魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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今回は戦闘メインの回です。


48. 私達が、救世を成し遂げます

白い魔法少女、織莉子は自宅の壁に飾られた、一枚の大きな写真に目を向けていた。そこには、幼い頃の織莉子の可愛らしい姿と、その両親が仲睦まじく写っていた。

 

「お父様、見ていらっしゃいますか? 間も無く、お父様の夢が叶いますよ」

 

その様子を、遠くからリクオが見つめていた。

 

「私とキリカ、そしてリクオが叶えてみせます」

 

その瞳からは、何物にも勝る自信が満ち溢れていた。

 

「私達が、救世を成し遂げます」

 

そう誓った後、織莉子はくるりと写真に背を向けた。

 

「……さてと、それじゃあお菓子作りを始めましょうか。またキリカがお腹を空かせて駆け込んでくるに違いないから。リクオも手伝ってくれるかしら?」

「あぁ。俺に出来る事なら、何なりと」

「ありがとう」

 

そんな会話を交わしながら、2人は部屋を出てキッチンに向かった。

 

「(それにしても、キリカのやつ遅いな……。どこで道草を食ってるんだ?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのキリカは現在、星斗を切り刻もうとしている真っ最中だった。

 

「うりゃ!」

「くっ! お前何でこんな事を……!」

 

星斗が歯ぎしりしながらキリカにそう叫ぶが、本人は不気味な笑みを浮かべながら俊敏に動いている。

 

「……っ! 理由は話してくれそうにないな……!」

 

だが、ただやられっ放しに陥るほど、星斗も甘くはない。攻撃をかわしながらも反撃のタイミングを見計らっていた。が、キリカの動きはその予測さえも越えるスピードで星斗を翻弄していた。

キリカが身を翻して飛び上がると、一気に星斗に接近し、その鉤爪を振り下ろした。一瞬の事で判断が追いつかなかったが、右手から血が少しだけ出ており、遅れて痛みが走った。

 

「ぐぁっ……!」

 

思わずもう片方の手で怪我をした右手を抑えていたが、キリカは攻撃の手を緩める事なく鉤爪を振り下ろした。身の危険を感じた星斗は地面に転がって、両足で攻撃を受け止めた。これにはキリカも意外そうな反応を示し、高笑いした。

 

「あははっ! 凄いや、止めたね! でも! 次もあるよ! 次々次々!」

「(こ、こいつ壊れてやがる……!)」

 

直感的にそう感じた星斗は畏怖して、そのまま両足を伸ばしてキリカを蹴飛ばした。が、難なく着地して再び星斗めがけて一直線に飛びかかった。

 

「ほらほらどうしたの? 反撃しないの? 恩人は慎み深いのかな? あははははっ!」

 

余裕そうにそう叫ぶキリカに対し、星斗は攻撃を受け流しながら仮面の下で焦りの表情を浮かべていた。

 

「(じ、冗談じゃねぇぞ……⁉︎ めちゃくちゃ速すぎて、攻撃する暇もあったもんじゃねぇ……!)」

「ひゅー! 隙ありだよ!」

 

一瞬の隙を突いてキリカが星斗の正面に向かい合うと、鉤爪を交差させるように振り下ろした。

 

「あ、がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

攻撃をまともに受けた星斗の全身から、火花と共に斬撃が装甲を貫いて鮮血が飛び散った。魔力で防御されているとはいえ、これ程の斬撃は、一般人ならまず間違いなく無事では済まないだろう。

痛さのあまり、地面を転がっている星斗に、さらに追い討ちをかけるようにキリカが接近してきた。

 

「あー、お腹空いたな〜。さっき私もクレープ食べときゃ良かった。……うん! 後で買って帰ろっと。織莉子とリクオにも持ってってあげなきゃね」

「はぁっ……! はぁっ……!」

 

キリカのその呟きが聞こえてこないほど、星斗は回避する事に必死だった。しかし、何度も攻撃を受けるうちに、ある程度の攻撃の軌道が読めてきたのか、そこからは一度も掠める事なく全て避けきっていた。これも経験の差というやつなのだろう。

