魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
久々にあのアイコンが登場します。
さやかの肩を担いで歩いていたタケルだったが、途中で額に水滴が落ちてきた感覚がしたかと思うと、雨が降り出してきた。
さやかの方を見ると、肌はいつもより白く透き通っており、血の気が無いように思えた。かなり衰弱しているように見えた為、早くどこかで雨宿り出来る場所を探した方が良いと思いながら辺りを見回すと、バスの停留所が視界に入った。
「あそこで雨宿りするぞ」
タケルが後からついてきているまどかと晶に声をかけると、2人は何も言わずに頷いた。
そのバス停は透明な筒状のパネルで覆われており、ベンチや灯りがついていた。時刻表を見てみると、すでにバスの運行は終わっているらしく、ここからバスに乗って帰る事は出来ないと判明した。とはいえ、未だに雨足が強い為、ここで休憩するのが一番だろうとタケルは思った。
4人はベンチに並んで座り、一息ついた。が、さやかに至っては肩で息をするかのように、体を何度も上下させていた。
4人はしばらくの間、無言のまま座っていたが、少ししてから、まどかが口を開いた。
「……さやかちゃん。あんな戦い方、ないよ……」
「……」
それを聞いて、タケルと晶はゆっくりとまどかの方に顔を向けたが、さやかだけは顔を俯かせて表情を硬くしたまま、まどかに背を向けるように座っていた。
まどかの脳裏に浮かんだのは、先ほどの、影の魔女との戦いの際、さやかの狂気に満ちた笑い声や、あまりにも狂った戦い方だった。思い出すだけでも辛くなったまどかの目から、涙が流れている。
「痛くないなんて、嘘だよ……! 私達の方が見てるだけでも、痛かったもん。感じながら痛くても良いなんて、そんなの、ダメだよ……! このままじゃさやかちゃん、いつか本当に壊れちゃうよ……!」
「……あぁでもしなきゃ、勝てっこないんだよ。だってあたし、才能無いからさ……」
「んな事言ったって、あんなやり方は無いだろ……。自分が傷つく事前提で戦うなんて、リスクが高過ぎだろ」
タケルがダメ出ししたのに続いて、まどかが会話を続けた。
「タケル君の言う通りだよ。あんなやり方でこれからも戦ってたら、勝てたとしても、さやかちゃんの為にならないよ……」
「……あたしの為にって何よ」
不意にさやかの口から、恐ろしく低い声が聞こえてきた。3人がさやかの方に顔を向けると、さやかは左手を突き出し、指輪型のソウルジェムを卵型に変えて、まどかに見せつけるようにして叫んだ。
「こんな姿にされた後で、何があたしの為になるって言うのよ!」
彼女は本気で怒っている。そう察した3人だが、まどかは萎縮しながらも口を開いた。
「さやかちゃん、でも……」
「今のあたしはね。『魔女を殺す』っていう、ただそれだけしか意味を成さない石ころ同然の存在なのよ。タケルや晶もそうみたいに、死んだ体を動かして、生きてるフリをしてるだけ。そんなあたしの為に、誰が、何をしてくれるっていうの? 考えるだけ無意味じゃない」
「でも私は……どうすればさやかちゃんが幸せになれるかって……」
「だったら……!」
まどかの言葉を遮り、さやかは逆上しながらまどかを睨みつけ、そしてこう言い放った。
「だったら、あんたが戦ってよ」
「……!」
決定的な一言を言われ、凍りつくまどか。タケルは目を見開いて、立ち上がろうとして思わず中腰になった。
「前にキュゥべえが言ってたじゃない。あんた、タケルと同じくらいに才能あるんでしょ⁉︎ あたしや他のみんなみたいに苦労しなくても、簡単に魔女をやっつけれるんでしょ⁉︎」
「わ、私は……」
『まどかが魔法少女になれば、タケルと同じくらいに強くなれるよ』
いつの日か、キュゥべえが告げた一言が、まどかの脳裏によぎった。そこから何も言えずにオドオドしていたのを皮切りに、さやかは叫びながらまくし立てた。
「あたしの為に何かしようってんなら、先ずあたしやタケル達と同じ立場になってみなさいよ! 無理でしょ? 当然だよね! あんな事情を知って、それこそただの同情で人間なんて、やめられるわけ無いもんね!」
さやかは冷ややかな瞳をまどかに向けて言うと、タケルが我慢出来ずに立ち上がってさやかに糾弾した。
