魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
また、オリジナルライダーも登場します。
その少年は、この世界が憎かった。
かつては、政治家として世のため人の為に尽くしていた、自慢の父親を持つ、誰からも好かれる少年だった。
だが、そんなある日、父親は当時所属していた政党のトップの失脚と同時に、政界からの引退を余儀なくされた。職を失い、一同は手のひらを返すように、彼を罵った。それは少年の方も例外では無かった。
故に、少年は憤りを感じていた。この世界に生きる、強者を気取って弱者となった者達を見下す人々を……。
「君の望みは何だい?」
目の前にいる白い生き物は赤い目を光らせながら、少年にそう問いかけた。
突然目の前に現れた、「キュゥべえ」と名乗る、謎の生命体。最初は訳も分からず困惑していたが、キュゥべえから聞かされた、魔女と呼ばれるものの存在、そしてそれを倒す事の出来る、魔法少女や仮面ライダーの存在。たった一つの願いと引き換えに、強大な力を手に入れる事が出来る、あらゆる理を度外視したシステム。
その説明を聞き終えた頃には、少年の答えは出ていた。
「俺の、望みは……!」
「弱者を見下す輩を支配する力だ……! その力があれば、革命を起こす事も出来る!」
「分かった。その願い、叶えてあげるよ」
キュゥべえのその言葉と共に、少年の体は光り出し、体内から、合計3つのアイコンが出現した。
「さぁ、その力で、君の祈りを輝かせると良い。
分島 リクオ。
それが、タケルが契約する前に誕生した、素質の高い少年の名であった。
そしてさらに、運命は加速する。
「自分の生きる意味を知りたい」
そう願ったのは、茶色の制服を着て、一際目立つ胸を持つ、大人しそうな少女だった。
彼女の側には、リクオがいる。
彼女の父親もまた、リクオの父親と同じく政治家で、政党のトップであった。リクオと彼女は、互いの父親を通じて知り合った仲でもあった。だが、少女の父親が失脚後、自殺。それにより、少女の周りの環境は一変し、少女は絶望した。今の社会だけでなく、自分自身にさえ嫌悪感を覚えていた彼女は、心の隙を突かれて魔女の結界に閉じ込められる。
死を覚悟していた彼女の前に現れたのが、言わずと知れたリクオだったのだ。リクオは難なく魔女を撃破し、その後現れたキュゥべえによって、全ての事情を聞かされたのだ。
そして現在に至る。
「分かった。契約成立だ」
キュゥべえのその言葉と共に、少女の体はリクオの時と同様、光り出して、銀色のソウルジェムが少女の手に握られた。
「さぁ、君の魔法を試してごらん」
少女は頷くと、ソウルジェムに意識を集中させて、自らを魔法少女へと変身させた。
純白のドレスに帽子がつけられた、完全無欠なお嬢様の容姿を連想させるその姿の少女は、変身完了と共に、脳裏にある光景が浮かんできた。
目の前に広がるのは、破壊し尽くされた見滝原。いくつものビルが崩壊し、見るも無惨な姿に変貌していた。
「ここが、見滝原なの……⁉︎」
少女は突然の事に困惑していたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「街が崩れていく……。なんて力なの……」
そう呟く少女の目の前を、一体の巨大な生き物が通り過ぎていく。それは逆さまのドレス姿の怪物だった。
「あれは……、魔女……? もし、これが私の運命というならば、何としてでも止めなくては……」
少女が呟いていたその時、ピンク色の閃光が魔女を貫いて、一瞬で消滅した。少女が驚いて閃光の飛んできた方を見てみると、そこにはピンク色のツインテールの魔法少女が弓を持って立っていた。
「(あれは……。魔法少女……?)」
少女が心の中でそう思っていた時、ピンク色の少女の方に異変が生じた。その少女は突然暗闇に包まれ、そして……。
「……あ、あぁ……!」
少女は目の前に広がった光景が信じられなかった。なぜならそれは……。
「……おい、大丈夫か……⁉︎」
不意に聞こえてきたリクオの一声で、少女はハッと目を見開いた。
「それで、君の願いは叶ったかい?」
キュゥべえが呑気そうにそう尋ねるが、今の少女に答える余裕は無かった。
「あ、あぁ……!」
「何があったんだ……?」
「どうしたんだい? 顔が真っ青だよ。具合でも悪いのかい?」
