魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

今回は時間軸を調整する為に、本編とは違う日にちでいきます。


23. お前は甘すぎる

「……で、話って何だ?」

 

とある喫茶店で注文したコーヒーに砂糖を入れてかき混ぜていたマコトがようやく口を開いた。隣にはほむらが座っており、その対面にはまどか達がいた。

それは、上条のお見舞いに行った次の日の午後。まどか達は学校で仕事をしていた和子先生から、電話越しにほむらとマコトの連絡先を聞いて、2人に駅前の喫茶店で待ち合わせてもらっていたのだ。

ちなみにこの場にはほむら、マコトの他にまどか、タケル、御成、星斗、マミ、隼人の6人がいて、さやか、誠司、晶、仁美は用事で来れなかった。

 

「えっと、あの……」

 

まどかは緊張でオドオドしていたが、やがて勇気を出して2人に話しかけた。

 

「あのね、さやかちゃんの事なんだけど……」

 

その言葉を聞いて、2人の表情に変化が見られた。眉をひそめ、目つきがさらに冷たくなっている。まどかは2人の表情を気にしながらも、伝えたい事をしっかりと話した。

 

「あ、あの子はね、思い込みが激しくて意地っ張りで、結構すぐに人と喧嘩しちゃったり……。でもね、すっごく良い子なの。優しくて、勇気があって、誰かの為にって思ったら頑張りすぎちゃって……」

 

どうにかして2人とさやかの関係を良くしようと、一生懸命考えて出た言葉なのだろう。が、そんな様子を無視するかのように、2人は冷徹に答えた。

 

「魔法少女としては、致命的ね……」

「そう、なのか……?」

「それはあなた達が一番良く知ってるはずだ」

 

そう呟いたマコトの視線の先にはマミと隼人がいた。2人は何も言わなかったが、その表情は険しかった。ほむらが会話を続けた。

 

「度を超した優しさは甘さに繋がるし、蛮勇は油断になる。そしてどんな献身にも見返りなんて存在しない……。それを弁えていなければ、魔法少女なんて務まらないわ。だからあの時も、巴 マミは命を落としかけて、結果的に八谷 隼人は大怪我をした」

「そんな言い方止めてよ!」

 

珍しくまどかは感情的になり、叫んで立ち上がろうとしたが、マミと隼人に制止された。周りの客達からの怪訝そうな視線も感じた。少ししてからようやく落ち着きを取り戻したまどかは、声のトーンを落として呟いた。

 

「さやかちゃん、自分では平気だって言ってるけど……。でも、もしあの時みたいに誰かが怪我する事になったらって思うと……、私、どうしたら良いのか……」

「よほど美樹 さやかの事が心配なんだな」

 

コーヒーを一口飲んだマコトにそう言われて、まどかは小さく頷いた。

 

「私じゃもう、さやかちゃんの力になってあげられないから……。だから、ほむらちゃんとマコト君にお願いしたいの。さやかちゃんだけじゃなくて、タケル君やマミさん、他のみんなとも仲良くしてほしいの……」

「俺からも頼む。一緒に戦ってほしいんだ。あの時だって、お互い協力出来たから、心が通じ合ったから、あの魔女を倒せたんだ」

 

まどか、タケルに続き、他の4人も頭を下げた。

 

「拙者からも、お頼み申し上げますぞ!」

「この街を守る為にも、一緒に協力していきたいんだ、俺達は」

「私からもお願いするわ。今までの事はちゃんと謝るから……」

「俺も今はまだ満足に参加出来ない。だからこそ、2人の力が必要なんだ。頼む」

 

6人の必死に懇願する様子を、ほむらとマコトはジッとコーヒーを飲みながら眺めていた。

2人は一度、互いに顔を見合わせてから、確認しあって、その答えを呟いた。

 

「私達は嘘はつきたくないし、出来もしない約束もしたくない」

「な……」

「だから、美樹 さやかの事は、もう諦めた方が良い」

 

その残酷な答えに、まどかは涙が溢れそうなほど、悲しい気持ちになった。

 

「どうして、なの……?」

 

震える声で、2人にそう尋ねた。先に口を開いたのはマコトだった。

 

「あいつは、契約すべきではなかった。これは俺達のミスでもある。まどか、お前だけじゃなくて、本当はあいつもちゃんと監視しておくべきだった」

「でも、私達はその責任を認めた上で言わせてもらうわ。今となっては、どうやっても償いきれないミスなの。死んでしまった人が帰ってこれないのと同じ事よ」

「でも、だったら……」

 

ほむらの言葉を聞いて、星斗も反論しようとするが、それよりも先に、マコトが割り込んできた。

 

「一度魔法少女や仮面ライダーになってしまったら、もう救われる望みなんて、無いに等しい。……あの契約は、たった一つの希望と引き換えに、全てを諦め、絶望を撒き散らす事になる。……実際、ここにいる大半はそれを受け入れた上で契約したはずだ」

 

マコトの言葉を聞いて、マミと隼人、星斗は悲しげな表情になって、小さく頷いた。もっとも、半ば強制的に仮面ライダーになったタケルは、素直に頷けはしなかったが……。

 

「……だから、ほむらちゃんもマコト君も、諦めちゃってるの?自分の事も、他の子の事も、全部……?」

「えぇ、そうよ」

 

まどかの質問に、ほむらは当たり前の事のように頷いた。

 

「罪滅ぼしなんて言い訳はしないわ。私達はどんな罪を背負おうとも、私達なりの戦いを続けなきゃならない」

 

その強い覚悟と信念を持った一言に、さすがのマミや隼人も言い返せなかった。御成も、何も言えずに悔しそうにしている。

 

