魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
今回は新たな仮面ライダーが登場!
野沢 晶は、常に周りの人に憧れを抱いていた。
幼稚園や小学校低学年の頃は、両親も忙しく、友達を作る意欲もなく、孤独な日々を送っていた事もあり、彼はいつも1人だった。
その影響もあり、年月を重ねる毎に自身の気持ちを内面に押し付けるようになったため、毎日、心細い感覚を持っていた。と同時に、周囲の人々との劣等感も覚えた。
そんな彼にとって、最初に出会った友達は、バイオリンのレッスン教室で出会った上条 恭介だった。その頃になると両親の仕事も安定し、習い事に通えるだけの収入の余裕が出来たので、音楽に関心のあった晶を通わせてみたのだ。
最初に彼の演奏を聴いた晶は、思わず涙を流すほどに感銘していた。周りに同学年の子がいる中でただ1人泣いていた晶に、周りの子は変なものを見たような目つきで遠ざかっていたが、上条だけは違った。彼の元に歩み寄って、その涙を拭いたのだ。
『……ありがとう』
『ふぇ……?』
『僕の演奏、ちゃんと聴いててくれたんだよね。とっても嬉しいな』
上条はにこやかな表情で晶にそう言った。
それからというものの、晶は上条とよく話し合うようになり、親友という関係を築いた。彼は晶にアドバイスさながら、落ち込んでいる時の晶を常に励ましていた。
その次に彼が憧れたのは、天王寺 タケルだった。
上条とその幼なじみのさやかの紹介で、2人は出会った。
『あ、あの……! の、野沢 晶です! よ、よろしくお願いします……!』
緊張しながら自己紹介する晶に対し、タケルは苦笑しながら言った。
『そんなに緊張すんなって。俺は天王寺 タケル。よろしく。ってなわけで早速さ。近くの公園にめちゃくちゃうめぇたこ焼きがあるんだけどさ。みんなで行って食べようぜ』
『良いね!』
『うん!』
さやかや上条だけでなく、隣にいたまどかも元気良く頷いた。が、晶は突然のお誘いに困惑していた。
『え? で、でも僕、お金持ってきてないし……』
『んなもん俺が払っといてやるよ。友達記念ってことでな』
タケルにそう言われて、晶も複雑な気持ちのまま彼に連れられて、たこ焼き屋についた。
『おばちゃん! たこ焼き5人前、お願い!』
『あいよ。……おや? そっちの子は見かけない子だけど、また新しい友達かい?』
『はい。晶君っていうんです』
『は、初めまして……』
まどかに紹介されて、晶も恥ずかしそうにお辞儀をした。屋台のおばちゃんは笑顔でたこ焼きを作りながら言った。
『そうかいそうかい。じゃあもっとうちのたこ焼きを好きになってもらえるように、サービスしてあげる』
そう言っておばちゃんはオマケとして、たこ焼きを2個分サービスしてくれた。おばちゃんにお礼を言ってから、5人はたこ焼きを食した。途端に晶の表情が変わった。
『美味しい……!』
『だろ? ここのたこ焼き屋は、まどかと昔から時々食べてたんだ』
『まどかさんと……?』
『さんづけしなくてもいいよ、晶君。私とタケル君は、家が近所なんだ』
『そうだね。僕とさやかが出会った時からずっと一緒だったね』
皆が談笑するうちに、晶は自然と楽しくなっていた。そのキッカケを作ってくれたタケルに感謝しつつ、いつか自分も彼のように誰とも分け隔てなく接しようとする心の強さが欲しいと思うようになっていた。
そんな彼が最も憧れている人物。
それは、前日の雨があがって晴天となったある日の事。いつものように1人で歩いて登校している時に、道路のでこぼこに躓いてしまい、コケてしまった。しかも運悪く、ランドセルの蓋が閉まっていなかったが故に、中身が全部ひっくり返ってしまい、教科書やらノートやらペンケースやら、母親が作ってくれた弁当箱などが水たまりに放り出されていた。
