魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
海香に連れてこられる形で、一同が訪れたのは、商店街の一角にあった専門店だった。そこは化粧品を扱う店であり、この日はライブイベントがあるらしく、店の周りには多くの女性達が並んでいたり、買った商品を早速試している者がいた。
「こんな所に魔女が来るのか?」
「見た感じ、ガングロさんが多いだけで、おかしなとこなんて無いし……」
「じゃあ、魔女の目当てはガングロなのか……?」
その様子をこっそり覗いていたまどか達は口々にそう呟いたが、海香だけが首を横に振って、自らの推理を聞かせた。
「いいえ。魔女の狙いはガングロさんじゃない。汚れたり痛んだりして肌や髪が泣いてる子達よ」
その推理に一同は驚きの表情を見せた。
「肌や髪が……? ってどういう事だ?」
誠司が困惑する中、かずみがある事を思い出した。
「そういえば魔女の奴、汚いとか、痛いとか、泣いてるとか言ってたような……」
「あっ! そういえば……!」
「けど、だからってここが魔女のターゲットとは限らないだろ? 化粧品売り場なら奥の方に行けばたくさんあるはずだし……」
「魔女がこの店を襲う理由はあるわ。そしてその原因となるのが、あれよ」
海香が指をさした先には、店頭販売で女性達が買っている物だった。それを見て、タケルがハッとした。
「黒のファンデーション⁉︎ 待てよ⁉︎ 確かそれと同じやつなら……」
タケルがポケットから、女性達が襲われていた現場に落ちていた、店で売られている物と同じ商品を取り出した。
「なるほどな。これで繋がった。魔女はその黒のファンデーションが女性達の肌や髪を痛める事を知っていて、その事に怒りを感じて、その商品を使用した女性達を次々と襲っていた」
「そう。あの時はサンプルを渡していただけで、本格的に販売し始めたのが今頃。だから、私の推理が正しければ、魔女はここにやってくる」
「って事は、もう近くにいるという事だな」
「一体どこに……」
まどか達が必死に魔女を探していると、かずみが一つのビルの屋上を見つめて呟いた。
「ドンピシャだよ、海香」
彼女のトレードマークとなっているアホ毛が、確かに屋上から見下ろしている女性を指し示していた。
その女性が望んでいたのは、全ての女性が綺麗な状態でいられる事だった。故に彼女は一生懸命勉強して努力する事で、美容に関する様々な知識を得た。
だが、現実は甘くなかった。現代の女性達は流行に乗ろうとして、様々な種類の化粧品を使い、一瞬の輝きだけを追い求めるようになってしまっていた。
それが、彼女にとって許せなかった。
「こんなものを使うから、肌が泣くのよ……!」
女性は手に持っていた黒のファンデーションを握り潰した。その腕力からは、常人とはかけ離れた強さがあり、憎しみに染まっていた。
行き詰まっていた彼女に、自らの欲望を叶える機会を与えてくれたのは、見知らぬ男女だった。彼らは不思議な力を与え、その力で、肌を汚していく者達に制裁を下すように指示した。
「教えてあげるわ」
そう呟く女性の右腕は歪み、先ほどタケル達が戦った魔女と同じ腕に変貌した。
『この私が、化粧のいろはをね……!』
そしてその腕が、列を作っている女性達に向けられようとしていた時だった。
「待ちなさい!」
「そこまでだ!」
魔女が声のした方を振り返ると、上空からタケル達が変身した状態で屋上に足をつけて、魔女と対峙した。
「ガングロで肌荒れだからって、みんなを襲っちゃダメ!」
「観念しな! これでチェックメイトだ!」
かずみと龍がそう叫んだ時、魔女の背後から、2つの人影が現れた。
1人は広いつばの帽子を被った、自分達と同い年ぐらいの少女であり、もう1人は紫色で炎のようなシルエットの角がついている仮面をつけた少年。
そう、その姿はまさに……。
「魔法少女⁉︎ それに、仮面ライダーまで⁉︎」
「何であんな所に……⁉︎」
まどか達が驚愕する中、謎の2人は魔女に襲われる事なくジッと彼らを見つめていた。
「「……」」
やがて2人は目線を外し、踵を返すと反対方向へ飛び上がった。
「! ちょっと待って!」
「カオル! 危ない!」
「うわっとと!」
カオルが慌てて追いかけようとすると、魔女が立ちはだかって、進路を妨害した。
『ガンガンガンマン!』
「はっ!」
すると、隼人がガンガンガンマンを取り出して魔女に撃ちまくった。魔女が怯んでいる間に、隼人が言った。
