魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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今回は、本作ならではの展開になります!


26. 守りたいものがあるんです

鳥カゴの魔女に捕まってしまい、どうする事も出来ぬまま、その場に座り込む仁美。その様子を見ていたキュゥべえは咄嗟にテレパシーを使って、まどか達に連絡した。

 

『まどか! タケル! みんな!』

『キュゥべえ……?』

『どうかしたのか?』

 

まどかとタケルの返事が返ってきたのを確認したキュゥべえはすぐさま要件を伝えた。

 

『志筑 仁美が魔女の結界に閉じ込められてしまったんだ! 今は魔女が作り出した鳥カゴに閉じ込められている!』

『えっ⁉︎ 仁美が⁉︎』

『ひ、仁美ちゃん! 大丈夫なの⁉︎』

『あ、は、はい……!』

 

さやかと晶の声に、仁美はビクッとしながら反応した。

 

『今は僕と一緒にいるけど、このままだとずっと出られない事になる。僕の反応を辿って、すぐに来てくれ!』

『分かったわ! すぐに向かうわ!』

『仁美! もう少しだけ耐えてくれよ……!』

『……はい』

 

仁美は若干不安そうな声を出した。

やがてテレパシーが途切れて、辺りを暗黒が包んだ。時折周りからは不気味な鳴き声が響いてくる。鳥カゴの魔女そのものはカゴの中の仁美やキュゥべえをどうこうするつもりは無いのか、襲う事なく辺りを旋回している。

 

「とりあえず、応援は呼ぶ事は出来た。後は彼らがここに来るのを待てば良いんだけど……」

「けど……?」

 

キュゥべえの言い方に違和感を感じた仁美はキュゥべえの方を見た。

 

「正直、この魔女の動きは予想できない。おそらく君を今すぐ狙わないのは、自ら身悶え、苦しみ絶望する姿を眺める為だろうね。こうして鳥カゴに囚われている以上、何も出来ないからね」

「そ、そんな……」

 

それを聞いて、仁美は愕然としていた。つまり、今の仁美はいいように躍らされているのだ。

 

「(……またですわ。また私は、皆さんの足を引っ張っている……。友達であった彼女達を、危険な目に……)」

 

助けに来てくれるのはもちろん嬉しい。だが、その為にタケル達は自分自身を危険に晒さなくてはならない。

自分のせいで誰かが傷つくかもしれない。そう思うと、仁美はますます自己嫌悪に陥っていた。いつも一緒にいてくれた友人達。習い事でなかなかどこかに出かける機会も周りの同学年らと比べると少なかったが、そんな中でも、断っても嫌な顔一つせずに、それを受け入れてくれた大親友。そして都合のあった日にはいつも仁美が気に入りそうな所に出かけ、楽しい思い出を作ろうとする仲間。

一人一人、その顔を思い出しながら、不意に先ほど織莉子から言われた事を思い出していた。

 

「(強く心に念じれば、想いはきっと届く……。でも、どうやって……? どうすれば、この想いを遂げられるの? どうすれば、まどかさん達を危険な目に遭わせずに済むので……)」

 

そこまで思考が回った時だった。

 

「一つだけ方法があるよ」

 

キュゥべえが、仁美の考えている事が分かっているかのように、提案をしてきた。

 

「確かにこのままでは君も、彼らも無事では済まないかもしれない。この状況を打破するには、それ相応の力が必要だ」

 

そこまで言われた時、仁美はハッとした。

そう、この盤面を崩せる方法。それは魔法の力だ。奇跡にも似た力によって、今この場にある絶望を退けられる。そして何より、この場にはそれを可能に出来る候補者がいる。

そもそもなぜ自分がこのような悩みを抱いているのか。理由は簡単だ。自身にも、まどかやタケル、親友や先輩達と同じ資質を持っているからだ。

そう思った時、仁美の中で、一つの決心がついた。

 

「……キュゥべえさん」

 

キュゥべえはその赤い瞳を仁美の目と合わせた。その瞳には、彼女の真剣そうな眼差しが映っていた。

 

「守りたいものがあるんです」

 

そう言ってから、仁美は一度目を閉じた。彼女の脳裏には、まどか達の笑顔が浮かんでいた。

 

「確かに私は一度、彼女達から遠ざかりました。……ズルいのは分かってます。自分勝手に手放したもの。それを向こうが簡単に許してくれるとは思っていません。……だから、もう一度作りたいんです」

 

そして目を開けると、その願いを口にした。

 