周りの子達は、一度はその目線を晶に向けるが、何事もなかったかのように無視して歩いている。
膝は擦りむき、血が流れていたが、その痛みよりも、色々なものが水浸しになってしまっている事が何よりもショックだった。
それでもなんとか必死に泣くのを堪えていた時、その人物は手を差し伸べてきた。
『大丈夫?』
晶がふと目線を上にあげると、それは見覚えのある人物だった。
美樹 さやかである。
以前、上条から幼なじみとして紹介された事もあり、その凛々しい顔つきは晶の脳裏に焼き付いていた。
晶が呆然とする中、さやかはしゃがみこんで、ポケットからハンカチを取り出し、落ちていたものを手際良く拭いてあげた。
『あ、ありがとう……ございます……』
『教科書とかは吹いとけば大丈夫だし、ノートは染みちゃってるけど、端っこだし使えるよ。お弁当も布巾は汚れちゃってるけど、洗えば大丈夫だし、ちゃんと食べられるよ』
笑顔でそう言われて安心したのか、ついに晶は抑えていた涙を流した。途端にさやかは呆れながらも今度はその涙を拭いた。
『あーもう、泣くなって! 男の子でしょ⁉︎』
『うぅ……! ご、ごめんなさい……!』
『あ、謝らなくてもいいって!』
さやかは慌てながらも、もう一度手を差し伸べてた。
『ほら、立てる?』
『……うん』
晶は自然と、さやかの手を握り返した。
その頃からだったのだろう。
晶はさやかに対し、特別な感情を抱くようになった。どんな時でもそばにいてくれて、困った事があってもさやかが真っ先に庇ってくれたり、気にかけてくれたりしていた。
これが、好きという感情なのかもしれない。
だが、晶は知っていた。さやかが好意を寄せているのは、幼なじみの上条だ。そう思った晶は、一歩引き下がるようにして、その想いを無理やり押し殺した。残念な事ではあるが、さやかが幸せになってくれるのであれば、それでも構わない。その覚悟で、晶は見守り続ける事にしたのだ。
あくまでも、憧れの存在として……。
そんな彼に、最近また1人、憧れる人物が出来た。
「……あ、マコト君」
「……」
夕日が見え隠れしてきた時間帯。買い物帰りに晶がばったりと出くわしたのは、謎多き仮面ライダー、工藤 マコトだった。
あすなろ市の商店街での戦いから2日が経ち、それ以降は何事も無い日々が過ぎていた。
そんな穏やかな日々が続く中、2人は出会った。
「あ、あの……」
「何だ?」
気まずい空気の中、晶は並んで歩きながら質問をしてみた。
「マコト君は、その……。何で、魔法少女や仮面ライダーが増える事がそんなに嫌なんですか……?」
「……!」
その瞬間、マコトの表情が強張った。そして、何でそんな質問をしたと言わんばかりに晶を睨んだ。晶は慌てながら会話を続けた。
「いや、あの……。確かに、マコト君の言うように、魔法少女や仮面ライダーになって魔女と戦うのは凄く危険だって事は分かってます。でも、その分誰かが救われる。僕みたいに契約してない人じゃ無理な事も、魔法少女や仮面ライダーなら、力を合わせれば出来る。だから、その……。魔法少女とか、仮面ライダーになる事って、そんなに悪い事じゃないような……」
「甘い考えは捨てろ」
マコトは冷たくそうあしらった。
「前にも言ったはずだ。この戦いは常に命がけだ。それにその力を手に入れたところで、最後は……」
「最後は……?」
晶が気になってマコトの顔を覗き込んだが、マコトはハッとしてから、顔を横に振った。
「いずれにせよ、お前は仮面ライダーに向いていない。誰かを救う力だと思い込んでいるうちはな……」
「でも……」
それでもなお、晶は食い下がらなかった。
「だったらどうして、お菓子の魔女と戦った時に僕達を助けてくれたんですか?」
「それは……」
「あの時、思ったんです。マコト君、本当は優しい人なんだなって。だからその……。憧れてるんです。僕も、マコト君みたいに、不器用でも、誰かを守ってあげられるような事が出来たら、それがとても良い事なんじゃないかって……」