「俺はあいつらを追いかける! 星斗、ついてきてくれ!」
「はい!」
「私も行くわ! 八谷君達はあの仮面ライダーを追って! 私は魔法少女の方を追いかけるわ!」
「マミさん! あたしも行きます!」
「俺も行くぜ!」
「なら、私も行く! 海香、かずみ、みんな! そっちの魔女は任せたよ!」
隼人、星斗に続き、龍も仮面ライダーを、一方で魔法少女の方はマミ、さやか、カオルが追いかける事になった。それを妨害しようとして魔女が攻撃を仕掛けてきたが、
『ガンガンセイバー!』
「命、燃やすぜ! うぉぉぉぉぉぉっ!」
「やぁっ!」
タケルと仁美に斬りつけられ、怯んだその隙に6人は謎の2人組を追いかけにいった。
標的をタケル達に変えた魔女は幾つもの手を伸ばしてタケル達を叩こうとしたが、タケル達の方が、反応が早かった。
まどか達は戦闘が始まる頃には安全な場所に集まっており、タケル達を応援していた。
「ふっ! はぁっ!」
アラタがパンチやキックを駆使して魔女にダメージを与えている間に、御成が背後に回り、
「どっこいしょお!」
普段の彼からは想像もつかない怪力で魔女の手を掴んで地面に叩きつけた。
「よしっ、ここは……!」
そう呟いて士道が手にしたのは緑色の英雄アイコンだった。
『アーイ! バッチリミテー! バッチリミテー!』
士道がスイッチを押してバックルにはめ込み、レバーを引いて押すと、新たに出現したパーカーが士道の上半身に羽織られた。
『カイガン! ロビンフット! ハロー! アロー! 森で会おう!』
「おぉ! あれって中世イングランドに伝わる、弓の名手で、イギリスのノッティンガムにあるシャーウッドの森に住むアウトロー集団の首領であった義賊、ロビンフットの力だ!」
「その通りです!」
『ガンガンアロー!』
士道はそう答えながらガンガンアローを取り出し、弓を構えて光の矢を放った。矢は直撃し、魔女の動きが鈍くなり始めた。
「だったら俺も!」
アラタが、士道に続くように白と深緑の英雄アイコンを取り出し、スイッチを入れてゴーストチェンジした。
『イェッサー』
英雄アイコンを嵌めたメガウルオウダーを垂直に立てた後、上部のボタンを押すと、両肩に鋭く尖った金属体がつけられたパーカーが羽織られた。
『テンガン! グリム! メガウルオウド! ファイティング・ペン!』
「凄ぇ! こっちは19世紀にドイツで活躍した、日本にグリム童話を伝えた文学者のグリム兄弟の力を借りれるのか!」
「やたらと詳しいんだな、タケルって」
「そりゃあそうさ! 何たって俺は……」
「タケル! 話は後にしとけよ! 前から来るぞ!」
誠司に指摘されて前を見たタケルとアラタは、2つの手が迫っている事に気付いた。
「うわっぶねぇ!」
「おっと!」
2人がギリギリのところでかわして、アラタが立ち上がると、両肩にあるペン型の刃が自動で動き出し、手を払いのけた。
「それっ!」
自在に刃を操っているアラタは魔女本体に巻きついて、拘束した。タケルと御成、仁美も魔女の上に乗っかり、押さえつけている。
「海香殿! 今のうちに!」
「分かったわ。イクス・フィーレ」
海香が本を開いてかざすと、先ほどと同様に文字が本に吸い寄せられて、ピタリと張り付いた。
「こいつの弱点が分かったわ。士道、私が目印をつけるから、そこに撃ち込んで」
「はい!」
海香は本を縦にずらして、槍のような形に変形させると、魔女に突撃し、槍を魔女に突き刺してマークをつけた。
その様子を、かずみは士道の背後から見ていた。戦闘に参加したいものの、タイミングが分からずジッとしてしまっている。
「(以前の私は、どう動いていたの? ……ううん、違う。今の私はどう動けば良いの?)」
「士道!」
海香の声に反応した士道は強く頷くと、ガンガンアローをベルトにかざした。
『ガンガンミロー! ガンガンミロー!』
「はぁっ!」
『オメガストライク!』
弓を強く引き絞り、エネルギーを矢の先端に溜めた後、強力な矢は一直線に放たれて、海香がマークした箇所に命中させた。
『グ……ガァァ!』
魔女は悲鳴をあげながら形を崩しかけた。マークした箇所が破裂して、上半身にあった人型が上空に飛ばされた。どうやら女性の本体が魔女と分離したようだ。
破裂したと同時にタケル達が拡散したのを見て、かずみは何かを察した。
「(ひょっとして、今なら……?)」
かずみがタケル達の顔を見ると、一同はかずみの方を向いて頷いていた。今がその時のようだ。
「(良し、今だ!)」
