魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
いよいよゴーストの方では新しい力が出てきますね。楽しみです。
日が沈み、暗闇が辺りを支配する頃、とある街の一角にある公園に2人の少女がいた。
1人は風見野に拠点を構える魔法少女、佐倉 杏子。その後ろをついてくるように杏子にしがみついているのは、杏子よりも遥かに幼い少女、千歳 ゆま。
現在、彼女達は魔女退治の為、魔女の結界の反応を辿って隣町にあるこの場所にやってきたのだ。とはいえゆまは魔法少女ではない為、単に見学という形で来ている。
2人がしばらく歩いていると、魔女の結界が現れて、2人を包み込んだ。杏子と一緒について行って何度か目撃した事のあるゆまも、怯えて全身を震わせている。目の前には早速、頭巾を被った小柄な人型の魔女が2人を待ち受けるように佇んでいた。
〜玩具の魔女、ローザシャーン〜
〜彼女に遊び相手と認識されたら最後、彼女が飽きるまで苦痛なほど付き合わされる事になるだろう〜
「ゆま、危ないから下がってな」
「うん、気をつけてね」
杏子は安心させるようにゆまに告げると、玩具の魔女に素早く接近した。ゆまも慌てて物陰に隠れる。玩具の魔女は手を突き出すと、地面から大量の大きな口のカエルのような使い魔を出現させて、杏子を襲わせた。
「そぉらよっと!」
だが、ベテランの杏子にとって、使い魔の多さはそれほど脅威には成り得なかった。素早く身を翻し、槍で斬り裂いていき、確実に使い魔の数を減らしていった。
危険だと感じた玩具の魔女は、杏子が使い魔に気を取られている隙に逃げ出そうとしたのだろう。杏子から遠ざかるように、横を通って逃亡しようとした。が、逃げの一手に走ったところを杏子が見逃すわけが無かった。
「逃がすかよ、バカ!」
そう言って杏子は飛び上がると、上空から槍を振り下ろして、玩具の魔女を文字通り一刀両断した。
その、見る者を圧倒する光景に、ゆまはいつも憧れを抱いていた。
「(凄い……。私もあんな風になれたら……)」
ゆまは杏子に夢中になっていた。
だからこそ、ギリギリまで気づかなかったのかもしれない。
「……! しまっ……!」
杏子がハッと振り返ると、両断されたはずの玩具の魔女の上半身だけがゆまに接近し、クレーンゲームのクレーンのような鋭いハサミを使って、ゆまを斬り裂こうとしていた。
「え?」
突然の事に呆気にとられるゆま。と、そこに。
「危ねえ!」
玩具の魔女に槍が突き刺さり、魔女は吹き飛ばされて粉々に砕け散った。ギリギリの所で杏子が槍を投げたのだ。ゆまの近くで破裂した事で、赤黒い血のような液体がゆまの頭に降り注いだ。が、本人は目の前の事に呆然としており、状況が把握出来ていないようだ。
「ゆま、大丈夫か?」
「う、うん……」
杏子が駆けつけて、ゆまの無事を確認した。幸い、魔女の血がこびりついているだけで、本人には外傷は無さそうだ。
とりあえず血を拭う為にゆまの頭をゴシゴシこすっていた時に、杏子は初めて気づいた。
髪の毛に隠れていたおでこの部分には、痛々しそうないくつもの丸い痕が残っている事に。
「(こいつは、魔女にやられた怪我じゃないな。火傷……、いや、タバコの跡……か?)」
しかし、先ほどの魔女はもちろん、ゆまと共に行動するようになってから今まで、火を使うような魔女とは出くわした事は無い。では、誰がこの痕をつけたのか?