「なるほど。それが、君の叶えたい願いなんだね」
不意に聞こえてきた声に2人が振り向くと、そこにはキュゥべえがチョコンと座っていた。
「貴様……!」
マコトが忌々しげにキュゥべえを睨みつける中、キュゥべえは晶をジッと見つめていた。
「君がそれを望むのなら、僕はその意志に応えるまでさ」
「キュゥべえ……」
「! 止めろ……! それ以上は……!」
マコトが怒りの形相のままゴーストドライバーを形成し、スペクターゴーストアイコンを取り出した時、マコトとキュゥべえが異様な気配を察知した。
「……どうやら魔女が現れたようだね。それもかなり反応が大きい。これはマコト1人では……」
「黙れ。……チッ」
マコトは舌打ちしながら、魔女のアイコンの反応に従って魔女のいるところに向かった。晶とキュゥべえも慌ててその後を追いかけた。
しばらくすると、魔女の結界に一同は入り込み、奥へ進むと、目の前に六角形の雪の結晶の形をして、悲しげな目つきをしている魔女が佇んでいた。
〜氷の魔女、フィッツジェラルド〜
〜彼女と共に過ごせば最後、その身が凍りつくまで彼女の姿を見続ける事になるだろう〜
「ま、マコト君! 僕も……」
「お前の助けはいらない。こいつは俺が倒す」
『アーイ! バッチリミロー! バッチリミロー!』
マコトはアイコンをセットしてから、左腕を右に持っていき、叫んだ。
「変身!」
マコトがレバーを引いて押すと、水色のパーカーが羽織られた。
『カイガン! スペクター! レディゴー! 覚悟! ドキドキゴースト!』
「そこに隠れてろ。絶対にそいつと契約をしようなんてバカな真似はするなよ」
マコトはそう念を押してから、氷の魔女に立ち向かった。
氷の魔女は向かってくるマコトに臆する事なく使い魔を作り出して攻撃させた。が、その程度でマコトが苦戦するはずもなく、ガンガンハンドで撃ち倒していた。
「す、凄い……」
改めてその実力を目にした晶は感心した表情でそう呟いた。が、その一方でキュゥべえの表情は険しいようにも見える。
「確かに彼は強い。素質もそれなりにあるようだ。けど、相手も決して今までのようにはいかないだろうね」
「え?」
晶が訝しんでいる間にも、マコトは使い魔を一掃して、氷の魔女に攻撃をしていた。だが、氷の魔女の体は硬く、ガンガンハンドで殴りつけてもビクともしなかった。
「(くっ……。思っていた以上に硬いな……。面倒だが、表面を一つ一つ削り取っていくしか……)」
マコトはそう思いながらツタンカーメンゴーストアイコンを取り出そうとした時、氷の魔女は浮き上がり、突風を巻き起こした。
「ぐっ……!」
視界が遮られ、動きを止められたマコトに対し、氷の魔女はいくつもの氷柱を吹き出してマコトに命中させた。
「あぁ……!」
「! マコト君!」
「来るな……!」
晶が駆け寄ろうとしたところを、マコトが制止させた。氷の魔女はさらに追い打ちをかけるように吹雪をマコトに浴びせた。マコトの体はみるみるうちに足元から凍りついてきた。
「! しまった……!」
マコトは足が動かない状態でもなお、ガンガンハンドで応戦していたが、寒さで手がかじかんでしまっており、狙いが定まらない。
「マコト君! そんな……!」
これほどにまで近くにいるのに、助けてあげる事が出来ない。その現実が、晶の心に重くのしかかった。このままでは、マコトは無事では済まない。
助けたい。
そう強く願った時、晶はキュゥべえに言った。
「キュゥべえ……! 僕と、契約を……!」
キュゥべえはジッと晶の方を見つめている。その気配に気づいたマコトが振り返り、晶がしようとしている事を止めさせるように叫んだ。
「止めろ! そいつと契約をするな! 仮面ライダーになったら、お前は……!」
