魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
今回は前回の告知同様、かずマギ編を進めていきます。
次回予告で見たアランの不敵な笑みが気になります……。
謎の魔女との戦いから一夜明け、小鳥がさえずり始めた頃に、かずみは目を覚ました。
「……?」
かずみは目をこすりながら辺りを見回した。それからゆっくりと昨夜の事を思い返していた。
「私、昨日アラタと一緒に化け物と……」
かずみが気になって窓を開けて外から昨日の戦闘が行われていた地点を見つめた。が、
「……あれ?」
かずみが首を傾げながら見た先には、昨日の痕跡か一つも残っていなかったのだ。魔女に突き飛ばされて割れていたはずのガラスや壁も元通りになっており、地面も削れていない。
「夢……だったのかな? でも、これって……」
一瞬、昨日の事が夢のように思えたかずみだったが、耳につけていたイヤリングを取り外して見つめながら、自分が魔法を使っていた事、そしてアラタが仮面ライダーとなって目の前で変身した事を思い返していた。どう考えてもあれが夢だとは思えない。そう思ったかずみは、試しにドアの方を向いて叫んだ。
「開け〜、ごまあぶラー油!」
……しばらく沈黙が続いたがやがて扉が開いた。かずみが驚いていると、入ってきたのは、かずみの飼い猫と思しき黒い猫だった。
かずみは寄ってきた猫を抱き抱えると、お腹がぐぅ〜、と鳴った。考えてみれば夕べは何も食べずに寝てしまったので、もうお腹ペコペコなのだ。
かずみはキッチンに向かう為に部屋を出た。階段を降りたすぐのところに、2つの人影が見えた。それは、かずみの仲間であるアラタと士道だった。
「……あ、おはよう、アラタ、士道」
「おぅ、おはよう」
「おはようございます」
「カオルと龍は……?」
「カオルはクラブチームの朝練。んで龍は日課のランニング」
どうやら彼らも丁度今起きたところらしい。3人は朝の挨拶を早々に済ませて、共にリビングに向かった。
リビングに近づいたところで、何やら音が聞こえてきた。誰かが料理をしているようだ。気になったかずみ達はキッチンを覗くと、そこには海香が包丁で具材を切っている最中だった。
「おはよう、海香……」
かずみは挨拶したが、海香からの返事は無い。それを見て、アラタと士道の脳裏に嫌な予感がした。
それに気づいていないかずみはキッチンに充満している匂いを嗅いで気分が良くなっていた。
「うわ、いい匂い……。ねぇねぇ、何作ってるの……」
「……あ! 待てかずみ……!」
アラタがかずみを制止しようとしたがすでに遅かった。
「大人しく座って、黙ってお待ちなさい」
ドスの効いた声を出してかずみを黙らせた。
「「「はぃぃぃぃぃ!」」」
一瞬にして震え上がった3人は、言われた通りに椅子に座った。
しばらくすると外に出かけていたカオルと龍がリビングに入ってきた。
「たっだいま〜」
「……ん? どうしたんだ?」
龍が、3人の様子がおかしい事をいち早く察知した。かずみはガタガタと体を震わせながら2人に質問をした。
「か、カオル、龍。海香どうしちゃったの?」
「んぁ?」
「海香が……?」
2人が目線を海香に向けると、凄い勢いで包丁を振り下ろしている海香の姿が。しかもその頭には、角が生えているような幻影が見えた。
「……またか」
「みたいだな」
やっぱりといった表情を見るに、2人もアラタや士道同様、海香に起きた謎の現象の事を知っているようだ。かずみはアラタ達に質問した。
「ねぇ、あれって一体……」
「海香によくある事さ」
「執筆に行き詰まってるんだよ」
カオルと龍はそう答えながら椅子に座った。
「小説の?」
「あぁ、そうだ。海香は筆が進まないと、ストレス発散の為にあぁやって料理し始めるんだ」
「普段は全然料理はしない方なんですけどね……」
「わ、私達はどうすれば……?」
かずみが恐る恐る尋ねるが、カオルが首を横に振りながら呟いた。
「あぁなると、静かにセンセの角が消えるのを待つだけだね」
「……あ、カオルやみんなにも見えるんだ、あれ」
「うん、見える見える」
どうやらかずみにも海香の頭から角が生えているように見えるらしい。かずみ達がこそこそと談笑していた時だった。
「何が見えるのかしら?」
「「ひっ……⁉︎」」
いつの間にか、料理を完成させてテーブルに持ってきていた海香が冷めた目つきで5人を睨みつけていた。
「さぁ、出来ましたよ」
「「「「「い、いただきます!」」」」」
5人はますます震え上がり、涙目でそう叫んだ。
