魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
今回は謎多きあの魔法少女が登場!
「僕に話って?」
晶から咀嚼してもらっていたキュゥべえが、卵焼きを食べながら、不思議そうな声を出した。その言葉に、仁美は無言で頷いた。
それは、あすなろ市での、龍達の救出成功から何日か経った頃の事。いつものように屋上で昼食を摂っていた際に、久々にキュゥべえと再会し、一緒にご飯を食べていたのだが、しばらくして、仁美がキュゥべえにある頼み事をしたのだ。
「これを見てくださいまし」
そう言って仁美が取り出したのは、グリーフシードによく似た球体だった。
それを見た一同は即座に反応を示した。
「あっ。それって確か……」
「確か、商店街で出たあの魔女もどきから出てきたグリーフシードだよな?」
「そうですわ。あすなろ市でしか見かけなかったこのグリーフシード。ちょっと気になってたので、このまま私が保管してましたの」
「あすなろ市……」
仁美の言葉を聞いて、キュゥべえは、表情では分かりづらかったが、訝しんだ様子になった。
「……で、どうなのキュゥべえ。何か分かる?」
さやかが尋ねると、キュゥべえは首を傾げた。
「詳しい事は僕にも分からない。けど、これはグリーフシードとは呼べない代物なのは間違いないね」
「えっ?」
「グリーフシードじゃ、ない……?」
告げられた事実に、一同は困惑していた。
「おそらくこれは、魔女の力を模倣したものだ。これにはソウルジェムの穢れを取り除く力はない」
「じゃあ、擬似グリーフシードと言ったところか」
隼人が唸りながらそう呟いた。
「まさか、あの魔法少女や仮面ライダーって、これを使って人を魔女化させたのか?」
「そうだろうね。こうしてみる限り、強い魔力が込められてるのが分かる。これだけの魔力なら、人に影響を及ぼすのも納得がいく」
「ソウルジェムやアイコンが反応しなかったのも、偽物だったからかもしれないな」
星斗が気味悪げに擬似グリーフシードを睨みつけた。
そんな中、キュゥべえが仁美の方に顔を向けた。
「仁美。このグリーフシード、しばらく僕に預からせてくれないか? 他にも何か情報を引き出せるかもしれない」
「分かりましたわ」
そう言って仁美は擬似グリーフシードをキュゥべえに渡した。
すると、誠司がこんな質問をした。
「そういやキュゥべえ。ここんところ見かけなかったけど、どこ行ってたんだ?」
「例の魔法少女及び仮面ライダー狩りの調査さ」
魔法少女及び仮面ライダー狩り。その言葉を聞いて、一同の表情は引き締まった。
「……やっぱ、あの事件まだ続いてたんだ」
「あぁ。昨日もまた被害が出てたよ」
「また同じ手口か?」
「うん。何れも鋭利なもので切り刻まれていた」
「『黒い魔法少女』って奴が犯人なんだろ?」
「何だか怖いね……」
まどかが不安げな表情を見せた。
「ここまで被害が増えると、今後に支障をきたす事になるから無視できないね。僕も片っ端から疑いのある者達を調べてみるよ」
「その方がいいな。俺達もいつ狙われる立場になるか分からないからな」
「分かったわ。私達も無茶しない範囲で出来る限り調べを進めましょう。良いわね?」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
マミの言葉に、まどか達は元気よく返事をした。
「……とはいえ、ここまで手がかり無しとなると……」
駅前にある噴水に近いベンチに腰掛けながら、星斗はポツリと呟いた。
それから数日間、見滝原市内をパトロールしたり、魔女を退治しながら黒い魔法少女についての情報を得ようとしたが、思った以上に難航していた。
放課後になって、この日は珍しく星斗は1人で行動していた。たまには息抜きも必要だという事で、1人になって街をぶらぶらしていた。
「(そういや、前に杏子って奴が言ってた『織莉子』って奴の名前を口にしてたけど、あれとは関係なさそうだしな……)」
以前、タケルとさやか、そして遅れて登場した誠司が杏子と戦い終わった際に彼女が言っていた事を思い出した。
「(……つーか、何で黒い魔法少女は、俺ら魔法少女や仮面ライダーを殺そうなんて考えるんだ?)」
もっともな疑問を、星斗は自らにぶつけた。