マコトが必死に叫んでいるが、猛吹雪によって途中からその声はかき消されてしまった。ますます追い込まれているマコトに対し、晶は意を決したようにキュゥべえに告げた。
「キュゥべえ、僕の願いを叶えてほしいんだ! お願い……!」
「彼の忠告を無駄にしてでも、叶えたい願いがあるというわけか。では、改めて聞こう。君はどのような祈りで力を手に入れるんだい?」
キュゥべえにそう言われて、晶は目を瞑りながら、これまで自分が憧れを抱いた上条、タケル、さやか、そしてマコトの事を思い出し、その想いを告げた。
「……僕は、いつもみんなに守られている立場でした。でも、その分誰かが傷つく事になる……」
晶の強い目線の先には全身が凍りつつあるマコトの姿があった。正直なところ、今でも晶の本心としては、逃げ出したいほど怖がっていた。現に、晶の腕は寒さとは別に、恐怖心で震えている。それでも、目の前の現実からは目を背けてはいけない。その気持ちが勝っていたのだ。
「僕は……逃げない……! 目の前で傷ついている人がいるんだとしたら、僕は、助けたい……! タケル君や上条君、さやかちゃん、それから、マコト君みたいに、強く、なりたい……! 守るための心が、ほしいんだ……!」
晶の意思を聞いたキュゥべえは、それを受け入れるかのように晶に近づいた。
「分かったよ、晶。その願い、叶えてあげよう」
「うん……!」
晶は強く頷き、目を閉じた。晶の体が淡く光り出したのを見て、マコトは目を見開いた。
「! まさか……⁉︎ 晶……! 止めるんだ……!」
マコトが契約を止めさせようとしたが、マコトが手を伸ばした時にはすでに光は消えていた。代わりに、晶の右手には、灰色のアイコンが握られていた。つまりそれは、彼がキュゥべえと契約した証でもある。
「(間に、合わなかったか……!)」
マコトが悔しさのあまり、仮面の下で歯ぎしりしていた。そんな事もつゆ知らず、晶は手に持ったアイコンを眺めてから、マコトの方を見て叫んだ。
「マコト君! 今助けます!」
晶はアイコンのスイッチを入れて、腰に出現させたゴーストドライバーにセットした。
『アーイ!』
バックルからは、灰色のパーカーが飛び出してきた。それを見た晶は両手を胸の前に持ってきて、祈りを捧げるようなポーズをとってから、聞き慣れたその言葉を叫んだ。
「変身!」
『カイガン! ヘカリア! レディゴー! 覚悟! ドキドキゴースト!』
直後、晶は装甲に包まれ、パーカーが羽織られると、ハチマキの柄がついた仮面が顔に覆われた。その姿は、変身前とは見間違うほどに堂々とした振る舞いと変貌していた。
『ガンガンハンマー!』
「ふっ!」
バックルに手をかざすと、中から自身の身長ほどの大きさのハンマー……ガンガンハンマーが出てきて、晶はそれを両手で持った。
「やぁぁぁぁっ!」
晶はガンガンハンマーを持ったまま氷の魔女に突撃し、思いっきり振りかぶった。その一撃は重く、今までマコトの攻撃ではビクともしなかった氷の魔女があっさりと吹き飛ばされた。魔女との距離を置いたのを確認した晶は、顔以外が凍りついているマコトに駆け寄り、
「ふん!」
と気合いを入れて氷に力を入れると、氷は砕け散った。ようやく自由がきくようになったマコトだが、お礼を言う事はなかった。
「お前……。なぜあれほど忠告したにもかかわらず……!」
問い詰められた晶は、一瞬ビクついたが、すぐに気を取り直して、マコトの目をしっかりと見据えながら答えた。
「守りたいんです」
「……?」
「タケル君や上条君、さやかちゃんや他のみんなもそうですし、マコト君やほむらちゃんだって、守りたいんです。今までのように、みんなの後ろ姿を見守っているだけの自分はもう必要ありません」
その瞳からは、以前の彼からは感じられなかった強い意志が宿っているように感じられた。これもまた、契約によって手に入れた自信なのだろう。
「守られる自分じゃなくて、守る自分になる。それが、僕の、野沢 晶という、なりたい自分なんです!」