「まどかさん達との繋がりを、もう一度確かなものにしていきたい! そして、さやかさん達に守られるだけじゃ無く、今度は私が守る番なんです……!」

 

キュゥべえは仁美のありったけの想いを黙って聞いていた。

 

「お願いです……! 私にそれを叶える力を……!」

 

仁美は必死に懇願した。彼女の決意を聞き入れたキュゥべえは、静かに頷いた。

 

「君の願いは確かに聞いたよ。それじゃあ、その願いを込める事で僕と契約して、魔法少女になるという事で良いんだね?」

「……はい!」

 

仁美が強く頷くと、キュゥべえは座り直して、仁美をジッと見つめた。すると、仁美の体が光り出し、仁美は苦しげに胸を押さえた。

 

「う、うぅ……!」

 

仁美は苦しみながらも、守りたい人達の表情を思い浮かべて苦痛を和らげた。やがて光は仁美の胸に集中し、光の球は仁美の胸から放出され、卵のような形をしたものとなって仁美の前に浮かんだ。苦しみから解放され前に手をついていた仁美は、光り輝くそれを不思議そうに見つめ、優しく包み込むように手に取った。

 

「君の願いは力となって叶えられた。さぁ、その力を解放してみると良い」

 

キュゥべえの言葉を聞きながら仁美は両手を胸の所に持って行った。すると、光が彼女を包み、彼女とキュゥべえを覆っていた鳥カゴは内側から砕かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ! やぁっ!」

「ふん!」

 

一方その頃、タケル達は迫り来る上半身裸の鳥人のような使い魔に苦戦を強いられていた。結界内に入る事は出来たものの、そこからが問題だった。迷路のような結界に迷ってしまい、上空から大量に現れた使い魔が行く手を阻み、先に進む事が出来ない。

 

「あぁ、もう! どんだけ出てくるのよ!」

 

さやかが愚痴りながらも使い魔を斬り倒していくが、一向に数が減らない。タケルもガンガンセイバーで応戦しているが、状況は変わらない。マミもマスケット銃を駆使して空を飛んでいる使い魔を撃ち抜いているが、新しい銃に持ち替える度に使い魔は増えてきている。

 

「このままじゃ、魔力が切れるのも時間の問題ね……」

 

マミは急降下してくる使い魔の攻撃をかわしながら今後の展開を考えている。そこから少し離れた位置に、まどかや隼人、誠司、晶が固唾を飲んで彼らを見守っている。本来まどかはともかく後の3人が来る必要は無かったが、緊急事態という事もあって、この場に駆けつけたのだ。

 

「くそ……。仁美は見つからなし、俺達だけでも探しに行けたら……」

「ダメだ。まともな戦力を持っていない俺達が動いても、状況は悪くなるだけだ。ここはマミ達がどうにかしてくれるのを待つしか無い」

 

隼人の言葉に、誠司は黙るしかなかった。

 

『カイガン! エジソン! エレキ! ヒラメキ! 発明王!』

「これならどうだ!」

 

エジソン魂になったタケルはガンモードに変えて使い魔を薙ぎ払った。

ある程度数が減ってきたところで、上空から鳥カゴの魔女が降りてきた。鳥カゴの魔女はケタケタ鳴きわめきながら、扉を開けて使い魔を大量に出現させた。

 

「ま、また増えましたぞ⁉︎」

「あいつを倒さねえ限り、使い魔は増え続けるって事か……」

 

御成と星斗がその数の多さに呻きながら呟いた。

 

「こんな所で足止めくらってる場合じゃねぇんだ……! 早く仁美の所に行かねぇと……!」

 

タケルがそう叫びながら再び武器を構えた時、別方向から爆音が鳴り響いた。

 

「な、何だ?」

 

星斗が困惑していると、いくつもの鳥カゴが落ちてきた。

 

「! 奥に誰かいるわ……!」

 

マミが視線を上に向けると、いくつもぶら下がっている鳥カゴの一つの上に、誰かが立っているのが見えた。その人物は鳥カゴの上を足場にしながら転々と移動している。やがてその人物は目の前にいた使い魔を一瞬で、手に持っていたもので殴りつけて消滅させた。

明かりのある部分に照らされてその素顔が見えた時、まどか達は衝撃を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ、仁美、ちゃん……⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まどかがそう呟くように、そこには確かに囚われていたはずの仁美がいた。だか、その姿は見滝原の制服姿では無かった。