一旦距離を置いた星斗を見て、キリカは歓喜していた。

 

「へぇ。こんなに死なない契約者は初めてだよ! 新記録更新おめでとう!」

「そうかい。なら、タケル達に自慢出来るな。会話が弾むぜ」

 

星斗は息を整えながらそう答えるが、内心では現在のこの状況に焦りを感じていた。

 

「(……とは言ってもこいつはまずいよな。そもそも魔法の相性が悪すぎる。互いに接近戦重視ではあるけど、速さじゃ向こうに分がある。かといってニュートン魂になって引力と斥力を操って、重力で拘束しようにも、捕らえる前にあのスピードにかわされちまう。下手したらその隙にやられちまう。どうすりゃ……)」

 

星斗が必死に思考を巡らしていると、不意にキリカが両手をだらりと下げた。そして、ぶっきらぼうに呟いた。

 

「飽きた」

「? おいおい。随分飽きっぽいな。まだ決着ついてもないのに。まるで子供みたいだな」

「……あん?」

 

不意にキリカがガラリと口調を変えた。その口調から感じられたのは、純粋な怒りだった。

 

「だ、れ、が、こっ、子供だぁ!」

「うぉっ⁉︎」

 

余計に火に油を注いでしまったらしく、先ほど以上に俊敏に切りかかった。これを見た星斗は大きく後ろに飛び上がって後退した。そして着地と共に拳を構えたのだが、それよりも早くキリカが飛び上がって次の一手を仕掛けてきた。

 

「鈍い! 狙いもさせないよ!」

「だったら……!」

 

そう叫んだ星斗は、その右拳を地面にぶつけた。と同時に爆煙がキリカの視界を遮った。

 

「⁉︎」

 

一瞬の事で驚いたキリカだったが、構わず鉤爪を振り下ろした。が、手応えは感じられない。やがて煙が晴れて地面を見たキリカは舌打ちした。そこには星斗の姿は無かったからだ。

 

「……ちぇ。この煙に紛れて逃げられたか……。恩人は意外とセコい人物だね。……うん。でもまぁ、その、あれだ。些細だ。そう遠くには行けない」

 

だが、キリカの余裕の表情は変わらない。彼女の目線の先には、血が何滴か滴り落ちているのが見えたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

キリカの読み通り、星斗は煙幕でキリカの視界が遮られているうちに、なるべく遠くに逃げて、結界内にあった巨大な毛糸玉のところに身を潜めていた。彼の肩からは少量の血が流れている。

 

「……早いとこ隼人さん達と合流して治さないとヤバイな。この傷じゃ、これ以上回避出来るか分かったもんじゃねぇからな……」

 

そう愚痴りながら辺りを見渡して、脱出経路を探っていたのだが、すぐに異変に気がついた。

 

「……そういや、魔女は死んだのに、何でこんなに結界が残り続けてるんだ?」

 

確かに、この結界を張った主である猫の魔女はキリカに瞬殺されていた。それからそこそこ時間が経っているはずなのに、一向に結界が解ける気配がない。

結界の崩壊が異常に遅すぎる。そう感じた星斗は、途端に気づいてしまった。キリカがなぜこれほどまでに速く攻撃出来るのかを。

 

「(! そうか! そもそもあいつが速いんじゃない……! あいつが魔法で周りを遅くしてるだけなのか……! だとしたら、あいつの魔法は、『敵の速度を落とす』事か……! それなら、結界が残り続けてるのも納得がいく……!)」

 

そう推測した星斗は思わず地団駄を踏んだ。

魔法少女は、同じ魔法少女や仮面ライダーの魔力を感知出来る。星斗と接触してそれを感じ取ったキリカは、彼を殺す為に近づいたのだ。おそらく、魔女に囚われたのもわざとに違いない。結界に取り込まれたと思っていた時にはすでに細工をしていたのだ。