「……!」
晶に強くそう言われて、マコトは思わず黙り込んでしまった。
すると、氷の魔女が起き上がり、2人に接近してきた。が、その面前で爆発が起こり、氷の魔女の動きが阻害された。
「⁉︎」
何が起こったのか判断出来なかった晶だが、マコトはすぐにその正体に気づいた。
「ほむらか」
マコトがそう呟いた時には、ほむらは2人の目の前に立っていた。ほむらは晶の姿を見て、冷たい目線を向けた。
「あなた、契約したのね……」
見るものを威圧するような目つきに、晶は一瞬身構えたが、負けじとほむらの目を見つめた。
やがてほむらの方が目線を外し、氷の魔女の方に向けた。
「あなたがどうなろうと、私達には関係ない。まどかやタケルが無事ならね……」
「? それって……」
「来るぞ」
晶が気になってほむらに尋ねようとしたが、それよりも早く氷の魔女が氷柱を飛ばしてきた。
3人は横に動いて攻撃をかわした。晶はこの状況を打破しようと、契約によって手に入れた英雄アイコンを持って、スイッチを入れた。
『アーイ! バッチリミロー! バッチリミロー!』
灰色のパーカーが飛び出して、氷柱を弾き飛ばしている中、晶はレバーを引いて押した。
『カイガン! ベンケイ! アニキムキムキ! 仁王立ち!』
かつて、五条大橋で1000本の刀を手中に収める野望を叶えるため、源義経と対決し、敗れた後に義経に仕えたとされる怪力無双の荒法師こと、武蔵坊弁慶の力が晶に宿り、晶の体の中に、不思議と力が湧いてきた。
「はぁっ!」
晶がガンガンハンマーを振り回すと、氷柱は粉々に砕け散り、かすりもしなかった。
その隙に、ほむらは盾からロケットランチャーを取り出して、氷の魔女に向かって撃った。
『カイガン! ツタンカーメン! ピラミッドは三角! 王家の資格!』
ロケットランチャーが命中し、氷の魔女が翻弄している間に、マコトもゴーストチェンジして、鎌状になったガンガンハンドで斬りつけた。
動きが鈍くなったのを確認した晶は、ガンガンハンマーをベルトにかざして、エネルギーを溜めた。
『ガンガンミロー! ガンガンミロー!』
続けてマコトもレバーを1回引いて押した。
『ダイカイガン! ツタンカーメン! オメガドライブ!』
ガンガンハンドにもエネルギーが溜まり、マコトは一気に振りかぶった。
「はぁっ!」
ガンガンハンドの鎌からブーメランのような光の刃が放たれて、氷の魔女を何度も斬りつけた。その間に、ほむらが爆弾のようなケースを手に持ち、スイッチを入れると、瞬間移動したかのように氷の魔女の背後に回った。爆弾は氷の魔女の目前に置かれており、爆発とともに壁に叩きつけられた。
一方、晶の方もチャージが完了しており、ガンガンハンマーを地面に叩きつけると、周りにはいくつもの武器を模したエネルギー弾が形成された。
「いきます!」
『オメガボンバー!』
晶がそう叫びながらガンガンハンマーを振り払うと、エネルギー弾が氷の魔女に向かって放たれて、全弾を受けた氷の魔女の全身に亀裂が入り、ボロボロに崩れていった。グリーフシードが晶の目の前の地面に突き刺さったのを見て、晶はようやく安堵した。
「反応はこっちからあったんですよね⁉︎」
「えぇ、間違いないわ」
その頃、魔女の反応を捉えたまどか達は、ソウルジェムやアイコンの反応に従って、魔女の気配を辿っていた。反応が強くなり、ようやく目的地にたどり着けると思ったその時、不意に反応が途絶えた。
「あれ⁉︎ 光らなくなったぞ……?」
「これは一体……」
「逃げた……? いや、違う。もう魔女が倒されたのかもしれないな……」
「じゃあ、誰かが戦ってたって事?」
皆が疑問に思う中、まどかがある可能性を示唆した。
「もしかして、ほむらちゃんとマコト君が……」
「あいつらが?」
「かもしれないわね。念のため、行ってみましょう」
マミの意見に賛同した一同は、反応があった方角に向かった。