一番妥当な理由としては、グリーフシードの独占だろう。今までは衝突こそあれど、殺しには発展しなかったから、中々目につかない可能性ではある。だが、そんな事をすれば、他の魔法少女や仮面ライダーが黙っていられるはずがない。にもかかわらず、黒い魔法少女はお構い無しに、残虐な殺し方で「殺すために殺す」ように被害を拡大させている。
「……魔法少女や仮面ライダーの殲滅でも考えてやがるのか?」
何れにせよ、その黒い魔法少女は自分達にとってかなり厄介な存在だ。一刻も早く対処しなければ、いつ危険が降りかかってきてもおかしくない。
星斗は気を引き締めて、何か甘いものでも買いに行こうとして立ち上がろうとしたその時、
「うわぁ〜! ないよ、ないよぅ〜!」
すぐ近くから少女の叫び声が聞こえてきたので振り返ってみると、すぐ近くの茂みを中をかき分けて、時折頭を抱えながら発狂している、同い年くらいの少女が見えた。
「(何やってんだ? あいつ……)」
星斗がポカーンとした表情でその少女を見つめていた。少女は星斗の視線に気づく事なく辺りを見回しながら叫び続けていた。
「どうしよう⁉︎ ないよ! ないっよー! もうダメだ、生きていられない! さよなら私!」
「(……何か探してるのか?)」
そう推測した星斗が足元を見てみると、キーホルダーが地面に転がっていた。もしかしたらこれが彼女の探し物かもしれないなそう思った星斗はキーホルダーを拾い上げて声をかけた。
「おーい」
その声に、少女はグイッと体ごと星斗の方を向いた。
「探し物って、こいつの事か?」
「!」
すると、少女は目にも止まらぬ速さで星斗の手にあるキーホルダーをひったくり、涙を浮かべながら抱きしめた。
「うわぁー会いたかった! もう2度と、あなたを離さないよ!」
「(なんか、変な奴だな……)」
そう思いながら、用は済んだとばかりにその場を立ち去ろうとした時、少女は星斗の制服を引っ張って彼を引き止めた。
「君のおかげで、愛は死なずに済んだ! 私は呉 キリカだ! 恩人である君にお礼がしたい!」
「……へ? 愛? 恩人……?」
何を言っているのかさっぱり分からずに困惑する星斗。そんな表情を見た少女……キリカはますます顔を近づけながらさらに声を上げた。
「ダメなの⁉︎ 恩人は礼を拒否するのかい?」
ついにはすんすんと泣き出そうとする始末。
さすがに見てられないと思った星斗は、苦笑しながら彼女に構ってやる事にした。
「分かったわかった。お礼させてもらうからさ。とりあえず落ち着けって」
「ホント⁉︎」
途端に顔をパアッと輝かせた。その変わりやすい性格を見て、何となく放っておけないような感覚がした。
「じ、じゃあ、何か奢ってもらおうかな。えぇっと、まぁ付いてきてくれ」
「うん!」
キリカは元気よく頷き、星斗の隣に並んで、2人は近くにある有名なクレープ屋に足を運んだ。
「(……あれ? これって俗に言うデートってやつ?)」
不意にそう感じた、彼女いない歴=自分の年齢の星斗は内心ガッツポーズをとっていた。
そうこうしている内に、星斗はキリカの奢りでクレープを買って食べ始めた。
「ねぇ。恩人はホントーにそれでいいの?」
キリカはどこか不満げな表情を浮かべていた。
「良いよ。つーか奢ってもらって本当に良かったのか?」
「むしろ足りないよ! 私の愛がその薄いお菓子と同等とは思われたくないよ!」
「いや、そんな事は無いけど……」
星斗は苦笑しながらクレープにパクついた。路地裏に入ってから、キリカの手に握られているキーホルダーに目を向けた。
「そういや、それって誰かからのプレゼントなのか?」
「……えっ? あ、うん……。そう、そうだよ」
キリカはどこか戸惑ったように返事をしたが、星斗は特に気にしてなかった。
「よっぽど好きな奴なんだな。その人って。何となく見てて分かったぜ」
「……!」
すると、キリカの目が大きく見開いた。そして立ち止まり、俯いた。
「……キリカ?」
「す、好きとか、そんなに、軽々しいものじゃないぞ!」
「き、キリカ?」
突然の剣幕に、星斗はたじろいでいたが、キリカは止まらない。それどころかますますヒートアップして、星斗に顔を近づけている。
「愛は全てだ! 好きだの大好きだの、愛を単位で表すようなやつは、愛の本質を知らない!」
「そ、それは……」
「いいかい恩人⁉︎ 君は本当の愛ってのを知ってるの?」
「本当の、愛……?」
キリカの鋭い目つきに、星斗は次第に恐怖を覚え始めた。
「俺はまだ、その……。そこまで愛って事はよく知らないけど、ちょっと落ち着いてくれよ。頼むからさ」
「だってね!」