完全に罠にはめられてしまったと同時に、人生初デートが不運なものから始まってしまった事を少しばかり嘆いていたが、そんな悠長な事を考えている暇は無かった。

 

「(……けど、どうすれば? キリカ以外の行動が遅くなってるなら、実質『速い』事と同じ……)」

 

そう思いながらも、星斗は移動する事にした。いずれここもキリカに突き止められてしまう。反撃手段も考えてないのに見つかったら、今度こそジ・エンドだ。

 

「……こんなところで死ねるかよ! タケルやみんなが待ってるのに……!」

 

星斗は小さくそう叫ぶが、かといって、本人は怪我をしており、そこまで遠くには逃げれない。

 

「(この怪我じゃ、魔法にかかってなくても鈍くなってるのも同じか……)」

 

星斗が近くを歩いていた使い魔に目を向けた時、不意にある妙案を思いついた。

 

「鈍く……。! それなら……!」

 

星斗はニュートンゴーストアイコンを取り出しながらそう呟いた。そして辺りを見回しながら次々と作戦を脳内で組み立てていた。

 

「……後は、あいつの攻撃をかわしながら、直接見極めるしかないか」

 

そう呟きながら、星斗はアイコンのスイッチを入れた。

 

『アーイ! バッチリミロー! カイガン! ニュートン! リンゴが落下! 引き寄せまっか!』

「(正直、このやり方が通るか分からねぇ。けど……!)やってみせる……! 俺のプライドにかけて、あいつを止めてやる……!」

『ガンガングローブ!』

 

ニュートン魂になった星斗は、ガンガングローブを装備し、体の痛みに耐えながら、勝利のチャンスを伺う為に、キリカを待ち構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、キリカは結界内を飛び回りながら星斗を探していた。天井に張り巡らされたボタンを足場にして下方を見下ろしていたが、時折上空を見上げながら、若干焦ったように呟いた。

 

「……まずいな。結界が崩れ始めてる。早く仕留めないと」

 

キリカの言うように、結界がゆっくりではあるが、徐々に亀裂が入り始めていた。

彼女の魔法『速度低下』も決して万能ではない。時間が経てば結界も消滅する。そうなれば、星斗は逃げ出し、仲間を呼ぶか、そのまま逃走するはずだ。それはキリカにとって最悪の展開だった。

 

「(魔法少女や仮面ライダーの死体なんて、幾ら見つかっても問題ないけど、さすがに生きて帰すのはダメだ。私の存在がヤツ(・・)に見つかる事があったら、いずれ織莉子やリクオに到る)」

 

キリカは再び神経を集中させながら、星斗を探し始めた。

 

「(手は私が下す。もしもの時はリクオに手伝ってもらえば良い。けど、織莉子は指示してくれればそれで良いんだ。決して矢面に立たさせない……!)」

 

それから立ち止まり、ポツリと呟いた。

 

「……もう、あの私に戻るのは嫌なんだ」

 

彼女の脳裏には、ありとあらゆる物事に興味が湧かず、感情のこもっていない会話を聞くだけでも、くだらないと評価し続けて、周りから自ら孤立していたキリカに対して、分け隔てなく構ってくれた2人の言動がはっきりと浮かんでいた。

救ってくれた彼らが実現しようとしている世界を叶えたい。それが、彼女の原動力となっていた。

だからこそ……。

 

「織莉子とリクオだけが私を愛してくれる。だから、それ以外はいらない……! 全部消えちゃえば良いんだ……!」

 

そう呟くキリカの視線の先には、待ち構えていた星斗がいた。目の前にキリカという脅威が迫ってきたにもかかわらず、星斗は動じる事はない。その事に少しばかり訝しんでいたが、どのみちキリカの意志は曲がらない。

 

「君なら上手く逃げれたかもしれないのに、そんなにのんびり歩いてたなんてね。恩人は生まれたばかりの赤ん坊かい?」

「どうだろうな……? 勝負はこれからだと思うぜ」

「ふ〜ん。やけに自信があるみたいだね。まぁ、とにかく見つけたし。よし、刻もう!」

 