とはいえ、料理の腕は確かなもので、海香が作ったホットドッグやサラダ、ワッフルは、特に運動して腹を空かしていたカオルと龍には格別なものだった。
「お、美味しい……!」
「うん、うめぇな」
「朝練帰りにこの味、ボリューム。たまんないよね〜」
「ありがとう」
対称的に海香は黙々と料理を食していた。
「ホットドッグもサラダもワッフルもみんな絶品!」
かずみがたくさん頬張りながら食べていると、海香か口を開いた。
「ポットドック・サラスパ・ワックルよ」
「……?」
言葉の意味が分からず、かずみを含む一同が首を傾げていると、海香はブツブツと何かに取り憑かれたかのように呟いていた。
「……アイデアがポット出るドッグ……。サラスパッと小説が書ける……。名作の予感がワッ来る、ワックる、わっくる……!」
すると突然、大声で天井を仰ぎながら叫び始めた。
「ワッ来る神よ〜!」
「⁉︎」
驚いたかずみは思わず隣に座っていたアラタに抱きついた。
「そ、相当行き詰まってたみたいだな……」
「キテすぎじゃないかな……」
アラタ達も、今までに見た事がないほどに発狂している海香を見て冷や汗が止まらなかった。
やがて海香が何を思ったのか思わず立ち上がろうとした時に、かずみが思い出したかのようにアラタ達に尋ねた。
「あ、そうだ。夕べの事なんだけど……」
かずみが言葉を続けようとした時、カオルがかずみの足を踏んづけて会話を途切らせた。
「かずみ、とりあえず今は黙っとき」
「あぅいい……(さ、さすがはサッカー選手の脚力……)」
あまりの痛さにかずみは押し黙るしかなかった。
すると、海香が目を光らせたかと思うと、アラタ達を睨みつけて呟いた。
「……あなた達」
「「「「「す、すみません!」」」」」
さすがに怒らせてしまったと思ったアラタ達はとりあえず謝ったが、海香から出てきた言葉は次のようなものだった。
「10分で支度なさい!」
「「「「「……はい⁉︎」」」」」
そんなこんなで約1時間後。
「みんな、よろしくて?」
海香に連れられてやってきたのは、あすなろ市の一角にある商店街。そこにあるデパートにやってきたかずみは頭に?を浮かべ、それ以外の4人はやれやれといった表情を浮かべていた。
そして海香は周りの目線を気にする事なく叫んだ。
「さぁ、存分にお買いあれ!」
「「いや、何で俺達も⁉︎」」
そうシャウトしたのは、タケルと誠司のツッコミコンビ(?)だった。その傍らにはまどか達も困惑した表情で突っ立っていた。
なぜこの場にタケルら見滝原組がいるのか。理由は簡単。海香が昨晩の一件後、電話番号を互いに交換し、それを使って商店街に来るようにタケル達に連絡を入れたのだ。当初、何の事かさっぱり分かっていなかったまどか達だったが、電話越しに聞こえてくる海香の気迫に恐れ慄き、半ば強制的にアラタ達と合流する事になってしまったのだ。この日は仁美もさやかからの連絡を受けて、ついてきている。
「……なんか、ゴメンな。無理矢理付き合わせる事になっちまって」
「ま、まぁ、大丈夫よ。今日はまだ休日だから予定も無かったし……」
龍が謝るのを、マミは苦笑しながら彼をなだめた。
「……つーかどういう事? この状況」
「あぁ。あれは小説に詰まった時の行動、パート2。「買い物でストレス発散」ってやつだ」
「パート2……?」
「一体何があったのですか……?」
「ん、何でもない。こっちの話」
まどか達には何の事かさっぱり分からなかったが、あまり気にしないでおく事にした。
「と、とにかく何か買い物をすればいいだけですよ。海香の事ですから、何か一品ぐらいならおごってもらえるかもしれませんし……」
「え? いいの?」
「いいと思う。つーかそうしないと多分ずっとあんな調子だから」
「な、なるほど……」
龍が呆れながら先を進む海香を見つめていた。
「わ、私もいいの?」
かずみが恐る恐る尋ねると、アラタは首を縦に振った。
「もちろんだ。今までのかずみがそうだったようにな」
「う、うん……(今までのかずみ……か)」
かずみはアラタの言い方に戸惑いつつも、ショッピングを楽しむ事にした。
一同が最初に訪れたのは万年筆のコーナーだった。ここでいち早く買い物をしたのは海香だった。カードで支払っている間、晶は海香に質問した。
「万年筆という事は、海香先生は手書き何ですか?」
「いいえ。パソコンが無かったら、私、作家になってなかったでしょうね」
「じゃあどうして?」
「持ってるとカッコいいでしょ?」
かずみの質問に海香はあっさり答え、晶はなるほど、と頷いた。
次にやってきたのはスポーツ用品が置かれているコーナーだった。一同が適当に商品を見て回っている中、カオルと龍は動きやすい服を選んでいた。