「おい! いくらなんでも言い過ぎだろ! まどかがどれだけお前の事を心配して言ってるのか、分かんねぇのかよ! 大体、同情云々とかでさやかの事を気にかけようだなんて、今のまどかが本気で考えてるなんて思ってるのか⁉︎」
「あんたは黙っててよ! あたしよりずっと才能あるクセに! 何でも出来るからって、しゃしゃり出て来ないでよ!」
「さやか、お前……!」
カッとなって喧嘩腰になりつつあるタケルを無視して、さやかはまどかに顔を向けながら言った。
「タケルみたいに何でもできるクセして何もしないあんたの代わりに、あたしがこんな目に遭ってるの!」
「……やめろ」
「それを棚に上げて知ったような事を言わないで! ムカつくだけだから」
「やめろって言ってんだろ!」
遂に堪忍袋の緒が切れたタケルが、さやかに掴みかかろうとした時だった。
タケルとさやかの間に、それまで黙っていた人物……晶が両手を広げてバッと割り込んできた。
「晶……⁉︎」
タケルが素っ頓狂な声を上げると同時に、晶は顔をさやかの方に向けた。その瞳には涙が溜まっているが、彼なりに怒りを露わにしているようで、強く睨みつけている。
「……酷いよ。今のは、いくらさやかちゃんでも、酷過ぎます! みんな、さやかちゃんの事が心配でしょうがないのに、それなのに、タケル君やまどかちゃんの事を悪く言うなんて、何も分かって無いのは、さやかちゃんの方じゃ無いですか!」
「……だったら何よ」
普段怒る素振りすら見せない晶に戸惑う事なく、さやかは晶を見て、呆れを含んだ表情のまま冷徹な声色で言い返した。
「あんたがこのあたしをどうにか元の体に戻してくれるっていうの?泣き虫でドジで取り柄も無さそうなあんたが? 無理に決まってるでしょ⁉︎」
「そ、それは……!」
「あたし達の助け無しじゃ何にもやってけない、どうしようも無いお荷物が、調子良い事言ってんじゃ無いわよ! あたしはね、あんたのそういう所が前から大嫌いだったのよ!」
「!」
大嫌い。その一言が、晶の心の底に深く刻まれる感覚がした。堪えていた涙が零れ落ちていくのを見て、さやかは鼻を鳴らして背中を向け、踵を返すようにしながら言い放った。
「もうウンザリなのよ。そういうのに付き合っていくのが」
そう言いながらバス停の外に出ていくさやか。
今の彼女を離してはいけない。本能的にそう思った晶が一歩踏み出してさやかを止めようとした。
「さ、さやかちゃん……!」
「ついて、来ないで……!」
だが、さやかは振り向く事なく土砂降りの夜道を駆け抜けていった。
「あ、あぁぁぁ……! さ、さやか、ちゃん……! う、あぁぁぁ……!」
最早追いかける気力すらなく、膝から崩れ落ちた晶が、地面に手をつきながら、目から流れたものが雨と混じり合い、地面に垂れ落ちた。悔しさのあまり、嗚咽が止まる事なく、悲しみに暮れていた。
そんな晶と、遠くに豆粒のように見えるさやか、2人の後ろ姿を見つめながら、まどかも、何も出来なかった自分を情けなく感じながら、同じように涙を流していた。タケルだけは、呆然とした表情で、何も言えずに顔を俯かせていた。
一方、さやかは地面を流れる雨水の流れに逆らうように坂道を走っていた。その目からは、取り留めもなく涙が零れ落ちており、自己嫌悪に囚われていた。
「……バカだよ、あたし……! あんな事言って、もう救われる訳、無いよ……!」
さやかは、後悔していた。つい感情的になって、まどかやタケル、晶を傷つけるような事を言ってしまった事に。だが、もう過ぎた事は変えられない。完全に、これまで築いてきた関係は今日をもって崩壊した。
これからは一人ぼっちで戦っていくしかない。自分だけで、力尽きるまで魔女を狩り続ける。そんな考えが、さやかの心に重くのしかかった。
この時、さやかは気づいていなかった。さやかの左指につけられたソウルジェムの宝石の部分が、先ほどグリーフシードを使ったにもかかわらず、黒く濁り始めた事に……。
それからしばらくして、タケルは帰途についた。時刻はすでに夜8時を回っていた。家では母親が、ずぶ濡れになって帰ってきた息子を見て驚き、すぐにタオルを持ってタケルの頭を拭いてやった。
どうしてこんな時間まで外にいたのか、と尋ねようとしたが、タケルの消沈している様子を見て、黙り込んでしまった。きっと言い辛い理由があるに違いない。そう思った母親はあえてこれ以上触れない事にした。