しばらく進むと、前方に人影3つ現れた。そのうちの2つは言わずと知れた、魔法少女姿のほむらと、仮面ライダースペクターとなっているマコトだった。が、その近くにいたライダーに見覚えがなく、一同は思わず立ち止まった。
「えっ? 誰、あのライダー?」
「なんか、見た目ごっついライダーだよな……」
皆の反応を悟った晶は、バックルからヘカリアゴーストアイコンを取り出してまどか達に声をかけた。
「僕ですよ」
「「「「へっ⁉︎」」」」
突如聞こえた声に一同は目を見張った。
『オヤスミー』
変身が解けて、露わになったその素顔は、自分達の親友でもある晶だったのだから、驚くのも無理はない。
「えぇ〜⁉︎ な、なんで晶が⁉︎」
「晶君、これって一体……⁉︎」
「まさか、お前契約を……」
「は、はい。そうです。僕も、仮面ライダーとして、なりたい自分を見つけたんです!」
「そ、そうなのか……? マコト、ほむら」
「「……」」
タケルに尋ねられた2人はそっぽを向いていたが、反論してこなかったところから見て、晶は本当の事を言っているようだ。
困惑する一同の前にひょっこりと現れたのは、キュゥべえだった。
「彼の決意は固かったし、強い意志も感じられた。ベンケイが選ばれるだけの事はあるみたいだ」
「ベンケイ……? 晶の英雄アイコンの事か?」
「あ、はい。これです」
晶はそう言ってベンケイゴーストアイコンをまどか達に見せた。
「……て事は何? あの弱虫だった晶が、魔女をやっつけちゃったって事?」
「あぅぅ……。弱虫なんて、酷い言われようです……」
さやかのあんまりな評価に、晶は本気で落ち込んでいた。どうやら変身前と後では性格が真反対になるようだ。
「じょ、冗談だって。ま、まぁ晶が頑張ったって事は分かったから、元気出しなって」
「あはは……」
一同が晶を慰める中、晶はマコトとほむらの方を向いてお礼を言った。
「あ、あの! 今日は、ありがとうございます! 助けてくれて! ま、また迷惑かけちゃうかもしれませんけど、よろしくお願いします!」
その声が届いたのか定かではないが、2人はグリーフシードで穢れを取り除いてから、それを晶に渡した。振り返る間際、マコトは晶の方を見て呟いた。
「……せいぜい後悔しない事だな。仮面ライダーになった事を。そいつの誘惑に乗せられた事を」
睨みつけるマコトの視線の先には、キュゥべえが呑気そうに2人を見つめていた。
そして2人は例のごとくその場からフッと消えた。
「相変わらず感じ悪い奴らね」
「だ、大丈夫ですよ、さやかちゃん。マコト君もほむらちゃんも、きっと不器用なだけなんですよ」
「そうか?」
「はい。きっとそうですよ……」
晶は2人がいた地点を見つめながら、そう思っていた。
一方、マコトとほむらは夜道を歩きながら、夕方の事を思い返していた。
「……またしても、あいつにしてやられたわね」
「すまない。今回は俺のミスとしかいいようがない」
「仕方のない事だわ。彼は契約してしまった以上、もう後戻りは出来ない。強い自分に憧れても、やがて自らの正体に気づいて後悔する。……もう、彼は救われない領域まで踏み込んでしまった。それだけの事だわ」
ほむらは夜空を見上げながらポツリとそう呟いた。
そんな中、マコトは1人、虚空を見つめながら、晶に言われた事を思い出していた。そして、自らをこう評した。
「俺は、憧れるほど、強くも無いのに……」
そして思い返した。かつて、自分が憧れていた者達の事を。
「俺にとっては、お前達も憧れの的だったんだぞ。タケル、晶」
というわけで今回は新たに晶が契約し、仮面ライダーヘカリアとなった回でした。
久しぶりに10000字近く書く事になって結構疲れました……。
次回は、いよいよあの魔法少女達が本格的にまどか達と関わっていきます! そして終盤では新たな仮面ライダーが登場!
次回もお楽しみに。