魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
今回は時間軸を調整する為に、本編とは違う日にちでいきます。
「……で、話って何だ?」
とある喫茶店で注文したコーヒーに砂糖を入れてかき混ぜていたマコトがようやく口を開いた。隣にはほむらが座っており、その対面にはまどか達がいた。
それは、上条のお見舞いに行った次の日の午後。まどか達は学校で仕事をしていた和子先生から、電話越しにほむらとマコトの連絡先を聞いて、2人に駅前の喫茶店で待ち合わせてもらっていたのだ。
ちなみにこの場にはほむら、マコトの他にまどか、タケル、御成、星斗、マミ、隼人の6人がいて、さやか、誠司、晶、仁美は用事で来れなかった。
「えっと、あの……」
まどかは緊張でオドオドしていたが、やがて勇気を出して2人に話しかけた。
「あのね、さやかちゃんの事なんだけど……」
その言葉を聞いて、2人の表情に変化が見られた。眉をひそめ、目つきがさらに冷たくなっている。まどかは2人の表情を気にしながらも、伝えたい事をしっかりと話した。
「あ、あの子はね、思い込みが激しくて意地っ張りで、結構すぐに人と喧嘩しちゃったり……。でもね、すっごく良い子なの。優しくて、勇気があって、誰かの為にって思ったら頑張りすぎちゃって……」
どうにかして2人とさやかの関係を良くしようと、一生懸命考えて出た言葉なのだろう。が、そんな様子を無視するかのように、2人は冷徹に答えた。
「魔法少女としては、致命的ね……」
「そう、なのか……?」
「それはあなた達が一番良く知ってるはずだ」
そう呟いたマコトの視線の先にはマミと隼人がいた。2人は何も言わなかったが、その表情は険しかった。ほむらが会話を続けた。
「度を超した優しさは甘さに繋がるし、蛮勇は油断になる。そしてどんな献身にも見返りなんて存在しない……。それを弁えていなければ、魔法少女なんて務まらないわ。だからあの時も、巴 マミは命を落としかけて、結果的に八谷 隼人は大怪我をした」
「そんな言い方止めてよ!」
珍しくまどかは感情的になり、叫んで立ち上がろうとしたが、マミと隼人に制止された。周りの客達からの怪訝そうな視線も感じた。少ししてからようやく落ち着きを取り戻したまどかは、声のトーンを落として呟いた。
「さやかちゃん、自分では平気だって言ってるけど……。でも、もしあの時みたいに誰かが怪我する事になったらって思うと……、私、どうしたら良いのか……」
「よほど美樹 さやかの事が心配なんだな」
コーヒーを一口飲んだマコトにそう言われて、まどかは小さく頷いた。
「私じゃもう、さやかちゃんの力になってあげられないから……。だから、ほむらちゃんとマコト君にお願いしたいの。さやかちゃんだけじゃなくて、タケル君やマミさん、他のみんなとも仲良くしてほしいの……」
「俺からも頼む。一緒に戦ってほしいんだ。あの時だって、お互い協力出来たから、心が通じ合ったから、あの魔女を倒せたんだ」
まどか、タケルに続き、他の4人も頭を下げた。
「拙者からも、お頼み申し上げますぞ!」
「この街を守る為にも、一緒に協力していきたいんだ、俺達は」
「私からもお願いするわ。今までの事はちゃんと謝るから……」
「俺も今はまだ満足に参加出来ない。だからこそ、2人の力が必要なんだ。頼む」
6人の必死に懇願する様子を、ほむらとマコトはジッとコーヒーを飲みながら眺めていた。
2人は一度、互いに顔を見合わせてから、確認しあって、その答えを呟いた。
「私達は嘘はつきたくないし、出来もしない約束もしたくない」
「な……」
「だから、美樹 さやかの事は、もう諦めた方が良い」
その残酷な答えに、まどかは涙が溢れそうなほど、悲しい気持ちになった。
「どうして、なの……?」
震える声で、2人にそう尋ねた。先に口を開いたのはマコトだった。
「あいつは、契約すべきではなかった。これは俺達のミスでもある。まどか、お前だけじゃなくて、本当はあいつもちゃんと監視しておくべきだった」
「でも、私達はその責任を認めた上で言わせてもらうわ。今となっては、どうやっても償いきれないミスなの。死んでしまった人が帰ってこれないのと同じ事よ」
「でも、だったら……」
ほむらの言葉を聞いて、星斗も反論しようとするが、それよりも先に、マコトが割り込んできた。
「一度魔法少女や仮面ライダーになってしまったら、もう救われる望みなんて、無いに等しい。……あの契約は、たった一つの希望と引き換えに、全てを諦め、絶望を撒き散らす事になる。……実際、ここにいる大半はそれを受け入れた上で契約したはずだ」
マコトの言葉を聞いて、マミと隼人、星斗は悲しげな表情になって、小さく頷いた。もっとも、半ば強制的に仮面ライダーになったタケルは、素直に頷けはしなかったが……。
「……だから、ほむらちゃんもマコト君も、諦めちゃってるの?自分の事も、他の子の事も、全部……?」
「えぇ、そうよ」
まどかの質問に、ほむらは当たり前の事のように頷いた。
「罪滅ぼしなんて言い訳はしないわ。私達はどんな罪を背負おうとも、私達なりの戦いを続けなきゃならない」
