魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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いよいよ明後日には遊戯王の映画が公開されますね! 待ち遠しいです!


39. それには及ばないわ

「……もう、そろそろこの店を閉めようと思ってるんだ」

「……は?」

 

それは、タケルとさやかが杏子と対峙する本の少し前の事。いつものように家に帰ってきた誠司は、すぐさま異変に気付いた。まだ夕方にもかかわらず、店には誰1人として入っていない。席に座っているのは、暗い表情をした祖父だけ。その事について尋ねた誠司に父から告げられたのは、突然の店じまい。

誠司は訳が分からぬまま、乾いた笑い声をあげた。

 

「……はは、何言ってんだよ? そんな事……」

「ごめんよ。俺もそれなりに頑張っては来たんだが、今はもう、俺が子供の頃とは何もかもが違いすぎるんだ。これ以上は、生活が苦しくなる一方なんだ……」

「……ほ、本当に辞めちまうのかよ? だって、そんな事になったら、俺達は……」

「ごめんね、誠司……! でも、もうどうにもならないのよ……! お客が減って、収入は少なくなる一方、このままじゃ、一家は破綻しちゃうのよ……!」

 

涙もろい母は、悔し涙を流しながら誠司を抱きしめた。母の謝る声を聞きながらも、誠司は動揺を隠せなかった。

家族から笑顔が消える。誰もが自分達が作った茶菓子を忘れ去っていってしまう。

「……そんなの、納得出来るかよ……!」

「誠司……⁉︎」

 

誠司は母の腕を振りほどいて、全員の注目を浴びながら叫んだ。

 

「頼むよ……! もう1日だけ! 後少しだけでもやってみなきゃ分かんねぇだろ⁉︎ そんな簡単に諦めるのなんて、俺は認めねぇ!」

「けど、この有様を見れば分かるだろ⁉︎ これ以上何をしたって無駄に終わるだけなんだよ……」

「そんな事ねぇよ」

 

そう呟く誠司の瞳は、揺るぎない何かに満ちていた。

 

「世界の英雄達は、こんなところでは諦めたりなんてしなかった。ほんのちょっとの足掻きが、最後には奇跡みたいなもんに繋がるんだよ」

「誠司……」

「大丈夫。俺も何とか頑張るからさ。努力するのを諦めるなよ」

 

そう言ってから、カバンを置いて店を後にした。

両親と祖父は、ただジッと息子の頼もしそうな背中を見つめるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……な〜んて大見得切っちまったけど)」

 

店を出た誠司は、誰も追ってこない事を確認して立ち止まった。辺りに人気は無く、木々が風に吹かれて音を鳴らしているだけだった。

 

「(ここまできたら、もうやるしかないよな。たった一つだけ叶う願い。今が使いどきかもな)」

 

そう決心した誠司は、目を閉じて、意識を集中させてから頭の中で声を出した。

 

『キュゥべえ! キュゥべえ! 俺の声が聞こえたら、すぐに来てくれ!』

 

誠司は必死にキュゥべえの名前を呼んだ。程なくして、キュゥべえが慌てる事無く目の前に現れた。

 

『その様子だと、もう願いは決まったみたいだね』

 

キュゥべえの言葉に、誠司は強く頷いた。

 

「俺も、戦う! 親父やお袋、ジィちゃんのためだけじゃない。俺達家族のために、この願いを叶えるんだ……!」

「分かった。秋永 誠司。君の決意、ちゃんと叶えてあげるよ」

 

キュゥべえは誠司に近づくと、彼の赤い瞳をジッと誠司に向けた。やがて誠司の体は淡く光り、彼は契約を結ぶ事に成功したのだ。

全ては、店の繁盛、そして家族の笑顔を取り戻すために……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして契約後、キュゥべえの知らせで魔法少女や仮面ライダー同士が衝突しているとの情報を受けて、現在に至る。

 

「しっかし、俺も随分と運が悪いのかもな。せっかくのデビュー戦が魔女退治じゃなくて魔法少女との一戦になっちまって、しかもそいつが顔見知りなんだからよ。神様も残酷な野郎だ」

「誠司、あいつの事、知ってたのか?」

「まぁな。ちょいと縁があってね」

 

誠司は驚いているタケルの方に振り向く事無く答えた。

一方、杏子も目の前の仮面ライダーが、以前助けてもらった誠司である事に目を見開いていたが、すぐに表情を元に戻した。

 