そう言うが早いか、キリカは急接近してきた。星斗は一歩退いて回避し、拳を振るった。

 

「おぉっ!」

「ふっ!」

 

が、キリカはすぐさま身を翻し、回し蹴りで星斗を吹き飛ばした。

 

「ほらほら! 英雄アイコンで姿を変えたからって、もう手詰まりなんて言わないよね?」

「そのつもりさ」

 

キリカの攻撃をかわしながら呟く星斗の言葉には、先ほどと違って余裕があるようにキリカは思えた。

何か狙っている。そう思って一旦距離を置いた時、星斗は右手をレバーに手をかけた。

 

「? どうするつもりだい?」

「見せてやるぜ。お前を倒す、とびっきりの隠し玉ってヤツをな!」

 

そう叫ぶと、星斗はレバーを4回引いて押した。

 

『ダイカイガン! アリトル! オオメダマ!』

 

すると、ドライバーからアイコンによく似た形の巨大なエネルギーが込められた球体が星斗の頭上に出現した。それを見たキリカは拍子抜けた顔をした。キリカ自身、その技を見た事があるからだ。

 

「何かと思えば、それってリクオも使える技じゃないか。それで私を倒すつもりかい?」

「あぁ。もちろんさ」

 

手の内がばれているにもかかわらず、星斗は動揺を見せない。キリカは警戒心を強めた。

 

「お前は確かに迅い、けどその分一つ一つの攻撃が軽くなっちまう。だからキリカ、お前が俺を殺す十手を打つ前に、俺は一手で絶対にお前を倒す!」

「……ふぅ〜ん。くっくっく……!」

 

星斗の自信ありげな言葉を聞いて、キリカはさも楽しそうに笑みをこぼした。

 

「面白バカみたいだね。じゃあ、やってみてくれよっ!」

 

キリカがそう叫ぶと同時に、それまで3本ずつだった鉤爪が、指の本数と同じ5本ずつ、計10本に増えた。

 

「(! 爪が増えやがった!)」

「ご期待に添えまして! 手数を増やしてあげたよ! これで文字通り、一手で十手だ。さぁ、散ね」

 

身を屈めたキリカは、地面を蹴って星斗に接近してきた。

 

「(チャンスは一度……!)ここだ!」

 

それよりも早く、星斗は飛び上がり、エネルギー弾を思いっきり蹴り飛ばした。エネルギー弾は真っ直ぐに標的であるキリカに向かっていた。だが、キリカにはその一撃を無力化する魔法を兼ね備えてある。

 

「(速度低下!)」

 

魔方陣を展開させたキリカは、右手の鉤爪をかざすと、エネルギー弾の威力を弱まらせた。勢いがなくなれば、どれほど強力な魔法も脅威には成り得ない。そう言わんばかりに、キリカはエネルギー弾を横切った。そして、エネルギー弾の背後(・・・・・・・・・)に回り込む形で、星斗に鉤爪を当てる態勢に入った。

星斗が両腕を突き出しているが、そんな事はキリカにとっては無意味な行動に見えた。

 

「うん! よく頑張りました! じゃあね、バイバイ!」

 

最後にそのような言葉をかけて、鉤爪を振り上げた、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガッ……⁉︎」

 

呻き声を上げたのは、星斗ではなく、攻撃態勢に入っていたはずのキリカだった。

背中に痛みが走ったのを感じたキリカが、ふと目線を背中に向けると、エネルギー弾がキリカの背中に直撃しているのが見えた。そしてエネルギー弾はそのまま爆ぜて、キリカは訳の分からぬまま、思いっきり地面に叩きつけられていた。

 

 

 




キリがいいので、今回はこの辺で。

次回は、見事に反撃出来た星斗が仕掛けたトリックが明らかになります。

次回もお楽しみに。
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