魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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なんだかんだ言って書くのにやや苦労した回。


55. 本当の気持ちと向き合えますか?

「えっ? あいつらが……⁉︎」

「本当なの?」

「あぁ。今は店の手伝いをしてくれてるらしい。とにかくこれからは杏子もゆまも一緒に戦ってくれる。一応隼人さんとマミさんには先に伝えておいた。2人とも喜んでたな」

「おぉ、左様ですか!」

「さすがですわね、誠司君」

 

翌朝、まどか達は誠司から昨日の一件を全て聞いて、驚きと喜びに満ちていた。

あの後、誠司は杏子とゆまを連れて、誠司の家族が住む家に入り、そこで誠司が事情を説明すると、一家はすんなりと受け入れて、2人を住まわせる事に決めた。当初、本当に住まわせてもらえるとは思ってなかった杏子は戸惑いの表情を浮かべていたが、断る理由も無かった為、秋永家で衣食住を共にさせてもらう事にした。

そして現在、いつものように集合場所に集まった所で改めてタケル達に報告をしていた。ちなみにさやかだけがこの場にいなかった。先に登校してるのか、今日も休むのか定かでは無いが。

その後、彼の口から、教会で聞いた杏子の過去、そして家の中でゆま本人から話してくれた、彼女の過去が語られた。事実を知ったまどか達は、複雑な気持ちになった。

 

「そうだったんだ……。杏子ちゃんもゆまちゃんも、そんな事が……」

「だからあんなに突っかかってきてたって訳か……」

「僕達以上に、辛い思いをしてたんですね」

「そうだな。杏子の話もそうだけど、ゆまの虐待の方も、中々に堪えるものだったな」

 

事実、2人が家族にそれぞれの過去(魔法関連を除く)を打ち明けた後、真っ先に誠司の母が涙をこれでもかと流しながら、2人を強く抱き締めていた。その時に2人が恥ずかしそうに顔を赤くしていたのを、誠司はよく覚えていた。そしてその話がきっかけで、母が誠司の父と祖父に、一緒に家族として住まわせる事を強く懇願していた、との事。

 

「けど、これであいつらも改心出来たのも事実だし、これから協力して頑張って行こうぜ、みんな!」

「うん!」

「そうですわね」

「あ、そういえば……」

 

不意にまどかが誠司にある事を尋ねた。

 

「この事、さやかちゃんにも言った方が良いよね。早く仲直りしてもらいたいから……」

「あぁ、その事だけどさ……。この話、さやかにはもう少し黙っといてくれるか?」

「えっ?」

「なぜ、そのような事を?」

 

皆が疑問に思う中、誠司が説明し始めた。

 

「昨日、杏子から聞いた話じゃ、さやかとは一応誤解が解けたみたいだけど、まだギクシャクしてるらしいからな。ここはまだ話すべき所じゃ無いと思う。ぶっちゃけ、殺しあう寸前まで戦った相手だからな。これからゆっくり時間をかけて仲を深めていけば良いと思ってな」

「なるほど。確かにそれもそうかもしれませんわ」

 

誠司の説明に、仁美は納得した。

 

「ま、誠司がそう言うんなら、それでも良いぜ」

「おう、悪いな。そういうわけで頼むぜ」

「……あ、噂をすれば……」

 

晶が目線を前に向けた先には、トボトボと学校に向かって歩くさやかの姿が。一同は目を合わせると、さやかに向かって駆け寄ってなるべく明るく声をかけた。

 

「さやかちゃん、おはよ!」

「よう、さやか!」

「おはようでございますぞ!」

「おはようございます、さやかさん」

「さやかちゃん。その、おはよう……」

「あ、あぁ。おはよっ」

 

さやかは一瞬驚いた表情になったが、すぐに頭の後ろに腕を組んで、朝の挨拶を返した。どこか空元気で、取り繕っているような表情になったさやかを見て、まどか達は少し心配そうな顔つきになった。

 

「さ、行こっか」

 

が、さやかはそれに気づかずに、さっさと先頭を歩いていった。他の6人もその後を追った。

しばらく歩いた後、まどかがさやかに声をかけた。

 

「さやかちゃん、大丈夫なの……?」

「もう大丈夫。平気だよ。心配いらないから……」

 

穏やかな笑みを浮かべてそう答えるさやかを見て、まどか達は少しばかり安心した。

 

「さ〜て、今日も張り切って……!」

 

さやかが片方の腕を伸ばそうとした時、不意に前方の方を見て、思わず硬直した。

 

「……? さやか?」

 

まどか達がさやかの視線の先を追ってみると、松葉杖をつきながら歩いていた、1人の少年が見えた。そしてそれは7人ともよく知る人物だった。

 

「あら? 上条君、退院なさったのですか?」

 

仁美が、松葉杖の少年……上条がいる事に驚いてそう呟いた。どうやら今日から見滝原中に再び通い始めるようだ。

ふとタケルが目線をさやかの方に向けると、彼女は幼なじみが元気に行き交うクラスメイト達と挨拶しているにもかかわらず、うかない顔をしていた。喜びよりも気まずさが滲み出ているようだ。おそらく一昨日の件もあって、自分が人間とは言い難い存在であると意識しているが故に、どう接したら良いのか迷っているのだろう。

