魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
今宵、運命の日が訪れる……。
次の日の朝、まどかとタケルはいつものように並んで歩いていた。そして、これまたいつものように誠司ら5人と合流して学校へ登校する……とはならなかった。
さやかがいなかったのだ。4人に理由を尋ねたタケルだったが、誰1人としてその理由は分かっていなかった。
「昨晩の事もある故、未だ気持ちの整理がついておらぬのかもしれませんぞ」
御成がそう結論付けた。ただ、まどかとタケル、晶の3人は、何となくではあるが、傷つけてしまった3人に合わせる顔が無いと思っているのかもしれないと考えていた。
仕方なくさやかを除いた6人で学校に向かった。途中で星斗に挨拶しながら教室に入っていくと、ほむらやマコト、上条は席についていたが、やはりさやかの姿は無い。上条が振り向いて挨拶しようとした時、彼も初めてさやかがいない事に気付いた。
「……さやかは?」
「あ、いや……。俺達も知らないんだ、あいつが来てない理由……」
タケルはとりあえず、上条にそう誤魔化した。
しばらくして、和子先生が教室に入って来て、さやかが風邪で休む事になった事をさやか本人から告げられた、と報告した。おそらくそれも仮病なのだろうと、当事者達は察した。
昼休みに入り、マミと隼人、星斗と合流したまどか達は、さやかが学校に来てない事を告げた。
「そう……。やっぱり、昨日の事も関係してるかもしれないわね」
「だろうな」
マミと隼人が口々にそう呟くと、晶がポツリと呟いた。
「……ごめんなさい。あの時、ちゃんと追いかけていれば……」
「? 何かあったのか?」
誠司が首を傾げると、タケルが代表して、魔女退治後に起きた事を話した。
「な、なんと……! そのような事が……!」
「……」
皆が眉をひそめる中、仁美だけは顔を俯かせ、皆に見えない所で拳を握っていた。
「……契約して、仮面ライダーになって、みんなみたいに強くなれたと思ってました。……でも、浅はかだったんですよね。結局、僕は、何にも変わってない……。外見は変わっちゃっても、中身が全然……」
晶が涙声になりながら、無力な自分を責めるように呟いていると、彼の頭にポンと手を置く者がいた。
「んな事で落ち込んでたって、しょうがねぇだろ」
「た、タケル君……」
「さやかはさ……。きっと悩んでるはずだぜ。あいつが言ってたあの言葉……。あれがあいつの本心だとは思えねぇんだ。晶なら分かるだろ?」
タケルに尋ねられた晶は、小さく頷いた。
「っても、俺もまだまだ未熟だしさ。結局、昨日もあいつの事を分かってやれなくて、ギスギスしちまったままになっちまってる」
「タケル君……」
「だからさ。今度会った時は、どストレートに自分の気持ちをぶつけていこうって思ってるんだ。晶にも、それが出来るようになってほしいんだ」
「僕が……?」
「おうよ。さやかに認めてもらいたいなら、そういう所から初めてみな」
「……うん。やってみるよ」
そう呟く晶の声色には、後ろめたさが薄れているように感じられた。そして、それを聞いていた誠司達も続けざまに言った。
「タケルの言う通りだな」
「晶殿、拙者も微力ながら援護して参りますぞ!」
「私も手伝うわ。後輩の面倒を見るのが、先輩の務めでもあるわ。そう思わない、八谷君?」
「そうだな。俺達にしか出来ない事だからな」
皆が良いムードになりつつある中、仁美だけは未だにうかない顔をしている。その瞳に映るものは、果たして……。
先ずは面と向き合って話しかけてみよう。そう考えた晶は、早速次の日から行動に移そうと考えていたのだが、どういう訳か、この日もさやかは学校に来なかった。和子先生に聞いても、本人や両親から連絡が来てないという事で、首を横に振るばかりだった。彼女が2日連続で休む事自体珍しい為、何かあったのかもしれないと思ったタケルは、放課後にさやかの家に行こうと提案したが、
「ごめんなさい。今日の放課後は、どうしても外せない用があって……」
と、仁美だけが提案に乗らなかった。
それを聞いて、まどかとタケルはある事を思い出した。先日、2人がさやかと仁美の会話を盗み聞きした際、仁美が言っていた事を。
『明後日の放課後に、上条君に告白します』