「……はっ。まさかまたあんたと会うとわね。おまけに今度は仮面ライダーとしてやってくるとは思わなかったね」

「それよりも答えてくれよ。何でまたタケルやさやかと戦ったりなんかしてんだ?」

「何でって? 決まってんだろ。そいつらが言っても聞かねぇタチだから、ちょいと分からせてやってるだけさ」

「あんた……!」

 

さやかが歯ぎしりしながら近づこうとしたが、誠司に片手で制された。

 

「話が見えてこないんだけど、一体2人が何したってんだ?」

「そいつらはさ、使い魔をぶっ潰そうとしてたんだよ。使い魔なんて倒したところで見返りも貰えないし、グリーフシードが手に入るチャンスをみすみす潰す事になるだろ? バカらしく見えたから、あたしが言って聞かせようとしたんだけど、こいつら聞く耳持たねぇもんだから、痛めつけてやっただけさ」

「使い魔をって……。使い魔だって人を襲う事に変わりはないんだろ? 何でそいつをわざわざ見逃さなきゃならねぇんだよ?」

 

誠司の言葉を聞いて、杏子は呆れたように首を横に振った。

 

「やれやれ……。そういやあんた、前に会った時から随分とお人好しだったっけ。おまけにそいつらの知り合いってんなら、なおさら同じ勘違いしてても無理ないよね」

 

杏子は八重歯を光らせながらそう呟き、槍を構え直した。

 

「ま、お喋りはその辺にしといて、ちょっとそこどいてくれない? こないだの事もあるし、一応恩人のあんたと事を交えるつもりはないんだよね」

 

それを聞いた誠司は、大きく息を吐くと、手に持っている『ガンガンジッテ』を構え直した。

 

「ここで俺が退いたらどうするつもりだ?」

「決まってんだろ。そこのバカ共にとどめ刺すんだよ」

「そっか……」

 

身構えるタケルとさやかを尻目に、誠司は2人の前に立った。

 

「なら、譲れねぇな。2人のところに行きたいんなら、俺を倒してからにしな」

「! 誠司⁉︎」

「ダメだよ⁉︎ あんたは関係無いでしょ⁉︎ ここはあたし1人でも……!」

「無理すんなって。心配すんなよ。こういうのにはちょっと自信あるからな」

 

誠司は2人を安心させるように呟くと、杏子がまた呆れた表情になった。

 

「せっかく人が親切に見逃してやるって言ってんのにさ。あんたもやっぱ、人助けの為に戦うバカってわけだな」

「誰かが笑っていられる時間を守れるってんなら、バカって呼ばれても悪くないかもな」

 

2人は標的を定め、睨み合った。その様子はこれまで以上に緊張感が漂い、まどか達も思わず息をするのを忘れるほどだった。

破裂したパイプから滴が一滴地面の水たまりを跳ねる音が静寂していた辺りに響いた時、両者は同時に前に出た。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」」

 

2人の武器がぶつかり、金属音がこだました。

誠司の持つガンガンジッテは、リーチこそ短いが、軽い分だけ俊敏に槍の攻撃をさばいている。さすがに見滝原中の中でもトップクラスの身体能力を誇っているだけあって、初陣とはいえここまできめ細かく動けているのは凄い事なのだろう。

だが、相手はタケル達よりも長く魔法少女をしている杏子。依然として余裕の表情を浮かべていた。

 

「ふぅん。トーシロの割にはちっとばっかやるようだけど……」

 

そう呟いた杏子は、膝を曲げて、上空に高く飛び上がった。

 

「あたしから言わせりゃ、まだまだパワーが足りねぇんだよ!」

 

そしてそのまま一気に誠司めがけて槍を突き刺した。誠司は間一髪後ろに退いて直撃は避けられたが、地面が破壊されるほどに勢いが強く、誠司は吹き飛ばされてしまう。

 

「なんのっ!」

 

だが、誠司も空中で一回転して勢いを殺し、両足で着地した。

 

「うぉぉぉぉっ!」

 

誠司は果敢に杏子に向かって突進し、素早い動きで斬りつけようとしていた。杏子は臆する事なく多節棍に形を変えて応戦している。

 

「面白ぇ、なら、こいつはどうだい?」

 

そう叫びながら杏子は速度を上げて、壁を伝いながら誠司を多方から斬りかかった。

 

「くっ……!」

 