その優しさにタケルは、タオルで顔を隠しながら小声で母親にお礼を言って、そのまま二階に上がって、自分の部屋に入っていった。
扉を閉めてから明かりも点けずにしばらく立ち尽くしていたが、急にタオルを握って壁に投げつけた。
「……くそっ!」
それからタケルは近くにあった椅子を蹴り倒すという、生まれて初めての、物に八つ当たりする動作をした。そのままタケルはベッドにうつ伏せになりながら体を預けた。
彼の頭の中には、先ほどのさやかの様子がはっきりと浮かんでいた。
どうしてさやかがあそこまで豹変してしまったのか。どうしてこんな事になってしまったのか。タケルはぼんやりとした頭で必死に考えていたが、やがてある結論に達し、今度は仰向けになって、腕で目の部分を覆い隠しながら、恨めしそうな声で呟いた。
「……全部、俺が悪いんだよな……」
タケルは後悔を含んだ声でそう呟いた。
さやかが魔法少女になるきっかけを作ってしまったのは、自分だ。自分が念入りに忠告しなかったが故に、戦いの運命を背負わされ、人間では無くなってしまった。確かに契約が無ければ、上条の腕は治る事が無かったかもしれないが、今にして思えば、バイオリニストの道は途絶えても、彼自身が新しい道を切り開いていけたかもしれない。そうなれば、さやかは苦労しなくてもいいはずだった。
さやかだけではない、晶や誠司、御成、仁美にも同じ運命が課せられた。すでに魔法少女や仮面ライダーになっていた星斗やマミ、隼人、杏子、ゆまはともかく、さやか達だけでも魔法少女や仮面ライダーにならなくても済んだはずなのだ。だが、幾度となく戦いに関わらせてしまい、危険を承知で契約までさせてしまったのは、自分に原因がある。
そう、タケルは考えていた。
「最低、だよな。俺……」
自嘲しながらタケルは呟いた。
自分のせいで、まどか達に悲しい思いをさせてしまった。まどか達を守るはずが、実際には何も成せていないのが、悔しかった。鼻の奥がツンとし始め、視界がぼやけ始めたその時、頬に何かが当たったような感触がした。
「?」
タケルが眉をひそめて横に顔を向けると、そこに見えたのは、淡いピンク色に光る、ピンクとオレンジのラインが入ったアイコンだった。それは、仮面ライダーとなった次の日の朝に、何故か自分のそばに置かれていた、謎多きアイコンだった。しかし、このアイコンは先ほどまでずっとポケットに入れたままのはずだったが、何故こんな所に置かれているのか。
タケルが疑問に思っていると、なんとそのアイコンは突如として浮かび上がり、タケルの頭の周りを旋回し始めたのだ。
「うわっ⁉︎」
タケルが初めて見る現象にびっくりして飛び上がった。アイコンはしばらく部屋中を動き回っていたが、タケルの目の前に移動すると、そこからフワフワと浮きながら留まっていた。最初は何をしたがっているのか理解出来なかったタケルだが、次第にある可能性が出てきた。
「……もしかしてお前、俺を心配してくれてるのか……?」
アイコンは何も語らない。だが、その質問に答えるかのように、タケルに近づいて頬に擦り付けるように上下に動いた。まるで、憂鬱な気分に浸っていたタケルを慰めるかのように。
「く、くすぐってぇな……。けどまぁ、ありがとよ」
タケルは苦笑しつつも、お返しとばかりにアイコンを撫でた。
「(そう言えば、前にもこんな事あったっけ……)」
それはタケルがいつも落ち込んでいた時に、必ずある人物がそばについてくれて、一緒に悩んだり悲しんだりと、気持ちを共有してくれた時と同じ感覚だった。その時の仕草が、目の前にいるアイコンとよく似ていた為、タケルは思わずその人物の名を呟いた。
「……まどか、みたいだな。お前って」
アイコンは相変わらず何も答えない。ただジッとタケルのそばにい続けた。不思議と、それまでモヤモヤしていた気持ちが晴れて、楽になった気がした。
やがて下の階から母親が気を利かせて、夕食の準備が出来た事を告げたのを聞き、アイコンがベッドの上に着地すると、タケルは笑みを浮かべて、スッキリした表情でベッドから降りて、部屋を出た。
「(……そうだよな。いつまでも悩んでばかりでいるなんて、俺らしくないし。まどか達を関わらせた分、俺がしっかりしてかないとな。先ずはさやかからだ)」
タケルは決意を新たに階段を降りていった。
