魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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52. もう人間じゃないから……かもね

「騙してやがったのか、俺達を……」

 

月明かりに照らされながら、そう静かに怒りを露わにして呟いたのは誠司だった。

2人が息を吹き返した後、ほむらとマコトは、無言で立ち去り、杏子も握り拳を固めながら、ゆまと共に歩道橋を後にした。そして現在、まどか達から事情を聴いたさやかと誠司は、場所を人気のない公園に変えて、キュゥべえを問い詰めていた。すでに彼らの頭の中から、可愛らしい容姿というイメージは消え去り、不吉な赤い瞳を輝かせた生き物としか捉えられなかった。

後方からまどか達が2人の様子を見守る中、長椅子に座るキュゥべえは困惑したように話し出した。

 

「僕は、運命を受け入れる覚悟を持って魔法少女や仮面ライダーになってくれって、きちんとお願いしたはずだよ。実際の姿がどういうものかは、説明を省略したけれどね」

「なんで……! なんで教えてくれなかったのよ⁉︎」

 

あくまで自分は悪くないと押し通すキュゥべえを見て、誠司の隣にいたさやかは睨みつけながら叫んだ。対するキュゥべえは平然と答えた。

 

「訊かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね。事実、マミや隼人でさえ今まで気づかなかった訳だし」

 

悪びれた様子もない言い方に、マミと隼人はギロリと睨みつけた。そんな2人の様子から目線を、さやかと誠司の頭へと向けた。

 

「そもそも君達人間は、魂の存在なんて最初から自覚出来てないんだろう?」

 

そして赤い瞳は2人の頭から胸の部分へ。

 

「そこは神経細胞の集まりでしかないし、循環器系の中枢があるだけだ。そのくせ、生命が維持出来なくなると、人間は精神まで消滅してしまう。そうならないように、僕は君達の魂を実体化し、手に取ってきちんと護れる形にしてあげたんだよ。少しでも安全に魔女と戦えるように、ね」

「ざけんじゃねぇ! んなの大きなお世話だ! 俺達はそんな体にしてもらってまで戦おうだなんて思ってなかったんだぞ!」

「そうよ! 余計な事してくれたわね……!」

 

2人が怒ってソウルジェムやアイコンをキュゥべえに向かって投げつけた。キュゥべえはひょいとかわし、椅子の上に転がったアイテムを見て、ため息をつきながら、近寄った。

 

「それが君達の考えだったのなら、君達は戦いというものを甘く見過ぎている」

「……何?」

「例えば、お腹に槍が刺さった場合、肉体の痛覚がどれだけの刺激を受けるかっていうとね……」

 

キュゥべえはそう言いながら、右足をさやかのソウルジェムに、左足を誠司のカエサルゴーストアイコンに乗っけた。そして青白い光が2つのアイテムから放たれた。

最初は何のつもりか分からず呆然としていたさやかと誠司だったが、異変は突然起こった。

 

「ひ……⁉︎」

「……ぅあっ⁉︎」

 

突如、2人が同時に腹を抱えて地面に転がり、体をくの字に曲げた。

 

「! さやかちゃん⁉︎」

「誠司⁉︎ どうした⁉︎」

 

それを見たまどか達は慌てて2人に駆け寄った。

 

「ぎ、ぁぁぁぁぁっ……!」

「がぁぁぁぁっ! あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

2人は、尋常ではないほどに腹部に苦痛が走った。あまりの痛さに、呼吸さえまともに出来ないようだ。タケルはキュゥべえに向かって叫んだ。

 

「お前、2人に何をした!」

 

そんな2人の様子を見下ろしながら、キュゥべえは淡々と告げた。

 

「これが本来の痛みだよ。ただの一発でも動けやしないだろう?」

 

キュゥべえからの質問に答えられないほど、2人は腹部への強烈な痛みに苦しげな表情を浮かべていた。そしてさらにキュゥべえは言葉を続けた。

 