しばらく考える内に、一つの可能性に行きついた。
「……親、か?」
杏子がそう尋ねて、ようやくゆまも杏子がおでこについた痕の事を言っている事に気づいたらしい。少し俯いた後、カタカタと怯えるように震えていた。どうやら魔女と対峙した時とは別の、よほど怖い思いをしていたのだろう。
「話したくなけりゃ聞かないけどな」
杏子はゆまに、無理しないように告げた。
しばらくして、ゆまは口を開いた。そして、心中を吐露した。
「……私、ほんとはパパもママも好きじゃ無かった。パパとママは喧嘩ばっかり。パパは家に全然いないし、ママはゆまにいじわるするの……。パパが帰ってこないって、パパがお外に遊びに行っちゃうのは、ゆまが可愛くないせいだって、凄くいじわるするの……」
ゆまが淡々と語る姿を、杏子は黙って聞いていた。
どうやら、両親からの虐待によってタバコの跡がつけられたらしい。子供の虐待によくある典型的な例だ。
「世知辛いねぇ……」
杏子はそう評価した。そして、脳裏にある光景を思い浮かべながら、ゆまに言った。
「……でもまぁ、親に裏切られる気持ちなら、分からなくもねぇな」
「⁉︎」
「……あたしも、似たようなもんさ」
杏子がどこか上の空な感じで呟いているのを、ゆまが顔を上げて見ていると、魔女の結界が崩れていき、元の公園の風景に戻った。
「……行くか」
杏子がそう言って、歩き出そうとした時、ゆまが俯いて、スカートを握りしめて、思わず叫んだ。
「……わ、わ、私は、強く、なりたい!」
強くなりたい。それは、何度も杏子の戦いを見て、そして過去の自分を振り返って思った一言だった。そして、杏子に詰め寄って尋ねた。
「ねぇ! キョーコは何で魔女と戦ってるの⁉︎」
「何でって……。それしかやる事が無いからってしか言えねぇな……」
杏子が曖昧そうに答えたが、ゆまはそれだけで納得がいかないようだ。
「キョーコが強いのは、魔法少女だから? ゆまが、弱いから……?」
出会った当初はそれほど考えてなかったのだが、ここ最近になってゆまは不安に思う事があった。
〜ゆまが虐められるのは、ゆま本人が弱いからなのでは?〜
〜杏子も、いつかはゆまを捨ててしまうのではないか?〜
そんな不安が、ゆまの心の中でくすぶっていた。
「ねぇ、キョーコ! 学校は⁉︎ 友達は⁉︎ 魔法少女や仮面ライダーって、他にもいるの⁉︎」
「ゴチャゴチャ言ってないで……!」
さすがに質問に返答するのも面倒になったのか、杏子が声を荒げていると、杏子には聞き慣れた声が聞こえてきた。
「いるよ。魔法少女や仮面ライダーは、この世界に多く存在する」
2人が声のした方を振り返ると、そこにはウサギのような耳の生えた白い猫のような生き物……キュゥべえが近寄ってきた。キュゥべえはゆまの方をジッと見つめながら呟いた。
「……なるほど、織莉子の言った通りだ。ゆま、君にも確かに魔法少女としての素質があるみたいだ」
キュゥべえを初めてみたゆまは、先ほどとは打って変わって顔をパァっと輝かせた。
「わぁ! ぬいぐるみがお話してる!」
「いやいや、僕はぬいぐるみじゃないよ。キュゥべえっていうんだ。よろしくね、ゆま」
キュゥべえの言葉が聞こえているのか定かではないが、ゆまはキュゥべえの事を可愛いと思ったのか、思いっきり抱きしめた。
「(こいつ、何でこんな所に……。それに、織莉子って……?)」
杏子がゆま達の様子を眺めながらそう思っていると、ゆまがキュゥべえに尋ねた。
「ねぇねぇ、さっきのお話だけど……」
「うん。さっきも言った通り、君も魔法少女になる事は出来る」
「ほんと⁉︎ 私もキョーコみたいになれるの⁉︎」
「本当だよ。魔法少女になれば、魔女をやっつける事も……」
「オイ」
すると、杏子が顔をしかめながらキュゥべえの耳を強く握りしめた。
「それ以上ガキに余計な事吹き込むんじゃねぇよ」
ドスをきかせたその言葉に、キュゥべえはやれやれといった表情で2人から距離を置いた。
「ふーん。杏子にしては珍しいじゃないか。そこまで感情的になるとはね」
「うっせぇ。つーか何でお前がここにいるんだよ」