それから数時間後の事だった。
魔女退治の後、解散しようとしていたマミ、隼人、星斗、誠司、御成、杏子、ゆまの下に、ほむらとマコトが現れて、招集をかけたのだ。大事な話があるのだそうだ。そして2人が指定した時間に彼らは家を抜け出し、予め教えられていた、ほむらの家に警戒しながら向かっていった。
玄関でほむらに迎え入れられて中に入ったわけだが、とある部屋に入って、彼らは息を呑んだ。
外観はいたってシンプルな構造の一軒家だったにもかかわらず、部屋の中は壁一面が白く、巨大な振り子が左右に揺れていた。空中にはいくつものディスプレイが漂っており、とにかく奇妙な構造である事に違いは無かった。
誠司と星斗、御成が呆気にとられて辺りを見回している中、杏子は夜食用のカップ麺を、ゆまは居候している誠司の店の饅頭を食べていた。
「せめて汁は溢すなよ。資料が濡れる」
円形のソファーに座り、マミが淹れてくれた紅茶を飲みながら、マコトは杏子にそう注意した。が、杏子は気にせず箸を動かしていた。マコトの言うように、中心に置かれているテーブルの上には、何枚ものマーカーの書き込みがある地図や写真などの資料が乗せられている。
「……で、話って何だ?」
しばらく紅茶を堪能した後、隼人がティーカップをテーブルに置いて、本題に入った。周りの景色に目を奪われていた誠司、御成、星斗も顔をほむらとマコトに向けた。その質問に答えたのはマコトだった。
「もう直ぐこの街にやってくる、ワルプルギスの夜についてだ」
「……!」
「ワルプルギスの、夜……か」
途端にマミの目が見開き、隼人が、マコトの言った事を繰り返した。その様子を見て、不思議に思った誠司が尋ねた。
「? ワルプルギスの夜? 隼人さん、それって一体……?」
「ワルプルギスの夜は、超弩級の大型魔女の通り名。その強大な力は計り知れないし、正直、俺とマミだけでも絶対に勝てない」
「まだ新米のあなた達は聞いた事がないかもしれないけど、魔法少女や仮面ライダーの中では有名な魔女なのよ」
「そ、そのような魔女が、この街にやってくると⁉︎」
御成が驚いたような表情で叫んだ。
「前にあたしとゆまに近づいて来たのも、そのワルプルギスの夜を倒すっつー事で向こうから話を持ちかけてきたんだ。手を組まないかってな」
「お前にあっさりと裏切られたがな」
マコトがそう呟くと、杏子はバツが悪そうな顔になってそっぽを向いた。
その段取りを無視しながら、ほむらは地図を指差しながら説明し始めた。
「ワルプルギスの夜の出現予測地点は、この範囲……。敵のいずれの攻撃パターンにも対応出来る防衛戦を張る為にも、最低でもこの4ヶ所で構えておく必要があるわ」
「ちょっと待って」
ほむらの言葉を遮ったのはマミだった。彼女は納得がいかない表情で地図を見ながらほむらに質問した。
「この出現予測の根拠って何なの? 随分と詳しく書かれてるみたいだけど」
その質問にほむらはあっさりと答えた。
「統計よ」
「統計? 以前にもこの街にワルプルギスが来たなんて話、聞いた事ないよ?」
胡散臭そうな声を出したのは杏子だった。
「そうだな。ワルプルギスの夜がここに現れた事は一度もない。それにそんな魔女がここに来てたなら、さすがにこの場所には居続けてない。一体何をどう統計したと言うんだ?」
杏子に続いて隼人か質問したが、ほむらもマコトも沈黙を貫いている。それを見ていた杏子がラーメンを啜る箸を止め、呆れたように呟いた。
「まぁ、お互い信用しろだなんて言える柄でも無いけどさ。もうちょっと手の内を見せてくれたって良いんじゃないか?」
「それは是非とも僕からもお願いしたいね。暁美 ほむら、そして工藤 マコト」
杏子が言い終わると同時に、どこからともなく、聞き覚えのある声が。
「……あ!」
ゆまがある一点を指差して叫んだ。そこには、いつの間にかキュゥべえが白い床にチョコンと座っていた。
「どの面下げて出てきやがった、テメェ……!」
冷たい声と共に杏子がソウルジェムを槍に変形させてキュゥべえに突きつけた。
「やれやれ。君達にとって僕は招かれざる客って訳だね」
「ったり前だろ。何しに来やがった」
キュゥべえが呆れつつも、自分を睨みつけてくるマミ達に目を向けて語り始めた。
「今夜は君達にとって重要なはずの情報を知らせに来たんだけどね」
「? 何だ?」