「思い出してもみなよ? 佐倉 杏子との戦いの時、君達は随分と彼女の槍による攻撃をその身に受けていたはずだ。にもかかわらず君達が最後まで立っていられたのは、強すぎる苦痛がセーブされていたからさ。君達の意識が肉体と直結してないからこそ可能な事なんだ。おかげで君達はあの戦闘を生き延びる事が出来た。もちろんタケル、君も例外では無いよ」

 

キュゥべえがタケルの方を向くと、タケルはハッとした表情を浮かべた。

よくよく考えてみれば、妙な話だった。いくら魔法の力である程度体力が向上しているとはいえ、あれだけの攻撃を受けて、普通なら後に響くほどのダメージが蓄積されていてもおかしくないはずなのに、グリーフシードで穢れを取り除いている時にはもう痛みが引いていた。さやかの治癒魔法があったからそれほどまで気にしてはなかったのだが、もしそれが、このシステムによる痛覚の緩和によって引き起こされたものだとしたら……。タケルは考えただけでも身震いしていた。

依然として、さやかと誠司は涙目のままのたうち回っている。それを見ていた仁美が耐えきれずにキュゥべえに向かって叫んだ。

 

「もうやめてください! お願いします! これ以上はお2人が……!」

 

仁美の必死の説得が届いたのか、キュゥべえはようやく両足をソウルジェムやアイコンから離した。光が消えて、2人はようやく激痛から解放された。息を荒げながら立ち上がろうとする2人を見ながらキュゥべえは言った。

 

「慣れてくれば、自分の意思で完全に痛みを遮断する事が出来るよ。もっとも、それはそれで動きが鈍ってしまう事になるから、僕としてはあまりお勧めはしないけどね」

「……なん、で……」

 

誠司が両手を地面につけて座りながら、ようやく口を開いた。その口元からは、よだれか汗か分からなかったが、透明な液体が滴り落ちていた。

 

「……どうして、俺達を、こんな、目に……!」

「戦いの運命を受け入れてまで、君達には叶えたい望みがあったんだろう? それは間違いなく実現したじゃないか」

 

違うかい? と、ニッコリ微笑みながらそう答えるキュゥべえに対し、誠司は舌打ちして目線を逸らした。

これ以上何を言っても無駄だ。そう思った一同は、2人の肩を支えて、ゆっくりと歩きながらその場を後にした。後に取り残されたキュゥべえも、まどか達が今まで以上に暗くしている事に首を傾げながら闇夜に溶け込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐怖の一夜が明けて、まどかはずっとベッドの上で哀しみに暮れていた。やがて知久から声をかけられて、まどかはリビングに向かった。その日はなるべく家族に顔を見られないように、急いで歯を磨き、なるべく平然とした顔を装って朝食を食べた。そんな娘の行動に訝しみながらも、詢子は会社に向かい、その後から、まどかはいつも通りに登校しようとした。

行ってきますの一言を告げてから玄関の扉を開けようとした時、不意に制服の袖を引っ張る者がいた。弟のタツヤだった。

 

「ねっちゃ」

「? どうしたの、タツヤ?」

「ねっちゃ、元気ないよー。何かあったのー?」

 

どうやらタツヤには、まどかが元気が無いように見えたらしい。まどかは首を横に振って、タツヤの頭を撫でた。

 

「大丈夫だよ。ねっちゃは今日も元気だよ。じゃあ、行ってくるね」

「……うん! いってらっしゃ〜い!」

 

タツヤはすぐに笑顔でそう返事した。そうして今度こそ、まどかは扉を開けて外に出た。

 

「……」

 

その後ろ姿を、エプロン姿の知久が心配そうに見つめていた事に気付かずに。

まどかが道路沿いに出ると、タケルとばったり会った。その表情はいつもと違って暗い。

 

「……あ、あの。おはよう……」

「あぁ、おはよう……」

 

とりあえず朝の挨拶だけを済ませて、それから2人は黙って並んで歩いていった。一言も言葉を交わす事なくさやか達との待ち合わせ場所に向かうと、すでに仁美や御成、誠司、晶が表情を暗くしながら待ってくれていた。が、そこにはさやかの姿は無かった。