リクオとキュゥべえが訝しむが、少女の脳裏には先ほどの光景が焼き付いていた。
「(あぁ……! あれは誰にも倒せない……! あれを解き放っては、いけない……! どうすれば……! どうすれば
彼女が知ったのは、魔法少女や仮面ライダーの真実。だが、それ自体は彼女自身どうにでもなると思ったのだが、問題はその後、ある人物に関する事であった。それはこの世界に最悪をもたらす存在。その人物を生かし続ければ、世界そのものが崩壊する。それだけは絶対に阻止しなくてはならない。
そう思っていたその時、少女の脳裏に別の人物の姿が映り込んだ。
緑色の髪に、黄色のヘアゴム、深緑の服を着た少女を確認した少女は、咄嗟にある事を思いつき、それをキュゥべえに伝えた。
「キュゥべえ、いいお知らせよ」
「?」
キュゥべえが首を傾げる中、少女は不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「どうやら私の魔法は、あなたの役にも立つみたいよ。……あなたにとってとてもいい、魔法少女の素体がいるようよ」
「へぇ……、それは楽しみだね」
キュゥべえは興味深げに少女を見つめ、その名を口にした。
「
所変わって、ここは見滝原の隣町。そこでは、万引きしていた事を隠してもらった誠司と別れて、魔女を退治していた杏子がいた。
杏子は俊敏な動きで、魔女を圧倒しており、ものの数秒もしないうちに、魔女を完膚なきまでに叩きのめした。その強さからは、マミや隼人、そしてほむらやマコトとはまた違ったベテランの風格を漂わせていた。
魔女が消滅すると同時にグリーフシードが杏子の手に渡り、結界は崩れ去っていった。
「一丁あがりっと」
杏子は変身を解除して、辺りを見回した。
「(しっかし……。この街を管轄する魔法少女とか仮面ライダーはいないのか……? これじゃあグリーフシード取り放題じゃんか。何なら、ここあたしのシマにしちゃおっかな)」
本来、杏子が魔女退治を行っているのは風見野市であり、この日はミカンを盗む為に来ただけなのだ。そんな彼女だが、魔法少女や仮面ライダーと1人も出くわさなかった事に違和感を感じていた。
もっとも、彼女はとある一件以来、同胞との馴れ合いは避けている為、管轄する者がいない事を有り難く感じていたのだが……。
「……ん?」
不意に杏子は、背後に人の気配を感じたので振り返ってみると、そこには自分よりもはるかに年下の少女が座っていた。その少女の目の前には無惨にも切り裂かれた、男女の死体があり、血が飛び散っていた。見たところ、少女の両親なのだろう。杏子が戦っている時には見かけなかった事から、おそらく杏子が結界内に入る前に殺されたと見て間違いない。
それを見て、杏子は脳裏に嫌な思い出が蘇ってきたのだが、気にせず、少女に話しかけた。
「おい、ガキ」
「……」
少女は無言だった。ただ、無感情のまま、殺された両親を見つめていた。
「……ま、災難だったね。でも現実なんてこんなもんさ。震えたって、泣いたって死んだ両親は帰ってこない。生き残った事に感謝するんだね」
「……」
「……フン」
何も返答しない為、杏子はその場を去ろうとしたが、もう一度振り返って、少女の方を見た。その後ろ姿からは、自分を呼んでいるようにも思えた。
「そんな顔したって、誰も助けちゃくれねぇよ」
そうは言ったものの、何故か杏子自身もその少女を放ってはおけなかった。
「(何だろうな、この感覚……。前にも似たような事あったか……?)」
杏子は疑問に思いながらも、仕方なく非常食として取っておいたキャンディーを少女に見えるように突き出した。
「食うか?」
と、ここでようやく少女が顔を上げて、反応を示した。
それから杏子は少女を近くの広場に連れて行って、前もって手に入れていたハンバーガー(もちろんこれも盗んだ)を少女にあげた。途端に少女はムシャムシャと貪り食べていた。
「いいか。それ食ったらどっか行けよ」
杏子がそう言うも、少女は食べる口を止めない。すると勢いよく食べ過ぎて喉につっかえたのか、急にむせ始めた。
「……ったく、しょうがねぇな」
杏子は缶ジュース(これは普通に自販機で買った)を少女に与えた。それも一気に飲み干す姿を見て、さすがの杏子も呆れた。
「……にしてもお前、がっつきすぎだろ。あたしが言えた義理じゃねぇけどさ、お前ちゃんと飯食ってんのか……?」
