魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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ミルキィホームズの映画を観てきましたが、なかなかのカオスっぷりでした(笑)
でも、要所要所に熱いシーンがあったので、よかったと思ってます。


22. 後悔なんて、あるわけない

それは、まどかが仁美に会うほんの少し前の事。上条に、用事を思い出したと言って、病室を後にしたさやかは、テレパシーで近くにいるであろうキュゥべえと、屋上で待ち合わせする事にした。

さやかが屋上にたどり着くと、すでにキュゥべえが花壇の中央で待っていてくれた。

彼女はすでに腹をくくっていた。これから大変な日常が待ち受けている事は分かっている。だが、それでもなお叶えたい願いがある。その覚悟をもって、キュゥべえに改めて確認した。

 

「本当に、どんな願いでも叶えてくれるんだよね……?」

「あぁ、もちろんさ。君の願いは、間違いなく遂げられる」

 

対するキュゥべえは、さやかの言葉を肯定した。

 

「僕の方からも改めて聞くけど、本当に良いんだね?」

「……うん。私は構わない」

「君の決意の固さはよく分かった。それじゃあ、君の祈りを強く心の中に念じてくれたまえ」

 

そう言われたさやかは目を閉じて、その願いを心の声で言い放った。

 

「(恭介の腕が治りますように……!)」

 

その瞬間、さやかの体は光り出し、胸から水色の光の球体が飛び出した。その苦しさにさやかは身悶えたが、痛みは一瞬で消えて、さやかは目を開けた。やがて目の前の球体は、水色のソウルジェムへと形を変えた。さやかは痛みから解放されたからなのか、力が抜けて後ろに倒れかけた。

 

「さぁ、解き放ってごらん。それが君の運命だ」

 

さやかはキュゥべえの声を聞きながら、自身のソウルジェムを優しく受け止めて、その身を花壇の花々の中に沈ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜! 久々に気分良いわぁ! 爽快爽快!」

 

そう呟きながら、思いっきり腕を伸ばしていたのはさやかだった。

さやかが魔法少女となった次の日の午後、まどか達は昨日魔女が現れた工場の近くにある姫名川と呼ばれる川の土手に来ていて、芝生の上に座っていた。

ちなみに、朝早くに待ち合わせた際にさやかが自らのソウルジェムを候補生の誠司、晶、御成に見せた時は、3人はかなり驚いていた。特に晶は彼女の身を心配するあまり、涙を浮かべるほどだった。その際も、さやかは少し呆れながら涙を拭いていたが……。昨晩の一件に関わっていたまどかとタケル、そして仁美はなんとも言えない、複雑な表情を浮かべていた。

この日は土曜日という事もあって、授業は午前中だけだったので、昼食も早々に済ませて、星斗やマミ、隼人を交えた一同で土手の方に来ていたのだ。

 

「土曜日の午後って良いよねぇ……。毎日半ドンなら良いのに……」

「そんな無茶な……」

「でも、気持ち分からなくないかも」

 

さやかの発言に、隼人は呆れ、星斗は同情していた。

そんな中、晶が恐る恐る声をかけた。

 

「さやかちゃんは……」

「ん?」

「怖くは、無いんですか? その……、魔法少女になる契約をした事に……」

 

その質問に対し、さやかは芝生に寝転び、頭の下に腕を組んで、晴天を見上げながら笑って答えた。

 

「そりゃあ、こないだの事もあって、ちょっとは怖いとは思うけど。……まぁ、昨日のヤツにはあっさり勝てたしさ」

「あまり調子に乗らない事よ。私が言うのもアレだけど、油断してたら本当に危ないわよ」

 

さやかの発言に、マミが困ったように口を挟んだ。それからさやかは少し真面目な顔になって呟いた。

 

「分かってますよ。でも、もしかしたらまどかやタケル、仁美に星斗、マミさんまで怪我しちゃってたかもしれないし、そうなったら、そっちの方がよっぽど怖いですから……」

「その気持ちはありがたいけど……」

 