誠司も必死に受け流しながら反撃しようとしていた。

 

「誠司君……!」

「誠司……!」

 

3人がどうする事も出来ず固唾を飲んでいると、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「みんな!」

「! マミさん! みんな!」

 

足音を響かせてドタドタとやってきたのは、別行動をとっていたマミ達だった。合流が遅い事を心配して駆けつけてきたのだろう。

 

「タケル君、さやかちゃん、まどかちゃん! 大丈夫でしたか⁉︎」

「う、うん。私は大丈夫。でも、タケル君とさやかちゃん、それに……」

「! あれは……!」

 

星斗が、目の前で繰り広げられている、誠司と杏子の死闘を指差して叫んだ。一同がその方向を見た時、マミと隼人が驚愕の表情を浮かべた。

 

「⁉︎ さ、佐倉さん……⁉︎」

「杏子⁉︎ なぜここに……⁉︎」

「え? マミさん、隼人さん。あの方をご存知なのですか?」

 

仁美が尋ねると、2人は苦々しい表情を浮かべた。

 

「え、えぇ……。あなた達と会うずっと前に、一緒に戦ってた魔法少女よ」

 

それを聞いて、まどかは以前、お菓子の魔女の結界内でマミが話していた、かつて共に行動していた魔法少女がいた事を思い出した。

 

「っていうより、その杏子って奴と戦ってるのは一体……」

「あれは、秋永 誠司が変身した仮面ライダー、カエサルだよ」

 

不意に聞こえてきた声に反応して振り返ると、キュゥべえが歩きながら近寄ってきた。

 

「な⁉︎ 誠司殿が、仮面ライダーに⁉︎」

「いつの間に……⁉︎」

「ついさっきの事さ。詳しい事は分からないけど、彼の実家の経営が悪くなったらしい。それで僕を呼んで契約したのさ。彼の店が繁盛するようにってね」

「そんな事になってたのか……」

「それにしても、まさか佐倉 杏子がこの街に来ているとは。一応忠告しておいたはずなんだけどね」

「ぐぁっ……!」

 

すると、誠司が転がりながらタケル達の近くに放り出された。

 

「! 誠司君!」

 

杏子が近くに降り立つと、そこでようやく鎖の壁の外にいるマミ達に気づき、マミと隼人の方を見て舌打ちした。

 

「またあんた達と会う事になるなんてね」

「佐倉さん。一体何のつもり? ここはあなたの管轄外のはずよ」

「別にあたしがどこにいたって関係ないだろ? 今は構ってる場合じゃないんでね。そこで黙って見てなよ」

 

そう言って杏子が槍で誠司を突き刺そうとしたが、誠司は転がってかわしてから起き上がり、杏子に突撃した。が、杏子は難なくかわしている。

 

「はん! さっきから何のつもりだよ? 手加減してるようにも見えるぜ。なめてんのか?」

「あいにく俺はお前を殺そうだなんて思ってないもんでね。どのみち力ずくでも止めるつもりだけど」

「口だけは随分と達者だな……。だったら、本気にさせてやるよ!」

 

そう叫んで、杏子は槍を振り回した。対する誠司も細かい動きで槍を弾きながら攻めている。火花が散り、その度に壁や地面が抉れている。

 

「やめろお前達! こんな争いに何の意味がある!」

 

隼人が止めさせるように叫んだが、2人は手を休めなかった。それどころか、ますます激しさが増しているようにも見える。

 

「(あの動き……。さっき俺達と戦ってた時には見せてなかった。あれはもう、本気で誠司を殺しにかかってる動きだ……!)」

「どうして……!」

 

タケルが、杏子の動きの変化に気づいた時、まどかが悲痛な声をあげた。

 

「ねぇ、どうして⁉︎ 相手は魔女じゃ無いのに、どうして味方同士で戦わなきゃならないの⁉︎」

 

まどかがそう叫ぶと、キュゥべえが、2人の戦闘を見つめながら呟いた。

 

「どうしようもないよ。秋永 誠司はともかく、佐倉 杏子は言って止まるような性格じゃない。それに、お互い譲る気なんてないみたいだし」

「でも、このままじゃ、誠司君が危ないですよ……!」

 

晶も心配そうに声を出した。

 

「お願い、キュゥべえ! 止めさせてよ! こんなのってないよ!」

「僕にはどうしようもないよ」

 