その強い覚悟と信念を持った一言に、さすがのマミや隼人も言い返せなかった。御成も、何も言えずに悔しそうにしている。
「……時間を無駄にさせたわね。ごめんなさい」
ほむらがそう言うと、マコトと共に席を立ち、その場を立ち去ろうとした。と、その時だった。
「……なぁ、ちょっと待てよ」
ここで声をかけたのは、それまでほとんど喋ってなかったタケルだった。一同の注目が集まる中、タケルは不思議そうにほむらとマコトの2人を見た。
「さっきから救われないとか言ってるけどさ、そんなの、やってみなきゃ分かんねぇもんじゃ無いのか?」
「分かるわ。だから、もう美樹 さやかは救われない。もう誰にも彼女の運命は変えられない」
「だったら……!」
そこでタケルは立ち上がり、2人の前に詰め寄った。
「だったらそんなもの、俺が変えてやる。俺は絶対にさやかを見捨てないし、あいつがピンチになったら、俺が助ける。そう約束したからな」
その言葉を聞いて、表情が一番変化したのはマコトだった。まるで呆れと怒りを混ぜ合わせたような表情だ。
「……そうやって、またお前は他人の為に……!」
ギリッと奥歯を噛み締めるような音を鳴らして、マコトはタケルを睨みつけた。
「! マコト……!」
嫌な予感を察したほむらがマコトに話しかけるが、それよりも早く、マコトは行動に移していた。タケルに自ら近づくと、その勢いのまま、タケルの胸ぐらを掴んで、恐ろしい形相でタケルを強く睨み、顔を寄せた。
「!」
「! タケル君……!」
「タケル殿……!」
まどかと御成が制止しようとする前に、マコトの怒号が店内に響き渡った。
「……その傲慢な想い込みが、一体どれだけの人を死なせてきたと思ってるんだ!」
「傲、慢……⁉︎」
わけも分からずタケルがそう呟くと、マコトはなおも会話を続けた。
「お前のそのエゴが、周りの奴らを苦しめているとなぜ気づかない! お前のような考えを持つ奴の周りでは、最後にそいつも含めてみんな絶望して死んでいった! 俺やほむらはそんな光景を何度も見てきた! だから、俺はお前のその、他人の為に命をかけようとする考えが気に入らないんだ!」
マコトはそう叫ぶと、タケルを先ほどまで座っていたテーブル席のところに押し付けた。勢いよくテーブルに押し倒された影響で、テーブルにあった飲みかけのジュースやコーヒーはほとんどこぼれ落ちた。
大きな音が響き渡り、店内にいた全員がマコト達に目がいった。店員も注意しようとして近づいたが、マコトに鋭く睨まれ、萎縮してしまっている。まどか達が呆然とする中、ほむらがマコトに話しかけた。
「マコト。これ以上は」
「……」
マコトはようやく落ち着きを取り戻し、ポケットからほむらと2人分の料金を支払うように千円札をテーブルに置いてから、タケル達に背を向けてこう言った。
「お前は甘すぎる」
タケルはどこか呆然とした表情でマコトの背中を見た。
「他人の為に自分の事を考えない奴とは、手を組むつもりはない」
それだけ告げると、ほむらとマコトは店を出た。
静まり返った店内も、しばらくすると再び会話の嵐が辺りを包んだ。
「た、タケル君……」
まどかが涙目で心配そうにタケルの顔色を伺うと、タケルは少し乾いた笑いをしながら、まどかの方を向いた。
「だ、大丈夫だ。うん、全然平気……」
そう呟くタケルの口調はどことなくぎこちなかった。店員に謝った一同は、店を出てしばらく商店街を歩いていた。が、タケルの足取りは重かった。よほどマコトに言われた一言が効いているのだろう。
「(誰かの為にやってる事が、逆に誰かの不幸を招く……。それじゃあ今までの俺は、誰かを知らず知らずのうちに苦しめてきたって事なのか……? じゃあ俺は、何の為に……)」
タケルがそう思いながら歩いている姿を、まどか達は不安な表情を隠せずにいた。
その後ろを歩いていた御成は、どこか悔しそうに拳を固めていた……。
「(拙者は、なんと無力な事か……! タケル殿が悩んでおられるのに、何も力添えが出来ぬとは、一生の不覚……!)」
一方、先に店を出たほむらとマコトも、まどか達とは正反対の道を歩いていた。
「マコト。あなたの気持ちは分かるけど、さっきのはいくら何でもやり過ぎよ。あんな大勢の前で感情的になるのは……」
「分かってるさ……!」
ほむらが注意するも、マコトはそれを遮って呟いた。そして立ち止まって空を見上げた。
「……分かっては、いるんだ……」
その表情は先ほどと違って、悲しげな表情だった。
そうなる理由は、彼の過去にあった。
彼の脳裏には、
『……ま、マコト……』
『……!』
『俺はさ……、お前に、……生きて、……ほしい、ん、だ……』
抱き抱えた体が冷たくなっていくのを感じながら、マコトが見たその少年の顔は薄く笑っていた。
その時の光景を思い出しながら、マコトはタケルがいた喫茶店の方を振り返った。
「(タケル、気付くんだ……! お前自身が答えを変えない限り、お前は、また……!)」
タケルの考えに反発するマコト。果たして、タケルは立ち直る事が出来るのか?
そして次回は新たなオリジナルライダーが登場!
次回もお楽しみに。