確信を得たかずみは、手にしていた杖にエネルギーを集中させた。
『ダイテンガン! グリム! オメガウルオウド!』
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
一方、アラタもレバーを1回引いて押し、ペン型の刃の先端にエネルギー弾を作った。
「目を覚ませ、コスメ魔女!」
かずみがそう叫ぶと、杖を魔女に向けて、光線を放った。
「リーミティ・エステールニ!」
「これで終わりだ!」
かずみの必殺技、リーミティ・エステールニと同時にエネルギー弾が放たれて、魔女に直撃した。2つの技を浴びた魔女は静かに浄化された。
「や、やりましたぞ!」
「ふぅ……。あら?」
仁美が一息ついていると、空から何かが目の前に落ちてきたので手にとってみると、それは昨晩海香が拾ったものと同じ、グリーフシードのようなものだった。
「(もしかして、これが原因で……)」
仁美が、落ちてきた女性を慌てて抱き抱えたタケルの方を見てそう思った。女性の方は苦しげな表情を浮かべているようだが、目立った外傷は無さそうだ。
仁美がグリーフシードのようなものをポケットにしまってから、タケル達と合流した。ちょうどそのタイミングで、謎の2人を追いかけていたマミ達が戻ってきた。
「さやかちゃん! みんな!」
「そっちは片付いた?」
「あぁ、かずみのおかげでな」
「そちらはどうでしたか?」
士道が尋ねると、追いかけていたメンバー達は首を横に振った。
「残念ながら逃してしまったわ」
「結構逃げ足速くてさ、参っちゃったなぁ」
「そうですか……」
「なぜ奴らが魔女と共に行動してたのかは気になるが、とりあえず、問題は解決したみたいだな」
隼人が、地面に寝かせてある女性の方を見て呟いた。女性は片目から涙を流しながら、
「綺麗にして、あげるから……」
と呟いていた。元々優しい心の持ち主だったのかもしれない。そんな彼女が魔女に変貌してしまい、女性達を襲った。そう思うと、かずみは胸の奥が痛くなった。
「かずみ」
不意にアラタから声をかけられてかずみが前を向くと、アラタ達が手を上げていた。
「よく頑張ったな、かずみ」
そう言って元気良くハイタッチした。それを受けて、かずみは自然と笑みがこぼれた。
海香によって女性に処置を済ませた後、一同は街中を歩いていた。あれから時間がだいぶ経ってしまい、すでに夕日が見え隠れしていた。
「にしても、まさか化粧品の販売員が魔女だったなんてな……」
歩いている最中、誠司がポツリとそう呟いた。
「確かに、意外でしたね」
「魔女は、人間の悲しみや憎悪、そういった負の感情を糧にしますからね……」
「きっと、あの人は全ての女の人を綺麗にしたかったんだよ。だから、こんなチープなファンデーションが許せなかったんだろうね」
カオルはそう呟きながら、今回の事件の大元となった黒のファンデーションをゴミ箱に捨てた。
何でも流行に乗ってしまえば、綺麗になれるとは限らない。この一件を通してその事を学んだ女性陣は、肝に銘じておく事にした。
しばらくして、かずみが女性の事を思い出しながら、ポツリと呟いた。
「……悪い人が、魔女になるとは限らないんだね」
「そうだな」
アラタが不意に夕空を眺めながら、少し暗そうな表情でこう呟いた。
「人は誰でも魔女になる可能性を持ってるのかもしれないな」
「「「「……」」」」
アラタの言葉を聞いて、カオルらあすなろ組も似たような表情になった。
かずみがその後ろ姿を呆然と眺めていると、お腹の中から音が鳴り響いた。どうやら散々動き回って、お腹が空いてしまったようだ。
それを聞いた一同は苦笑する他なかった。
「あはは……。もう夕方だもんね」
「あぁ〜。あたしも何だかお腹ペコペコだよ〜」
さやかも、同じようにお腹をさすっている。
「よっしゃ! じゃあこのままみんなでどっか食べに行こっか!」
「そうだな」
「じゃあ、私達あすなろ市のメンバーと、見滝原市のメンバーの合同チームの勝利を祝して、カツ丼でどう?」
「「「賛成!」」」
「いや、またダジャレじゃん……」
カオルが海香に対して律儀にそうツッコんだが、本人もまんざらではないようなので、一同はにこやかに、近くにあるカツ丼屋に向かっていった。
というわけで、士道の英雄アイコンはロビンフットでした。龍の方はもうしばらくお待ちください。
次回の更新は少し遅れますが、オリジナル回で、新しい仮面ライダーが登場します!
次回もお楽しみに。