赤いハイヒールを履き、長い白色のロングスカートが下半身を覆い、上半身は同じく白いヒラヒラの衣装に、胸の所を鉄の鎧で守られている。両手の部分には、手首から肘にかけてこれまた鉄の装甲がつけられている。その手には、フルートのような長さのバトンが握られている。彼女の長い髪は大きなベージュ色のリボンで結ばれており、彼女の凛々しい顔が目立った。

その姿は、まさに魔法少女。肝心のソウルジェムはベージュ色で、左胸の辺りについている。

誰もが驚く中、仁美は迫り来る使い魔に臆する事なくバトンを振り回し、使い魔を薙ぎ払った。

 

「な、何で仁美が……⁉︎」

 

さやかが、目の前の光景が信じられないように呟いていると、彼女の足元にキュゥべえがやって来た。

 

「見ての通り、彼女は契約したのさ。魔法少女としての運命を受け入れ、その叶えたい願いを糧に、魔法少女となって戦う道を選んだんだ」

「! そんな……! どうして、仁美ちゃんが魔法少女になろうなんて……⁉︎」

 

まどかの疑問に、キュゥべえはのんびりと答えた。

 

「彼女には君達と別れた辺りですでに願いがあった。けど、彼女自身に蠢いていた恐怖がそれを拒んだ。その矢先に今回の事があった。そして彼女は決意した。君達との関係を取り戻す為に、同じ土俵に立つ事で、修復しようと考えたんだろうね。僕は彼女の意思を尊重したまでさ。実際、彼女は最後まで思い悩んでいたからね」

「仁美……。そんなに思い詰めていたのか……」

 

隼人が小さくそう呟いたのを聞いた者はいない。ただ、目の前で戦っている姿に注目するしかなかった。

 

「はぁっ!」

 

仁美はハイヒールを履いているにもかかわらず、軽くステップを踏んでヒラリと攻撃をかわしながら反撃していた。

 

「(体が、軽いですわ……)」

 

戦いの最中、仁美はふとそう思った。

 

「(これが、魔法少女の、力……)」

 

使い魔を一掃した仁美は、鳥カゴの魔女と対峙して、フルートを吹くような構えをして、目を閉じながら静かに口をつけて吹き始めた。フルートから流れる音色は、まどか達を不思議と安心させる一方で、鳥カゴの魔女にとっては雑音にしか聞こえないのか、悶え始めている。敵の気が緩んだ所で、仁美は意識をバトンに集中させて構え直し、飛び上がった。

 

「フィナーレですわ!」

 

仁美の手に握られたバトンは光り輝き、

 

「やぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

と叫びながら、鳥カゴの魔女を斜めに斬り裂いた。

鳥カゴの魔女はそのまま爆散し、爆炎の中からグリーフシードがゆっくりと落ちてきた。仁美はそれを難なくキャッチして、地面に降り立った。

 

「! 仁美ちゃん!」

 

戦いが終わり、ようやく我に返った一同は仁美に駆け寄った。仁美もやって来るまどか達に向き直った。

 

「まどかさん、みんな……」

「仁美、お前……」

 

タケルは仁美の魔法少女姿に戸惑いを隠せない。

 

「どうして契約したのよ⁉︎ 仁美、あんたが契約する必要なんて、どこにも無かったのに……! あたし達が間に合わなかったから⁉︎ だから、こんな事に……⁉︎」

 

さやかが思わず詰め寄り、仁美の両肩をガッチリ掴んだ。その表情からは後悔という念がこもっている。

 

「そ、それは……」

 

突然のさやかの行動に、仁美は当初困惑していたが、すぐに僅かながら笑みを浮かべて、こう言った。

 

「さやかさん、あなたと同じですわ」

「……は?」

「私にも、叶えたい願いが見つかった。ただ、それを口にする事が少しばかり遅かった。それだけですの」

 

仁美がさやかの肩に優しく手を置くと、魔女の結界が崩れていき、元の路地裏の風景に戻った。

一同は変身を解き、仁美はさやかから離れると、落ちていたグリーフシードを手に取り、さやかに差し出した。

 

「さやかさん。魔力を相当消費しているでしょうから、これをお使いください。タケル君達も」

「う、うん……」

 

さやかは戸惑いながらも、自身のソウルジェムから穢れを取り除く。仁美を含む全員の回復が終わった所で、仁美は改めてまどか達に向き直った。

 

「……本当は、こんな事を言う資格は無いかもしれません。ですが、これだけはどうしても伝えなければならないんです」

「えっ?」

「どういう事だ?」

 