キュゥべえは首を横に振ってそう呟いた。

杏子は隙をついては、容赦なく誠司を斬りつけていた。誠司の体から火花が散るが、誠司は踏ん張って耐えている。だが、このままでは誠司の体力が底をつく。時間はあまり残っていない。

 

「……でも」

「でも?」

 

不意にキュゥべえが言葉を続けてきたので一同がキュゥべえを見ると、キュゥべえはまどかの目をジッと見つめていた。

 

「どうしても力ずくでも止めたいのなら、方法がないわけじゃないよ」

「……あ」

 

まどかが何かを察したようにハッとした。昼間にキュゥべえが言っていた事を思い出したのだろう。

 

「あれほどの戦いに割り込むには、同じ魔法少女か仮面ライダーでなければダメだ。でも君にならその資格がある。本当にそれを望むなら、ね」

「! ダメだよまどか! 契約しちゃダメ! あいつはあたしが何とかする! だから……!」

「けど、これ以上君が戦うのは危険すぎる。魔力を使いすぎているからね。魔力が切れたら、本当に殺されてしまう」

「けど……!」

 

キュゥべえの真意に気づいたさやかが真っ先に反対したが、キュゥべえの言っている事も間違いとは言えない為、反論出来ない。

仮にマミや隼人が後方から支援しようとしても、戦闘が速すぎて狙い撃つ事が難しい状態にある。他のメンバーではどうする事も出来ない。

となると、後はまどかの力に頼る他ないが、まどかの脳裏には、先日マコトに言われた事を思い出していた。

 

『1度魔法少女や仮面ライダーになってしまったら、もう救われる望みなんてない。あの契約は、たった一つの希望と引き換えに、全てを諦める事になるんだからな』

「でも、でも……!」

 

そうこうしているうちに、多節棍が誠司の足に絡みつき、バランスを崩した。

 

「うぉっ……!」

 

再び多節棍が振るわれるが、どうにか紙一重で回避した。誠司は肩で息をするように立ち上がった。杏子の方も、そこそこ息が上がっているようだ。

 

「……面倒だな。そろそろ終わりにしてやるよ」

「それしか、ないみたいだな」

 

杏子が槍に全神経を研ぎ澄ませているのに対し、誠司はガンガンジッテを放って、レバーを1回引いて押した。

 

『ダイカイガン! カエサル! オメガドライブ!』

「おぉぉぉぉぉっ!」

 

誠司も同じように右足に集中力を高めて、エネルギーを収束させた。

どちらも必殺の一撃を当てようとしている。そう思ったキュゥべえは焦ったように、とっさにまどかに声をかけた。

 

「まどか! 早く契約するんだ! このままじゃ、2人とも無事では済まない!」

「わ、私は……!」

「まどか! よせ!」

 

タケルが制止するが、まどかの耳にはその言葉は入ってこなかった。

まどかが迷う間にも、2人は飛び上がって、杏子は槍を、誠司は右足を突き出していた。

 

「「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」」

 

2人は雄叫びを上げながら突っ込んだ。

 

「(あの槍さえどうにかすれば、杏子はもう何も出来ないはずだ! これでどうにかするしかねぇ……!)」

「(狙うはあいつの心臓! それでイチコロだ!)」

 

互いに的を決めて、加速をつけた。

 

「これで終わりだよ!」

「いくぜぇ!」

 

もう、何でもよかった。誠司を、大切な友を救えるのなら、この先どうなったって構わない。

そう思ったまどかは涙目になりながら、キュゥべえに向かって叫んだ。

 

「私、魔法少女に……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それには及ばないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭上から聞き覚えのある声が聞こえてきたその瞬間、誠司と杏子に異変が起こった。

 

「な……⁉︎」

「はっ……⁉︎」

 

どういうわけか、2人の位置がズレており、それぞれの必殺技が地面を抉った。

一体何が起きたのか。誠司や杏子を含む一同がふと、2人の間の方に目を向けると、そこには、

 

「無駄な事は止めておけ」

 

魔法少女、そして仮面ライダーの姿になっているほむらとマコトの姿があった。

 

 

 




キリがいいので今回はこの辺で。

アニメで見返しても、やっぱり杏子は強いですね〜。

そういえば、余談ではありますが、あの「WIXOSS」がまさかの新シリーズでのアニメ化! 本当にビックリしました! でも同時に嬉しくもありました!

次回もお楽しみに。
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