 

「……さやかは?」

 

タケルが尋ねたが、一同は首を横に振るだけ。今度はまどかが口を開いた。

 

「……あ、あの、昨日の事なんだけど……」

「言うな……!」

 

そう短く叫んだのは、誠司だった。誠司はやるせない表情のまま、まどかの方に目を向けずに背を向けた。

 

「今は、言わないでくれ……」

 

そう言ってから誠司は歩き出した。他の一同もそれに続いて歩き出した。道中では会話する事なく学校にたどり着き、教室に黙って入っていった。

教室内では、すでにほむらとマコトが席についていたが、さやかの姿はやはり無い。しばらくして教室に入ってきた和子が、さやかが風邪で休むと連絡し、みんなも充分風邪に気をつけるようにと告げた。クラスメイト達は、いつもは人一倍元気がありそうなさやかが休む事に若干驚いていたが、何人かは、本当の理由を悟っている為、顔を俯かせていた。

授業の内容が一切入ってこないまま、昼休みを迎えて、まどか達はいつも通りに屋上で昼食を済ませた。その際、やってきた星斗とマミ、隼人にはさやかが来ていない事を告げた。マミと隼人はさも分かっていたかのように小さく頷いていた。

午後の授業も終わり、一同が帰宅の準備をする中、まどか達はほむらとマコトを呼び止めて、半ば強引に屋上に連れていった。2人も彼らが話したい事を察したのか、抵抗する事なくついていった。

その日は雲一つない晴天で、平和な雰囲気が辺りを包んでいた。が、屋上ではそれとは対照的に暗く沈みきった雰囲気が漂っている。

 

「単刀直入に確認するわ」

 

屋上に集まって最初に口を開いたのはマミだった。

 

「あなた達は知ってたのね? ソウルジェムやアイコンがどういうものなのかを……」

 

問われた2人は無言で小さく頷いた。

 

「……なんで、教えてくれなかったんだ?」

 

星斗が尋ねると、マコトが逆にこう切り返した。

 

「なら聞くが、俺達が前もってこの事を話したとして、お前達は信じてくれたか?」

 

マコトの質問に誰1人として何も言えなかった。

確かに、今の魔法少女や仮面ライダーは、ソウルジェムやアイコンさえ無傷なら、どれだけダメージを受けても平然としていられる無敵の体と捉える事も出来るが、昨夜、杏子が言っていたようにゾンビのようなものとも言い換えれるのだ。とてもじゃないが、こうしている今でも簡単には信じきれて無かった。

次に口を開いたのはタケルだった。

 

「キュゥべえは、どうしてこんな酷い事を……」

「あいつは酷いとさえ思っていないわ」

 

そう答えたのはほむらだった。その表情からは、まるで感情を窺わせないものであった。

 

「人間の価値観が通用しない生き物なのよ。だから、何もかも奇跡の正当な対価だと、そう言い張るだけよ」

「全然釣り合ってないよ!」

 

まどかが感情を露わにしながら叫んだ。

 

「だって、あんな体にされちゃうなんて……! さやかちゃんはただ、好きな人の怪我を治したかっただけなのに……!」

 

好きな人の為に。その言葉を聞いて、仁美の唇が強く噛み締められて、苦悶の表情を浮かべていた事に、誰も気づく事は無かった。

そんな中、マコトが肩をすくめながらこう言った。

 

「奇跡である事に違いは無い。不可能を可能にしてる訳だからな。だから、美樹 さやかが一生費やして介護したとしても、上条 恭介がもう一度演奏出来るようになる日はこなかったはずだ。巴 マミだってそうだ。契約が無ければとっくに死んでただろうからな。秋永 誠司、お前だって契約があったから店が潰れずに済んだ」

「む……、そ、それは……」

「マコトの言う通りよ。奇跡はね、本当なら人の命でさえ、購えるものじゃないのよ。それを売って歩いているのが、あいつ」

 