「……時間を無駄にさせたわね。ごめんなさい」

 

ほむらがそう言うと、マコトと共に席を立ち、その場を立ち去ろうとした。と、その時だった。

 

「……なぁ、ちょっと待てよ」

 

ここで声をかけたのは、それまでほとんど喋ってなかったタケルだった。一同の注目が集まる中、タケルは不思議そうにほむらとマコトの2人を見た。

 

「さっきから救われないとか言ってるけどさ、そんなの、やってみなきゃ分かんねぇもんじゃ無いのか?」

「分かるわ。だから、もう美樹 さやかは救われない。もう誰にも彼女の運命は変えられない」

「だったら……!」

 

そこでタケルは立ち上がり、2人の前に詰め寄った。

 

「だったらそんなもの、俺が変えてやる。俺は絶対にさやかを見捨てないし、あいつがピンチになったら、俺が助ける。そう約束したからな」

 

その言葉を聞いて、表情が一番変化したのはマコトだった。まるで呆れと怒りを混ぜ合わせたような表情だ。

 

「……そうやって、またお前は他人の為に……!」

 

ギリッと奥歯を噛み締めるような音を鳴らして、マコトはタケルを睨みつけた。

 

「! マコト……!」

 

嫌な予感を察したほむらがマコトに話しかけるが、それよりも早く、マコトは行動に移していた。タケルに自ら近づくと、その勢いのまま、タケルの胸ぐらを掴んで、恐ろしい形相でタケルを強く睨み、顔を寄せた。

 

「!」

「! タケル君……!」

「タケル殿……!」

 

まどかと御成が制止しようとする前に、マコトの怒号が店内に響き渡った。

 

「……その傲慢な想い込みが、一体どれだけの人を死なせてきたと思ってるんだ!」

「傲、慢……⁉︎」

 

わけも分からずタケルがそう呟くと、マコトはなおも会話を続けた。

 

「お前のそのエゴが、周りの奴らを苦しめているとなぜ気づかない! お前のような考えを持つ奴の周りでは、最後にそいつも含めてみんな絶望して死んでいった! 俺やほむらはそんな光景を何度も見てきた! だから、俺はお前のその、他人の為に命をかけようとする考えが気に入らないんだ!」

 

マコトはそう叫ぶと、タケルを先ほどまで座っていたテーブル席のところに押し付けた。勢いよくテーブルに押し倒された影響で、テーブルにあった飲みかけのジュースやコーヒーはほとんどこぼれ落ちた。

大きな音が響き渡り、店内にいた全員がマコト達に目がいった。店員も注意しようとして近づいたが、マコトに鋭く睨まれ、萎縮してしまっている。まどか達が呆然とする中、ほむらがマコトに話しかけた。

 

「マコト。これ以上は」

「……」

 

マコトはようやく落ち着きを取り戻し、ポケットからほむらと2人分の料金を支払うように千円札をテーブルに置いてから、タケル達に背を向けてこう言った。

 

「お前は甘すぎる」

 

タケルはどこか呆然とした表情でマコトの背中を見た。

 

「他人の為に自分の事を考えない奴とは、手を組むつもりはない」

 

それだけ告げると、ほむらとマコトは店を出た。

静まり返った店内も、しばらくすると再び会話の嵐が辺りを包んだ。

 

「た、タケル君……」

 

まどかが涙目で心配そうにタケルの顔色を伺うと、タケルは少し乾いた笑いをしながら、まどかの方を向いた。

 

「だ、大丈夫だ。うん、全然平気……」

 

そう呟くタケルの口調はどことなくぎこちなかった。店員に謝った一同は、店を出てしばらく商店街を歩いていた。が、タケルの足取りは重かった。よほどマコトに言われた一言が効いているのだろう。

 

「(誰かの為にやってる事が、逆に誰かの不幸を招く……。それじゃあ今までの俺は、誰かを知らず知らずのうちに苦しめてきたって事なのか……? じゃあ俺は、何の為に……)」

 

タケルがそう思いながら歩いている姿を、まどか達は不安な表情を隠せずにいた。

その後ろを歩いていた御成は、どこか悔しそうに拳を固めていた……。

 

「(拙者は、なんと無力な事か……! タケル殿が悩んでおられるのに、何も力添えが出来ぬとは、一生の不覚……!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、先に店を出たほむらとマコトも、まどか達とは正反対の道を歩いていた。

 

「マコト。あなたの気持ちは分かるけど、さっきのはいくら何でもやり過ぎよ。あんな大勢の前で感情的になるのは……」

「分かってるさ……!」

 

ほむらが注意するも、マコトはそれを遮って呟いた。そして立ち止まって空を見上げた。

 

「……分かっては、いるんだ……」

 

その表情は先ほどと違って、悲しげな表情だった。

そうなる理由は、彼の過去にあった。

彼の脳裏には、ある男(・・・)の死に顔が何度もフラッシュバックのように焼き付いていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ま、マコト……』

 

『……!』

 

『俺はさ……、お前に、……生きて、……ほしい、ん、だ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抱き抱えた体が冷たくなっていくのを感じながら、マコトが見たその少年の顔は薄く笑っていた。

その時の光景を思い出しながら、マコトはタケルがいた喫茶店の方を振り返った。

 

「(タケル、気付くんだ……! お前自身が答えを変えない限り、お前は、また……!)」

 

 

 

 

 

 

 

 




タケルの考えに反発するマコト。果たして、タケルは立ち直る事が出来るのか?

そして次回は新たなオリジナルライダーが登場!

次回もお楽しみに。
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