そう呟いたタケルは心配そうにさやかを見ていた。昨晩は助けに来てくれた事には感謝しているが、それも昨日だけの話だ。今後はさやかの方が怪我を負ってもおかしくない。が、そんなこと不安な気持ちを吹き飛ばすかのように、さやかは体を起こして、自身のソウルジェムを取り出して、まどか達に見せた。

 

「だ・か・ら、何っつうかなぁ。自信? 安心感? ちょっと自分を褒めちゃいたい気分っつうかね。まー、舞い上がっちゃってますかね〜、あたし」

 

そう上機嫌に呟くさやかは立ち上がって、空高くに目線を上げて、高らかに宣言した。

 

「これからも見滝原市の平和は、この魔法少女であるさやかとマミさん、そして仮面ライダーのタケル、星斗、隼人さんの5人でガンガン守りまくっちゃいますからね〜!」

「おいおい、あんまり調子に乗るなってさっき言われたばかりだろ……? 俺の二の舞にはなってほしくないからな」

「分かってますって、隼人さん」

 

さやかの元気そうな笑顔に、隼人だけでなく、マミも苦笑していた。マミも隼人も後輩の面倒見が良いので、このような表情になるのだろう。タケルと誠司、星斗も似たような表情を浮かべていた。

と、今度はまどかがさやかに尋ねた。

 

「後悔とか、全然無いの……?」

「う〜ん……。後悔ねぇ……」

 

さやかは少し考え込むように顔を下に向けた。

 

「特には無いんだけど、強いて言うなら、迷ってた事が後悔かな……。どうせだったら、もうちょっと早く心を決めるべきだったかなって事。あの時の魔女、もしあたしも一緒に戦えてたら、隼人さんも大怪我せずに済んだかもしれないって思うとね……。まぁ、こんな事言っちゃあ悪いけど、あの一件があったから、あたしも中途半端に心を決めなくて済んだわけだし……」

「そっか……」

「まぁ、何よりも恭介が元気になってくれた事が嬉しいからね」

「さやかがそういうんなら、それで良いけどさ……」

 

タケルも晴天を眺めながら、そう呟いた。

 

「まぁ、さやかが戦うって決めたんなら、俺もこれ以上何も言わない。ピンチになったらちゃんと俺が守ってやるからさ」

「頼もしい事言ってくれるじゃん。サンキュー」

「良いってもんよ」

 

場が和やかになりつつある中、仁美は朝と変わらず、暗い表情で俯いていた。偶然とはいえ、自分の心の弱さが原因でタケル達に迷惑をかけてしまい、果てには、さやかが上条の腕を治す事と引き換えに魔法少女となり、危険に晒される事が多くなる。そう思うと、仁美は無性に自分に嫌気がさしていた。

まどかや晶もまた、自分の決断力の無さに嫌悪感を抱いていた。

そんな3人の頬に、さやかが人差し指でチョンと順番に突いた。

 

「さてはあんた達、またなんか変な事考えてるな?」

「私……、私だって、その……」

「なっちゃった後だから言えるの。こーいう事は」

 

そう言うと、さやかは再び芝生に腰を下ろした。

 

「どうせならっていうのがミソなのよ。あたしはさ、なるべくして魔法少女になったわけ」

「さやかちゃん……」

「願い事、見つかったんだもん。命がけで戦う羽目になったって構わないって、そう思えるだけの理由があったの。そう気付くのが遅すぎたっていうのが、ちょっと後悔してる事かな……?」

 

それからさやかはまどか達候補生の方を向いて、優しく呟いた。

 

「だからさ、みんなは引け目なんて全然感じなくて良いんだよ。みんな、下手に魔法少女や仮面ライダーにならずに済んだっていう、ただそれだけの事なんだから」

 

先輩のアドバイスのように言いたい事を告げたさやかは、再び立ち上がった。

 

「さてと。じゃあそろそろ行かないと」

「どちらまで行かれるのですか?」

 

御成が尋ねると、さやかよりも早くタケルが言い当てた。

 

「もしかして、恭介の所に?」

「えへへ。まぁ、そんな感じ」

 