それからキリカは、不気味なほど笑みを浮かべて、こう告げた。
「愛は無限に有限だよ」
刹那、キリカの立っていた地面の辺りから鋭い爪のようなものが飛び出してきて、あっという間にキリカを包み込み、袋の中に閉じ込めて、彼女の背後に現れた漆黒の空間に引き込まれてしまった。
「! キリカ!」
異変に気付いた星斗は慌てて空間内に入り込んだ。
周りの景色の不気味さ、そして何よりポケットに入っていたアリトルゴーストアイコンの過剰な反応が示している事から、そこが魔女の結界である事は容易に判断出来た。
「よりによってこんなに早くご登場とはな……!」
彼の目の前には、先ほどキリカを閉じ込めた袋の上に乗っかっている、阿修羅像のような猫の頭や鋭い爪をギラつかせた魔女が星斗を見下ろしていた。
〜猫の魔女、ステーシー〜
〜彼女に捕らわれた者は最後、息絶えるまで弄ばれる事になるだろう〜
「待ってろ! 今助ける!」
そう叫ぶと、星斗の腰にゴーストドライバーが展開され、ポケットからアリトルゴーストアイコンを取り出してスイッチを入れ、ドライバーに装填した。
『アーイ! バッチリミロー! バッチリミロー!』
ドライバーからパーカーが飛び出すと共に、星斗は右手を高く掲げて握り拳を作ると、勢いよく叫んだ。
「変身!」
レバーを引いて押し、装甲がつけられると、パーカーが上半身に羽織られた。
『カイガン! アリトル! レディゴー! 覚悟! ドキドキゴースト!』
変身し終えた星斗こと、仮面ライダーアリトルは、猫の魔女を見据えながら、救出方法を考えていた。
「(キリカはまだあの中で生きてるはずだ。けど、その分大技を使ったら巻き込む事になっちまう)」
そう考えているうちに、猫の魔女から仕掛けてきた。慌てて星斗は横に飛んで回避した。
「えぇい!考えても仕方ねぇ! こうなったら真正面から……!」
星斗が構え直したその時、彼の耳に声が聞こえてきた。
「……い、は……」
「! この声……!」
星斗が目を向けたその先には、先ほどキリカが閉じ込められた袋が。その袋が内側から引き裂かれようとしている。
「愛は無限に有限なんだ……」
それは間違いなく、キリカの声だ。だが、その声色は先ほどと全く違っていた。
「だから、私はあの2人に無限に尽くす」
そして袋の中から人影が飛び出し、一瞬で猫の魔女の死角に飛び上がった。
「恩人を故人にするのも、無限の中の有限に過ぎないからね」
その声と共に、猫の魔女は、目にも留まらぬ速さでバラバラにされた。その人影の両手に装備されていた、鋭い鉤爪によって。
その人物は、黒い眼帯をつけたキリカだった。そして彼女が振るった力は間違いなく魔法少女による、魔法の力だった。
だが、それ以上に星斗が驚いたのは、彼女の服装だった。黒い眼帯に黒いドレス。それら全てが漆黒を象徴しているかのようなその全体像を見た星斗は、とっさにこう表現した。
「黒い、魔法少女……⁉︎」
すると、キリカが星斗の姿を見て、ニヤリと笑った直後、両手を上げて、鉤爪を出現させると、ためらう事なくその手を振り下ろした。
「! くっ……!」
とっさの事で動けずにいた星斗だったが、衝撃だけが襲ってくるだけで、直接的なダメージは襲ってこなかった。
「な、何だ……? (今のは、俺への攻撃じゃないのか?)」
だが、そんな悠長に考えている暇はなかった。再びキリカが背後をとって鉤爪を振り下ろしてきたのだ。
「うぉっと!」
「!」
今度は見切って回避した星斗はそのままキリカと距離をとった。そして、改めてその全身を眺めて確認してから、星斗は呟いた。
「……ここ最近頻発してる、魔法少女及び仮面ライダー狩り。殺された奴らは、みんな鋭利な刃物で切り刻まれたようだって、隼人さん達が言ってたぜ。まるで、お前の足元のようにな……」
星斗がキリカの足元に見えた裂け目を見て、星斗は確信した。
出来ることなら認めたくなかった事実。信じたくもなかった現実。それら全ての感情を押し殺して、星斗は断言した。
「呉 キリカ、いや、黒い魔法少女」
そして彼は拳を構えた。目の前に広がる脅威に立ち向かう為に。
「お前が、この事件の犯人だったんだな……!」
「……うん!」
対する黒い魔法少女……キリカは迷う事なく肯定した。先ほど以上に不気味な笑みを、余裕そうに浮かべて。
キリがいいのでこの辺で。
次回は星斗対キリカの激しい戦いが繰り広げられます。
次回もお楽しみに。
※タイトル修正しました。指摘してくださった方、ありがとうございました。