そして、そう告げた2日後が今日。この日は、さやかがこの2日間に何も上条に語りかけていなければ、仁美が上条に告白する事になっている。今のさやかの精神状態を考えると、まだ上条に告白していないはずだ。2人は仁美を呼び止めようとしたが、今下手に彼女を止めてしまうと、余計に事態をややこしくしてしまいかねない。2人には、仁美を止める事が出来なかった。
「では、また」
仁美がそう言うと、そそくさと教室を後にした。彼女よりも前に上条が出たのをまどか達は知っている為、上条と共に帰るのだろうと、まどかとタケルは察した。
「タケル。俺達も行くぞ」
「……」
「タケル殿?」
「あ、ごめん。じゃあ行くか」
仁美の向かった方に気を取られていたタケルだったが、皆に声をかけられて我に返り、一同は教室を出た。校門付近で星斗も一緒についていくと言い、6人はさやかの家があるマンションに向かった。
エントランスの玄関インターホンに、さやかの家の番号を入力した後、程なくしてインターホンから聞こえて来たのは、さやか本人ではなく、彼女の母親だった。
まどかが代表してさやかの母親に、さやかと話がしたいと告げたが、受け答えするさやかの母親の様子がおかしい。不思議に思っていた一同だったが、インターホンから聞こえてきた声を耳にして、一同は驚愕した。
「……え? 帰ってないんですか? 昨日から……」
なんと、さやかは昨日から家に帰っていなかったのだ。聞くところによると、昨日の朝は制服姿で家を出た所までは確認出来たようだが、それ以降は全く連絡が取れていない状態なのだと言う。夜になっても帰ってこないさやかが心配になり、警察にもすでに連絡をして、捜索してもらってはいるが、依然として行方が掴めていないらしい。話す度に涙声になりながら、母親はそう告げた。
さやかの母親に礼を言った後、一同は顔を見合わせた。一昨日の件もある。単なる家出や誘拐の類とは考えられなかった。魔法少女や魔女に関する事柄が関わっているに違いない。そうなると、両親の捜索や、警察の力ではどうにもならないはずだ。
「さやかちゃんを探さなきゃ……!」
晶がいち早くそう叫ぶと、一同は方針を決めた。
「ここは、手分けして探すしかないな。マミさんと隼人さんには俺が伝える」
「俺は一旦家に帰って、杏子とゆまにも手伝ってもらうように頼んでくるぜ。親父達なら訳を話せば許可してくれると思うし」
「では、拙者は川沿いの方へ……!」
「うん!」
「ちょっと待て。仁美にも伝えた方が……」
「いや、それは止めておこう」
「何でだ⁉︎」
誠司が仁美にも応援を要請しようとするが、タケルがそれを制止した。
「今はあいつも用事があるんだ。無理にこっちに関わらせても……」
「けど、あいつはさやかの、俺達の友達なんだぞ! さやかに何かあったら、あいつだって……」
「とにかく! 今は何も伝えないでくれ。訳は話せないけど、頼む……!」
タケルが頭を下げてそう言った事に、まどか達は驚いていた。その気迫に押されたのか、まどか達はこれ以上詮索する事はなかった。それよりも、一刻も早くさやかを探し出すのが最優先だと思ったからだ。だが、まどかは仁美の話を聞いていた為、タケルがここまで強く言う理由が分かる気がした。
そして一同は散り散りに分かれて、さやかの捜索を始めた。西の空に、綺麗に見える夕日が、この日は何か不吉なものを漂わせるように辺りを照らしていた。
「(さやか……! どこにいるんだよ……!)」
その頃、緑地公園の遊歩道を、松葉杖をついて歩いている上条と仁美が、談笑しながら並んで歩いている……ように見えたが、実際に笑っているのは上条だけで、仁美だけはどこか上の空のような表情を浮かべていた。彼女はさやかの事で考え事をしていたのだ。
「(さやかさん……。今日の上条君の様子を見る限り、何も伝えてないようですわね……)」
彼女の脳裏には、ふらついて倒れかけたさやかを支えようとした際に、さやかに睨みつけられた事がよぎっていた。
きっと怒っているに違いない。さやかがどれだけ上条に貢献してきたか、仁美もよく分かっていた。上条が自分に取られると思って、恨んでいるかもしれない。だが、仁美の決意は揺るがなかった。
「(……でも、やっぱりこの想いだけは譲れません。例えさやかさんに恨まれる事になったとしても、私は、この気持ちに嘘はつけないですわ……)」
「……仁美?」
「! あ、はい……!」
「どうかしたの? 何か考え事をしてたように見えたけど……」