さやかは少し照れながら答えた。それからさやかは病院のある方角に目を向けていると、晶が呟いた。

 

「あ、あの、さやかちゃん……」

「ん? どうした?」

「あの……、お邪魔じゃなければ、僕も一緒について行って良いですか? 僕も、その……。声をかけたいと思って……」

「良いよ、別に」

 

それからさやかは、何かを思いついたように、まどか達にも顔を向けた。

 

「あ、そうだ。どうせだったらみんなも一緒に行かない? 大勢の方が恭介も喜ぶと思うし。それに、今なら前に約束した事、叶うかもしれないし」

「そうだな。特に予定も無いし、行ってみるか」

「私達も良いのかしら……?」

 

マミが尋ねると、さやかは笑みを浮かべて首を縦に振った。

 

「構いませんよ。せっかくですし、星斗や隼人さんも含めて紹介しといた方が良いですしね」

「じゃあ、お言葉に甘えて、そうさせてもらおう」

「でも、私は……」

 

マミ達3人も同意する中、仁美だけは未だに躊躇しているようだった。が、そんな仁美に、さやかが寄り添ってその腕を掴んだ。

 

「さ、さやかさん⁉︎」

「仁美だけハブなんて、そんなのさやかちゃんが認めないからね〜♪ ほら、行くよ!」

 

そう叫んださやかは仁美の腕を引っ張りながら病院に向かっていった。他の一同も2人の後ろをついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まどか達が病院にたどり着いたのは、茜色の夕日が見え始めてきた頃だった。さやかが先導して上条のいる部屋の扉をノックすると、中から声が聞こえてきた。

 

「どうぞ」

 

その言葉を合図にさやかが先に中に入り、その後をまどか達が入っていった。

 

「やぁ、さやか。それにみんなも……」

「お久しぶり……ですわね」

「うん。仁美も久しぶり」

 

上条はタケル達が来てくれた事に喜んでいるようだ。やがて後から入ってきたマミ、隼人、星斗の姿を見て、不思議そうな顔をした。

 

「? みんな、その人達は……?」

 

その言葉を待っていたかのように、さやかは得意げに話し始めた。

 

「紹介してあげる。左から同級生の小川 星斗。それから、その隣にいる2人は先輩で、巴 マミさんと八谷 隼人さん。最近知り合ったんだ」

「初めまして。巴 マミよ」

「八谷 隼人だ。よろしくな」

「気軽に星斗って呼んでくれ。お前の事はさやかから色々と聞いてるからさ」

「はい。上条 恭介と言います。こちらこそよろしく」

 

軽く顔合わせが済んだところで、上条の事が話題となった。

 

「そっか。退院はまだなのか」

 

誠司がそう尋ねると、上条は自身の左腕を見つめながら呟いた。

 

「足のリハビリが済んでないしね。ちゃんと歩けるようになってからでないと」

「じゃあ、まだ当分は学校には来れないか」

「そうなるね。それに手の方も、一体どうして急に治ったのか、全く理由が分からないんだってさ。だからもうしばらく、精密検査がいるんだ」

「恭介自身はどうなの? どっか体におかしなとこってある?」

「いや、無さすぎて逆に怖いっていうか……。事故に遭った事さえ悪い夢だったみたいに思えてくる。なんで僕、こんなベッドに寝てるのかな、って。さやかが言ってた通り、奇跡だよね、これ」

 

上条がさも嬉しそうに笑うのを久しぶりに見たさやかは満足げに笑みを浮かべていた。その一方で、事情を知っているまどか達は暗い気持ちだった。上条が知る由も無いだろうが、その奇跡を起こして、上条を救ったのは他でも無い、目の前にいるさやかなのだ。

すると今度は、上条の方が暗い表情になっていた。御成は気になって声をかけた。

 

「? どうかなされましたか、恭介殿?」

「あ、ううん……。さやかには、昨日酷い事言っちゃったな、って思って……」

「? どういう事なんだ?」

「恭介。それは……」

「構わないさ。実は……」

 

そう言って上条は昨日、さやかに腕が治らない事に関して、八つ当たりしていた事を隠さず打ち明けた。

 