とにかく今はきっかけを作っていくしかない。そう思ったタケルは思い切って大声で上条の名を叫んだ。

 

「おーい! 恭介!」

 

すると、その声を聞いて、上条が立ち止まってタケルら親友の方を振り向き、笑顔を見せた。

 

「! みんな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝のホームルームで和子先生から、上条の腕の怪我が治り、足の方も順調に回復しつつある為、今日から登校するようになった事が伝えられ、クラスメイトは拍手を送っていた。依然としてさやかは少し顔を俯かせながら、小さく拍手していた。その後、上条に転校生であるほむらとマコトを紹介し、休み時間にはクラスメイトの男子達が上条に群がって、久々となる会話を楽しんでいた。

その際、親友のまどか達は気後れして入っていけず、遠巻きに眺めているだけだった。何度かまどかがさやかに、声をかけるように促してみたものの、小さく首を横に振るだけだった。ふと見ると、仁美も今朝とは打って変わって、物静かに何かを考え込んでいるような表情でさやかを見つめていた。

昼休みになり、タケルは今度こそとばかりに、上条に声をかけ、誠司と共に彼の体を支えながら屋上に向かい、隼人達と共に昼食を食べる事にした。先に待っていたさやかは上条の登場に驚いていた。

 

「き、恭介……⁉︎」

「や、やぁ、さやか……」

 

上条も、やや気まずそうに返事をした。

遅れて隼人やマミといった上級生らが到着し、歓迎ムードで会話を交えながら昼食を摂った。

 

「良かったわね、上条君。怪我の治りが早くて」

「あ、はい。ありがとうございます。これも、さやかやタケル、みんながお見舞いに来てくれて、励ましてくれたおかげですよ」

「所で、もう足の方は大丈夫なのか?」

「あぁ。家に籠ってばかりじゃ、リハビリにならないしね。来週までには松葉杖無しで歩くのが目標なんだ」

「へぇ……、そうなんだ……」

 

ようやくさやかが口を開けてそう呟いた。が、やはりまだ暗い感じがしている。

すると、上条がふとこんな事を口にした。

 

「そういえば、あの転校生達の事なんだけど……」

「? マコト君とほむらちゃんの事?」

「うん。ほら、今朝のホームルームで和子先生から紹介してもらっただろ? あの時から、2人ともずっと僕の方に目線を向けてくる事が多いんだ」

「あいつらが……? 何で恭介に?」

「僕にも分からない。何かした覚えも無いし、第一、今日初めて顔を合わせたばかりなのに……。みんなは、あの2人の事で、何か知ってたりする?」

「い、いや、その……。まぁ、あいつらはここに来てからずっと変な感じだし、気にしなければ良いんじゃね?」

「そ、そっか……。タケルがそういうなら……」

 

上条がやや納得した表情で頷く中、タケルは内心、ほむらとマコトが上条にも気を配っている事に疑問を抱いていた。

 

「(俺達だけじゃなくて、今度は恭介にまで……。あいつら、俺達に何の因縁があるってんだ……?)」

 

タケルが人知れず首を傾げる中、仁美もまた、人知れず神妙な面持ちで上条とさやか、両者を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、運命の歯車は唐突に動き出す。

 

「……で、話って何よ? 仁美」

 

それは、授業が終わった放課後の事。いつも利用しているファーストフード店の一角で、さやかと仁美が対面して座っていた。

その近くの、木で出来た壁を挟んだ向かい側では、まどかとタケルが2人にバレないようにやや前のめりになって聞き耳を立てていた。

何故このような状況になったかと言うと、こうだ。

この日は各々家庭の都合でバラバラに帰る事になっており、さやかがいつものように身支度を済ませて、いざ帰ろうとした時、仁美に呼び止められたのだ。何でも、大事な話があり、2人きりで話したいとの事。その会話を偶然近くで聞いていたまどかとタケルが、仁美の方を見てみると、彼女の眼差しからは何かしらの決意が感じられており、何かあるのでは、悟った。

さやかも気圧される形で仁美に同行し、まどかとタケルも、不思議に思って2人に気づかれないようにこっそりとついていったのだ。

そしてやってきたのは、馴染み深いファーストフード店。さやかと仁美が席に座ったのを確認したまどかとタケルは、2人の視界に入らないように、近くの席に座った。幸い、2人とも面と向かい合っている相手に意識を集中していた為か、気付かれる事なく、ベストポジションに居座る事が出来た。が、逆に言えば、それだけ重要な事が話題になるという前触れでもある。まどかは思わず対面に座るタケルに小声で話しかけた。

 

「仁美ちゃん、何を話すのかな……?」

「さぁ……? でも、俺達に内緒にしてまで話す事だし、何か嫌な予感がするな……」

 

タケルがオレンジジュースをひとすすりしてから、眉をひそめてそう呟いた。そして、その予感が的中したかのような会話が、次の瞬間繰り広げられた。

 