「い、いえ、何でもありませんわ。それよりも、どうかなされましたか?」
「あ、うん……。ちょっと気になってたんだけどさ。仁美って帰る方向ってこっちだったっけ? 今まで、この通りで見かけた事って無いような……」
時は来た。そう確信した仁美は目を閉じて、澄ました顔で言った。
「えぇ。だって本当は、家とは全然逆方向ですし……」
「え? じゃあどうして……?」
訳も分からず戸惑う上条が首を傾げていると、仁美は目を開けて、一度公園に設置されてある時計台に目をやった。時刻はすでに5時を迎えようとしている。約束の刻限だ。仁美は、意を決して、上条に体を向けた。
「? 仁美?」
「上条君」
そして、本題に切り出した。
「お話したい事がありますの」
この時、偶然にも、公園の一角にある森林の中をさやかが重い足取りで彷徨い歩いていたのだ。
「……仁美が、仁美が、全部、悪いんだ……」
虚ろな目つきのままそう呟くさやかの左肩には学生カバンが。そして右手には、夕日に照らされて光り輝く、尖った先端が特徴的なものが握られている。
「仁美が、あんな事言わなかったら……!」
そう呟く度に、その声色からは殺気が、足取りからは、強い怨恨が滲み出ている。
自宅から無断で拝借した、刃渡り20センチほどの包丁を握る手がより一層強くなっており、殺意のオーラに満ち溢れている。
「あんたがあたしから恭介を奪うってんなら……!」
さやかは目を細めて、歯ぎしりしながら、感情のままに吐露した。
「あたしが仁美から、何もかも……!」
さやかが視界の開けた位置にたどり着き、辺りを見渡していたその時、さやかの視界に、標的となった仁美のベンチに座っている姿が。
「見つけた……!」
さやかがなるべく包丁を見られないように隠して、仁美に接近しようとした時、仁美のすぐ隣に誰かがいる事に気付き、慌てて木陰に隠れた。それは、さやかの想い人の上条 恭介。
「(恭介……⁉︎)」
見つからないようにそっと2人の様子を伺ってみた。会話の内容は聞き取れなかったが、明らかに良い雰囲気なのは間違いない。それを見ていたさやかの心中は殺気立った。
「(あそこには、仁美じゃなくて、あたしが座っていたはずなのに……!)」
恭介がいなくなったタイミングで、仁美に近づこう。そして、手に持った包丁でソウルジェムを一突きすれば、それで仁美の命の灯火は消える。そう思ったさやかは、一旦目線を外した後、再び覗き込むように2人の様子を見た。
が、不意にさやかの目が見開いた。さやかの目線の先には、ハニカミながらも、照れたように頷く上条と、満面な笑みで上条の手を優しく握る仁美の様子が。
「(2人のあんな顔、初めて見た……)」
少なくとも、さやかが覚えている限りでは、ここまで仲睦まじく会話をしている2人を見た事が無い。まるで、運命が2人を必然的に導いたかのように、2人は幸せそうな表情を浮かべている。
そして、さやかはハッとした。今、自分はこんな2人の幸せを踏みにじろうとして、取り返しのつかない事をしでかしかけたのを。全ての責任を仁美に突きつけて、親友に手をかけようとしていた事に。さやかが頬に生暖かい水滴が垂れ落ちている事に気づくのに数秒かかった。仁美と上条の笑顔を見て、殺気に満ちた感情が一気に覚めた。
「(……あたし、なんてバカな事を……! 仁美は、約束を守って今日まで我慢してくれてたのに、それを知ってて何もしなかったのは、あたしの勝手だったのに……!)」
自分のエゴで、大切な親友を失うところだった。その感情がさやかの中を駆け巡り、自己嫌悪に陥った。
しばらく立ち尽くしていたさやかは、包丁をカバンの中にしまい、涙を拭うと、最後に仁美と上条の笑顔を見届けた後、背を向けて、2人から離れるように歩き去った。
「……あたし、ホントに嫌な子だ」
と、暗く呟きながら。
その後、さやかは偶然見つけた結界の中に入り、変身した後、サーベルを両手に持ち、狂ったように振り回してした。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
一度でも親友に手をかけようとした自分に怒りを覚えながら、さやかは周りにいた使い魔を一掃した。自らの感情に入り乱れていた悲しみ、苦しみを露わにしながらサーベルを振るうその姿は、まさに修羅。
