、問題はその後方だった。そこには、制服でもなければ、私服にも見えない、いわゆる魔法少女姿で安心したように仁美を見ていた、大親友のさやかがいたのだ。

 

「いや〜、ごめんごめん。もっと早く駆けつけてれば良かったんだけどさ。ここまで来るのに道に迷っちゃってさ……」

 

さやかは場の雰囲気に合わないような、呑気そうな声で喋るが、周りの4人の表情は変わらない。

 

「さやか、お前、契約したのか……」

「うん。そうだよ。ってか当たり前じゃん。でなきゃこの格好でここまで来ないって」

「ひょっとしてお前、恭介の腕を……」

 

タケルが何かを察したように尋ねると、さやかは力強く頷いた。

 

「そうだよ。あたし、見つけたんだ。叶えたい願い」

「でも美樹さん、それがどういう事か……」

「分かってますよ、マミさん。……でも、心境の変化ってやつですかね? やっと戦う理由を見つけたんだし、それにこれでタケルやマミさん達の手伝いも出来るから、一石二鳥ってやつですよ! それにほら、初めてにしちゃ、上手くやったでしょ、あたし?」

「いや、だけどお前……」

 

タケルが困惑しながら口を開いた時、不意に涙声で話す者が出た。それはまどかにしがみついている仁美だった。どうやらさやかの言った事に加えて、先ほどまで、自分が何をしようとしてたのかを思い出してしまったのだろう。仁美は震えながら涙を流していた。

 

「ご、ごめんなさい、さやかさん……! 私がもっと、心をしっかり保っていれば、このような事にならずに済んだはずなのに……! 魔法少女として、戦いに出なくても良かったはずなのに……! 私が弱いせいで……!」

「あ〜もう! 違うって! 大丈夫だって!」

 

謝罪する仁美にさやかは苦笑しながら駆け寄って、仁美を慰めた。

 

「あたしは別に仁美が弱いからとか、隼人さんの代わりを務めようとか、そういう理由で魔法少女になったわけじゃないよ。ただ、見つけただけなんだよ。どうしても叶えたい願いをね」

「さやかさん……」

 

仁美が涙で顔をグシャグシャにしているのに気付いたさやかは慌ててハンカチを取り出して、仁美の顔を拭いた。

 

「ほらほら。仁美に泣いてる姿は似合わないって」

「あなたは……」

 

不意に、まどかの背後から声が聞こえてきたので一同が振り返ると、そこには変身していたほむらとマコトがいた。

 

「ふん。遅かったじゃない、転校生」

 

さやかは鼻を鳴らしながら、2人を睨みつけて、挑発的に声をかけた。

 

「この街は、これからあたし達で守ってく。だから、あんた達は余計な手出しはしないで」

「ちょっと美樹さん。それは言い過ぎよ」

「でもマミさん……」

 

さやかが不満げに呟くと、マコトが冷めた口調でこう呟いた。

 

「お前は甘い」

「はぁ? まだそんな事言って……」

「いずれ分かる。お前の選んだその選択は、お前自身を呪い、絶望へと堕としていく」

 

それから2人は背を向けて、ほむらが口を開いた。

 

「奇跡なんて、魔法なんて、本当はあるわけ無いのよ……」

 

その言葉を最後に、2人は姿を消した。さやかは不満を残しつつも、タケル達に声をかけた。

 

「気にする事無いって。あんな奴らの言葉なんか。さっ、もう帰ろ、みんな」

 

さやかに催促されたまどか達は、全員の大人達の無事を確認してから、その場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、見滝原市立病院のとある病室で、上条が目を覚ました。さやかがあの後、どこかに走り去ってから、泣き疲れて眠ってしまったようだ。それからしばらくボーッとしているうちに、怪我をしていた左腕に違和感を感じた。それまで感じなかった、布団の感触が感じられているように思えたからだ。

不思議に思った上条は左腕を掲げて見て、驚きを隠せなかった。月明かりの下に照らされたその左腕には、それまでついていた傷が一つも付いていなかったのである。上条は目の前の光景が信じられず、何度も左手の開閉を繰り返していた。

 

「(これは……! どうしてこんな事が……⁉︎)」

 

上条が嬉しさ半分、困惑半分といった表情を浮かべていると、不意に夕方にさやかが言っていた事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

『奇跡も、魔法も、あるんだよ』

 

 

 

 

 

 

 

「奇跡も、魔法も……。そんな事って……」

 

上条が思わずそう呟いた時だった。

 

『本当の事さ』

「⁉︎ 誰だ……⁉︎」

 

不意に声が聞こえてきたので、上条は思わず辺りを見渡した。が、周りには誰もいない。それもそのはず。消灯時間はとっくに過ぎているので、誰かがいる事は考えにくい。にもかかわらず、声だけがまた聞こえてきた。

 

『君の左腕は、確かに治ったんだよ。魔法の力によってね』

 

どうやらその声は、頭の中に聞こえてきているようだ。

 

「君は……、一体誰なんだ……?」

『それはまだ答えられない。でも、いずれまた会う時が来るかもしれない。もちろん、その時の君に叶えたい願いがあるかどうか次第だけどね』

 

その言葉を最後に、頭の中にはその声は聞こえてこなくなった。上条はただ呆然と、綺麗な月を眺め続けていた。

 

 

 




というわけで、今回はさやかの魔法少女としての初参戦回でした。本編を見てて、仁美が魔女の口づけをつけられる口実としては、やはりこういった理由の方が良いのでは無いかと思って、このような話の流れにしました。

そして最後の方で、上条に囁きかける謎の声。果たして、その正体とは……。そして、上条に待ち受けるものとは一体……。

次回は本編の方では無く、あのスピンオフ作品を題材にした内容に入っていきます。お楽しみに!
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