「……て事があったんだ」

「そうだったのか……」

「あの時は本当にごめん、さやか。いくら気が滅入ってたとはいえ、あんな事言わなくても良かったはずなのに……」

「あはは。変な事気にしなくてもいーの。今の恭介は大喜びして当然なんだから、そんな顔しちゃダメだよ」

「うん……。何だか実感が無くてさ」

「ま、無理無いよね」

 

上条の説明を聞いて、まどか達はようやくさやかが契約するきっかけを知る事となった。

 

「(そっか……。それでこんなにも早く契約しようと思ったのか……)」

 

とはいえ、上条もバイオリンを弾けなくなったら彼自身には絶望しか残らない事を考えたら、無理に彼を責める事は出来ないだろう。タケルはそう思った。

 

「何がともあれ、こうして無事に完治出来たのですから、良かったですな、恭介殿」

「うん……。ありがとう」

 

御成がそう言ってからしばらく沈黙していると、不意にさやかが時計を確認して、上条に言った。

 

「そろそろ、かな……?」

「えっ?」

「恭介。みんなと一緒に、ちょっと外の空気吸いに行こ。タケル、誠司、手伝って」

 

困惑する上条に対し、2人は彼を車椅子に乗せた。一同は部屋を出てエレベーターに乗り、屋上まで上がった。

 

「屋上なんかに、何の用が……?」

「良いからいいから」

 

さやかにそうはぐらかされて、上条は何も質問出来なかった。他のメンバーも、笑顔で内緒にしていた。ここに来る道中に、さやかから上条へのサプライズの内容を聞いていたのだ。

やがてエレベーターを降りて、屋上に出る鉄の扉を開けると、そこには上条の両親、そして担当していた医師や看護婦達が彼らの到着を待っていた。上条の姿が見えた途端、一同は満面の笑みを浮かべて温かい拍手を送っていた。

上条はこのサプライズにとても驚いていた。

 

「みんな……!」

「本当のお祝いは、退院してからなんだけど、足よりも先に手が治っちゃったしね」

 

すると、呆然としている上条の元に、上条の父親が寄ってきた。その手にはバイオリンケースが握られており、蓋を開けて中を見せた。中に入っていたバイオリンを見て、上条と晶が即座に反応した。

 

「あ……! それって……!」

「晶、知ってるのか?」

「はい。恭介君の愛用してたバイオリンです」

「お前からは処分してくれと言われたが……。どうしても捨てられなかったんだ。私は……」

 

上条の父親は真剣な眼差しで息子を見つめた。上条も最初は躊躇っていたが、意を決して父親からバイオリンを受け取った。

 

「さぁ。試してごらん。怖がらなくてもいい」

 

上条の父親が少し後ろに下がると、まどか達も上条を正面から見れるように集団の中に入っていった。

一同が見守る中、上条はゆっくりとバイオリンを首元に挟み、しばらく目を閉じて久々の感触を味わった。そして右手に持った弓を優しく握り、バイオリンの弦に当てた。

やがてその旋律は屋上に鳴り響き、心地良い響きがまどか達の耳にすんなりと入っていった。その演奏からは、全くと言っていいほどブランクを感じさせないものだった。中には、涙を浮かべている看護婦もいた。先ほどまでは暗い表情だった仁美も、上条の演奏を聞いて、自然と明るさを取り戻していた。

マミと隼人も、おぉ、と感嘆している。始めて彼の演奏を聞いたタケル、まどか、誠司、御成、星斗もさほど音楽の凄さが分かっていなくても凄いと思えるほどだった。

 

「(……あぁ、そうだ。この感覚だ。僕は今、本当にバイオリンを、僕の夢そのものを弾いている。それがこんなにも嬉しいと思える日がまた来るなんて……)」

そう思いながらバイオリンを弾く上条の口元が自然と笑っていた。

何度か聞いた事のある晶とさやかも、最初は不安な表情をしていたが、いつも通りの演奏であると思い、安堵の表情を浮かべていた。そんな中、さやかは誰よりも歓喜に満ち溢れていた。