ようやく全ての使い魔が消滅すると、結界は崩れ落ちていき、元の風景に戻った。外はいつの間にか陽が落ちており、街灯や建物に設置された非常口の蛍光灯が弱々しくも、さやかを照らしている。
さやかは荒い息を吐きながら、疲労のあまり、その場にうずくまり、変身が勝手に解除された。先ほどの結界は使い魔が形成したものである為、グリーフシードを落とす事はなかった。力任せに戦い、魔法をむやみやたらに使いまくっていた為、すでにさやかのソウルジェムは黒ずんでおり、急速に浄化する必要があるが、さやかにとって、グリーフシードの有無は、最早関係ないといった表情を浮かべていた。
息を整えた後、再び結界を見つけ出し、魔女と戦う為に立ち上がろうとしたその時、背後から足音が響いてきた。さやかがゆっくりと振り向くと、そこには制服姿のほむらが佇んでいた。常に行動を共にしているマコトが近くにいない事から、1人だけでこの場に来たようだ。
「……どうして分からないの? ただでさえ余裕が無いのなら、魔女だけを狙っていれば……」
が、さやかはほむらの忠告を無視して立ち上がりながら睨み返した。
「……うるさいわね。大きなお世話よ……!」
「もうソウルジェムも限界のはずよ。今すぐ浄化しないと、致命的な事になるわ」
そう言ってほむらは懐から、持っていたグリーフシードをさやかの足元に放った。
「使いなさい。見返りなんて気にせずにね」
「……」
だが、さやかは拾おうともせず、逆にほむらの足元に蹴り返した。ほむらは黙ってグリーフシードを手に取った。
「……今度は何を企んでるのさ」
あくまで助けを拒んでいるさやかを見て、ほむらは苛立ちを隠せずにさやかを睨みつけた。
「……いい加減にして。あなたはもう他人を疑ってる場合じゃ無いでしょ……! そんなに私やマコトに助けてもらうのが癪に触るのかしら?」
「あんた達とは違う魔法少女になるって、あたしは最初からそう決めてるの……。誰かを見捨てる事も、利用するのも、そんな事をする奴らとつるむのもお断りよ。見返りなんていらない。あたしは絶対に、自分の為に魔法なんて使わない……!」
さやかは静かに決意を示すように呟いた。が、ほむらの心には全く響いていないようだ。
「……あなた、死ぬわよ」
「あたしが死ぬとしたら、それは魔女を殺せなくなった時だし、それってつまり、用済みだって事じゃん」
膝をついて、自嘲気味に冷たい笑みを浮かべながら、さやかは呟いた。ほむらはそれを歯嚙みしながら聞いている。
「なら、別に良いんじゃないかな……? 魔女に勝てないあたしなんか、この世界にいらないんだよ」
そんな事はない、と、もしまどか達が近くにいたら必ずそう言うだろう。だが、その友人はここにはいない。さやか自身から引き離したようなものだからだ。そんな頑固な自虐ぶりを見せているさやかを見下ろしながら、ほむらは言葉を投げかけた。
「……ねぇ、どうして? 私はあなたを助けたいだけなの。マコトだって、あなたを心配してくれてるわ。どうして信じてくれないの?」
「どうして……か」
さやかは依然として冷たい笑みを浮かべているが、目線を下に向けてから、なるべく穏やかな口調でその質問に答えた。
「ホントにどうしてだろうねぇ……。ただ、何となくだけどさ。分かっちゃうのよ。あんたもマコトも嘘つきだって事」
「……」
「だってあんた達、何もかも諦めたような目をいつもしてるよね。いつも空っぽの言葉を喋ってる。今だってそうじゃん。あたしの為とか言っておいて、本当は全然別の事を考えてるでしょ……? タケルと正反対だよ、それ。タケルは自分を信じて、自分の心に素直になって言いたい事を正直に言ってる。でもあんたらは……? いっつも平気に嘘を言って、言葉にしてる事と違う事ばっかり頭で考えてる。……あんた達がタケルを嫌ってるのも、そういう所があるからじゃない? そういう誤魔化し、生憎あたしには通じないよ。あたし、こういうのには勘づきやすいっていうか……」
そう言いながら不意に目線を上げたさやかの口の動きが止まった。
ほむらは俯いていた。だが、微かに見えた目つきからは、今までに見た事がないような冷たさを帯びているように見えた。
「……そうやって、あなたはますますまどかやタケルを苦しめていくのね?」
「ち、ちょっと待ちなよ……」
逆上しているような雰囲気を漂わせながら呟くほむらの言葉を聞き、さやかは怪訝な顔になった。
何故このタイミングで2人の名前が出てきたのだろうか?