ほむらとマコトの脳裏には、忌々しくキュゥべえの笑みが浮かんでいるに違いない。まどか達はそう思った。

 

「……さやかちゃんは」

 

と、今度は晶が2人に尋ねた。

 

「さやかちゃんだけでも、元の暮らしに戻す方法は無いんですか……?」

 

晶のその表情からは、本気でさやかを心配している事が伺える。が、2人はその質問に答え辛そうな表情だ。

 

「……そ、そうだ! 魔法さえ使わなければ、グリーフシードなんていらないんだよね? 魔女と戦わなくても良いんだよね?」

 

まどかが妙案を思いつき、それを口に出した。だが、その希望の活路はマコトの一言で脆くも崩れ去る。

 

「それは賢明とは言えないな、まどか。契約者はただ体を維持するだけでも、少しずつ魔力を消耗していく。だからやがては、グリーフシードが必要になってくる。そうなると、魔女を倒して手に入れるしかない。どのみち戦いは避けられない」

「そんな……」

 

告げられた内容に、まどかは言葉を失う。他のメンバーも、何も言い返せなかった。どうにかしてさやかを救う手立てが無いか考えている一同を見て、ほむらは冷たい言葉をかけた。

 

「前にも言ったわよね。美樹 さやかの事は諦めてって」

「……!」

 

それは、以前御成が契約を決意する少し前に寄った喫茶店で2人に協力を求めた際に言った一言。タケルが睨みつけようとした時、それまで黙っていた仁美が石段に座りながらも、ポツポツと語り始めた。

 

「さやかさんは私を、助けてくれたんです……」

 

そしておもむろに立ち上がった仁美の目からは、堪えていたであろう涙が溢れていた。

 

「あの時、魔法少女として戦う事の運命を知り、怖くなって逃げ出して、いっその事命を絶とうと考えてました。全てに諦めかけてたんです。……けど、さやかさんがそんな私に勇気をくれて、今の私がいるんです……! さやかさんが魔法少女じゃなかったら、まどかさん達も危険な目に遭った上に、きっと私はもう……!」

「感謝と責任を混合してはダメよ、志筑 仁美」

 

仁美の言葉を聞いてもなお、情に流される事なくほむらは冷たくあしらった。

 

「あなたには、彼女を救う手立てなんて無い。あなただけじゃないわ。私やマコト、ここにいる全員だってそうよ。だからこれだけは言っておくわ。引け目を感じたく無いからって、借りを返そうだなんて、そんな出過ぎた考えは捨てなさい」

「……どうして?」

 

まどかは涙声で、2人に向かって初めて憤りを含めた目つきで睨みつけながら呟いた。

 

「どうして2人とも、そんなにいつも冷たいの?」

 

そう問われた2人は、しばらく黙っていたが、ほむらは左指のソウルジェムを、マコトは取り出したスペクターゴーストアイコンを見つめだした。そしてほむらはどことなく自嘲気味に呟いた。

 

「もう人間じゃないから……かもね」

「……そうだな」

「そんな訳あるかよ!」

 

すると、唐突に屋上に声が響き渡った。振り返った一同の目線は声の主であるタケルに向けられた。

 

「俺は絶対に認めない! 魔法少女や仮面ライダーが人間じゃないなんて事を! だって俺達人間には、心があるだろ! 心があるからこうやって感情をぶつけながら話す事も出来るし、今までも時々協力して戦う事も出来た! だからもう、自分は人間じゃないなんて2度と言うなよ!」

「「……」」

必死に自分の言葉で訴えるタケルを、ほむらとマコトは冷徹な目で睨み返していたが、やがて埒があかないと思ったのか、タケル達に背を向けて、屋上から去ろうとした。

 

「……話はもう済んだだろ? なら、もうここに用は無い」

 

マコトがそう呟いて一歩踏み出した時、タケルは再び叫んだ。

 

「俺は絶対に諦めないからな! さやかや誠司達も、そしてお前らも絶対に見捨てたりなんかしない! 必ず見つけ出してやるんだ! みんなを助ける方法を! お前らに分からせるまで、何度だって立ち向かってやるからな!」