 

「(みんな……。あたしの願い、叶ったよ……)」

 

彼女の脳裏には、昨日契約した時の光景が流れていた。

 

「(後悔なんて、あるわけない)」

 

そして上条もまた、弾ける事に嬉しさを感じていた。

 

「(僕の夢は潰えたわけじゃない)」

 

そして、同時にこう思った。

 

「「(あたしは(僕は)今、最高に幸せなんだ……)」」

 

あっという間に時間は過ぎ、長いように思われた上条の演奏は終わりを迎えた。上条が弓をバイオリンの弦から離して、ホッと一息つくと、立ち所に拍手が周りを包んだ。

 

「ブラボー!」

「素晴らしい……! 素晴らしいですぞ!」

 

星斗と御成の言葉を受け、上条は頭を下げた。演奏を聴い終わって、不思議とそれまで感じていたモヤモヤ感が無くなっているのにまどか達は気づき、改めて上条の演奏の凄さを実感したまどか達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼らを観察する、人影が一つあった。

 

「……ふ〜ん。マミや隼人がいるって事は、あいつらも魔法少女に仮面ライダーってわけか」

 

病院から少し離れた展望台の屋上から、望遠鏡で覗いていたのは、風見野の魔法少女、佐倉 杏子だった。彼女は魔法で強化した望遠鏡でさやかの左指についているソウルジェムや、タケルのポケットからチラリと見えるアイコンを見ていた。

そこへ、背後から声が聞こえてきた。

 

「こんなところで君と会えるとはね」

「……あんたか」

 

杏子がさも分かっていたかのように呆れながら振り返ると、そこにはキュゥべえがチョコンと座っていた。

 

「ここはマミ達のテリトリーのはずだ。なぜ君がここにいるんだい?」

「何だっていいだろ? 買い出しだよ、買い出し。ちょいと魔力の反応があったから、気になって見てたんだよ。なんか文句あっか?」

「……あぁ、天王寺 タケルと美樹 さやかの事か」

 

キュゥべえは窓の外から、2人のいる方を見つめた。

 

「……それで、どうするつもりだい? あの2人にちょっかいを出せば、マミ達が黙ってないよ」

「別に……。あいつらと殺りあう理由も無いし、それに……」

 

少し間を置いた後、杏子が振り返って、ニヤリと勝気な笑みを浮かべた。

 

「あんなトーシロ共、その気になれば瞬殺っしょ」

 

杏子は自信を持ってそう答えるが、キュゥべえは顔を横に振った。

 

「全て君の思い通りになるとは限らないよ。特に、天王寺 タケルはね……」

「あん……?」

「彼だけじゃない。この街にはもう2人の魔法少女と仮面ライダーがいる。この3人については、僕にも分からない所があるんだ」

 

それを聞いて、杏子は怪訝な顔をした。

 

「はぁっ? どういう事だよ? そいつらもあんたと契約して、魔法少女や仮面ライダーになったんじゃねぇのかよ……?」

「そうとも言えるし、違うとも言える」

 

キュゥべえがここまで曖昧に語るのは初めてだったので、杏子も思わず黙っていた。

 

「特に天王寺 タケルはこれまで見てきた魔法少女や仮面ライダーと比べてみれば、遥かに素質が高い。少なくとも、魔力だけなら君よりもずっと上かもしれない。もっとも、戦闘経験の差は君の方が上手だから、まだ問題はないかもしれないけどね」

「へぇ……。言ってくれるじゃん。なら、今度会った時はぶっ潰しちゃっても問題ないかもね」

 

物騒な事を呟く杏子は下の階に繋がる階段に歩いていった。

 

「もう行くのかい?」

「今日はここには用は無いし、ゆまがビービー泣き喚く前に、さっさと戻らねぇとな」

 

それだけ告げると、杏子はその場を去っていった。

 

「ゆま、か……」

 

杏子の残した言葉が気になり、キュゥべえはそのままジッと佇んでいた。




後半の方を見ても分かる通り、まだしばらくは、杏子とタケル達は対峙しません。

次回もお楽しみに。
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