「スパイクは買わないの? カオル」
かずみが尋ねると、カオルはユニフォームを一着取り出しながら答えた。
「ユニはファッション。でもスパイクは道具。履きなれたものを大事にする主義なんだ」
「へぇ……」
「よく考えられてんな」
「ちなみにユニは夏でも長袖ね!」
「それ、暑そうだな……」
タケルが、カオルの持っているユニフォームを見てそうツッコんだ。
ただ待っているだけでは退屈になってきたかずみはまどか、さやか、と共に色々と試着を始めた。
「かずみ、あんたまた似たような服選んでない?」
「だってしょーがないじゃん。私は私だもーん」
「あはは……。そうだね……」
かずみがふてくされていると、アラタが新しい服を持ってきた。
「なぁかずみ。これなんて似合うんじゃねぇか?」
そう言ってアラタが持ってきたのは大きなボタンが2つついたズボンだった。サイズは明らかにアラタ達よりも小さかった。
「……なんかそれ、園児って感じ」
「だから似合うと思うんだけどな」
「どういう意味それ⁉︎」
それから何やかんやで様々な場所を巡り、全員の買い物が済んだところでようやく海香の表情が豊かになった。
「はぁ、スッキリした♪」
「そら良かった」
「俺達にとってもな」
「やっと元に戻りましたね」
現在彼らは海香が奢ってくれたフランクフルトを片手に街中を歩いている。
と、ここで士道がふと思い出したように仁美の方に顔を向けた。
「そういえば、今まで聞きそびれていましたけど、どちら様ですか?」
「あら、私ったら自己紹介してませんでしたわね。私、志筑 仁美と申します。まどかさん達とは同じクラスメイトですの」
よくよく考えてみれば、まだ仁美は彼らとは初対面であり、名前を名乗る暇もなく買い物が始まった為、名前も知らない状態で行動していたのだ。
「僕は石田 士道と言います。士道で構いません」
「牧 カオルだ。よろしくな」
「木村 龍だ」
「篠崎 海香よ」
「高町 アラタだ。んでこっちが……」
「かずみっていうの。でも、自分の名前以外何も覚えてないんだけどね」
「記憶喪失……という事ですか?」
「う〜ん……。よく分かんないけど、多分そうなるのかな?」
一通り挨拶を済ませ、改めて自分達が持っている袋に目を通した。
「ですが、こんなに買い物して大丈夫何ですか? まだ私達と同じ中学生なのに……」
「それって、金銭感覚の事言ってる?」
「は、はい」
確かに、いくら売れっ子作家であり、印税が多少入ってくるとはいえ、ここまで大規模な買い物をして、生活が苦しくならないのだろうか。その疑問に対し、アラタ達は安心させるように口を開いた。
「その辺は心配しなくてもいいぜ。普段はさすがにここまでしないからな」
「……ていうか、海香って肉とか野菜は1円でも安いとこに行くからな」
「誰がケチですって⁉︎」
「誰も言ってねぇぞ?」
龍の説明に対し、海香が鋭い目つきで龍に詰め寄った。
「よくて? お金と命には賭けどころというものがあって……」
「さ、さすが売れっ子先生。仰る事が違う……」
カオルが海香を落ち着かせている中、かずみはふと思い出したように、みんなに尋ねてみた。
「あ、ところでさ」
「どうした、かずみ?」
「今朝言いそびれたんだけど、昨日の私って……」
かずみがそこまで呟いた時、かずみはどこからか異様な気配を感じた。それは昨日戦った魔女と似たような雰囲気だった。
そして同じようにまどか、タケル、アラタが何かの気配を察し、思わず眉をひそめた。
「何、この変な感じは……」
「⁉︎ これって……!」
「……なんか、すっごく嫌な感じ。昨日の刑事さんから感じたのと同じだ……」
「あぁ、そうだな……」
かずみ以外の3人が辺りを警戒していふと、かずみが何かに導かれるように、ある一点の方角へと走っていった。
「かずみ?」
「お、おい、待て!」
「かずみちゃん!」
他の3人も慌ててかずみを追いかけた。少し遅れて、さやか達も4人がどこかに行くのを目撃した。
「ちょっとあんた達、どこに行くのよ⁉︎」
「何か見つけたのか?」
「追いかけましょう」
マミと隼人を先頭に、さやか達も4人の後を追いかけた。
その様子を、近くのビルの屋上から、以前「BUY-LOT」でかずみ達を見ていた少年少女2人組が見下ろしていたとも知らずに……。
爆買いでスッキリするのって定番かもしれないですけど、私の場合は趣味に没頭して、ストレスを発散します。
次回は久しぶりにタケル達も変身します。そしていよいよまどマギ勢とかずマギ勢が共闘!
次回もお楽しみに。