まるで何時間ぶりに飯にありつけたようなその食べっぷりに杏子も疑問を感じていたが、不意に少女の方を見ると、缶ジュースの方を見つめながら、何かに怯えているようにも見えた。
先ほどの光景でも思い出したのだろうか。そう思った杏子は、少女に説明する事にした。
「お前の両親を殺したのは、魔女っていうバケモンさ」
「まじょ……?」
と、ここでようやく少女もハッとして、杏子の方を見つめた。
「それであたしはそれと戦う、魔法少女ってやつだ。他にも、仮面ライダーってのもいるけど、ま、今のお前には関係ないや」
少女は、魔法少女や仮面ライダーという存在がいる事に驚いているようだった。その表情を見ながら、杏子は説明を続けた。
「まるで漫画みたいだろ? でも漫画みたいに愛と勇気に満ち溢れてるわけでも、救いがあるわけでもない。いなくなっちまった家族も戻ってきやしないしな……」
それから杏子は空を見上げた。すでに夕日は沈みかけている。
「だから食い物だって、これからはお前1人で」
「……ゆま」
「……あん?」
突如会話が遮られて、キョトンとする杏子に対して、少女はジト目で杏子に言った。
「「お前」じゃなくて「ゆま」」
「(このガキ……)」
どうやらゆまというのが、少女の名前らしい。会話が中断されて少しムッとした杏子だったが、少女……ゆまは気にせず杏子に質問した。
「……で、おねえちゃんは正義の味方なの?」
「は? そんないいもんじゃねぇよ」
杏子はそう否定するも、ゆまは腰掛けていた階段を降りて、少し歩いてから、振り返って杏子に尋ねた。
「……じゃあ、私も戦えるのかな……?」
「……はぁ?」
「私も魔法少女になって、魔女と戦いたい!」
ゆまは目をキラキラ輝かせていたが、反対に杏子は冷めた目つきでゆまを睨んだ。
「くだらない事言ってんじゃねぇよ……! 魔法少女になるってのはな……!」
が、杏子が反論する前にゆまがわめき立てた。
「だってパパもママも死んじゃったんだもん! 私、もうどこにも行くとこないもん!」
そしてゆまは杏子に詰め寄った。
「ねぇ、どうしたら魔法少女になれるの⁉︎ 私、何だってやるよ! おねえちゃんの事、いつでも助けてあげるよ……!」
が、ゆまの説得も虚しく、杏子はゆまの隣をすれ違った。
「……甘ったれるな。魔女との戦いは文字通り命がけなんだよ。同じ命をかけるなら、真っ直ぐに生きる事にかけな」
そう言って杏子は立ち去ろうとしたが、ゆまは目に涙を浮かべて呟いた。
「でも……、だって……、私1人じゃ……。だって……、だって……」
ゆまは必死に泣く事をこらえているようだ。それを見た杏子は、呆れながら、ゆまに言った。
「……ったくしょうがねぇガキだな、マジで。いいか、よく聞け」
杏子は振り返って、ゆまに指を指して言った。
「あたしは「おねえちゃん」じゃない。「佐倉 杏子」だ」
「……キョーコ?」
「あぁ、そうだ。1人で生きる術なら、あたしが教えてやるよ」
途端にゆまは顔をパァッと輝かせて、杏子に近寄って、並んで杏子についていった。
自分でも、なぜこんな提案をしたのか分からなかったが、何となく放っておけなかった、というのが杏子自身の本音なのかもしれない。かつて自分に仲良くしてくれた先輩達のように……。
「(やれやれ……。あの2人のバカが移っちまったのかね……)」
杏子は自分に呆れながらも、ゆまと共に、風見野に戻った。
それ以来、2人で共に行動する事となってからは杏子にとっても苦労の連続だった。とはいえ、なんだかんだ言ってゆまがいる事で店員の注意を惹きつけて、その隙に物を盗む事も出来たし、喧嘩しても、ゆまが涙目になった後に杏子が慰め、その後に出たゆまの笑顔には、不思議と杏子の心が癒された。
「……まぁ、悪くないかな」
「キョーコ?」
「ん、何でもねぇよ。それよりも、気を引き締めろよ」
杏子はそうゆまに言いながら、2人一緒に魔女の結界に入っていった。
性格も正反対のこの2人の出会いは偶然か、それとも必然か。その答えを知る者は、数少ないだろう……。
というわけで、ここからは「おりこ☆マギカ」の内容が入ってきます。冒頭部分で登場した新キャラにつきましては、しばらく後に登場する事になります。そこで彼の戦闘方法も明らかにします。
千歳 ゆまのキャラは、個人的に気に入ってます。なんだかんだ言って杏子と息ぴったりですからね。
次回は本編の方に入っていきます。それでは、次回もお楽しみに。