「あの2人は、関係ないでしょ」
「いいえ。何もかもあの2人の為よ」
そう呟くほむらの言葉には、嘘、偽りがないように思えた。さやかが凝視しているのを見据えながら、ほむらは左指につけられていた指輪型のソウルジェムを卵型に変形させて、
「変身」
と低く呟き、紫色の光に包まれて魔法少女姿に変身した。本気の殺意を纏いながら、さやかに一歩ずつ確実に迫ってきた。
「あなたって本当に鋭いわ。……えぇ、図星よ。私もマコトも別にあなたを助けたい訳じゃない。あなたが破滅していく姿を、あの2人に見せたくないだけよ。もちろん、あなた以外も例外では無いわ」
そして、ソウルジェムのつけられた左手をさやかにかざすように突きつけた。
「ここで私を拒むのなら、どうせあなたは死ぬしか道は無い。これ以上、2人を悲しませるくらいなら、いっそ私がこの手で、今すぐ殺してあげるわ、美樹 さやか……!」
さやかは一刻も早く逃げ出したかったが、ほむらの剣幕に気圧されて、咄嗟に体に力が入らず、紫色の光に包まれようとしていた。
だがその直後。
「オラァ!」
「!」
ほむらの背後から鎖がぶつかった時の金属音が聞こえてきたかと思うと、2人が引き離されて、ほむらは地面に倒れこんだ。
「くっ……!」
ほむらが顔を上げると、魔法少女姿の杏子が多節棍状の槍で拘束しているのが見えた。さやかのすぐそばに、これまた魔法少女姿のゆまがネコ型ハンマーを担いで、さやかを守るように現れた。誠司からの連絡を受けて、魔力の反応を追って探しに来たのだろう。
「! あんた……!」
「おい、何やってる⁉︎ さっさと逃げろ!」
「さやかおねーちゃん、逃げて!」
杏子とゆまに押される形で、さやかはふらつきながらもその場を逃げるように後にした。どのみち疲弊仕切っているさやかでは、勝ち目は全く無かっただろう。
さやかが遠くに逃げているのを確認して、杏子は憤怒混じりに、言っていた事と違う事についてほむらに問い詰めた。
「正気かよテメェ……! あいつを助けるんじゃ無かったのかよ!」
「……離して」
どういう訳か、いつものように瞬間移動する訳でもなく、無理やり杏子の拘束から逃れようとしているほむらを見て一瞬戸惑いを見せていた杏子だが、すぐに勝ち気な笑みを浮かべて呟いた。
「ふぅん、なるほどね……。こんな風にとっ捕まったままだと、あの妙な技も使えないって訳か。そんなら……」
さらに強く締め上げて気絶させようとする杏子に対し、ほむらは抵抗を諦めて、代わりに辛うじて動かせれた右手を左手に装着されている盾の下に手を突っ込む動作を見せた。
そして引き抜いた右手に握られていたのは……。
「な……⁉︎」
杏子の目線の先には、小型の手榴弾が。ほむらは口でピンを抜くと、地面に落とした。
「! ゆま、伏せろ! 目を瞑れ!」
自爆狙いかと思った杏子が咄嗟にほむらから離れて、ゆまに指示を出した。ゆまも慌てて地面に倒れこんだ。
刹那、閃光が建物を照らし出し、杏子とゆまは目をやられないように目を瞑り、地面に伏せていた。ひかりが収まったのを確認した杏子が顔を上げると、すでにほむらのすがたは消えていた。杏子自身やゆまに外傷が無いところから見て、どうやら先ほどほむらが使ったのは、非殺傷型の閃光手榴弾らしい。
「くそっ……! 味な真似しやがって……!」
「いなくなっちゃった……」
杏子が地団駄を踏み、ゆまは辺りを見渡している。
さやかが去っていた方に走ってみたが、すでにさやかの姿は無く、魔力も途絶えてしまっている。
「……しゃーねぇ。もういっぺん探すか。この近くにいるのは間違いないしな」
杏子はそうボヤきながら、一旦誠司に連絡を入れた後、ゆまと共に再びさやかの捜索を開始した。
ムゲン魂の強さはかなりのものですね……。しかし、こうなるとガンマイザーがどれだけ強くなるのか、逆に怖く感じます。
次回もお楽しみに。