「恋の、相談ですわ」

 

最初に口を開いたのは真剣な表情の仁美だった。それを聞き、さやかの表情が引き締まる。彼女なりに親友として向き合おうとする姿勢が見られた。

 

「私ね、前からさやかさんや他の皆さんに、秘密にしてきた事があるんですの」

「えっ? うん……」

「「……?」」

 

さやかだけでなく、すぐ近くにいるまどかとタケルも仁美の発言に訝しんだ。そして次に仁美の口から出てきた一言は、3人を驚愕させるものだった。

 

「ずっと前から、私……、上条君の事を、お慕いしてましたの」

「……!」

「「……⁉︎」」

 

放たれた言葉に、さやかは目を見開き、まどかは言葉を失い、タケルは驚いて口に運ぼうとしたストローを動かす手を止めた。仁美からのまさかの発言に、3人は戸惑いを隠せない。が、仁美の表情を見るからに、嘘は言っていないようだ。

それに対し、さやかの反応は……。

 

「……へ、へぇ〜。そ、そうなんだ……。あ、あはは……。まさか仁美がねぇ……。なーんだ、恭介の奴も、隅に置けない奴だなぁ……」

 

と、後ろに手を組んで笑いながらそう言った。が、その声は震えており、明らかに動揺を押し殺そうとしており、必死に演技をしているのは誰の目からも明白だった。

仁美も全てを見透かしているらしく、真顔のまま言葉を続けた。

 

「さやかさんは、上条君とは幼なじみでしたわね」

「う、うん……。まぁ、その……。腐れ縁っていうか、何ていうか……」

「本当に、それだけですか?」

「……」

 

段々と声がしぼんでいくさやかに対し、仁美は強い口調でそう言い、遂にさやかは言葉を失った。

しばらくの沈黙の後、仁美は右手に覆われていた左手を少し前に突き出し、左指につけられた指輪型のソウルジェムをさやかに見せつけるようにしてから再び口を開いた。

 

「……私は、今日までずっと嘘をついてきました。魔法少女として契約した頃も、目の前の恐怖に苛まれて、汚い嘘をついて、あなた方から逃げ出した……。そして今も、こうして上条君の事も全て……」

 

生唾を呑むさやかに対し、仁美は強い眼差しでさやかを見据えた。

 

「……でも先日、このソウルジェムの事を知り、一晩考えた結果、私は心に決めた事があるんですの。それは、もう自分に嘘はつかないって。目の前の事から目を背けずに、立ち向かって、面と向き合っていこうって。……あなたはどうなんですか? さやかさん」

「……え」

「あなた自身は、本当の気持ちと向き合えますか?」

「な、何の話をしてるのさ……」

 

さやかが力なく声を出すのに対し、仁美はさらに語気を強めた。

 

「あなたは、私の大切なお友達ですわ。……だから、抜け駆けも、横取りするような事もしたくないんですの」

 

毅然と言い放つ仁美に完全に気圧されており、さやかは呆然としたままである。

 

「上条君の事を見つめていた時間は、私よりもさやかさんの方がずっと上ですし、何より、今の上条君がいられるのも、あなたが交わした契約によるもの。それは覆せない事実ですわ。だから、あなたには私の先を越す権利があるべきです」

「ひ、仁美……」

 

そして仁美は決定的な一言を告げた。

 

「明日、……いいえ、それだけではアンフェアですから、明後日の放課後に、私は上条君に告白します」

「……!」

「「……」」

 

その一言は、さやかにとって、かろうじて繋がっていた何かが断ち切られるようなものだった。

近くで聞いていたまどかとタケルは、ショックのあまり、息をするのも忘れる程だった。

 

「ですので、丸2日だけお待ちしますわ。その間に、さやかさんは後悔なさらないよう、決めてください。上条君に気持ちを伝えるべきかどうかを。もしそれで上条君に想いが伝わったのでしたら、私は潔くこの件から退かせてもらいます。そして、これまで通り、魔女退治を頑張っていきましょう」

「あ、あたしは……!」

 

さやかが何か言おうとしたが、言葉が上手く出てこないのか、黙り込んでしまった。

仁美も、用は済んだとばかりに、「では、また今晩」とだけ告げて席を立ち、さやかに一礼してからその場を去っていった。さやかは呆然とし、口をパクパクさせながらその後ろ姿を見つめていた。

全てを盗み聞きしてしまった2人はどうする事も出来ず、その場に固まっていた。

 

「た、タケル君……」

「……」

 

不安げな表情を見せたまどかはタケルに声をかけるが、タケルは何も言えなかった。

親友でもある自分達でさえ、予想だにしなかった急展開に思考が上手く回らない。

2人は、その後でさやかが、無言で立ち去っていったのにも気付かない程に呆然としたまま、しばらくの間、ファーストフード店に留まっていた。




さすがに今作では仁美も当事者なので、1日だけではキツい所もあるだろうと思い、2日分待つ事にさせました。

次回はかなり残酷描写が目立つ回になります。

次回もお楽しみに。……って、多分次回はそんな雰囲気にはならないだろうなぁ……。
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