「前に君が、見滝原でゆまの名前を口にした時から気になってたんだよ。織莉子からも話は聞いてたから、それで様子を見に行ったんだ。案の定、ゆまにも素質がある事が分かったから、僕としては嬉しい限りだ」
「……チッ」
どうやら余計な事を口にしてしまったようだ。杏子は舌打ちしながら、ゆまの前に立って、キュゥべえにもう一つ気になる事を尋ねた。
「それよりもよ。この街の魔法少女に仮面ライダーはどこ行っちまったんだ? こないだっから誰とも当たってねぇぞ?」
その質問に、キュゥべえは周りを見渡してから答えた。
「あぁ、どうやらみんなやられちゃったみたいだよ」
「やられた……って、魔女にか?」
魔女との戦いが命がけである事は杏子も充分承知していた。事実、魔女によって魔法少女や仮面ライダーが命を落とす事は珍しくもない。
だが、キュゥべえの口から語られた事実は、杏子の予想を上回るものだった。
「いや、やったのは別の魔法少女だ」
「……へぇ」
口ではそう言うものの、内心驚きを隠せなかった杏子はキュゥべえに尋ねた。
「……で、一体
「さぁね。それは僕にも分からない。まぁ、グリーフシードは限られてるわけだし、想定出来ない事では無いだろう? 今の君なら理解出来るはずだ」
「……フン」
キュゥべえの言葉が嫌味に聞こえたのか、杏子は鼻を鳴らした。
「とにかく、杏子もせいぜい気をつける事だ」
キュゥべえが杏子にそう忠告した後、ゆまの方を向いて言った。
「まぁ、いざとなったらそっちの……」
「!」
「オイ!」
「……はいはい」
キュゥべえが言いかけた所で杏子が一喝し、キュゥべえはその場を去った。
「相変わらず胡散臭い野郎だな……」
キュゥべえの後ろ姿を見ながら、杏子は不機嫌そうに呟いた。
しばらくして、杏子はゆまの頭に手を置いた。
「……ゆま、悪い事は言わねぇ」
「……? キョーコ?」
「魔法少女になろうなんて考えるな」
それは、ゆまに警告するような、重みのある一言だった。その表情は真剣そのものだった。
近くのコンビニに行き、ハンバーガーを万引きした2人は風見野に戻る為、街灯だけが灯る道を歩いていった。
そんな中、ゆまは杏子の隣を歩きながら考え事をしていた。それは先ほど言われた事だった。
「(……何で、だろう? キュゥべえは私も魔法少女になれるって、ゆったのに……。何で、キョーコはダメってゆうんだろう……? 私が、キョーコに何も出来ないから?)」
ゆまは、母親に虐待されたいた時の事を思い出しながら、不意にこう思った。
「(役立たず、だから?)」
その思考にたどり着いた時、彼女に「恐怖」の2文字が重くのしかかった。
「(……やっぱりキョーコも、ゆまの事、役立たずだって思ってるのかな……?)」
「……おい」
「……!」
「落としてるぞ」
杏子の声にハッとしたゆまは、杏子に指摘されて、持っていたハンバーガーの袋を落としていた事に気づいた。
「……あ、ご、ごめんね、キョーコ」
「食べ物を粗末にすんじゃねぇぞ」
ゆまは慌ててハンバーガーの袋を拾うと、並んで歩き出した。だが、ゆまの表情は暗いままだった。
そんな彼女達を見下ろす人影が2つ。
「……あぁ、深いわ。とても深い。人の思いはとても深い」
1人は白い魔法少女の服に身を包んだ、織莉子。
「……人の思いが神を創り、悪魔を創り、全てを創る、か」
『オヤスミー』
そう言いながら、紫色のパーカーを羽織って、3本角と剣も模様がある仮面をつけた、仮面ライダーは変身を解き、その姿を見せた。それは織莉子が契約した際に一緒にした少年、分島 リクオだった。
「全てか。それは素晴らしいね」
2人のそばには、キュゥべえが座っている。
「そうよ、あなたもそれを感謝するべきよ、キュゥべえ」
「お前の望んだものが創られるのだからな」
リクオは、ニヤリと笑いながら、杏子とゆまの後ろ姿をさもおかしそうに見つめた。
「……さぁ、革命の狼煙はもうすぐ上がるぞ」
この作品を読んでくださった方々に一言。
虐待はダメ、ゼッタイ。
というわけで今回はこの辺で。
次回からはいよいよ、もう一つのスピンオフ作品を題材にした物語が動き出します! ここからは新キャラも続々登場しますので、ますますタケル達の運命は加速します! どんなキャラクターが出てくるか、次回もお楽しみに!