「「……」」

 

一瞬2人は立ち止まったが、すぐに足を動かして屋上を後にした。

2人の姿が見えなくなって、タケルは疲れたのか、背後のフェンスにもたれかかった。

 

「……やっぱ、言う事違うな、タケルは」

 

そう賞賛したのは、誠司だった。

 

「俺だったらとっくにあいつらに言いくるめられて諦めてたはずなのに、ちゃんと自分の意志を曲げないんだからな」

「そうですな」

「確かにそうね」

 

誠司に引き続き、御成とマミもそう呟いた。

 

「そうか? 俺はただ、自分を信じて、自分の心に従っただけだぞ。英雄達がそうだったようにさ」

「そうか……」

 

隼人は改めて、タケルの心の強さを実感した。

それから一同は今後の事を話し合っていたのだが、昨晩の一件もあって、思うように話が進まない。

 

「……まさか、ソウルジェムやアイコンの正体が、こんな途方もないものだったなんて……」

「今でも信じられねぇよな……」

「ただ、よくよく考えてみると、ヒントは最初から目の前に転がってたんだ。ソウルジェムの『ソウル』は日本語では『魂』。そしてアイコンの『コン』は、音読みで同じく『魂』、つまりどちらも心を指している。この変身アイテムは文字通り自分の命そのものだった訳だ」

 

隼人の推測に、一同は否が応でも納得してしまった。

そんな中、誠司は先ほどから少し黙り込んで考え事をしていた。そして意を決したのか、誠司は立ち上がって腕を伸ばした後、一同に声をかけた。

 

「……悪いけど、これから用事があるんだ。先に失礼させてもらうぜ」

「? どちらへ行かれるのですか、誠司殿?」

「ん、ちょっくらな」

 

誠司はそう言いながらマミと隼人に目配せした。その意図を理解した2人は強く頷いた。

そうして誠司は身支度を済ませると、カバンを持って、とある場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで少し時間を巻き戻し、昼休みが終わった頃の事。

魔法少女や仮面ライダーの真実を知った魔法少女の一人、さやかはショックから立ち直れず、今朝から仮病を使って一日中部屋のベッドに寝転がっていた。カーテンは完全に閉め切られており、頭から布団を被った状態で、手に握られている自らのソウルジェムの輝きを見つめていた。

思い起こされるのは、昨晩キュゥべえから聞かされた衝撃の事実と、キュゥべえによって体感させられた、腹に感じた痛み。それら全てが憂鬱な気持ちと混じり合い、午後になっても気分が優れなかった。

 

「……こんな体になっちゃって……。あたし、どんな顔して恭介に会えばいいのかな……?」

 

幼なじみの顔を思い出し、一途な想いを抱きながら、誰に尋ねた訳でもなくそう呟いた時だった。

 

『いつまでもしょぼくれてんじゃねーぞ、ボンクラ』

「……!」

 

脳裏に響いた声に驚き、布団を払いのけて跳び起きたさやかは、すぐに窓に駆け寄ってカーテンを開けて下を見下ろした。

そこには、予想通り、声の主である杏子が、右手に持ったリンゴに噛り付きながら佇んでいた。もう片方の手にはリンゴが入った紙袋が抱えられている。ゆまの姿が見当たらなかったが、さやかが探すよりも早く、杏子はテレパシーで声をかけた。

 

『ちょいと面貸しな。話がある』

「……」

 

杏子の目を見て、いつもと違う雰囲気を感じ取ったさやかは、急いで着替えると家族に見つからないように外に出て、杏子と共に、とある場所へと向かっていった。

 




どんな姿や形になっても、心がそこに確かにあるから、繋がり合える。そんな想いを抱きながら執筆した回でした。

次回は登場人物の中から2人の過去が明らかになります。諸事情で少し更新が遅れてしまう可能性がありますが、そこはご了承ください。

次回もお楽しみに。
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