皆が首を傾げる中、仁美は恥ずかしそうに想いを告げた。

 

「わ、私はあの時、もう友達としていられないと言いましたわよね? ……でも、やっぱり、私はみんなと一緒にいる時間がとても楽しくて、大切な事を気付かされて……。だから、身勝手かもしれませんが、私と、もう一度友達になってください! お願いします……!」

 

そう言って仁美は深々と頭を下げた。一同はその挙動にポカンとしていたが、先に仁美に寄ったのはまどかだった。まどかは仁美を優しく抱きしめながら呟いた。

 

「仁美ちゃん。そんな事言わなくても、私達、ずっと友達じゃない。仁美ちゃんが私達を嫌っても、私やタケル君、みんなは絶対に仁美ちゃんを見捨てたりなんてしない。私達だって、仁美ちゃんに何度も助けられた事があるし、仁美ちゃんがいてくれたから気づけた事もあるんだもん。ねっ? みんな」

 

まどかが振り返ると、タケル達も大きく頷いた。

 

「そうだぜ、仁美。あれくらいでお前を嫌うわけ無いだろ?」

「やれやれ。思い込みが激しいのも、仁美の悪い所だけど、それももう慣れたし」

「志筑さん。何も心配しなくても良いのよ。私だってあなたと友達になれて、本当に良かったと思ってるから」

 

皆の温かい言葉を受けて、仁美は自然と嬉しさのあまり涙がこぼれた。

 

「あり、がとう、ございます……! 皆さんがそう言っていただけるだけでも、私は本当に幸せですわ……!」

「にしても、そんな事で魔法少女になっちゃうなんてね。なんだったらもっと別の願いでも良かったんじゃないの? ラブレターばっか貰ってるからそろそろ彼氏を1人に絞りたいとかさ」

「そ、そんな事ありませんわ! 今はそんな事にうつつをぬかしてる場合ではありませんもの……!」

 

さやかの発言に仁美は少し頬を膨らませて呟き、その場は笑いに包まれた。

 

「さてと、そんじゃあ帰るか。そろそろ家の人も心配するんじゃないか?」

 

星斗がそう呟くと、仁美も携帯の時計を確認して頷き、道に落ちていた自分のカバンと、織莉子から貰ったシランの花を持った。

 

「そうですわね。こんなに遅くまでいたら、迷惑をかけちゃいますし」

「じゃあ行こっか。それで、仁美は明日からまた屋上に来てくれる?」

「もちろんですわ。これからも、よろしくお願いいたしますわ」

「また随分と堅苦しい言い方を……」

 

一同は苦笑するも、すぐに笑顔になり、雑談しながら帰路につこうとしていた。そんな中、仁美は右手に握られたシランの花を見つめながら、

 

「(ありがとうございますわ、織莉子さん。あなたの言う通り、こんなにもすぐに、私は友達の所に戻ってこれましたわ)」

 

心の中でそう感謝しながら、まどか達と並んで歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……背後に建っている廃ビルの屋上から、ほむらが睨みつけているとも知らずに。

 

「(志筑 仁美……。あなたはどこまで愚かなの……)」

 

ほむらの忌々しそうな目線の先には仁美の姿が。

 

「(たった一度きりのその願いが、どれだけ多くの絶望を撒き散らしていくのか、心の脆いあなたには到底理解出来ないでしょうね……)」

 

ほむらは踵を返しながらその場を消えるように去った。

この時、ほむらは気づかなかった。彼女が消える様子を、白いドレスのような魔法少女の服に身を包んだ、美国 織莉子がニヤリと笑いながら見ていたのを。

 

「(うふふ……。やはりあなたは、あの時あの場所にいた(・・・・・・・)者達の1人だったのね。さぞ悔しいでしょうね。でも、全ては彼女を排除する為の計画なの。悪く思わないでね……)」

 

 

 

 

 




というわけで、今回は仁美の魔法少女としての参戦回でした。このクロスオーバー小説を執筆するにあたり、やれるだけやりちぎっちゃおうと思い当たってみた結果がこれです。ある程度仁美の魔法少女姿については地の文で説明しましたが、後は皆さんのご想像にお任せします。今後は彼女も大活躍しますのでお楽しみに。

ここからしばらくは、まどマギ編のルートから外れて、スピンオフ作品系のルートに入ります。一応次は杏子とゆまの方にスポットを当てていきますので、次回もお楽しみに。
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