「美樹 さやかの消耗が予想以上に速くなっているんだ。今日の様子を見る限り、魔力を使うだけじゃなくて、彼女自身が呪いを生み始めているとみて、間違いない」
「誰のせいでさやかがあんなんになっちまったと思ってんだ!」
星斗が立ち上がってキュゥべえに抗議したが、本人は淡々と事実を告げた。
「このままだと、ワルプルギスの夜がこの街に来る前に、厄介な事になるかもしれない。君達も充分注意しておいた方が良いと思って、ここに来た訳さ」
「厄介な事……? どういう意味だ?」
「僕じゃなくて、彼らに聞いてみたらどうだい?」
そう言ってキュゥべえは、依然として目を合わせようとしないほむらとマコトに目線を向けた。2人は沈黙を貫いていたが、キュゥべえはその態度を見て、納得したように頷いた。
「……やっぱりね。どこでその知識を手に入れる機会があったのか、僕としてはとても興味深い。これは僕の仮説だけど、君達はひょっとして……」
「聞くだけは聞いたわ。消えなさい」
ようやく目線をキュゥべえに向けたほむらは、冷たい視線を浴びせてあしらった。キュゥべえはやれやれといった表情で目を閉じて、暗闇の中に溶け込んでいった。
キュゥべえがいなくなったのを確認して、杏子は槍を霧散させて元のソウルジェムに戻した。ゆまはジッとキュゥべえがいた所を見つめていた。
「行っちゃったね……」
「放っとくのか?」
誠司が尋ねると、マコトが肩を竦めながら口を開いた。
「今、あいつを殺したところで何ら解決しないからな」
「む……。そうなのか……」
星斗が落ち着きを取り戻して座り直すと、再び誠司が口を開いた。
「なぁ、さっきの話だけど、あいつが言ってた、さやかの事。一体あいつに何が起ころうってんだ?」
「彼女のソウルジェムは、穢れを溜め込み過ぎてるのよ」
「な、何ですと!」
「俺達も遠目から観察してたが、かなり負の感情が大きくなり過ぎている。早く浄化しておかないと、取り返しのつかない事になる」
ほむらとマコトの言葉を聞き、2人以外の面々に緊張が走った。まるでこの先何が起こるか見透かしているような話し方に、一同は疑問を抱いていたが、おそらく何も語ってくれないだろう。そう思ったマミは、別の疑問を投げかけた。
「……分かったわ。美樹さんの方を先に何とかしましょう。それから、もう一つ聞きたい事があるの」
「何かしら?」
「どうしてここにいるメンバーだけしか招集しなかったの? だって私達にはまだ……」
「志筑 仁美と野沢 晶は、精神的に不安定な状況下にある。今彼らに協力を要請しても、足手まといになるだけ。なるべくなら、ここにいるメンバーだけで事を済ませたいのが、私達の考えよ。もちろん、まどかとタケルは論外よ」
と、ここで星斗が意見を出した。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。そりゃあまどかは、まだ魔法少女じゃないから良いとして、タケルはもう仮面ライダーとして何度も戦ってきてるんだぞ? 何であいつを省く必要があるんだよ?」
もっともな疑問をぶつける星斗に対し、マコトは冷徹な口調でこう答えた。
「あいつの助けはいらない。ここにいるメンバーだけで充分だ。正直、あいつがいるだけで俺やほむらのモチベーションか下がるしな」
「いや、あんたがタケルを嫌ってるのは分かるけどさ……」
杏子が頭を掻きながらそう呟いた。マコトがここまでタケルと協力するのを嫌がるのが、どうしても腑に落ちなかったのだ。続けざまに隼人が腕組みをしながら呟いた。
「俺としては、タケルにも協力してもらいたい気持ちがある。……いや、この際はっきりと言わせてもらう。もし本気でワルプルギスの夜に対抗しようと考えているなら、タケルの力が絶対に必要だ。それは今日まであいつを見てきて確信出来る」
「そうね。私もそう思うわ。工藤君、どうなの?」
「……」
一瞬、マコトの表情が曇ったが、すぐに元の冷徹な表情に戻った。
「……俺はあいつと組む気は無い。それだけだ」
「話は以上よ。とにかく今は、美樹 さやかの方を解決するのが先決よ」
2人がそう告げると、そのまま会議はお開きとなり、7人は腑に落ちないまま、仕方なくそれぞれの自宅に戻っていった。
ご意見・ご感想など、随時募集中です。
次回もかなり重い展開が続きます。
次回もお楽しみに。